(C)Two-Way/小学校/その他//2年〜6年/宇宙
TOSS静岡/杉山裕之
『宇宙でトイレに入る法』という本をネタ本にしたクイズを通して、子供たちと神秘的な宇宙についての想像を広げることができます。
(1)宇宙船の中では背はどうなるか?
次の本をネタ本として,朝の会の「先生の話」でクイズを出す。
『宇宙でトイレにはいる法』(筑摩書房,ウィリアム・R・ポーグ作
楠田枝理子編訳,1200円)
このクイズが大うけで,子どもたちからは「毎日やって」とせがまれた。
以下,その実践を示す(なお,「 」は子どもの言葉,『 』は教師の言葉である)。
子どもたちが,朝の会でかわるがわるクイズを出している。
私も子どもたちに負けまいとクイズを出すことにした。
「先生の話をお願いします」と朝の会の司会の子が言った後,子どもたちの前に立ち,おもむろに,ゆっくりと言う。
『クイズを出します』
これだけで子どもたちはわく。
以下,次のように話す。
『宇宙のクイズを出します。
宇宙では,君たちが住んでいるこの地球と違って,重力がないんだよね。
だから宇宙船の中では,乗っている人たちはふわふわ浮いちゃうんだよね』
「そうそう。知ってるよ」
などと子どもたちが言う。
『ふわふわ体が浮いちやうだけでなくて,体の中にある胃(ここで,お腹のあたりを押さえて,胃の位置を示す)も,お腹の上の方に上がってきて,宇宙船での生活になれるまでは,二,三日ものすごく気持ちが悪いんだって』 「え―」「へー」と言った声がする(この話は,次の問いの伏線になる)。
『さて,それでは,宇宙船の中で生活をしていると,その人の背の高さはどうなるでしょうか?』 (一言,―言区切ってゆっくりと言う)
「ウーム」「のびるんじゃない」とか言った声がきこえる。
『それじゃあ,今からいう三つの中のどれかひとつに決めて下さい。
一番。宇宙船の中だって背の高さは変わらないよ。と思う子は一。
二番。いやいや,背は伸びるんだよ。と言う子は二。
三番。何を言ってるんだ。背は低くなるさ,と言う子は三。
一回だけあげるんだよ。
(5秒程間を置いて)決めましたか』
一,二,三と順に挙手で人数を確かめる。
2年生の私のクラス(30人学級)では,― 7人,二 21人 三 2人という結果であった。
ここで答えをもったいぶって言う。
『正解は(と言った後,ゆっくりと教室を見まわし,小さな声で)―番の背の高さは変わらない(3秒程待ち)ではなくて,三番の背は低くなる(やはり3秒程待ち)でもなくて,二番の背は伸びる,です(「です」をきっぱりと言う)』
正解の二番の子たちからは「イエーイ」といった歓声があがる。
『これは,何故かと言いますと(と言って,再び,教室を見まわす)』
ある子が言う。
「だって,先生,さっき,胃が上がっていくって言ったもん」
『な―るほど,よく聞いていたね』とほめる。
そして,理由を説明する。
『何故かと言うと,地球には重力があるから,この(といって手で背中や腰の所をさわりながら)背中や腰の所の骨と骨の間が,上からの重さでちぢまっているんだけど,さっき話した胃と同じように,宇宙では重力がないから上へ上へといこうとするんです。だから,この腰のところや背中の所の間が伸びて,背が高くなるそうなんです』
ここまで,4,5分といったところである。
この日は,特別に,もう少し時間をとって,話をすすめる。
「もうひとつ出すよ」と言う。子どもたちは大喜びである。
『実はね(と言って小さい声で)背が伸びると困ることがあるんだって,さて,何でしょう』
ここでは,自由に言いたい子にどんどん言わせる。
その際,気をつけることは次である。
どの考えにも,うなずきながら(時には,「なるほどね」と言いながら)聞く。決して,「違いますよなどと言ってはならない。ここでは,自由にあれこれと考えられる力と,宇宙での生活に興味を持たせることを教師は望んでいるのたから,いちいち介入しないことである)
子どもたちは「地球へ帰ってきたら困る」だの「ふとんがせまくなって困る」だの「天井にぶつかりやすくなって困る」だの好き勝手なことを言う。
一段落したところで答えを言う。
(自由発言の中に,正解の子がいたら「今,言ってくれた考えの中にあたっているのがあります」と言う) 背が伸びるので,今まで着ていた宇宙服が少しきつくなるそうです。
この後,『ところで,宇宙服の値段はどのくらいかと言うと』(と言って宇宙服の値段を黒板に書く)。
うちゅうふくのねだん $40,000=¥50,000,000
$がドル,¥が円であることを説明する。5千万と数えられる子がいて皆,驚く。
そこで「今,先生がもらっている給料でいうと,大体20年分ですよと言う。さらに,子どもたちは驚く。
『明日も宇宙の話をします』と言って,一日目を終える。
なお,先の本をどうして手に入れたかというと,『授業づくリネットワーク』(教科研授業づくり部会,ニュースレター)No.12(1988.1.1)の中の野田芳朗氏(大田区立洗足池児童館)の論稿に先の本の紹介があったことによる。
(2)飲み物はどうやって飲むの?
宇宙船での生活のクイズ2日目である。
『今日もクイズを出します』と言うと,すぐに歓声が上がる。
『宇宙船の中で生活する人たちも,何か食べなくちゃ生きていけないでしょ。何か欽まなくちやいけないでしょう。
それで,飲む水やジュースなんだけど,コップに入れて飲もうとすると,重力の関係で,池の物が浮くのと同じように,水があふれてきちやうんです』(最初に,「カロリーメイト」<大塚食品>を見せても良い)
『さて,それでは,この飲み物はどうやって飲めばいいでしょうか?』
「え―」「ウーン」と言った声が多い。それでも20秒程すると何人かの子の手が挙がる。そして,次のように言う。
とにかく何でも,考えがあったら立ってごらんなさい。
結局10人程の子たちが立った。
立っている子に話をさせる。
考えは三つでてきた。どの考えもおもしろくてそして,また,そうかなと思わせるものであった(この時も,教師は決して「違います」などと言ってはならない。子どもの言葉が足りなくて,皆にうまく伝わらない時だけ教師が一緒に補足しながらその発言者の言いたいことをはっきりさせる)。
三つの考えとは,次のようであった。
A 「水があふれるでしょう。それで,船の中の天井まで上がっていくでし ょ。天井まで土がっちゃったところで,下からチューナュー飲むと思いま す」(「きたない」「天井がきたなくなる」という声があがる)
B 「水があふれて,上にあがってくるでしよ。そこを口をあけておいて, がぶっと飲みこむと思います」(実際に下から水が上がってきたと想定さ せて動作化させてみた。みんなで大笑いした)
C 「水筒でストローがついているのがあるでしょ。飲み物は,その中に人 れておいてストローを使って飲むと思います」(「そうか」という声があ がる)
三つの考えのどれがいいと思うか問うてみると,Cが圧倒的に多い。
ここで,答えを言う。
『かなり,正解に近いのがあります。さすが,第二小学校の2年生です』
(と言う。子どもたちは「エー」と言う)
『柳下君が言ってくれたように,飲み物は,水筒のようなものに入れるそうです。でも,ストローでは飲みません。
水筒に近いけど,スプレーの缶があるでしょう。あの缶に水を入れて,口の中にシューツと,ふきこむんだそうです』
子どもたちは神妙にきいている。
『おもしろいでしょ』と言うと,「おもしろい」と言う。
「先生,なんで,そんなこと知っているの?」とある子が言う。
子どもたちが,羨望のまなざしで教師を見つめる。この―瞬がたまらない。 『先生は頭がいいからだよ』とは言わないで『実は』と言って,バックから,ネタ本をとり出し見せてあげる。