私は子供の頃から蓄膿症で、一年のうち半分くらいの期間は鼻たれ小僧でした。花粉症ではありませんが何かのアレルギーがあります。大人になってから蓄膿症が原因だと解ったのですが、当時は原因の解らない頭痛で悩みました。蓄膿症はひどいときには頭痛だけでなくて、一時的な視力障害を起こすことがあります。理由は鼻の奥が炎症をおこして視神経を圧迫してしまうかららしいです。
5、6年前の話で、私はまだ前の会社にいました。その日は朝から調子が良くなくて頭痛がしていました。頭痛がするようなときは、鼻をかんでも鼻水も出ません。奥の方で炎症していながら出てこないのです。そんな時がいちばん始末に負えないものです。
頭痛がしていましたが、その日は新入社員研修で私が話をする予定になっていたので、少々の痛みは我慢しなければなりません。25名くらいが学校の教室のようにならんでいる前で、小一時間の予定で話を始めました。(私は一時間くらいなら行き当たりばったりで喋れます。)
20分くらい話をしたでしょうか、ふと気が付くと話を聞いていた若い女の子が私にウインクをしています。「どきっ、あれれっ、何なんだ?。」と思いました。たいがいの人は若い女の人に突然ウインクをされるとびっくりしてしまいます。状況がよくわからないのですが、こんなところを見られたら困る、他の人は知っているのだろうか?、と思って、その子のとなりに座っているおばさんを見ました。「げっげげっ。」なんとそのおばさんも私にウインクしています。「うっそー」と思って他の人も見てみました。見る人見る人みんな私にウインクしています。みんながウインクするほど仲良くしている、なんて幸せなんだ。この世界はなんて素晴らしいのか。と、一瞬思いましたが、でも変です。みんなで示し合わせて私をからかっているのか?、と、今度は急に腹立たしくなってきました。20数名の人からいっせいにウインクされるのは、ちょっと言葉で言いきれないショックです。
「我が目を疑う。」とはよく言ったものです。私も「我が目を疑いました。」たいがいの場合「我が目を疑っても」目が悪いのではありません。一種の驚きの表現としてこの言葉は使われるのですが、このときは違いました。私の目が犯人でした。
私は蓄膿症のため一時的な視力障害になっていたのでした。本当に偶然だと思うのですが、左右の目とも凝視した点のすぐ左の部分が見えなくなっていました。たいがい人の顔を見るときは、その人の目と目の間(要するに鼻の上の部分)を見るものです。その時は人の顔を見るとちょうどその人の右目の部分が見えなくなっていたのです。片目が見えないとまるでウインクしているように見えるのです。
私は話を手短にまとめ、病院へ急いでいきました。しかし病院に着いた時にはもう視力障害は治っていました。(相変わらず、ひどい頭痛は続いていました。)
病院の待合室で私は思いました。「ウインクしないまでも、みんなが仲良く出来る世の中が実現したらなんと素晴らしいことだろう。」その後で、