幻想 (第78話)

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はじまり

 世の中は意識だけでした。みんなやることが無いので夢をみて暮らしていました。

「やあ、君はどんな夢を見ていたんだい。」

「ああ、とっても素敵な夢さ、木というものがあってそれが集まって森林が出来ているのさ。」

「僕の夢もすばらしいよ、川があって僕は魚という生き物になっているのさ。」

「私の夢は、大きな星が光っていて、その周りをもっと小さな星がずっとぐるぐる廻っているよ、とってもきれいだよ。でも何だかちょっと飽きて来ちゃった。」

「うん、ちょっと飽きてきちゃったな。」

「ねえ今度、君の夢を見せてくれないか?私の夢も見せてあげるから。」

「君たち面白そうなこと考えてるね。夢の交換かい?それなら俺も入れてくれよ。」

「もちろん良いとも、じゃいっそのことみんなの夢を合わせて、その同じ夢を見るようにしないかい?」

「賛成、やってみよう。どうせなら大勢のほうが良いね。」

「OK!じゃあみんなの夢を集めたら、世界と呼ぼう。きっと楽しいぞ、わくわく!」


 

彼はこの世の中が幻想であることを知っていました。

 「いや、そんなはずは無い、だって現実にここにいるんだもの。霊魂たちは、あっちの世界からこっちを見ているから、こっちの世界が幻想に見えるんだ。本当はこっちの世界が本物であっちが幻想に違いない。」
 「じぁ何で思ったことが現実になるなんて、非常識なことがおこっているんだ?それってこちらの世界が幻想だからじゃないのかい?」
 「いやいやそんなことは無いよ。あっちの世界こそ、非常識なことが散々おこっているじゃないか?」
 「でもたぶん向こうの住人は何も非常識だなんて思ってないぞ、きっとこちら側の人間を見て、なんて非常識なんだ、と思ってるんだろうな。」
 「じゃこういうことか?こっちが幻想なら、あっちも幻想。」
 「うん、両方とも幻想なんだよ。両方とも幻想、だけども両方とも現実。」
 「と言うことは、何をしても幻想から逃れられない、それが現実だと言うのかな?」
 「まあそういうことになるのかな。」
 「俺は嫌だ、真実はどこにあるんだ。それとも真実なんてどこにも無いとでもゆうのか?」
 「あえて言えば、幻想から簡単には抜け出られない。と言うのが真実かな。」
 「嫌だー。そんなことは認めないぞ、俺は真実を探すんだー。」
 「みんなどうしているか知ってるかい? しかたないからそれぞれ勝手に真実を作っているのさ。それしか方法が無いのさ。」

OK!わかったよ

 「OK!わかったよ。何をやっても幻想の中だなんて、いったい何を基準に生きていたら良いのだ」

 「ああ、それは私もいろいろと考えたよ。結論をききたいかい?」

 「聞かせてもらおうじゃないか、どうしたら幻想の中で生きていけるのか」

 「思うに、幻想から抜け出られない以上バタバタしても始まらない。とにかくその現実を楽しむしかないね。」

 「どういうことだい?」

 「幻想を楽しむこと、幻想を愛すること、全てを愛すること。これしかないね。」

 「全てを愛するって、どうしたらいいんだい?」

 「神が全てのものだってわかっているなら、神を愛することだね。」

(2003/04/27)


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