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 「魂の部屋」第3話、まことに高レベルな話であったと思います。

 私が「『霊魂などが存在すると思う』という話をするならば、超自然的な物
の存在を前提とした説をとる前に、合理的な説明がつかないかどうか充分検討
しなければならない」と言ったのはまさに、この第3話の様なことを言おうと
したのです。

 さてそれでは、くだんの占い師の予言について、「超自然的な物」の存在抜
きの解釈を試みてみたいと思います。

 商売をしている人々にとっては常識になっている事ですが、
 「どこに、どういう消費行動をする消費者が住んでいるか」という情報を収
集したり、それを売ったりしている業者が存在します。

 ある占い師が将来の顧客を確保するために、地方を巡り歩いて占いのショー
をする事を計画しました。
 彼女は、訪問する先々に住む、オカルト好きな人のリストを業者から買いま
した。そのリストは、UFOや超常現象の本に感想を送って来た人とか、その
筋のグッズを通信販売で買い求めた人などの名前と住所を集めた物でした。
そうして彼女は、自分のショーに来そうな人を絞り込んで、おかかえのスタッ
フを使って探偵のまねごとをさせて、相手の身辺を調べ上げました。

 さてショーの当日です。
 「誰か、占って欲しい人はいますか? 今日はタダで占ってあげますよ。」
とアナウンスすると、おおぜいの人が手を挙げます。
 その中から、すでに調査ずみの人を選んで、壇上に登らせます。
 
 実は身辺調査ずみなのに、あたかも今初めて会った様な顔をして、
 「あー、あなたは最近、お婆さんを亡くされましたね。」
 とか、
 「あなたの家が見えます。庭には茶色の大きな犬がいますね。」
 などともっともらしく千里眼で見ているかのごとく、相手の身辺の事を言い
当てていきます。

 言い当てられた方は、「ヒエッ」とばかり恐れ行ってしまいます。

 その状態では
 「商売するなら広く遠くへ行きなさい。」
こんな当たり前の言葉さえ、ありがたく聞こえてしまいます。

こんな予言は、外れるリスクの無い、誰だって出来る予言です。
 「広く・遠くへ」と言われて岐阜や山梨へ進出しようとする人はいません。
 静岡出身の人なら、東京か名古屋に店を出すことを考える筈です。
 地元で商売している限り、商売の規模はそうそう大きくなるものではありま
せん。( もちろん、革新的な工夫をすれば、その限りではありませんが。)
 一方、都会を相手にすれば、否が応でも規模が大きくなります。大きくなら
なければ、都会に出した店を維持することは出来ないのですから。

 中には、都会を相手にしても、失敗する人もいるでしょう。
 しかしそういう人は、自分の失敗を「占い師の予言が外れたせいだ」と他人
に語ったりはしません。
 だから、「広く遠くへ」は全く安全な予言なのです。

 こうして、若くして彼女にはまった人々は、成長して高い地位につくと、彼
女のお得意様になります。
 あくまで「人事を尽くして天命を待つ」という姿勢で彼女の判断を仰ぐので
すから、A案B案どちらの途を選んでもそうそう外れるものではないのです。
それなのに、彼女の玉虫色のご神託をありがたく聞いて何十万円も払い、そし
て万一外れたって裁判沙汰になんかしようがないのです。
 かくして、安全でおいしいビジネスの出来上がりとなるのです。

 ここで述べたことは、あくまで「こういう風にしても『占い』は出来る」と
言うことを示しただけです。
 くだんの予言者がそうだ、と言っている訳ではありません。
 その予言者をニセモノだと判断した決め手は、「自分が殺されるという事を
避けられなかった」という事実です。

                        岩清水 彰


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