はやし浩司

子育て定期検診01-5-7
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あなたの子育て、定期検診
   
    幼児教育家       はやし浩司(ひろし)

●日ごろの、子どもの何でもないような行為の中に、
あなたの子育ての問題点が隠されていることがあります。
そこであなたの子育て、定期検診!

********************

【検診方法】

Q項目を読んで、続いて本文を読む前に、少し頭のなかで、「私はどうかな?」「うちの子
はどうかな?」と、自問してみてください。そしてある程度、答が出たら、本文を読んでみ
てください。 


Q 子どものリズムで歩いていますか?

 子どもと二人で歩いているところを、頭の中で想像してみてください。そのとき、あなたが子ど
もの横にいるか、子どものうしろにいて、子どもの背中を見ながら歩いていれば、それでよし。
もしあなたが子どもの手を引きながら、子どもの前を歩いているようなら、要注意。あなたは子
どものリズムで子育てをしていないことになります。このリズムの乱れは、今は小さなものです
が、一事が万事。あらゆる面で、あなたの子育てに影響してきます。へたをすれば、やがて、
親子の間に亀裂……そして断絶ということにもなりかねません。子育てじょうずなママは、子ど
もの心をつかむのがじょうず。子どものリズムで歩くことができるママをいいます。

Q 園や学校から、明るい表情で帰ってきますか?

 不登校ばかりが問題になりますが、同じように深刻なのが、帰宅拒否。ある男の子(年長児)
は、帰りの時刻になるたびに、どこかへ隠れてしまいます。そこで先生たちがさがすのですが、
おかげでいつもバスの発車時刻が遅れてしまいます。「どうしてでしょう」とお母さんから相談が
ありましたが、様子から私は「帰宅拒否」と判断しました。「家へ帰りたくない」という思いが、回
りまわって、子どもにそういう行動をさせるのですね。もしあなたのお子さんが、「いつも寄り道
をする」「帰りの時刻が遅い」ということであれば、この帰宅拒否を疑ってみてください。

Q おうちの方のいる前で、体や心を休めますか?

 あなたのお子さんが、園や学校から帰ってきたとき、どこで体や心を休めるか、観察してみて
ください。あなたのいる前で、休めるようであればよし。しかし好んであなたのいないところや、
あるいはあなたの姿が見えると、逃げていくようであれば、要注意。あなたとお子さんの間に
は、すでに小さな亀裂ができ始めているとみます。やがてそれが大きくなり、「断絶!」というこ
とにもなりかねません。そうならないためにも、子育ての仕方そのものを反省してください。子ど
もにとっては、家庭はやすらぎの場所。あれこれとこまかいことを言えば、あなたがいるところ
では休めなくなりますね。

Q いやなことがあると、どこへ逃げて行きますか?

 どんな動物にも最後の逃げ場というものがあります。その逃げ場は、神聖な場所と心得て、
子どもがその逃げ場に入ったら、そこを踏み荒らすようなことはしてはいけません。子どもはそ
の逃げ場で、反省したり、心を調整したりします。子どもがそこから出てくるまで、静かに待ちま
す。ふつう子どもの逃げ場は、自分の部屋などですが、そこを荒らすと、別の場所に逃げ場を
求めるようになります。トイレの中や、押し入れの中など。近所の公園の電話ボックスの中に逃
げた子ども(小二男児)や、犬小屋に逃げた子ども(小四女児)もいました。

Q おうちの方の絵を、楽しんで描きますか?

 紙と鉛筆(クーピーなど)を用意して、「皆で、食事をしているところを描いてね」と指示してみ
てください。そのとき子どもが、楽しそうな表情で絵を書き始めれば、それでよし。もしそのとた
ん、暗い表情になったり、拒否するようであれば、家庭のあり方をかなり反省しなければなりま
せん。外からはわからなくても、お子さんの心の中に、大きなわだかまりができつつあるとみま
す。園児の場合、お父さんとお母さんの顔を描かせると、ふつうお母さんを先に、しかも大きく
描く傾向があります。それだけお母さんのほうの印象が強いからです。

Q ハングリーな状態になっていますか?

 同じように、こんな指示をして絵を描かせてみてください。「不思議な木があります。あなたの
ほしいものが何でもできる不思議な木です。木を描いて、あなたのほしいものをいっぱい描い
てね」と。そのとき次々といろいろなものを描ければよし。そうでなくて、「何もいらない」「ほしい
ものがない」というのであれば、かなりの飽食を疑ってみます。子どもを伸ばすコツは、いつも
ややハングリーな状態に置くことです。「あれをしたい」「これがほしい」という思いが、子どもを
前向きに引っ張っていきます。与えすぎ、手のかけすぎは、禁物です。

Q 台所の生ゴミを、手で始末できますか?

 ドラ息子症候群の大きな特徴は、「いやなことはしない」です。そこでテスト。あなたの子ども
に、「台所の生ゴミを始末して」と頼んでみてください。あるいはお風呂の排水口にたまった毛
玉でもいいです。そのときしぶしぶでも、それができればよし。が、ああでもない、こうでもないと
勝手な理由をつけてそれをしないというのであれば、かなりドラ息子、ドラ娘化が進行している
とみます。さらに進行すると、「自分でしたら」と、生意気なことを言うようになります。ドラ息子化
を防ぐためには、家事をどんどん手伝わせること。子どもは、使えば使うほどよい子になりま
す。

Q 重い荷物をもったあなたを、手伝いにきますか?

 子どもの前で重い荷物を、苦しそうに運んでみてください。そのとき子どものほうから、「もっ
てあげる!」と言って、やってくればよし。そうでなく、知らぬふりをしたり、見て見ぬふりをして
いるようであれば、かなりのドラ息子、ドラ娘とみます。さらにドラ息子化が進むと、頼んでもい
やな顔をするばかりで、手伝おうともしません。人は自分で苦労して、はじめて他人の苦労の
わかる人になります。子どもも同じ。よく「子どもに楽をさせることが、子どもを愛することだ」と
思っている人がいますが、これは誤解。苦労のわかる子どもにする……。それが子育ての基
本一つです。

Q お小遣いは、一〇〇倍にしていますか?

 年長児から小学二年生ぐらいにかけて、子どもの金銭感覚は完成します。その金銭感覚
は、おとなのそれとほぼ同じになるとみてようでしょう。それと同時に、子どもは、お金で自分の
欲望を満足させる、そのさせ方まで覚えてしまいます。そこでコツ。子どもに買い与えるもの
は、約一〇〇倍して考えます。たとえば一〇〇円のものは、おとなの一万円。一〇〇〇円のも
のは、一〇万円と……。この時期に、一万円や二万円のものを、ホイホイと買い与えている
と、やがてその子どもが高校生や大学生になったとき、一〇〇万円や二〇〇万円程度のもの
を買い与えないと満足しなくなります。

Q 子どもの名前を、大切にしていますか?

 子どもに「自分を大切にしようね」と言っても、あまり意味がありません。具体性がないからで
す。そういうときは、「名前を大切にしようね」と教えます。そして子どもの名前の出ているもの
は、新聞でも雑誌でも切り抜いて、高いところやアルバムに張ったりして、大切にします。その
とき、「いい名前だ」「すばらしい名前だ」と言うようにします。子どもは自分の名前を大切にする
ことで、自分を大切にすることを覚えます。自尊心もそこから生まれます。なお家庭や教育の
現場で、子どもの名前をからかったり、茶化したりするのは、タブーです。

Q ペットなど、動物の死を大切にしていますか?

 命の大切さは、「死」を通して教えます。たとえばペットにせよ、どんな動物にせよ、それが死
んだら、その死をていねいに弔(とむら)います。そこであなたのお子さんはどうでしょうか。ペッ
トなどが死んだとき、それを心から悲しみますか。もしそうなら、それでよし。そういう気持ちが、
命を大切にする気持ちにつながります。しかし反対に、生きものを平気で殺したり、もてあそん
でいるようであれば、心のどこかにキズがないかを疑ってみてください。心にキズがある子ども
は、たとえば昆虫の頭をもぎって遊ぶなど、ぞっとするようなことを平気でしたりします。

Q 園や学校の先生の話を、楽しそうにしますか?

 人間の心は、鏡のようなものですね。こちらが相手をよい人だと思っていると、相手もまたあ
なたのことをよい人だと思っているものです。お子さんと園や学校の先生との関係も、そうで
す。「今日、先生は、どんな話をしたかな?」と問いかけてみてください。あなたのお子さんが、
先生の話を楽しそうにするなら、それでよし。しかし先生の話になると、突然顔を曇らせたり、
不愉快な表情をするようであれば、要注意。先生の悪口を並べるときもそうです。子どもの前
では、「あなたたちが悪いからでしょ」とたしなめながらも、一度、先生と話し合いの場をもって
みてはどうでしょうか。

Q お子さんと、机の相性はあっていますか?

 相性の悪い机だと、それが長い時間をかけて、子どもを勉強嫌いにしてしまうこともありま
す。そこでこんなことを観察してみてください。あなたの子どもが学校から帰ってきたとき、どこ
で体を休めるか、をです。子どもは(おとなも)、無意識のうちにも、一番居心地のよいところ
で、体を休めます。そこを勉強部屋にすれば、勉強が好きになる……というわけです。あるい
は反対に、子どもの机の上に、子どもの好きな食べ物を置いてみてください。そのとき子ども
が机に座ってそれを食べればよし。別の場所にわざわざ移して食べるようであれば、その机は
子どもとの相性がよくないとみます。

Q おとなになることを、楽しみにしていますか?

 「おとなになったら、何になるかな?」と、問いかけてみてください。そのとき、目を輝かせて、
あれこれ夢や希望を話せばよし。そうでなく、顔を曇らせたり。「なりたいものがない」と言うよう
であれば、注意。「明日は今日より、よい世界になる」という、前向きな姿勢が子どもを伸ばしま
す。子どもの未来を脅したり、不安にさせるようなことを言ったりするのは、タブー。今、小学校
の高学年児で、「中学校に入りたくない」と言う子どもがふえています。兄や姉のはげしい受験
競争を見ている子どもほどそうで、赤ちゃんがえりならぬ、幼児がえりを起こしたりします。

Q 何か新しいことができるようになったとき、自慢しますか?

 何か新しいことができるようになったとき、「見て、見て!」と言って、あなたにそれを自慢しま
すか。もしそうなら、それでよし。あなたの子どもは、前向きにどんどんと伸びていきます。幼児
期から小学生の間は、むしろうぬぼれ気味にさせるのが、子どもを伸ばすコツです。「もう、そ
んなことができるの!」「すごいわね!」と、子どもの成長を喜んでみせてください。が、反対
に、「まだできないの?」「いつになったらできるの?」は禁句。あなたの子どもは、(できない)
→(逃げる)→(ますますできなくなる)の悪循環の中で、伸びることを止めてしまうかもしれませ
ん。

Q あなたの子どもは、一芸をもっていますか?

 「勉強一本!」という子どももいますが、このタイプの子どもは、一度勉強でつまづくと、あとは
坂をころげ落ちるように、成績がさがったりします。そういうときのため……、というだけではあ
りませんが、子どもには一芸をもたせます。「これだけは誰にも負けない」というのが、その一
芸です。まわりの子どもたちからみて、「これだけは、あいつしかいない」という状態にします。
この一芸は、子どもを側面から支えるのみならず、その一芸が、やがて子どもの「柱」になるこ
ともあります。ただしゲームがうまいとか、カードをたくさん集めているというのは、一芸ではあり
ません。

Q あなたの子どもは、大声で笑いますか?

 園や学校での様子を観察してみてください。あなたの子どもが、皆の中でも、大声でハハハと
笑っていれば、よし。しかし皆の中でも、大声で笑えず、クックッと小さい声で笑うとか、どこか
萎縮した様子があれば、子育てのあり方そのものを大きく反省してみてください。過干渉(子ど
もの心や気持ちまで親が決めてしまう)、過関心(子どもの行動に神経質になる)になっていな
いか、など。おうちの方の情緒不安(ときどきカッとなって、激しく叱る)は、百害あって一利な
し。明るく、はつらつとしているのが、子どものあるべき姿です。そういう前提で、子育て全体を
見なおします。

Q 子どもに、正しい言葉で話しかけていますか?

 乳幼児期の言葉環境が、その子どもの国語力の基礎となります。たとえば「かばん、カバン、
もって!」ではなく、「あなたはカバンをもちます」と、正しい言い方で話しかけてみてください。さ
らに「すごい、すごい」ではなく、「すばらしい」「すてきですね」「きれいだね」など、一つのことを
いろいろな言い方でしてみせます。さらに子どもが文字を覚え始めたら、「お・と・う・さ・ん」と、
音を一つずつ区切って発音してみせます。こうした積み重ねがあって、子どもは、作文が好き
になり、さらには論理的にものを考えることができる子どもになります。

Q 誰かを喜ばすことを、教えていますか?

 やさしい子どもにするコツ、それは「誰かを喜ばす喜び」を、教えることです。たとえばお店で
お菓子を買うときも、「これを妹の○○に分けてあげると、妹は喜ぶわね」「お父さんにこれをも
っていってあげると、喜ぶわよ」と、です。そして「他人を喜ばすことは、結局は自分にとっても
楽しいことだ」とわからせます。言い換えると、人にやさしい人というのは、そういう行為が自然
にできる人のことを言います。やさしい人というのは、一見、損ばかりしているように見えます
が、いつの間か、そのまわりに、たくさんの人が集まるようになります。それこそまさに本当の
財産、ですね。

Q あなたは、お子さんを愛していますか?

 たいていの人は、「愛している」と答えます。しかし……。子どもを自分の支配下において、思
い通りにしたいという愛もあります。これを代償的愛といいます。いわば「愛もどきの愛」という
ことになります。親の見栄やメンツのために、子どもを「よい学校(?)」に入れたがるというの
が、それです。子どもへの愛の深さは、どこまで「許して忘れるか」、言い換えると、子どもをど
こまで自分の中に受け入れるかで、決まります。もちろん子どもに好き勝手なことをさせろとい
うことではありません。子どもにどんなに問題があっても、自分のこととして、受け入れてしまう
ということです。

Q 幸福な家庭を見せていますか?

 子どももいつかおとなになり、家庭をもちます。そのときのために、「幸福な家庭とはどういう
ものか」「父親や母親は、どうあるべきか」を、しっかりと子どもに見せておきます。見せるだけ
ではなく、子どもの体の中に染み込ませておきます。夫婦が仲よく生活する姿、助けあい、いた
わりあう姿など。子育ての基本は、子どもを育てることではありません。子どもに、子ども(あな
たから見れば孫)の育て方を教えるのが、子育てです。「あなたが親になったら、こういうふうに
子どもを育てるのですよ」「こういうふうに子どもを叱るのですよ」とです。

Q 新しいことに、積極的に取り組もうとしますか?

 何か新しいことをさせてみてください。そのとき、「やる!」「やりたい!」と食いついてくればよ
し。そういう前向きな姿勢が、子ども自らを伸ばします。好奇心の旺盛な子どもほど、行動力も
あり、趣味も多芸多才。一人で遊ばせておいても、身の回りから次々と発明していきます。が、
反対に、「いやだ」「やりたくない」と逃げるようであれば、日ごろの子どもへの接し方を反省して
みてください。「あなたはダメな子」式の、暗いイメージを与えるのは禁物。あなた自身が、「うち
の子は何をしてもダメ」と思っているなら、あなた自身の心を作り変えます。子どもは親がもっ
ているイメージどおりの子どもになります。

Q あなたは自分の子どもを信じていますか?

 あなたが子どもを連れて、通りを歩いていたとします。そのとき向こうから、学校時代の友人
がやってきました。久しぶりの対面です。そのときその友人が、あなたの子どもをしげしげと見
て、「いくつかな?」と聞いたとします。そのとき自分の子どもに自信のある親は、「まだ五歳で
す」と、「まだ」という言葉を使います。しかし自信のない親は、顔をしかめながら、「もう五歳な
んですがねえ」と言います。親に信じられている子どもは、表情も明るく、伸びやかです。親も
子育てを楽しんでいます。それが「良」循環となって、子どもはますます伸びていきます。

Q 会話を子どもに、任せていますか?

 典型的な過干渉ママの会話。私、子どもに向かって、「この前の日曜日は、どこへ行きました
か?」、母親、子どもの会話をさえぎりながら、「おばあちゃんの家へ行ったでしょ。だったら、
そう言いなさい。……どうしてはっきりと言えないの。言いなさい」と。子どもを信じられないとい
う不信感が、母親をして、過干渉ママにします。一方子どもは子どもで、ますます表情が暗くな
っていきます。あとはこの悪循環。子どものことは子どもに任す。そういう一歩退いた姿勢が、
子どもの自立をうながし、子どもをたくましい子どももにします。

Q 「あなたはいい子」を、口グセにしていますか?
 
 子どもは、親の口グセ通りの子どもになります。「うちの子はいい子だ」と思っていると、その
通りに。反対に「うちの子はダメな子だ」と思っていると、やはりその通りになります。ですから
子どもに向かっては、「あなたはいい子」「あなたはすばらしい子」を口グセにします。子どもと
いうのは、自分を認めてくれる人の前では、よい面だけを見せようとします。つまりそういう子ど
もの性質をうまく利用して、子どもを伸ばします。ただしほめるのは、やさしさと努力。スタイル
や顔は、ほめないようします。「頭」については、ほめてよい場合と、そうでない場合があります
ので、慎重にします。

Q 子どもの気持を確かめながら、行動していますか?

 おけいこを始めるとき。おけいこをやめるとき。そのつどお子さんの気持を確かめながら、行
動していますか。親意識、つまり親子の間の上下意識の強い人ほど、「私が親だから」「子ども
のことは、私が一番よく知っている」と、子どもの気持を確かめることなく、親が何でもかんでも
勝手に決めてしまいます。一方的に、です。しかしこういう姿勢は、親子の間に大きな亀裂を入
れることになります。しかもあなたが気づかないうちに、です。子どもは、自らに由(よ)らせま
す。自分で考えさえ、行動させ、責任を取らせます。それが「自由」の本当の意味です。

子どもの心理テスト(付録)
心理テスト

 こんな心理テストを考えてみた。以前、何かの本で読んだテストだが、それを参考に、子ども用(小学生用)に、つくりなおしてみた。

「一人の女の子が、夜遅くまで、ネコさんと公園で遊んでいました。お母さんは『早く帰っておいで』と言ったのですが、ネコさんが、『もっと遊ぼう』と言って、女の子を帰してくれませんでした。が、あたりがまっ暗になったので、ネコさんと別れて、家に帰ることにしました。女の子が家に向かって歩いていると、橋の上に、オオカミがいました。そこで女の子は、橋の近くに仲のよい犬さんが住んでいたのを思い出し、犬さんの家に行き、一緒に行ってほしいと頼みました。犬さんは、『夜はこわいからイヤだ』と言って、それを断りました。しかたないので、女の子は、橋を走って渡ることにしました。が、女の子は、オオカミにつかまり、食べられてしまいました」

 この文を子どもの前で、ゆっくりと二度読み、「このお話の中で、一番悪いのはだれかな」と聞いてみる。子どもが、「悪い」と言った相手によって、子どもの心理を知ることができる。

ネコ……ものの考え方が受動的。依存心、依頼心が強い。行動も追従的かつ服従的。
犬……正義感が強く、ものの考え方が積極的。クラスでもリーダー的な存在。
オオカミ……単純。ものごとを深く考えない。短絡的なものの考え方をする。
女の子……善悪の倫理観が強く、自分を律する力が強い。責任感も強い。

 低学年児ほど、ネコ、オオカミが悪いと答え、高学年になればなるほど、犬、女の子が悪いと答えるようになる。※

 なお子どもの善悪の判断力は、年中から年長児にかけて、急速に発達する。こんなテストをしてみると、それがわかる。

 「男の子が歩いていると、お金を拾いました。その男の子は、そのお金でアイスを買って、公園でみんなに分けてあげました。みんなは、『ありがとう』と言って、喜んで食べました。この男の子は、いい子ですか、悪い子ですか」と。
 このテストをすると、年中児のほとんどは、「いい子」と答える。年長児でも、三〜四割の子どもは、「いい子」と答える。しかしその段階で、「お金を拾ったら、そのお金はどうしますか?」「拾ったお金をつかってもいいのかな?」「アイスを、子どもが勝手に食べてもいいのかな?」「お母さんが、食べてもいいと言っていないものを、食べてもいいのかな?」などと問いかけると、ほとんどの子どもは、「やっぱり悪い子だ」と言う。もっともこうした道理がわからない子どもも、年長児で一〜二割はいる。日常的に、静かに考える習慣のない子どもとみる。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

心理テスト(2)

先のテストで、小四〜中学生、二〇人の子どもの意見を聞いてみた。
「犬が悪い。いっしょに女の子についていってあげなかったから。女の子が困っているのだから、ついていってあげるべきだった」(小四女子)
「ネコが悪い。夜遅くまで遊んでいた。女の子をもっと早く、家に帰してあげるべき」(小四女子)
「女の子が悪い。ネコさんの挑発にのったのが悪い。ネコさんにもっとはっきりと断るべきだった。ネコというのは、オオカミとグルかもしれない」(小四男子)
「ネコが悪い。自分勝手だと思う。女の子としつこくいっしょに遊ぼうとした。だからオオカミに食べられてしまった」(小四女子)
「ネコが悪い。夜遅くまで遊んでいたから」(小四女子)
「オオカミが悪い。女の子を食べたから」(小四男子)
 最後の男の子が、「オオカミが悪い」と発言したら、いっしょにいた小四の子どもたち全員(五人)が、「タンジュ〜ン(単純)!」と声をあげた。これもひとつの意見と考えてよい。
「女の子が悪い。帰ろうと思えば帰れたのに、帰らなかったのは女の子の責任」(小五男子)
「ネコが悪い。女の子が帰りたいと言ったのに帰してあげなかったので、ネコが悪い。女の子の責任ではない」(中一女子)
「女の子が悪い。自分の意思で帰らなかった女の子が悪い。オオカミに食べられたのは、自業自得。しかたのないこと」(中三男子)
「オオカミが悪い。女の子を食べたのはオオカミ。何といってもオオカミが悪い」(中三女子)

ほかに、一五人(小六〜中一、計二五人)の集計を加えると、結果はつぎようになった。
  女の子……10人(40%)
              ネコ …… 8人(32%)
              オオカミ… 5人(20%)
              イヌ …… 2人( 8%)、ということになった。