はやし浩司

参考資料
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参考資料

子育て診断などと併用して、お使いください。

この資料は、以下の書籍を参考に、はやし浩司が、
一般の方の子育てに応用できるように、
私自身の体験もまじえ、まとめたものです。

現代幼児教育小辞典 (風媒社)
教育相談辞典 (金子書房)
児童心理学辞典 (協同出版株式会社)
教育学小辞典 (金子書房)
幼児の用語 (日本放送出版協会)
教育データランド (時事通信社)
教育心理学小辞典 (有斐閣)
心理学中辞典 (北大路書房)
教育心理学用語辞典 (学文社)

●伸びる子

 伸びる子どもには次のような特徴があります。「伸びる子」というのは、たくましく前
向きに自立していく子ども、という意味です。勉強ができる、できないは、その結果でし
かありません。

★好奇心が旺盛
 次々といろいろな遊びを自分で発見したり、創作したりします。趣味や関心ごとも常に
変化し、多様です。好奇心の弱い子どもは、一人で遊ばせたりすると、「退屈だ」を連発
します。

★忍耐力がある
 幼児の場合、忍耐力というのは、「いやなことをがまんしてする力」のことをいいます
。たとえば台所の生ゴミを手でしまつできるか。寒い夜、隣の家に回覧板を届けることが
できるかどうかで判断します。この忍耐力が、将来、自立を支える、その原動力となりま
す。反対にこの忍耐力がないと、たとえば学習面でも、(しない)→(できない)→(い
やがる)→(しない)の悪循環の中で、伸び悩みます。

★生活力がある
 ある男の子(年長児)は親が急用で家を留守にしたとき、妹の世話から、食事の世話、
戸締り、消灯など、すべて一人で立派にやりこなしました。生活力のある子どもというの
はそういう子どもをいいます。臨機応変に、その場の危機に対処できる力のことを生活力
といいます。子どもは、家事の手伝いを通して、生活力を身につけます。そのためにも子
どもは、どんどん使います。「子どもに楽をさせるのが、親の愛」などというまちがった
幼児教育観があれば、それを改めます。

★思考が柔軟
 子どもらしいいたずらが得意で、時に、親をはっとさせます。食パンをくりぬいてトン
ネルごっこ。スリッパをつなげて電車ごっこ、など。反対に頭のかたい子どもは、一度殻
(から)に閉じこもると、その殻から抜け出ることができません。この時期、がんこにな
ったり、殻に閉じこもるのは好ましいことではありません。たとえばある男児 (小三)は
、教室でもある特定の席でないと座りませんでした。どんなに説得しても、がんとしてそ
れに応じませんでしたが、そういう子どもをがんこな子どもといいます。子どもらしいは
つらつさが消え、心にモヤがかかったような状態になります。




●チック症

 チックはクセではありません。習慣性攣(れん)縮ともいい、一群の筋肉の無目的な運
動をいいます。

★首から上に出る
 首をギクッギクッと不規則にひねる、顔をしかめる、鼻をならす、頭を上下にガクッガ
クッと動かす、のどをつまらせる、のどをウッウッとうならせる。口をゆがめる、不自然
な咳ばらいをする、目をまばたきさせる、目を白黒させる、眼球をクルクル動かすなど、
その症状は主に首から上に出ます。これといった定型がないのが特徴で、つばをペッペッ
とはく、つばを服のそでにこすりつけるというのもあります。チックが原因で目ヤニがた
まって、慢性的な結膜炎になった子どももいます。おかしなクセだなと思ったら、このチ
ックを疑ってみます。そのほとんどは一種類のものですが、まれに複合的に起きたり、あ
るいは腹部や胸部のけいれん運動、さらには全身のけいれん運動となることもあります。


部位    症状                            

目の周辺  目をまばたきさせる、目を白黒させる、眼球をクルクルと回す 

呼吸器の周辺 のどを詰まらせる、ウッウッとうなる、咳ばらいをする
          喉の奥で空咳をする、ハッハッとため息をつく        

口の周辺  つばをはく、つばをそでにこすりつける            

首、頭全体 ギクッギクッと首をひねる、首を回す、頭を上下に動かす 

そのほか  肩から頭部にかけて瞬間的にけいれんする、腹部をはげしく上下にけ
        けいれんする、全身を瞬間的にけいれんする、胸部がけいれんするケー
        スでは呼吸困難になることもある                

★原因
 一般的には一人っ子に多いとされますが、それは一人っ子であるため、それだけ親の期
待が大きいことが原因として考えられます。背後に親の拘束的かつ権威主義的な過干渉が
あることが多いのですが、たいていの場合、親にその自覚がないことが、この問題の解決
を遅らせます。

★時と場所を選ばず出る
 チックは時と場所を選ばず起こります。親が注意した直後は、子どももそれを気にして
、チックは一応おさまったかのようになりますが、子ども自身がふと気を抜いたようなと
きに、また始まります。テレビを見ているとき、本を読んでいるときなど。時と場所を選
ばないのが特徴です。これをチックの不随意性といいます。

★快感をともなわない
 クセには、それをすることによる快感がともないますが、チックにはそれが感じられま
せん。親の目から見て、「どうしてそんなことをするのかわからない」という行為が続い
たら、チックを疑ってみます。

★幼児期に始まり、数年続く
 チックの多くは幼児期から七〜八歳前後をピークとして発症し、一度チック症になると
、数年、あるいはそれ以上の期間、続くのがふつうです。子どもが中学生になっても、チ
ック様の動きがクセとなって残ることもあります。

★ほかの神経症を併発することが多い
 チックに合わせて、ほかの神経症による症状を併発することもあります。家庭環境の大
きな変化、極度の緊張感などが原因となって、そうなります。よく見られる併発症状とし
ては、分離不安、腹痛、下痢など。以前からのチックに、別の新しいチックが加わること
もあります。
 
★重大な情緒障害(精神障害)の前兆としてのチック
 チックに合わせて、被害妄想、睡眠障害(寝られない、早起きするなど)、激しい暴力
行為、あるいは反対に引きこもりなどの症状が出たら、なんらかの情緒障害、あるいは精
神障害の前兆と考えて対処します。決して安易に考えないこと。チックが小児躁うつ病の
初期症状として現れることもあります。チックが次々と複合的に重なったり、腹部のけい
れんに合わせて呼吸困難になるなど、動作が大きくなる傾向をみせたら、小児精神科医に
相談します。




●孤立恐怖症(分離不安症)

 親の姿が見えなくなると、混乱するタイプ (分離不安)と、一人でテレビが見られない
、一人でトイレへ行けないなど、自立した行動ができないタイプ (孤立恐怖)に分けて考
えます。さらに大声をあげてギャーッと泣き叫ぶタイプ(プラス型)と、思考そのものが
混乱状態になり、オドオドとしてしまうタイプ(マイナス型)の二つに分けて考えます。


★心の傷
 孤立恐怖症の子どもの過去をみていくと、必ずと言っていいほど、その原因となった事
件があるのがわかります。大きな家庭騒動、離婚騒動など。母親が病気で入院したのが原
因で、孤立恐怖症になった子どももいますし、置き去り、迷子などを経験して、孤立恐怖
症になった子どももいます。母親が感情的に冷たい人で、それが原因で孤立恐怖症になっ
たのではないかと思われるケースもあります。育児拒否、虐待、暴力など、親の拒否的態
度が、子どもの心に大きな傷を残すことはよく知られています。

★誰にでもある情緒不安の「種」
 孤立恐怖症に限らず、どんな子どもでも、その条件が重なれば情緒不安になると考えま
す。要はその引き金を引かないこと。またそうなったからといって、自分の子どもだけが
特別だと思わないこと。この孤立恐怖症について言えば、同じような状況になったとき、
過去の捨てられたという恐怖感が、分離不安となって、よみがえるために起こる症状と考
えるとわかりやすいでしょう。うつ型児童特有の、被害妄想の一つと考えて対処します。


★叱っても無駄
 心の傷は、一度それがつくと、簡単にはなおりません。数年、あるいはなんらかの形で
一生続くと考えます。だからあせってなおそうと思わないこと。そのままを認め、そのま
まの状態でよりよい状態をめざすのが、コツです。無理をすればするほど、症状はこじれ
ます。「どうせ相手は子どもではないか……」と安易に考えるのは禁物です。

※孤立恐怖症……孤立恐怖症という言い方は一般的ではありません。ふつうは分離不安、
もしくは分離不安症と言います。




●多動児

 集中力が欠如しているという意味で、正確には集中力欠如型多動性児(ADHD)とい
います。日本では教育第一主義でこれらの子どもに対処していますが、アメリカでは特別
な施設に分離した上、積極的に薬物治療を試みています。出現率はたいへん高く、問題と
なる他動児は、20〜30名に一人。その傾向のある子どもとなると、15〜20名に一
人の割合で経験します。

★原因
 脳の機能的障害によるものと位置づける学者は多く、またそういう視点をもたないと、
このタイプの子どもには対処できません。

★症状
 本文の中にも書いたように、多動性、多弁性に合わせて、抑えがきかないというのが最
大の特徴で、無遠慮、無警戒、無頓着、無関心などの多動児特有の、常識をはずれた行動
が目立ちます。静かな秩序になじまず、秩序そのものを破壊してしまうことが多く、近年
、学校の教育現場でも大きな問題になりつつあります。

★対処法
 その症状がはっきりしてくると、親ははげしい暴力や威圧によって、子どもを抑えよう
としますが、それがかえって子どもの中に免疫性をつくってしまい、幼稚園や保育園に入
園するころには、かえって手がつけられない状態になってしまいます。できるだけ初期の
段階でそれに気づき、精神科医とも相談して治療にあたるようにします。時期がきて、子
ども自身がセルフコントロールできるようになるまで、根気よい指導が必要です。年齢と
ともに症状はおさまってきますが、ふつうでない騒々しさは、おとなになっても残ること
があります。




●左利き

 世界的には人類の約5%前後が、左利きだといわれています。

★三〜四歳までに決まるきき手
 一般的には乳幼児期には左利きが多く、成長とともに減少し、三〜四歳までに利き手が
決まると言われています。利き手を調べるには、子どもがほしそうなものを手渡して調べ
ます。そのとき子どもがさっと出したほうの手が、利き手です。

★原因
 原因については、どちらか一方の大脳が優位にたっているという大脳半球優位説、親か
らの遺伝によるものだという遺伝説、生活習慣によって決まるという生活習慣説などがあ
りますが、定説はありません。

★男子に多い左利き
 女子より男子のほうに左利きが多いとされていますが、これは多分に生活習慣によるも
のと考えられます。男児の左利きはいいが、女児のそれは許さないという偏見が、その背
景にあるためと思われます。




●かん黙児

 通常の学習環境での指導が困難な、全かん黙児は、小学生で0.38%、中学生では0
.29%の出現率と言われています。

★場面かん黙児と全かん黙児
 ある特定の場面になるとかん黙するタイプ(場面かん黙児)、ある特定の条件が重なる
とかん黙するタイプ(条件かん黙児※)と、まったく話さなくなるタイプ(全かん黙児)
に分けて考えますが、ほかにふとしたことで気分をそこね、それが原因でかん黙してしま
うタイプ(気分型かん黙児※)などがあります。程度の差もありますが、この気分型かん
黙児も含めると、その傾向のある子どもとなると実際には、20名に一人ぐらいは経験し
ます。

★原因
 一般的には、無言を守り、対人関係を避けることにより、自分の保身をはかるために、
子どもはかん黙すると考えられています。これを防衛機制といいますが、幼児期に保育園
や幼稚園へ入園したときなどをきっかけとして発症することが多く、過度の身体的緊張が
その背景にあるものと思われます。かん黙状態になると、体をこわばらせる、視線をそら
す(あるいは反対に相手をじっと見つめる)、口をキッと結ぶ、無表情になるなどの緊張
状態になるタイプと、反対に、柔和な笑みを浮かべたままかん黙するタイプがあります。
後者のタイプの場合、決して笑っているのではなく、心と感情表現が遊離してしまったた
めに起こる現象と考えるとわかりやすいでしょう。
※条件かん黙児、気分型かん黙児……これらの用語は筆者の分類方法で、一般的ではあり
ません。




●虚言と妄想

 幼児教育の世界では虚言と空想性虚言(妄想)を分けて考えます。

★嘘を自覚しながら嘘をつく虚言
 自己防衛や自己正当化のため、嘘を嘘と知りつつ嘘をつくことをいいます。このタイプ
の子どもは、嘘をついているという自覚があり、その緊張感が外部に現れるので、それと
わかります。たとえばソワソワする、など。嘘をつくにあたって、それなりの理由や目的
をもって嘘をつきます。

★意味のない嘘を並べる虚言癖
 嘘をつく必要のないことまで、ペラペラと軽い口調で嘘をつきます。本人にも嘘をつい
ているという自覚がないのがふつうで、またそれだけに自分の嘘をすぐ忘れてしまいます
。「この前はこう言ったじゃないか!」などと問いつめたりすると、「ああ、そうだった
」などと返事したりします。

★事実を知らないまままちがえてものを言う虚言
 ものごとを誤解したり、事実を誤認したり、推測によってものを言うタイプで、嘘を嘘
と自覚しないまま嘘をつくタイプです。自己中心性の強い子どもによくみられる現象で、
頭の中で「こうだ」と決めてかかって嘘をつきます。一度こういうクセが身につくと、そ
れがその子どもの、ものの考え方の基本になってしまいますから、注意が必要です。俗に
、「思いこみのはげしい子ども」というときは、このタイプの子どもをいいます。

★虚構の世界を頭の中につくり、嘘と自覚しないまま嘘をつく空想性虚言(妄想)
 現実と空想の間の垣根がなく、現実の中に空想を混入したり、反対に空想の世界に限り
ないリアリティ(現実感)をもちこもうとします。そして一度自分の頭の中に、虚構の世
界をつくりあげると、それをあたかも現実のできごとであるかのように、嘘を嘘と自覚し
ないまま嘘を言い続けます。こまかいところまで辻つま合わせをするのが特徴で、まさに
「ああ言えばこう言う」式の嘘を、シャーシャーと言い続けます。以前、「私はイタリア
の女王」と、すっかりイタリアの女王になりすましていた女の子(年長児、オーストラリ
ア)がいました。なおイギリスの諺に、「子どもを空中の楼閣に住まわせてはならない」
というのがありますが、これは「空想するのは子どもの自由だが、空想と現実の区別がつ
かないようにさせてはならない」という意味です。




●自我

 自我についていろいろ言われていますが、自我の強弱によって、子どもの様子は次のよ
うに変化すると考えると、わかりやすいでしょう。この表はフロイト学説を参考に、筆者
がまとめたものです。
 本来自我は、どの子どもにも平等に備わっているものです。従ってその自我は伸ばす・
伸ばさないという視点ではなく、子どもから引き出す・引き出さないという視点でとらえ
るようにします。あるがままに子どもを育てれば、子どもは自我の強い子になりますし、
反対に、強圧(なにかにつけて無理強いをする)、威圧(親意識が強く権威主義的な子育
てをする)、過干渉、溺愛、過保護が日常化すれば、子どもは自我の軟弱な子になります。
  
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            自我が強い子(プラス型)        自我が弱い子(マイナス型) 
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 行動能力       ものごとに攻撃的になり、積     ものごとに防衛的になり、消 
            極的になる。「やる! やる       極的になる。「いやだ」「つ 
            !」という言葉が、子どもの       まらない」という言葉が、多 
            口からよく出てくる。           くなる。          
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 現実感覚       現実感が強く、ものの考え方    ものの考え方が、非現実的に 
            が現実的になる。頼れるのは     なり、空想や神秘的なものに 
            自分だけというような考え方      あこがれや期待を抱いたりす 
            をする。                  るようになる。      
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 趣味の方向性    将来に向かって創造的な趣味    一時的な快楽を求める傾向が 
           が多くなる。たとえば「お金         強くなり、趣味も退行的かつ 
            をためて、楽器を買う」「友        非生産的になる。たとえばモ 
            だちの誕生日のために、船の      デルガンを集める、タバコを 
            模型を作る」など。             吸ってみるなど。      
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 衝動的行為      ほしいものがある。目の前に     衝動性が強くなり、ほしいも 
            お金がある。こういうとき、         のに対して、ブレーキがきか 
            セルフコントールができ、自        なくなる。盗んだお金で、ほ 
            分の行為にブレーキをかける       しいものを買っても、欲望を 
            ことができる。自制心が強く        満足させた喜びのほうが、強 
            、お金に手を出さない。          く、悪いことをしたという意 
                                    識が生まれない。    
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●過敏児

 心理反応が過剰な子どもを敏感児といいますが、その程度がさらに越えた子どもを過敏
児といいます。一般的には精神的過敏児と身体的過敏児に分けて考えますが、ここでは精
神的過敏児について考えます。次のような症状をともないます。

★刺激に対して、感受性と反応性が強い。
★耐久性に乏しく、もろい。
★過敏のため不適応状態。集団や社会生活になじめない。そのため体質的疾患(自家中毒
、喘息、じんましん)や精神身体症、神経症を起こしやすい。
★症状は、一過性、反復性、可逆性にあらわれる(高木俊一郎氏)。

 鈍感児(頭が鈍感という意味ではありません!)は、ちょうどこの反対のタイプの子ど
もと考えるとわかりやすいでしょう。次の表は、それをまとめたものです。

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        過敏児                   鈍感児             
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 タイプ    見るからに繊細な感じがして、動   映画の『寅さん』(渥美清)タイ 
        作も言葉も、どこか痛々しい感じ    プ。(ただし寅さんには、渥美清 
        がする。はつらつとした覇気がな    という名優のデリケートさが混在 
        く、静かで穏やか。            している。)          
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 刺激に対する 先生の指示などに対して、ピリッ    どことなくガサツな感じがして、 
 反応     ピリッと反応し、教える側のほう     存在感がある。その子どもがいる 
        が気が抜けない。ささいなことを      だけで、雰囲気が変わる。★   
        クヨクヨと気にする。★                     
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 精神的疲労  精神的疲労に弱く、ほんの少しの    精神的疲労に強く、ものごとにあ 
        時間神経を使っただけで、神経疲      まりこだわらない。「馬鹿」と言 
        れ(腹痛、頭痛、下痢、はく息が わ     れても、「お前ほどではないよ 
        臭くなるなど)を起こしやすい。        」と言い返し、その場で笑ってす 
                                   ますことができる。★      
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 方向性    集団行動が苦手で、一人で勝手に    集団行動を好み、統率力もある。 
        なにかをすることを好む。繊細な       ものごとを万事、おおざっぱにす 
        感覚を生かした趣味、職業に向い      る傾向が強く、こまかい手作業な 
        ている。                     どは苦手。           
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 ただし注意しなければならないことは、過敏児も鈍感児も、それぞれが仮面をかぶるこ
とがよくあるということです。人は自分の弱点を隠すために、わざと正反対の性格を演じ
てみせることがよくあります。たとえば「私は、こまかいことはクヨクヨ悩まない性分な
の」と笑ってみせる人ほど、神経質であったりするなど。見た目の過敏性、鈍感性だけで
判断はできません。人前ではヘラヘラしていても、家へ帰ると、そのことであれこれとク
ヨクヨ悩むタイプの子どもはいくらでもいます。

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●ツッパル子ども

 ツッパル子ども、必ずしもイコール非行少年ではなく、その反対に、非行少年イコール
、ツッパル子どもというわけではありません。たとえば九五年度中に、万引きで補導され
た子どもは、全国で三万人以上いますが(実際には氷山の一角)、これらの子どもがすべ
てツッパっているというわけではありません。ふだんはまじめで几帳面な子どもが、ある
日突然、万引きに走るというケースは珍しくありません。
 さらにツッパルと言っても、症状が家庭内だけに収まっているケースもありますし、反
対にかなりツッパっていても、親は「ふつうだ」と思っているケースもあります。ツッパ
ル子どもには次のような特徴が見られます。

★拒否的態度
 「ジュースを飲む?」と声をかけても、「うっせえ〜」と言い返すなど。よく観察する
と拒否するというよりは、自分の心にフタをしていて、条件反射的に拒否しているのがわ
かります。ジュースがほしいかどうかを自分自身に問いかける前に、条件反射的にそれを
拒否するわけです。たとえば「鉛筆を持て」と言うと、鉛筆を机の上に置き、「鉛筆をも
たなくていい」と言うと、鉛筆をもつ、など。

★破滅的態度
 ものの考え方があらゆる面で投げやりになります。他人に対する思いやりや、他人の迷
惑について、無関心になります。飲んだジュースの空き缶を、そのまま玄関に置いたりす
るなど。「どうしてこんなところに置くの!」と叱っても、平然としています。それが悪
いことだという意識そのものがありません。

★自閉的態度
 「家族が迷惑すれば、結局はあなたが損をするんだよ」と話しても、このタイプの子ど
もにはそれが理解できません。また理解しようともしません。外部からの働きかけに無関
心になり、すなおに感動しなくなります。たとえば皆が「すばらしい」と喜んでいるよう
なときでも、「くだらねえ〜」と言って、吐き捨てるなど。横視現象といって、叱られた
ようなとき、視線を相手に合わせないという症状も、よく見られます。

★野獣的態度
 行動が動物的になり、ものの考え方が直情的かつ短絡的になります。動作も肩をいから
せて歩くなど、ツッパリ児独特の動作になります。日本でもアメリカでも、ツッパリ児と
言われる子どもが、ほぼ同じような動作パターン(肩で風を切って歩く、肩をすぼめて歩
くなど)を見せることから、私はツッパリ児は、脳の機能的障害によるものだと考えてい
ます。またそういう視点でないと、この問題は解決しません。

 なおツッパリ児の初期症状として、俗に言う「ひねくれ症状」あるいは「ヘソまがり症
状」が現れることがあります。たとえばなにか子どもが失敗したことについて、親が「あ
やまりなさい!」と言うと、「あやまればいいんだろ!」とか、「あやまったて、どうせ
許してくれないんだろ!」と言い返したりするなど。こと四〜六歳の幼児について言うな
ら、この時期というのは、「なんでも一人でしたい」という独立心と、「誰かにしてもら
いたい」という依存心が、はげしく交錯する時期と言えます。この独立心と依存心のバラ
ンスが崩れたとき、子どもは親の言うことを拒否するという形で、反抗を始めます。たと
えば「これを食べなさい」と命令すると食べないで、「食べなくてもいい」と命令すると
、食べる。「ママの言うことを聞きなさい」と命令すると、顔をプイと横へ向ける、など
。「一人でしたいと思っているのに、ママは命令する」という思いと、「してもらいたい
と思っているのに、してくれない」という不満が、子どもにそういう態度をさせます。
 子どもが反抗する背景に、頭ごなしの権威主義的な子育て観がないかどうかを、まず反
省します。あるいは親子のリズムがあっていないときもそうなります。親がなんでも先走
ってする、など。家庭崩壊が原因による崩壊児も同じような症状をみせます。ほかに愛情
不足なども反抗的態度の原因となりますが、要するに、心になんらかの不満因子があって
、それが形を変えて現れる症状と考えるとわかりやすでしょう。
 しかし反抗がすべて悪いというわけではありません。子どもは反抗を繰り返しながら、
自我(自分)を確立していきます。依存から脱却し、自立していくわけです。そんなわけ
で子どもの反抗は、成長過程においては、必要不可欠な成長要素と考え、おおらかに見守
るようにします。「子どもは生意気なのがあたり前」あるいは「子どもはうるさいのがあ
たり前」という大前提で、子どもを見守るようにします。この視点を見失ったとき、子ど
もの心は歪み始めます。

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●かんしゃく発作

 乳幼児の抵抗的な行動(突発的なはげしい怒り)を、かんしゃく発作といいますが、こ
こでいう『凶暴な子ども』とは、区別して考えます。
 乳幼児から幼児期にかけてのかんしゃく発作には、次のような特徴があります。たいて
いはささいな刺激がきっかけで、爆発的に起こるのが特徴で、原因の第一は、家庭教育の
失敗とみます。
 そこでかんしゃく発作は家庭教育の失敗で起こるとしても、それを強圧的な方法で抑え
こむことは、タブー中のタブーです。抑えこめば抑えこむほど、確実に子どもの心は歪み
ます。将来の情緒障害、あるいは精神障害の「引き金」を引くことなりますから、注意し
ます。

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 年齢        症状                           
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 満1歳前後   ○ダダをこねる★                     
           ○沈黙する★                       
           ○ぐずる、泣く★                     
 満1.5歳前後   ○手足をバタバタさせる※                 
           ○ムッとふくれる★                    
           ○年齢とともにより長時間、ふくれっ面をする        
           ○大声で泣き叫ぶ※                    
 満2歳ごろから ○言葉による抵抗、拒絶をする               
           ○ものにあたる、ものを投げる※              
           ○じだんだ踏む※★                    
           ○ところかまわず寝ころんで暴れる※            
           ○頭を自分の手で叩く                   
           ○柱や壁に自分の頭をぶつける               
           ○暴言をはく                       
           ○暴力を繰り返す                     
           ○顔色を変えて、体をけいれんさせる            
           ○無視、無言、視線を合わせない※             
 満4〜5歳    ○次第に症状が収まってくる                
                                        
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 これらの症状のうち、※印をつけた症状が、典型的な症状です。こうした症状が現れた
ら、子どもを責めるのではなく、家庭環境そのものに問題がないかを反省します。




●育児拒否

 母親だから子どもを愛しているはずだと考えるのは、正しくありません。今、夫にも言
えず、子どもを愛することができないまま、それで悩んでいる母親はいくらでもいます。
10人に一人ぐらいはいるでしょうか。「妊娠したのでいやいや結婚したが、そのためど
うしても自分の子どもを好きになれない」「大嫌いな義父そっくりの横顔をしているので
、好きになれない」など。愛していないことに気づかない親もいます。子どもを虐待した
り、暴力を振るったりする親は、たいていこのタイプの親と考えます。
 この状態がさらに進んだのが、育児拒否です。その拒否的育児環境に育った子どもは、
大きな心の傷を負うことがわかっています。カナーという学者は、育児拒否を次のように
定義しています。

★過度の敵意と冷淡
★完璧主義
★代償的過保護

 ここでいう代償的過保護というのは、愛情に根ざした本来の過保護ではなく、子どもを
自分の支配下において、自分の思いどおりにしたいという、親のエゴに基づいた過保護の
ことをいいます。その結果、子どもは、★愛情飢餓(いつも愛情に飢えた状態)、★強迫
的傾向(いつもなにかに強迫されているかのようにおびえる)、★情緒的未成熟(感情を
コントロールできない)などを引き起こし、さまざまな問題行動を引き起こすことがわか
っています。子どもの問題行動のほとんどは、この親の育児拒否が原因であると主張する
学者さえいます。
 なお親が育児拒否をする原因として、ホルネイという学者は、次の四点をあげています


★親自身が問題ないし障害をもっている場合。                   
★子ども自身が親の障害物になっている場合。
★子どもが親の期待どおりにならず、失望の種となっている場合。
★親が情緒的に未成熟であって、子どもが問題を解決するための手段となっている場合。


 ちなみに九七年度中に報道された、親によるせっかん死、無理心中、育児放棄、発作的
な殺人事件などは八八件にものぼり、一〇四人の子どもがその犠牲になっている。しかも
被害者の年齢は乳幼児に集中している(「子どもの虐待防止ネットワーク★あいち」調べ
)。もちろんこれらの事件は、まさに氷山の一角で、虐待だけについても、全国の児童相
談所に寄せられた相談件数は、九六年度中で四一〇〇件もあり、その数は年々、倍増して
いるという。
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●ストレス児と内弁慶

 ストレス児のことを、昔から、「内弁慶、外、幽霊」といいます。家の中ではいばって
いるのに、外では幽霊のようにおとなしいという意味です。原因は社会性の欠落のほか、
次のような問題点があげられます。
★社会性の欠落
 乳幼児期からの社会的訓練が不足し、社会性が身につかなかったためと考えられます。
親の過保護、過庇護、過関心が原因で、一般社会から隔離された家庭環境で育つ、など。
問題解決の技法としての喧嘩や争いができない子ども、ということになります。
 誤解があるといけないので、説明しておきますが、子どもは子どもどうしの争いや、喧
嘩を通して、社会性を身につけます。暴力を容認せよというわけではありませんが、子ど
もの成長過程においては、時と場合によっては、それも必要だということです。

★対人仮面症
 人前に出ると、仮面をかぶるタイプの子どもをいいます。外の世界で、いい子ぶるのが
特徴で、外の世界では「ものわかりのよい、いい子」という評価を受けます。参観日など
での様子を観察して判断します。このタイプの子どもは、外の世界ではたいへん疲れやす
く、その分、心のバランスをとるため、家の中で荒れます。私は以前、『子どもの心は風
船玉』という格言を考えましたが、これは「子どもの心というのは、どこかで抑えつける
と、そのひずみは必ず別のところで出てくる」という意味です。

★対人恐怖症
 人前に出ると、不必要に緊張してしまうタイプの子どもをいいます。人前ではオドオド
したり、冷や汗をかくことが多い。人前で緊張した分だけ、家に帰ると大きな精神的疲労
を訴え、腹痛、下痢、便秘などの身体的な不調を訴えることもあります。そういう症状が
出ると、親は、子どものわがままと決めつけて、無理をする傾向がありますが、無理をす
ればするほど、子どもの心は歪みます。

★集団不適応
 幼稚園児でも、遠足のような集団行動を楽しみにする子どもと、遠足のような集団行動
を嫌う子どもと、はっきりと二つのグループに分かれます。「子どもだから集団行動が好
きなはずだ」とか、「集団行動が嫌いなのは、集団に慣れていないからだ」と安易に決め
つけて考えるのは正しくありません。わがままな子ども、忍耐力の不足している子ども、
自分勝手な子ども、自閉傾向のある子どもなど。このタイプの子どもは集団の中で、気疲
れを起こしやすく、その分、家の中で荒れたり、反対にぐずったりします。

 ただし以上のような症状は、小児うつ病の初期症状として現れることもあるので、警戒
します。これらの症状に合わせて、神経症と思われる症状や奇異な行動があ
れば、叱ったり威圧して症状をこじらせる前に、専門家に相談します。




●排尿障害

 夜尿症、頻尿症のほか、幼児には次のような排尿障害が見られます。原因は、排尿、排
便のしつけの失敗ですが、さらにその原因は何かというと、近年飛躍的に使い勝手がよく
なった使い捨てオムツ(通称、紙オムツ)が疑われます。
 乳幼児は排尿、排便後の不快感を通して、排尿、排便感覚を養いますが、高性能(?)
の紙オムツではその不快感を感じないため、ここでいう排尿、排便障害を引き起こすよう
になると考えられます。紙オムツは便利ですが、そんな弊害もあることを念頭においた上
で、使用します。

★排尿拒否
 幼稚園や保育園では排尿、排便ができず、最後の最後までがんばってしまう。顔が青ざ
め、体が震えているのに、がまんして家へ帰った子どももいます。あるいはがまんできず
、途中でもらしてしまうなど。親は一方的に、「どうしてトイレに行かなかったの!」と
叱りますが、根はもっと深いところにあります。おもらしがたび重なるようであれば、こ
の排尿障害を疑ってみます。

★遺尿、遺糞
 排尿、排便の意識がないまま、尿や便をもらしてしまう。まったくそのそぶりも見せな
いまま、排尿、排便してしまうのが特徴です。幼稚園などでも、お絵かきをしながら、シ
ャーッともらすなど。隣の子どもがそれを指摘してはじめて、もらしたのがわかったりし
ます。三〜四歳児によく見られます。




●発音障害 (発語障害)

 ふつう言語障害というときは、構音障害(発音★発語障害)、吃音障害(どもり)、音
声障害(ダミ声、鼻声、かすれ声など)、発音器官に器質的障害(口蓋裂など)がある場
合などを総称していいます。ここでは構音障害、つまり幼児の発音障害(発語障害)につ
いてのみ考えます。
★構音障害とは
 「鍵」を「タチ」、「学校」を「ガッコ」、「バッタ」を「バータ」と言うなど、言葉
の一部の音を変えたり、ぬかしたりして発音することを、構音障害といいます。口唇、歯
列、口蓋、舌などの器官を総称して構音器官といいますが、この器官に器質的な異常がな
い場合(機能的障害)と、異常がある場合(器質的障害)に分けて考えます。ここでは機
能的障害についてだけ、考えます。
★発音障害
 幼児は、サ行(猿★シャル)、ザ行(草履★ジョーリ)、ラ行(ロケット★ドケット)
が苦手で、これらの音が正しく発音できればよしとします。発音するとき舌の位置がずれ
ると、サ行がシャ音化(さかな★シャカナ)することがわかっています。ほかに同じくサ
行がタ音化する例(さかな★タカナ)、サ行がチャ音化する例(さかな★チャカナ)、ラ
行がダ音化する例(ラジオ★ダジオ)などがよくみられます。満五歳を一つの目安として
、それまでにこれらの発音が正しくできればよしとします。
★なおりにくいカ行障害
 比較的治りやすい発音障害もありますが、カ行を、タ音化するカ行障害などは、指導が
むずかしく、なおすのにかなり手こずります。「鍵」を「タチ」、「カラス」を「タラス
」と発音するなど。五、六歳児でも全体の5%前後の子どもに、その傾向がみられますが
、あまり注意すると本人が自信をなくしたり、それを見ていた子どもがその子どもをから
かうようになったりしますので、指導するとしても慎重にします。 
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         よく観察される発音障害 
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 カ行障害   カキクケコ⇒タチチュテト、ダヂヂュデド
 サ行障害   サシスセソ⇒タチツテト、チャチチュチェチョ、シャシシュシェショ
 ザ行障害   ザジズゼゾ⇒ジャジジュジェジョ
 タ行障害   タチツテト⇒タチチュテト
 ダ行障害   ダヂヅデド⇒ラリルレロ 
 ラ行障害   ラリルレロ⇒ダディデゥデェド、ナニヌネノ、(アイウエオ)……Rの
        子音が抜けるため。
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(※注……アメリカ言語聴覚学会の報告(一九五一年)によると、指導が必要な構音障害
児の出現率は3.0%とされます。しかしふつう児との峻別がむずかしく、その傾向のあ
る子どもまで含めると、「つ」を「チュ」と発音するケースが20%。そのほかの子ども
が5〜10%前後というのが筆者の実感です。)





●情緒不安定

 外部の刺激に左右され、そのたびに精神的に動揺することを情緒不安といいますが、二
〜四歳の第一反抗期、思春期の第二反抗期に、子どもの心は特に動揺しやすくなります。


★いつも心は緊張状態
 情緒が不安定な子どもは、たえず緊張状態にあるのがわかっています。気を許さない、
気を抜かない、周囲に気をつかう、他人の目を気にする、いい子ぶるなど。そういう状態
の中に、不安が入りこむと、その不安を解消しようと、一挙に緊張感が高まり、情緒が不
安定になると考えられています。

★原因は幼児期?
 一般的には、乳幼児期のなんらかの異常な原体験が引き金となって、子どもは情緒不安
になることが知られています。親の放任的態度、無教養で無責任な子育て観、神経質な子
育て、子育てを放棄する拒否的態度など。反対に愛情がたっぷりと注がれ、静かで落ちつ
いた家庭の子どもは、情緒が安定します。

★代償行為に注意
 情緒が不安定な子どもは、その心をいやすために、代償的な行為を繰り返すことが知ら
れています。代表的なものが指しゃぶりですが、子どもは指をしゃぶることで、自分の心
を落ちつかせようとします。こうした代償行為は禁止しても意味がないばかりか、かえっ
て子どもの情緒を不安定にしますから注意します。ちなみにおとなでも、指しゃぶり(指
の腹をかむようにしてなめる)をしている人は少なくありません。自慰も同じように考え
ます。

★症状
 欲求不満と同じように、プラス型とマイナス型にわけて考えます。プラス型は攻撃的、
暴力的、突発的に興奮し手がつけられなくなる、など。行動が衝動的かつ過敏で、家庭内
暴力に発展することもあります。一方マイナス型は、周囲に溶けこめず、引きこもったり
、怠学、不登校を繰り返したりするようになります。家出、自殺のほか、集団的な非行行
動をとることもあります。無気力症になったり、慢性的な腹痛、下痢、体の不調を訴える
こともあります。
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●幼児の性欲

 幼児の性欲は性交を求めるおとなのそれとは基本的にちがい、フロイトの小児性欲論に
よれば、次のような段階を経ると言われています。

★口唇期
 口の中にいろいろなものを入れたりなめたりして、快感を覚える時期があります。これ
を口唇期といいますが、母親の乳房を吸うという行為の延長線上にある行為と理解すると
、わかりやすいでしょう。年齢的には満一歳前後からはじまり、満四歳ごろには終わりま
すが、子どもによっては、六歳前後までそのクセが残ることがあります。幼児の指しゃぶ
りも、その同じ延長線上にあると考えます。

★肛門愛段階
 男児では他人の肛門に興味を示すことがあり、友だちの肛門に棒きれをつっこんだり、
あるいは自分の肛門を指でかいたりします。排便、排尿の快感、あるいはおしめの世話な
どによる快感が、きっかけとなることが多いようです。「ウンチ」「オナラ」「オシリ」
という言葉に特別の興味をもつようになるのもこの時期の特徴です。

★男根期段階
 性器に関心をもつようになり、満四歳ぐらいから、男児であれば、「チンチン」という
言葉に特別の反応を示すようになります。手による自慰(男児)、ものに性器をこすりつ
けて快感を覚える自慰行為(女児)なども目立つようになりますが、この時期の子どもは
、性器接触についてはほとんど興味がありません。満五歳を過ぎるころから、異性を強く
意識するようになり、性器がその象徴となります。お医者さんごっこ、性器の見せあい、
女児のパンツめくりなどのいたずらが多発するようになり、この時期は思春期まで続きま
す。
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●学業成績

 ついでに知的能力になんらかの問題があると、その結果は学業成績となって現れますが
、当然のことながら学業成績が悪いからといって、知的能力に問題があるということには
なりません。
 その学業成績についてですが、学業成績がはっきりと遅れ、学習指導上、特別の配慮が
必要な子どもを遅進児、あるいは遅滞児と呼んでいます。学業不振児、あるいは学習障害
児(LD)と呼ぶこともあります。能力的には問題なく、環境的な問題で遅進傾向を示す
子どもを学業不振児。能力的に問題があり、学習面で遅進傾向を示す子どもを、学習障害
児といって区別します。
 
★発現率
 発現率について、標準学力テストの相当学年が、一年程度、あるいは二年以上遅れてい
ると思われる子どもの発現率は次のようです。
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  科目   学年  平均児より、 2年以上                  
           約1年の遅れ の遅れ                   
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー                 
  算数   小五   31%                         
        六   26%    15%                  
       中一   33%    29%                  
       平均   30%    27%                  
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー                 
  国語   小五   22%                         
        六   31%    15%                  
       中一   26%    34%                  
       平均   31%    40%                  
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー                 
(橋本重治氏による調査★教育評価法総説★金子書房より)             

★原因
 遅進傾向のある子どもの原因については、知能の発達の遅れのある子ども(ぼんやり型
)、身体的欠陥のある子ども(発育不良型)、情緒が不安定な子どもなどに分けて考えら
れていますが、その基準となると、きわめてあいまいです。日本の教育には、「子どもが
学びたいもの」「子どもが将来、必要なもの」という視点がなく、むしろ人間選別の基準
として利用されていることも、問題点としてあげられます。つまり「皆が一〇〇点でも困
る。差がつかないから。しかし皆が〇点だともっと困る。差がわからないから」というわ
けですが、こういう基準では、こと学業不振児について言えば、必然的に学業不振児が生
まれることになります。そんなわけで学業不振児を一方的に問題児あつかいすることにつ
いて、私は大きな疑問を感じます。たとえばオーストラリアでは、中学一年生で、二桁か
ける二桁のかけ算を学習しています。が、日本ではそれを小学四年で学んでいます。が、
だからといって、オーストラリアの教育が遅れているということにはなりません。オース
トラリアでは、科目数そのものが多く、たとえば外国語にしても、フランス語のほか、イ
ンドネシア語、中国語、日本語などが学習選択できるようになっています。




●溺愛児

 親(あるいは祖父母)の溺愛を受けて育つと、子どもには独特の症状が現れることがわ
かっています。

★原因
 「子どもがかわいい」という母性本能に溺れることによって、親は子どもを溺愛します
が、その背景には、親自身の精神的な未熟さや、情緒的欠陥があるとみます。その欠陥が
基本にあり、夫婦仲が悪いとか、生活苦に追われる、やっとのことで子どもに恵まれたな
どという事件が引き金となって、親は溺愛に走るようになります。「子どもの汗臭いシャ
ツを手にもつと、ほおずりしたくなる」「子どもさえいれば、夫なんかいてもいなくても
、どっちでもいいような気がする」「子どもどうしの喧嘩を見ていると、その喧嘩に飛び
込んでいって、相手の子どもを殴りとばしたい衝動にかられる」などと訴えた親がいまし
た。赤ちゃんのときから、そのウンチの量と色などを克明に記録している人もいましたし
、「わが子新聞」と称して、自前の新聞を定期的に発行して、親類や仲間に配っている人
もいました。あるいは子ども(中三男児)が初恋をしたことについて、本気で嫉妬心を燃
やした母親もいました。
 こうした溺愛について、親自身には、その意識がなく、溺愛していることをむしろ誇ら
しげにするのも、このタイプの親の特徴の一つです。中には「親たるべきものは、皆こう
あるべきだ」と、学校の会合などで、自分の溺愛ぶりを誇示する人もいます。これは溺愛
イコール親の深い愛と誤解することによるもので、はたから見るといわゆる親馬鹿 (失礼
!)と思われるような行為を、平気でするようになります。

★溺愛児の特徴
 幼児性の持続……年齢に比して幼い感じが残ります。柔和で穏やかだが、人格の「核」
形成が遅れるなど。ここでいう核というのは、「この子どもはこういう子どもだ」という
とらえどころをさします。溺愛児には、そのとらえどころがありません。その年齢に比し
て、赤ちゃんぽいとか、幼稚っぽい印象を与えるようになりますが、幼児にとっては本来
、好ましい姿ではありません。
 退行的になりやすい……目標や規則が守れず、自分中心的なものの考え方をします。自
分の心のコントロールが苦手で、ほしいものにブレーキをかけることができないなど。一
般的に生活はだらしなくなり、わがまま、無礼、不作法な様子を見せるようになります。
ほかに家の中ばかり、あるいは自分の世界だけで遊ぶ傾向が強くなり、社会に溶け込めな
くなる、など。
 服従的になりやすい……いつまでも依存心が強く、わがままな反面、自分で決断をくだ
すことができません。無責任で、自分勝手になりやすい。

★おばあちゃん子
 いわゆる猫かわいがりする祖父母が原因で、溺愛児になる子どもがいます。以前、ある
男の子(小四)とこんな会話をしたことがあります。
子「まちがえた……」
私「まちがえたら、ケシで消しなさい」
子「きれいに消すのですか」
私「自分で考えなさい」
子「全部、消すのですか。まちがえたところだけ消すのですか」
私「自分で考えて、判断しなさい」
 一つ一つこまかい指示を求めてくるのが特徴で、それがうるさいほど連続して続きます
。あれこれ手をかけ過ぎると、子どもはそうなります。




●夜驚症と夢中遊行

 夜間、睡眠中に起こる子どもの恐怖反応を夜驚症といい、就寝後まもなく、フラフラと
ねぼけてあたりをさまよい歩く奇行を、夢中遊行といいます。

★夜驚症
 悪夢とよく混同されますが、ふつう悪夢の場合には、夢の内容が具体的で、子どもは夢
の内容をよく覚えているものですが、夜驚症の場合には夢の内容が混濁していて、それが
はっきりとしません。あとでどんな夢だったのかと聞いても、夢の内容は抽象的で、「覚
えていない」と答えたりします。原因については、呼吸困難説(正常な呼吸が、なんらか
の原因で妨げらることによって起こるという説)、自律神経失調説、てんかん素質説(脳
の器質そのものに問題があるという説)などがありますが、定説はありません。

★夢中遊行
 夜驚症と大きくちがう点は、恐怖感がともなわないこと。幼児の場合、就寝後まもなく
起こることが多く、子どもにその意識がないのが大きな特徴です。あとでそのことを聞い
ても、やはり「覚えていない」と答えるのがふつうです。軽い場合は、「ねぼけ」として
処理されることがありますが、重症になると、ベランダの手すりを乗り越えたり、家を出
て近所を、フラフラと徘徊したりするようになります。

★幼児期特有の症状
 一五歳以上ではほとんど例がないことから、幼児期特有の症状とされています。子ども
が夜驚症や夢中遊行を起こしたら、子どもが熟睡できない原因、つまり睡眠障害をまず第
一に疑ってみます。ともに、たとえば家庭のなんらかの事件(はげしい夫婦喧嘩、騒動、
下の子の出産、入園、入学など)がきっかけで起こることが多く、環境面での対策も忘れ
てはなりません。どちらかといえば神経質な子どもに多いのも事実ですが、症状が異常な
わりには、予後もよく、その時期を過ぎると、なにごともなかったかのように収まってい
きます。




●神経症

 心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害を神経症といいます。
子どもの神経症は、まず精神面、身体面、行動面の三つの分野に分けて考えます。

★精神面の神経症
 精神面で起こる神経症には、恐怖症(ものごとに恐れる)、強迫症状(ささいなことを
気にして、こわがる)、不安症状(理由もなくなにかに悩む)、抑うつ感(ふさぎこむ)
など。ヒステリーもその一つですが、混乱してわけのわからないことを泣き叫ぶタイプ(
マイナス型)と、大声をあげて暴力行為を繰り返すタイプ(プラス型)に分かれます。子
どもは神経疲れにはたいへんもろく、日中、ほんの数分から数一〇分気をつかっただけで
、神経症を示す子どもはいくらでもいます。またいやなおけいこ塾のある日になると決ま
って、神経症を示すケースもあります。

★身体面の神経症
 夜驚症、夜尿症、頻尿症(頻繁に尿意をもよおす)、睡眠障害(なかなか寝ない、ある
いは異常な早朝起床など)、吃音(どもり)、嘔吐、下痢、便秘、発熱、喘息、頭痛、腹
痛、チック、遺尿(意識がないまま尿をもらす)など。一般的には精神面での神経症に先
立って、身体面での神経症が起こることが多く、身体面の神経症を、黄信号ととらえて注
意します。

★行動面の神経症
 神経症が行動面におよぶようになると、さまざまな不適応症状となって現れます。不登
校がその一つですが、その前の段階として、無気力、怠学(怠ける)、無関心、無感動、
食欲不振、引きこもり、拒食などが断続的に起こるようになります。相手が幼児だから、
おとなの神経症とはちがうと主張する人もいますが、私の経験では、形こそはっきりしま
せんが、おとなのそれと同じと考えてよいと思います。

 こういう神経症が現れたら、親は子どもを包む環境を猛省しなければなりません。たと
えばこまごまとしたことを、子どもに押しつけていないかどうかなど。子どもに問題があ
るのではなく、家庭環境に問題があるとみます。たいてい親はその原因を外の世界に求め
、「いじめが原因だ」「先生の指導が悪い」などと言ったりしますが、反省すべきは、ま
ず親自身です。またそういう視点がないと、子どもの神経症はなおりません。

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 さらに神経症を分類し、まとめたのが、次の表です。この表からもわかるように、子ど
もの神経症は複雑で、しかも多岐にわたるのが特徴です。

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                   神経症としての症状            
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 ●食事に関する問題         過食、拒食、異食★            
                   小食、偏食、好き嫌い           
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 ●睡眠に関する問題         不眠、夢中遊行、夜驚症、寝言★      
                   早朝起床、寝起きぼけ、悪夢        
                   就寝拒否、寝る前のぐずり★        
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ●言語の問題            かん黙、吃音(どもり)、あがり性、失語症 
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 ●習慣的な問題           指しゃぶり、爪かみ、髪いじり、歯ぎしり★ 
                   唇をなめる、つば吐き、ものいじり★    
                   ものをなめる、ものを口に入れる      
                   手洗いグセ、臭いかぎ(疑惑症)★     
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ●性行動の問題           自慰、早熟、肛門刺激、異物挿入★     
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ●感情の問題            かんしゃく、嫉妬、恐怖、不安発作、激怒★ 
                   ぐずり、抑うつ、拒否症、嫌悪症★     
                   分離不安、強迫傾向、ヒステリー★     
                   高所恐怖症、赤面恐怖症、閉所恐怖症 ★  
                   潔癖症、対人恐怖症★           
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 ●表情の問題            無表情、しかめっ面、無感動、涙もろい★  
                   口をとがらす、ため息           
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 ●行動の問題            反抗、盗み、破壊的行為、残虐性、乱暴★  
                   帰宅拒否、いじわる、いじめ、仲間はずれ★ 
                   家出、虚言、火遊び、散らかし、収集癖★  
                   無気力、怠学、無感動、無関心、かみつき★ 
                   引きこもり、緩慢行動、行動拒否、狂暴行為 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ●身体の問題            頭痛(中枢神経系)★           
                   心拍増加(循環器系)★          
                   呼吸異常、喘息、仮性喘息(呼吸器系)★  
                   じんましん、アレルギー(皮膚系)  ★  
                   嘔吐、腹痛、便秘、下痢、遺糞(消化器系) 
                   チック、貧乏ゆすり(筋肉系)★      
                   遺尿(夜尿)、頻尿、排尿障害(泌尿器系) 
                   ほかに口臭、口乾、眼病一般、自家中毒★  
                   脱毛症、発熱など             
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★詳しくは、「子育て診断」「子どもの神経症」をご覧ください。

 これらの神経症については、親の子どもに対するかかわり方が、大きな意味をもつこと
が多く、子どもだけを対象とした治療は、効果があまり期待できません。両親、家庭環境
も治療の対象としなければなりません (牧田清志氏)。
 なお子どもが神経症を示すと、それがわかった段階で、多くの親は「責任は私にある」
と、はげしい自責の念にとらわれます。しかしこの自責の念が強すぎると、親自身が自分
自身を情緒不安にしてしまい、これがかえって子どもの症状をこじらせてしまうことにな
りますから、注意します。子育てのありかたを反省することは大切なことですが、あまり
自分自身を責めないこと。ここでいう「両親も治療の対象とする」ということには、そう
いう意味も含まれます。




●恐怖症

 ものごとに対して、たいへん、もしくは異常に強い恐れをもつことを恐怖症といいます
。以前、「学校の花子さん」という映画がはやったとき、「小学校へ行きたくない」とい
う幼稚園児が続出しましたが、それもその一つです。この恐怖症は、何に対して恐怖心を
いだくかによって、分類して考えます。

★対人(集団)恐怖症
 幼児の場合、新しい人との出会いや、新しい環境に対してある程度の警戒心をもつこと
は、むしろ正常な反応とみます。これに対して、思考力に欠ける子どもほど、周囲に対し
て無警戒、無頓着で、はじめて行ったような場所でも、わがもの顔に騒いだりします。
 が、その警戒心が一定の限度をこえ、子どもに精神的、身体的影響を与えるような場合
を、対人恐怖症といいます。人前に出ると、体が緊張状態になり、声が出なくなる(失語
症)、顔が赤くなる(赤面症)、冷や汗をかく、幼稚園や学校がこわくて行けない(不登
校)、体がふるえるなども、対人恐怖症の一つと考えられます。

★場面恐怖症
 病院や公園へ行けない、おけいこ塾へ行けないなどが、ここでいう場面恐怖症です。エ
レベーターに乗れないなどの閉所恐怖症も、これに含まれます。私も子どものころ、トイ
レについて、恐怖症になったのを覚えています。田舎の商家で育ったのですが、トイレは
家の一番奥の、しかもうす暗いところにありました。トイレを使っていると、トイレの壁
の汚れが、それぞれ動き回るように感じたのを今でもよく覚えています。だから二、三歳
まで、排便はよく別の便器でしていました。そのころの原体験が原因になっているのか、
私は今でも暗いトイレに入ると、ぞっとした恐怖感を覚えます。

★そのほかの恐怖症
 ほかにある特定のものを、いつもきれいにしていないと気がすまない潔癖症、いつも手
の汚れを気にして手を洗ったり、手の臭いを気にする不潔嫌悪症 (疑惑症)、動物に対し
て強い恐怖心をもつ動物恐怖症などがあります。「死」に対して、強い恐怖心をもつ子ど
ももいます。ある子ども(年長児)は、ペットの犬が死んだのをきっかけに、死をたいへ
ん恐れるようになりました。
 子ども自身の努力では抑制できないとき、恐怖症といいますが、そのため叱ったり説教
しても意味がありません。子どもの視点で、また子どもの立場で、ものを考えるようにし
ます。強引な誘導や、強引な押しつけは、タブーです。

 こうした恐怖症に合わせて、未来に対して、子どもが恐怖心をもつことがあります。そ
してその恐怖心は、拒否的態度となって子どもに現れることがあります。未来に対して恐
怖心をいだくようになると、子どもに限らず、ものの考え方が退行的※になることはよく
知られています。

★進学恐怖症
 以前、「中学生になりたくない」と言った子ども(小五男児)がいました。そして赤ち
ゃんがえりならぬ、幼児がえりを起こしていました。ボロボロになった児童コミック雑誌
をもっていたので、私が「それは何だ」と声をかけると、「どうチェ、読んではだめだと
、言うんでチョ。言うんでチョ」と。原因は、父親にありました。父親はことあるごとに
、「中学へ入ると、勉強はきびしいぞ。毎日、四、五時間は勉強しなければならないぞ」
と、その子どもを脅していました。(注、静岡県では、高校入試が人間選別の関門になっ
ています。)
 一般的に、兄や姉のはげしい受験勉強や、それにまつわる親との喧騒を見ている子ども
ほど、進学恐怖症になりやすくなります。

★おとな恐怖症
 最近ぐんとふえてきたのが、おとな恐怖症の子どもたちです。「家業の歯科技工士にな
るのはいやだ」と言った子ども(高二男生)がいました。原因はやはり父親でした。父親
は仕事が終わるたびに、「疲れた」を連発し、仕事のぐちばかり言っていました。この高
校生のケースでは、私のアドバイスを受けた父親が、「楽しい」と言いなおすようにし、
子どもの前ではつとめて、明るく振るまうようにすることで、子どもの心をいやすことに
成功しました。
 さらに症状がこじれると、青年期のうつ病、引きこもりなどの遠因となりますので、注
意が必要です。

 なお幼児教育の世界で、「すなおな子ども」というときは、「自分の思っていることを
、そのままストレートに表現できる子ども」をいいます。いやだったら、「いや!」と、
口や態度でそれを表現するなど。静かで従順な子どもを、すなおな子どもとは、決して言
いません。拒否症の子どもには、そのすなおさが感じられないのが大きな特徴です。
※退行……成長の反対。幼児であれば赤ちゃんがえり、少年であれば幼児がえりなどの症
状を総称していいます。内閉、萎縮、退避、逃避などの諸症状に合わせて、ものの考え方
も、陰湿化することがわかっています。




●不登校(登園拒否)

 うつ型児童の不登園児(以下、不登校児)には、いくつかの前兆症状があります。たい
ていの親はそういう前兆症状があったことに、あとから気づきます。「ああ、そう言えば
……」とです。また気づいたとしても、そのときは、「わがまま」と決めつけたり、「ま
さか……」という思いで、見逃してしまいます。

★睡眠障害
 床につく時刻や睡眠時間が不規則になります。夜遅くまで起きていて、騒ぐなど。ある
いは反対に朝早く起きる、など。

★情緒が不安定になる
 前兆症状として、気むずかしくなったり、ふさぎこんだりします。それを周期的に繰り
返し、やがて親の目から見ても、「何を考えているかわからない子ども」という状態にな
ります。

★ストレスをためこむ
 家の外ではいい子ぶる傾向が強くなります。そのため幼稚園の先生にほめられたりしま
す。外の世界では柔和なやさしい笑みを浮かべていることが多く、そのためますます「で
きのよい子」と誤解されます。

★神経質になる
 ささいなことを気にして、くよくよ悩んだりします。ある女の子(年中児)は、昼間あ
ったことを思い出して、寝る前にメソメソ泣いていました。また神経疲れを起こしやすく
、集団の中で、うまく人間関係を調整できなくなります。よくいじめが原因で不登校にな
ったという話を聞きますが、幼児あるいは小学校低学年児の場合、いじめそのものが原因
というよりは、いじめが引き金となって不登校が始まると考えます。その証拠にこのタイ
プの子どもは、たとえば、「A君がいじめる……」と訴えるからA君を排除すると、今度
は「B君がいじめる……」と言いだしたりします。ターゲット(子どもが不登校の原因と
する理由)がそのつど移動するのが特徴です。裏を返して言うと、親や教師は、このター
ゲットに、引き回されないこと。子どもの言い分に耳を傾けながらも、それが原因のすべ
てだとは思わないようにします。

★無表情になったり、反対に仮面をかぶるようになる
 皆がサッカーの観戦をして楽しんでいるようなときでも、それに同調できない。誕生日
を皆が祝ってあげるようなときでも、それを喜ばない、など。大声で笑ったり、騒いだり
するようなことがなく、一人で静かにしていることが目立つようになります。あるいは反
対に、妙に明るくふるまったり、無理に快活になったりします。どちらにせよ、心にモヤ
がかかったような状態になり、その心がつかみにくくなります。何を考えているかわから
ない……という状態が、続きます。

 こういう前兆に気づいたら、不登校を警戒しますが、初期段階での親の不手際が、不登
校のきっかけになることも否定できません。子どもが幼稚園や学校に行きたくないなどと
訴えたりすると、親自身が「落ちこぼれてしまうのではないか」という恐怖心から、無理
をします。泣き叫んで抵抗する子どもを、無理やり車に押しこんで、幼稚園や学校へ連れ
ていく、など。この無理が、それがたった一度でも、はげしいものであればあるほど、子
どもの心を歪めます。「幼稚園や学校は行かねばならないところ」という固定観念※から
脱却すること。これが問題を解決するための第一歩です。

 さらに近年ふえているのが、帰宅拒否症の子どもたちです。幼児の場合、積極的に「家
に帰りたくない」と訴える子どもは少なく、その時刻になると、隠れる、ぐずる(あるい
は乱暴になる)、逃げる、神経症を訴えるなど、行動としてそれを表現します。ある子ど
も(年長児)は、バス通園をしていましたが、その時刻になると決まって園舎の裏に隠れ
てしまい、そのつど先生がさがして、バスに乗せていました。不登校とまったく正反対の
症状ですが、不登校に準じて対処します。
※固定観念……「学校は行かねばならないところ」という学校神話。子どもが不登校を起
こすと、たいていの親は「このままではうちの子はだめになる」という恐怖感の中で、は
げしく悶絶します。しかし実際には、神話は神話。その神話性に早く気づくのが、解決の
第一歩です。




●過干渉

 本文の中にも書いたように、子どもに対して口うるさいことを、過干渉と誤解している
人がいますが、口うるさいだけなら、子どもにはそれほど影響はありません。親の指示に
、うとくなる程度ですみます。免疫性ができるためです。親の過干渉が過干渉として問題
になるのは、親が、本来子ども自身が形成すべき価値観の領域まで入りこみ、威圧や暴力
によって、その価値観を左右しようとするような場合です。その威圧や暴力が、一定の許
容限度を超えたとき、ここでいう過干渉※になります。
 たとえば親がギャンギャンと、子どもを大声で威圧しながら、自分の価値観をそのまま
注入するようなケースがあります。こういう育児姿勢が日常化すると、子どもの心は大き
く歪んできます。そういう意味で私は過保護と過干渉を区別して考えています。

※過干渉……これに対して幼児教育の世界では、過干渉を過保護の一形態として、過保護
の中に組み込んで考えるのが、一般的です。

★内閉型過干渉児
 威圧、強圧が日常化すると、子どもの心は内閉し、さらに進行すると、子どもの心は萎
縮します。皆がどっと笑うようなときでも、クックッとしか笑えないなど。感情表現が鈍
化し、子どもらしいハツラツとした表情が消えます。全体に自信喪失の状態になり、自立
心や自主性が弱く、他人随行的な行動が目立つようになります。

★粗放型過干渉児
 同じ過干渉児でも内閉型の過干渉児とは対照的な症状をみせます。内閉型が親にやりこ
められてしまったタイプ。粗放型が、親の威圧や強圧をやり返して育ったタイプと考える
とわかりやすいでしょう。同じ環境下であるにもかかわらず、兄(姉)が萎縮する一方、
弟(妹)が粗放化するというケースは、珍しくありません。
 症状としては、全体にガサツな印象を与えるようになります。ものの考え方が短絡的で
、「気にくわないヤツはぶっ殺せ」式の乱暴な考え方をします。自信過剰な面があり、自
分中心的なものの考え方をしやすくなりますが、内閉型過干渉児とともに、常識はずれな
行動をするのも特徴の一つです。たとえば友だちの誕生日に、ぬか漬けのぬかを袋に入れ
て贈った子ども(小三男児)がいましたが、このタイプの子どもは、もらったほうの人の
立場で、ものを考えることができません。異常な自尊心、執拗な嫉妬心、異常な自己愛な
ども、ここでいう常識はずれな行動に含まれます。
 



●過剰行動児とセロトニン悪玉説

 キレる子どもの原因の一つとして最近クローズアップされてきたのが、セロトニン悪玉
説です(アメリカ★ミラー博士)。

★インシュリンの分泌過多が、セロトニン(脳間伝達物質)の分泌過多を促し、それが原
因となって脳の機能が変調する(ヒュー★パワーズ博士)。
 一時的に甘い食品を大量に摂取したりすると、それに合わせてインシュリンが大量に分
泌され、それがセロトニン(脳間伝達物質)の分泌過多を促します。このセロトニンが大
量に分泌されると、毒性※をもち、行動の抑制命令※を阻害することがわかっています。


★独特のキレる動作が特徴
 抑制命令がきかなくなると、ちょうどカミソリでスパスパと物を切るような動作になり
、丸みをもったなめらかな動作が消えます。しかも行動が突発的かつ衝動的に変化し、突
然キーッと耳もつんざかんばかりの声をはりあげて、泣き叫んだり、暴れたりします。

※毒性……生化学者のミラー博士によれば、脳内のセロトニンという化学物質が、ニュー
ロンから脳細胞に情報を伝達し、神経中枢に大切な役割をはたすが、セロトニンが多すぎ
ると毒性をもち、脳の禁止命令を妨げるとします。
※抑制命令……精神や行動を、抑制する命令。一つの行動(動作)をするとき、脳から同
時に二つの指令が出ます。「動け」という命令と、「動くな」という二つの指令です。こ
のうち「動くな」という指令を抑制命令といいます。この抑制命令が変調すると、突発的
に興奮状態になったり、行動面において、過剰に反応することがわかっています。
 一方、カルシュウムが不足すると、★脳発育が不良、★先天性脳水腫をおこす、★脳神
経細胞の興奮性を亢進する、★痴呆、低能をおこしやすい、★精神疲労をしやすく回復が
遅い、★神経衰弱症、精神病にかかりやすい、★一般に内分泌腺の発育が不良、機能は低
下する(片瀬淡氏)と言われています。過剰行動性のある子どもは、砂糖断ちをする一方
、このカルシュウム不足をまず疑ってみます。
                  
 


●糖分の量

 「白砂糖は麻薬」と考えて対処します。実際、子ども(体重14キロの年中児)に缶ジ
ュース(350ml)を一本飲ませるということは、おとな(体重60キロの男性)が、
約4.3本の缶ジュースを飲むのと同じ量ということになります。わかりやすく言えば、
おとながペットボトルを約一本分(1.5リットル)飲むのと同じ量ということです。こ
れはたいへんな量です。ちなみに、それぞれの食品の中に含まれている糖分の量は、次の
ようになります(女子栄養大学出版部資料)。食品によっては、約半分の量が糖分の量で
あることに注目してください。

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 製品名             一個分の量    糖分の量         
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 ヨーグルト    【森永乳業】     90ml  9・6g         
 伊達巻き       【紀文】     39g  11・8g         
 ミートボール   【石井食品】 1パック120g  9・0g         
 いちごジャム   【雪印食品】  大さじ30g  19・7g         
 オレンジエード【キリンビール】    250ml  9・2g         
 コカコーラ              250ml 24・1g         
 ショートケーキ    【市販】  一個100g  28・6g         
 アイス      【雪印乳業】  一個170ml  7・2g         
 オレンジムース  【カルピス】     38g   8・7g         
 プリン      【協同乳業】  一個100g  14・2g         
 グリコキャラメル【江崎グリコ】   4粒20g   8・1g         
 どら焼き       【市販】   一個70g  25g          
 クリームソーダ    【外食】  一杯      26g           
 ホットケーキ     【外食】  一個      27g          
 フルーツヨーグルト【協同乳業】    100g  10・9g         
 みかんの缶詰   【雪印食品】    118g  15・3g         
 お好み焼き   【永谷園食品】  一箱240g  15・0g         
 セルシーチョコ 【江崎グリコ】   3粒14g   5・5g         
 練りようかん     【市販】  一切れ56g  30・8g         
 チョコパフェ     【市販】  一杯      24・0g         
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●ドラ息子症候群

 日本人の国民病とまで言われるようになったドラ息子、ドラ娘化現象。今ではそうでな
い子どもをさがすほうがむずかしいとさえ言われています。自己中心性が強くなり、わが
まま、自分勝手でものの考え方が消費的 (今を楽しめばいいという考え方)になるなど。
ほかに退行的(目標や規則が守れない。ほしいものにブレーキをかけることができない。
生活態度がだらしなくなる。無礼、不作法になるなど)になる、服従的(依存心が強い割
に、無責任になるなど)になるなど、溺愛児の特徴を合わせもつのがふつうです。

★原因
 原因は複合的なもので、極端な甘やかしと、同じように極端にきびしい家庭環境が同居
したとき、子どもから善悪のバランス感覚がなくなり、ここでいうドラ息子が生まれると
考えられます。善悪のバランス感覚というのは、そのつど自分がすべきこと、あるいはし
てはならないことを、静かに正しく判断する感覚のことをいいます。バランス感覚がしっ
かりしている子どもは、常識的なものの考え方をしますが、そうでない子どもは、かたよ
ったものの考え方や、極端なものの考え方をするようになります。たとえば、「地球の人
口の半分くらいなら、核兵器かなにかで、皆死んでしまえばいい。そうすればもっと住み
やすくなる」などと、平気で言ったり、考えたりするようになります。

★要因
 子どもをドラ息子にする要因としては、次のようなものが考えられます。

★飽食とぜいたく……子ども中心の家庭生活、たとえば休日の過ごし方も、日々の献立も
子ども中心という家庭生活。しかも苦労がなく、「飽食とぜいたくがあたりまえ」という
生活が基本になっています。
★忍耐力の欠如……よく「うちの子どもはサッカーだと一日中している。だから忍耐力が
あるはずだ」と考える人がいますが、そういうのは忍耐力とはいいません。その子どもは
好きなことをしているだけです。子どもの忍耐力というのは、「いやなことをがまんして
する力」のことをいいます。以前、病気がちのおばあさんの世話をしている女の子 (年長
児)がいました。おばあさんが食べたものをゲーゲーと吐き出すと、それをタオルでぬぐ
ってあげていたといいますが、そういう子どもを忍耐力のある子どもといいます。
★生活感の欠落……自分も家族の生活の一部を担っているという感覚がなく、またその責
任感もない。便利な生活の中で、それがあって当然という環境で育つと、子どもから生活
感がなくなります。重い荷物をもって母親がスーパーから帰ってきたとしても、このタイ
プの子どもは、それを助けようともしません。父親の設計事務所が倒産して、大学へ進学
できなくなったことについて、「あんたがだらしないから、こういうことになったのだ!
」と、父親を責め続けた女子高校生がいました。
★生活規範の欠如……結局は子どもの言いなりになってしまう生活、など。規則や家庭の
ルールなどはあってないようなもので、親自身がそのつど平気で破ってしまうことが多い
。「ダメなものはダメ」という毅然とした態度がないと、親はどうしても子どもに甘くな
り、子どもは子どもで、規則というのは、そういうものだと思うようになります。

★背景
 子どもに楽をさせることが親の愛だと誤解している人は多いですが、では子どもに仕事
をさせるといっても、実際には、させることがないというのも現実かもしれません。ある
母親はこう言いました。「洗濯は全自動の洗濯機ですんでしまう。掃除も掃除機でものの
三〇分もあれば、終わってしまう。料理も、電子レンジで……というように、子どもにな
にかをやらせようと思っても、やらせることがない」と。
 こういう家庭環境の中で、他方で子どもに過酷な勉強を強いるというのが、日本の平均
的な家庭像ということになります。親は「勉強を強いるのは子どものため」と考えますが
、子どもの方はそれを虐待ととらえます。この意識のギャップが、子どもからバランス感
覚を奪います。高校生でも、今、親に感謝しながら高校へ通っている子どもは皆無とさえ
言えます。大学生でもほとんどいません。中には「大学へ行ってやる」「大学へ行けばい
いのだろ、行けば!」と豪語する子どもさえいます。ドラ息子になると、幼児のときから
、こうした本末転倒的なものの考え方をするようになります。
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●欲求不満

 欲求不満に対する子どもの反応は、大きく次の三つのタイプに分けて考えます。

★攻撃★暴力タイプ                               
 欲求不満やストレスが日常的にたまると、子どもは攻撃的になり、自分より弱い者に対
して暴力行為を繰り返すようになります。母親に包丁を投げつけた女児(年長児)がいま
した。そしてその攻撃性は、表に出るタイプ(喧嘩する、親にものを投げつける)と、裏
で隠れてするタイプ(いじめ、動物への虐待)に分けて考えます。うつ型児童の場合、こ
の症状がさらに進み、自分より弱い者に対して、執拗かつはげしい暴力を繰り返すように
なります。

★退行★依存タイプ
 攻撃★暴力タイプをプラス型※とするなら、この退行★依存タイプはマイナス型※とい
うことになります。ぐずったり、赤ちゃんぽくなったり(退行現象)、あるいは親にベタ
ベタ甘えたり(依存行為)するようになります。意味もなく、いつまでもネチネチとぐず
るのが特徴で、叱っても意味がないばかりか、叱ると、かえって症状がひどくなりますか
ら注意します。

★固着★執着タイプ                               
 いつまでも同じことにこだわり(固着性)、ブツブツと繰り返し言ったり、あるいはあ
る一定のものに執着したりするようになります。ある男の子(年中児)は毛布の切れ端を
、いつも大切に持ち歩いていました(執着性)。心にたまった欲求不満をまぎらわすため
の、代償行為(心を償うためにする代わりの行為)と考えるとわかりやすいでしょう。

 一般的には脳の機能的障害は、その機能が亢進した状態(プラス型)と、減退した状態
(マイナス型)に分けて考えます。またこう考えることによって、一見正反対に見える症
状を、同一平面で考えることができます。たとえばうつ型児童には家庭内暴力を繰り返す
タイプと、家に引きこもるタイプがありますが、それぞれをプラス型のうつ型児童、マイ
ナス型のうつ型児童と考えることによって、同じ土俵の上にあげて考えることができます
。ともに心の病気ととらえ、またその前提で対処することが大切です。
※プラス型、マイナス型……プラス型、マイナス型という言い方は筆者独特の言い方で、
一般的ではありません。
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●自閉傾向と自閉症

 情緒面になんらかの問題がある子どもには、多かれ少なかれ自閉傾向が現れます。自閉
傾向というのは、次のような症状をいいます。

★心がつかみにくくなる
 子どもの心がつかみにくくなります。親の目から見て、「何を考えているのかわからな
い子ども」といった状態になります。ちょっとしたことで気分をそこねたり、あるいはそ
れを大げさに考えて悩んだりします。子どもに接していて、不安や遠慮を感じたら、子ど
もの心はかなり歪んでいるとみます。

★周囲に対して無関心になる
 そばで親が大けがをしても、自分は自分でそのままブロック遊びを続けたりします。飼
い犬が死んだとき、「ああ、そう」と言っただけですましてしまった子ども(年長児)も
いました。母親は「あれほどかわいがっていた犬なのに……」と、言葉をつまらせてしま
いました。

★無感動になる
 家族が誕生日パーティなどを用意しても、それを喜んだりするということが、ありませ
ん。ブスッとしたまま席につき、またブスッとしたまま席を離れたりします。あまりの無
愛想な表情に、「あなたの誕生日でしょ!」と、声を荒らげた親もいました。

★奇異な言動が多くなる
 行動の一部もしくは全体が、どこか奇異になります。自然さが消え、常識はずれな行動
をとるようになります。ふつうの子どもなら、こういうときはこうするだろうなという行
動とは、どこか違った行動をしやすくなります。

 以上のような症状がすすんだのが、自閉症ということになります。その自閉症になると
、子どもは自分の「殻」に閉じこもってしまい、他人のみならず、親にもまったく無関心
になってしまい、情意 (心)の疎通がなくなってしまいます。
 ただ症状や程度は千差万別で、定型はありません。そのため現場の教師ですら、判断を
まちがえます。主な症状としては、次のようなものがあります。

★感情の鈍化
 自閉症の初期症状の最大の特徴としては、感情の鈍化があります。両親や兄弟が喜ばせ
ようと働きかけをしても、反応が少なくなくなります。「ぼくには関係ないこと」という
ような冷めた目つきで、無視したりするなど。感情の動きが平坦になって、喜怒哀楽の情
の動きがたいへんつかみにくくなります。

★自分勝手な行動
 皆とは別の行動を平気でするようになり、自分勝手な言動が目立つようになります。周
囲の子どもたちが何をしているかということについて、ほとんど感心を示さなくなります
。一人だけポツンと雲の流れをじっと見ているとか、川の流れをいつまでもじっと見てい
るなど。

★抱かれない
 ふつう親しい間がらの者が子どもを抱くと、子どもは体をぴったりとこちらの体にすり
よせてきますが、情緒になんらかの問題のある子どもは、体をこわばらせたままの状態で
抱かれます。自閉症の子どもは特にその傾向が強く、抱く側の印象としては、なにかしら
大きな丸太を抱いているかのような感じがします。

★情意(心)の疎通ができない
 自閉傾向がある子どもは、その心がつかみにくくなりますが、さらにその状態がすすみ
、いわゆる心が通じない状態になります。何を考えているか、また何を求めているか、そ
れがわからなくなります。話しかけても、それを無視するようになります。「こちらへお
いで」と声をかけても、視線をそらすこともなく、別の方向へ歩いていき、そこで自分勝
手なことをし始める、など。疎通が親から子への一方的になり、子どもから親への働きか
けが、極端に少なくなります。

★独り言、おうむ返しの会話をする
 ブツブツとわけのわからないことを言ったり、あたかもそばに誰かがいるかのように、
独り言を繰り返したりします。あるいはこちらが「今日は何を食べたいの?」と話しかけ
たりすると、「今日は何を食べたいの?」とおうむ返しの返事をしたりします。あるいは
一方的に勝手なことを話し続けたりします。

★特殊なことに興味をもつ
 数表、列車時刻表、カレンダー、数式などの分野。あるいは音感、音楽などのある特殊
な分野に、ふつうでない興味と関心を示し、その分野では天才的な能力を発揮します。あ
る子ども (小学生)は、ほとんどどんな曲でも、最初の数小節を聞いただけで、その曲の
曲名を即座に言い当ててしまいました。自閉症の初期の段階で、親の多くが自分の子ども
を天才児と誤解するのは、そのためです。

★こまかい反復作業をする
 ふつうの子どもならしないだろうと思われるような、こまかい反復作業をするようにな
ります。私が経験した一人の女の子(年中児)は、小さな丸だけを次々と並べて、黙々と
絵をかいていました。ふつうの根気とちがう点は、その根気の中に、子どもの意思が感じ
られないということです。目的もなく、ただそうしているだけ……という感じになります


★衝動的な行動が目立つ
 外部の者からは理解できないような衝動的な不安や恐怖におののき、突然暴れたり、泣
き叫んだりします。なだめて抱き込んでも、あまり効果がなく、ワナワナと震えたりしま
す。あるいは反対に、一人突然なにかを思い出して、ニヤニヤ笑ったりすることもありま
す。時にその行動が狂人的になることもあります。




●ゲーム中毒

 テレビゲームに限らず、幼児には次のものを避けます。

★単純反復作業
 子どもによっては、なん時間でも、コツコツと同じ作業を繰り返す子どもがいます。紙
ちぎりばかりするとか、同じカセットを繰り返し聞く、同じ絵を繰り返しかくなど。
 こうした単純反復作業は子どもの心を自閉させますので、警戒します。

★興奮性をともない、イライラがつのるような夢中
 興奮といっても、ワーワーと声を出して興奮することではありません。様子を見て判断
します。たとえばゲームをしているときの顔の様子(ひきつり、鋭い目、震える手など)
、したあとの様子(睡眠障害、怒りっぽくなる、ふさぎこむ、不機嫌になる、荒れる、無
表情になるなど)を観察しながら判断します。特に就寝前の興奮は避けます。

★現実感を喪失させる思想
 心霊、オカルト信仰、超能力、前世来世思想など。こういうものに対する思考性は、子
どもからものを論理的に考えるという習慣を確実に奪います。できれば迷信、占いの類、
手相、家相、血液型判断、幽霊などの話は、幼児には避けます。するとしても、子ども自
身の判断力が育ってからにします。

 


●自慰

 子どもがなにかを執拗かつ繰り返しするときには、まず心の中に抑圧感(ストレス)が
たまっていないかどうか、それを疑ってみます。子どもはストレスを解消するために、代
償行為を繰り返します。子どもの自慰も、その一つ。

★禁止命令は意味がない
 自慰に限らず、指しゃぶり、髪いじり、手洗いぐせ、爪かみ、体ゆすりなど、その背後
に、それをしなければならない心理的な理由があるとみます。頭から「だめ!」と叱って
も意味がないばかりか、かえって子どもの心を歪めてしまう原因になりかねませんから注
意します。

★自慰の内容
 自慰の内容は、さまざまで一様ではありません。女児の場合は、性器を椅子のかどにこ
すりつける、など。視線が凝視的になり、恍惚状態になることもあります。男児の場合は
、勃起するというケースはよく耳にしますが、射精まではしないというのが、通説です。


★身体接触願望としての自慰
 幼児は、親と肌をすり合わせること(スキンシップ)により、自分の情緒を調整します
。反対にこのスキンシップが不足すると、子どもの情緒は不安定になり、情緒障害や精神
不安の原因となりますから、注意します。子どもの自慰は、その満たされない身体接触願
望への、代償行為と理解して対処します。
 なおスキンシップには、不思議な力があります。魔法の力と言ってもいいかもしれませ
ん。自慰に限らず、子どもの心が不安定になったら、ためらわずこのスキンシップを試み
てみます。
 



●赤ちゃんがえり

 赤ちゃんがえりは、本能的な嫉妬心が原因となって起こります。つまり子どもが本能的
な部分で、自ら赤ちゃんを演ずることにより、親の愛や関心を自分に向けさせようとして
起こす現象と考えます。

★赤ちゃんがえり(退行現象)の症状
 ネチネチとした言い方、甘ったるい言い方など。「ウママア、ワタチ、アイス、タベタ
イモウウ(ママ、私、アイスをたべたい)」というような言い方をします。あるいは親に
ベタベタ体をすりよせ、甘えたりするなど。それまではしなかったおねしょを、再び始め
たり、意味もなく突然ぐずったり、甘えたりするようになったりします。オッパイや、ほ
乳瓶でミルクを飲みたがったり、赤ちゃんのときのおもちゃを手にもつようになることも
あります。
 こうした症状に合わせて、神経症に準じた症状が現れることがあります。下の子が生ま
れたあと、月に一度ぐらいの回数で、原因不明の発熱症状を訴えた子ども (年長女児)も
いました。

★注意したいプラス型
 赤ちゃんがえりをマイナス型とするなら、弟や妹に攻撃的にでるタイプはプラス型とい
うことになります。このタイプの幼児は、相手に対して情け容赦をしません。弟や妹を、
殺す……寸前までのことをします。親の前ではかえって弟(妹)思いのいい兄(姉)を演
ずることが多く、弟や妹がおびえるようになってからはじめて、親が気づくというケース
がほとんどです。はげしい嫉妬心が根底にあるため、あつかい方をまちがえると、かえっ
て症状をこじらせますから注意します。




●過保護

 過保護の原因は一様ではありません。このことは本文の中でも説明しましたが、もう少
し詳しく説明します。過保護は大きく次のように分けて考えます。

★食事面での過保護
 乳幼児期の大病などが原因で、子どもを食事面で過保護にするケースです。

★運動面での過保護
 大きな事件が近所であったとか、兄弟姉妹の交通事故があったとか、そういうきっかけ
が原因で、子どもを過保護にするケースです。姉が交通事故で死んだため、一度も外で遊
ばせてもらえなかった子ども(年長男児)がいました。

★環境面での過保護
 慢性のアレルギー性疾患などが原因となることが多く、親は子どもの環境に細心の注意
を払うようになります。

★精神面での過保護
 「近所のわからず屋に乱暴されるとかわいそうだ」とか、「うちの子はいじめられるか
ら……」という理由で、子どもの世界を、精神面で外の世界から隔離してしまうことをい
います。そして親の庇護のもとだけで、子どもを育ててしまうなど。一般的に過保護とい
うときは、この精神面での過保護をいいます。

 保護と依存は、ちょうど対称関係にあります。「上」の者が「下」の者を保護し、下の
者は、上の者に依存するという関係です。たとえば夫が上で、妻が下。教師が上で、生徒
が下。そして親が上で、子が下という関係です。つまり親が子どもを過保護にすればする
ほど、子どもは親に依存する(あるいは親は子どもに依存を求める)ようになります。子
どもを自立させることが教育の第一の目的であると考えるなら、過保護は決して好ましい
ことではありません。子どもを過保護にする背景に、この旧態依然の、つまりきわめて東
洋的な上下意識が残っていないかどうかを疑ってみます。
 さらにサイモンズという学者は、過保護と溺愛、残忍と無視(無責任な子育て観)の関
係を、次のような表で説明しています。




               支配                       
                ↑                       
            【残忍】 【過保護】                  
         拒否ーーーーーーーーー受容                 
            【無視】 【溺愛】                   
★               ↓                      
               服従                       

 支配的な養育態度と、受容、つまり子どもを受けいれる養育態度が、過保護というわけ
です。同じように子どもに対して服従的な養育態度と、受容関係にあるのが、溺愛。子ど
もを愛さず(拒否的態度)と、支配的な養育態度が残忍(虐待)。子どもを愛さず、服従
的になるのが、無視というわけです。




●知的能力

 子どもの知的能力の発達の度合いは、次のような面を観察すると、おおよそ知ることが
できます。

★形の弁別ができるか
 たとえば三角(△)と四角(□)で、家の形ができます。その家の形を子どもに見せて
、それを別の紙にかき写させてみてください。そのとき、三角は三角の形をしていればよ
し。形の弁別のできない子どもは、形がぐにゃぐにゃの絵をかいたりします。満五歳児(
年中児)で、形の弁別ができる子どもは、全体の70%。できない子どもは30%とみま
す。

★数字に興味があるか
 五歳児になると、飛躍的に数字に興味をもつようになります。1から10までを数えら
れるようになると、あっという間に、30まで数えられるようになります。特に教えなく
てもできるようになるのがふつうです。ある程度指導すれば、年中児では30までの数、
年長児では100までの数が理解できるようになります。

★文字に興味があるか
 満四★五歳を境に、子どもは急に文字を読んだり、書いたりするようになります。ちな
みに満六歳児で、約78%の子どもが、ひらがなをほぼ自由に読み書きできることがわか
っています。そのほかの目安は、次のようなものです。

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        年中児(満5歳児)             年長児(満6歳児)       
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 家族の認識  兄、弟、姉、妹の区別ができ、家  おじいちゃんは、お父さんのお父 
        族の中の位置関係が理解できる。   さんということが理解できる。★ 
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 善悪の判断  (問)「拾ったお金でアイスを買い、そのアイスを、公園にいた友だ 
        ちに分けてあげました。友だちは、皆、ありがとうと言い、喜んで食 
        べました」という問題について……。               
       ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
        その子はいい子だと答える。       その子は悪い子だと答える。   
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 時間の認識  きのう★明日という概念が理解で おととい★あさってという概念が 
          きる。                  理解できる。★         
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 空間の認識  同一方向にあるA商店と、B商店  反対方向にあるA商店と、B商店 
           の遠近が判断できる。         の遠近が判断できる。★     
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

                                        
                                        
                                        

●睡眠障害とベッドタイムゲーム

 幼児にとっては、床についてから眠るまでの時間には、特別の意味があります。幼児に
は毎晩、眠る前に同じ行為を繰り返すという習性がありますが、このことから、この時間
のことを欧米では、ベッドタイムゲームの時間と呼んでいます。私はこの時間を、子ども
が現実の世界から、母親の胎内へ再び戻る時間という意味で、「再帰の時間」と呼んでい
ます。が、それはそれとして、「うちの子は、毎晩なかなか寝つかないので困っている」
ということであれば、このベッドタイムゲームのしつけがうまくいっていないと判断しま
す。もしそうであれば具体的には、次のようにします。

★毎晩同じことを繰り返す
 毎晩同じことを繰り返させるようにします。同じ本を読んで聞かせるとか、ぬいぐるみ
をそばに置いて、しばらく話しかけてあげるなど。

★興奮性のある強い刺激は禁物
 ベッドタイムゲームの時間はもちろんのこと、床につくまでの間、興奮性のある強い刺
激は禁物です。できれば夕食後は、こうした刺激を避けます。年少であればあるほど、そ
うします。

★眠ることに恐怖心をいだかせない
 安らかなベッドタイムゲームの時間をなによりも大切にします。一番いいのは、軽く添
い寝をしてあげ、子どもを体で温かく包んであげることです。まずいのは、強引にベッド
の中に子どもを押し込み、電気をパッと消してしまうような乱暴な行為です。子どもの情
緒が不安定になって当然です。孤立恐怖症(分離不安症)の子どもは、特に慎重に対処し
ます。
 
(一部、表が乱れています。お許しください。)

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