はやし浩司

学習指導
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子どもの学力を伸ばす、こんなコツ
はやし浩司

子どもが学習机から離れるとき

●机は休むためにある

 学習机は、勉強するためにあるのではない。休むためにある。どんな勉強でも、しばら
くすると疲れてくる。問題はその疲れたとき。そのとき子どもがその机の前に座ったまま
休むことができれば、よし。そうでなければ子どもは、学習机から離れる。勉強というの
は一度中断すると、なかなかもとに戻らない。
 そこであなたの子どもと学習机の相性テスト。子どもの好きそうな食べ物を、そっと学
習机の上に置いてみてほしい。そのとき子どもがそのまま机の前に座ってそれを食べれ
ば、よし。もしその食べ物を別のところに移して食べるようであれば、相性はかなり悪い
とみる。反対に自分の好きなことを、何でも自分の机にもっていってするようであれば、
相性は合っているということになる。相性の悪い机を長く使っていると、勉強嫌いの原因
ともなりかねない。

●机は棚のない平机

 学習机というと、前に棚のある棚式の机が主流になっている。しかし棚式の机は長く使
っていると圧迫感が生まれる。もう一五年ほども前のことだが、小学一年生について調
査してみた。結果、棚式の机の場合、購入後三か月で約八〇%の子どもが物置にして
いることがわかった。最近の机にはいろいろな機能がついているが、子どもを一時的に
ひきつける効果しかない。そんなわけで机は買うとしても、棚のない平机をすすめる。あ
るいは低学年児の場合、机はまだいらないのでは? たいていの子どもは台所のテーブ
ルなどを利用して勉強している。この時期は勉強を意識するのではなく、「勉強は楽し
い」という思いを育てる。親子のふれあいを大切にしながら、子どもに向かっては、「勉強
しなさい」ではなく、「一緒にやろうか?」と話しかけるなど。

●学習机を置くポイント

 学習机にはいくつかのポイントがある。。
@机の前には、できるだけ広い空間を用意する。 
A棚や本棚など、圧迫感のあるものは背中側に配置する。
B座った位置からドアが見えるようにする。C光は左側からくるようにする(右利き児の
場合)。
Dイスは広く、たいらなもの。かためのイスで、机と同じ高さのひじかけがあるとよい。
E窓に向けて机を置くというのが一般的だが、あまり見晴らしがよすぎると、気が散って
勉強できないということもあるので注意する。
 机の前に広い空間があると、開放感が生まれる。またドアが背中側にあると、心理的
に落ち着かないことがわかっている。意外と盲点なのが、イス。深々としたイスはかえっ
て疲れる。ひじかけがあると、作業が格段と楽になる。ひじかけがないと、腕を机の上に
置こうとするため、どうしても体が前かがみになり、姿勢が悪くなる。中に全体が前に倒
れるようになっているイスがある。確かに勉強するときは能率があがるかもしれない。
が、このタイプのイスでは体を休めることができない。
 さらに学習机をどこに置くかだが、子どもが学校から帰ってきたら、どこでどのようにし
て体を休めるかを観察してみるとよい。好きなマンガなどを、どこで読んでいるかをみる
のもよい。たいていは台所のイスとか、居間のソファの上だが、もしそうであれば、思い
切って、そういうところを勉強場所にしてみるという手もある。子どもは進んで勉強するよ
うになる……かもしれない。

●相性を見極める

 ものごとには相性というものがある。子どもの勉強をみるときは、何かにつけ、その相
性を大切にする。相性があえば、子どもは進んで勉強するようになる。相性が合わなけ
れば、子どもは何かにつけ、逃げ腰になる。無理をすれば、子どもの学習意欲そのもの
をつぶしてしまうこともある。

(勉強部屋診断)

(略)I君(中2)の勉強部屋
               

◎棚が背側にあり、机の右前に窓があるという点で、配置としては問題ない。イスに座っ
た位置からは、窓の外がよく見え、勉強で疲れたときなど、そのまま気を休めることがで
きる。ドアが背側にあるので、やや不安は残るが、ほぼ理想的な勉強部屋といえる。こ
の部屋の中学生(中一男児)は、「マンガを読むときも、イスに座って読む」と話してくれ
た。



子どもが勉強から逃げるとき

●子どもが勉強から逃げるとき

 子どもは勉強から逃げるとき、独特の症状を示す。まずフリ勉。いかにも勉強しているという
フリがうまくなる。頭をかかえ、黙々と問題を読んでいるフリをしたりする。しかしその実、何もし
ていない。何も考えていない。次に時間つぶし。一時間なら一時間、机に向かって座っているも
のの、絶えずこまごまとしたことをしながら、時間をつぶす。マンガを読んだり、指で机をかじっ
たり、爪をほじったりするなど。この場合も、時間ばかりかかるが、その実、何もしていない。
 こういう状態になったら、親は家庭教育のあり方を、かなり反省しなければならない。こんなこ
ともあった。ある母親からの相談だが、その母親はこう言った。「漢字の書き取りを毎日三ペー
ジすることになっていますが、二ページなら何とかします。が、三ページ目をどうしてもしたがり
ません。どうしたらいいでしょうか」と。答は簡単。そういうときは二ページでやめればよい。こう
いうケースで、もし子どもがスラスラと三ページやるようになると、親は、今度は四ページやらせ
るようになる。子どももそれを知っている。

●学習を奪う五つの原因

 子どもから学習意欲を奪うものに、@過負担(長い学習時間、回数の多い塾通い)、A過関
心(子どもの側から見て、気が抜けない家庭環境。ピリピリした親の態度)、B過剰期待(「や
ればできるはず」と子どもを追いたてる。親の高望み)、C過干渉(何でも親が先に決めてしま
う)、それにD与え過ぎ(子どもが望む前に、あれこれお膳立てしてしまう)がある。
 たくさん勉強させればさせるほど、勉強ができるようになると考えている人は多い。しかしこれ
は迷信。「意欲のともなわない学習は身につかない」と、レオナルド=ダ=ビンチ(1452ー15
19、イタリア、ルネッサンス期の代表的画家)も言っている。英語の格言にも、「馬を水場まで
連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」というのがある。子どもも同じ。最後
に勉強するかどうかを決めるのは、子ども自身ということ。親や教師ができることにも限界があ
る。
 要は集中力の問題。ダラダラと時間をかけるよりも、短時間にパッパッと勉強を終えるほう
が、子どもの勉強としては望ましい。実際、頭のよい子どもというのは、そういう勉強のしかた
をする。私が今知っている子どもに、K君(小四男児)という子どもがいる。彼は中学一年レベ
ルの数学の問題を、自分の解き方で解いてしまう。そのK君だが、「家ではほとんど勉強しな
い」とのこと。「学校の宿題も、朝、学校へ行ってからしているようです」(母親)と。

●変わる「勉強」への意識

 もっとも今、「勉強」そのものの内容が大きく変わろうとしている。「問題を解ける子ども」か
ら、「問題を考える子ども」へ。「知っている子ども」から、「何かを生み出す子ども」へ。さらには
「言われたことを従順にこなす子ども」から、「個性が光る子ども」へ、と。少なくとも世界の教育
はそういう方向に向かっている。そして当然のことながら、それに合わせて教育内容も変わっ
てきている。大学の入学試験のあり方も変わってきている。だから昔のままの教育観で子ども
に勉強させようとしても、それ自体が今の教育にはそぐわないし、第一、子どもたちがそれを受
け入れないだろう。たとえば昔は、勉強がよくできる子どもが尊敬され、それだけでクラスのリ
ーダーになった。しかし今は違う。ある進学高校の生徒たちに、君たちも、勉強をして、S君の
ように模擬試験で上位に入ってみたらと話しかけたときのこと。その高校生たちは皆、こう言っ
た。「ぼくらは、あんなヘンなヤツとは違う」と。それがよいのか悪いのかは別にして、今はそう
いう時代なのだ。
 ……などなど、そういうことも考えながら、子どもの勉強を考えるとよい。


子どものリズムを大切に

子どものリズムを知っていますか?
当然のことながら、子どもには子どものリズムがあります。子どもの学習をみるときには、その
リズムをまず知ります。たとえばあなたの子どもは学校から帰ってきたあと、どのような形で、
どの程度(時間、量)、勉強するでしょうか。それが一日単位で、次に一週間単位で、どのよう
に子どもが動いているかを観察してみてください。それがリズムです。

(リズムのある子ども)……リズムのある子どもは、少しずつ、時間や量をふやしたり、あるい
はそのリズムを大切にしながら、そのリズムに乗せていきます。

(リズムのない子ども)……リズムのない子どもは、毎日が何がなんだかわからないような状況
で過ぎていきます。原因としてよくある例は、そのつど、親が子どものリズムをひっかき回す例
です。そのときどきの思いつきで、いろんなことをさせる。そしてどれも、食いさしの状態で、次
から次へと移動していく……。たとえば塾にしても、子どものリズムや意思などを無視して決め
る、など。こういう状態を、「空回り」といいます。一度こういう状態になると、子どもの側からし
て、勉強が手につかなくなります。(見た目には、塾へ通ったり、家庭教師についたりして、リズ
ムがあるように見えますが、それは見かけだけです。)

一つの目安として、子どもの勉強ぶりを観察してみてください。

(リズムをもっている子ども)
勉強時間帯 だいたい毎日、同じ時間帯に、同じほど勉強しているようだ。
勉強内容 いつもする勉強の内容は決まっている。ワークも一定している。
様子 時間を有効に使っている。やるべきことをサッサとして、終わる。
緊張感 自分でやるべきことを決めて、その日のノルマを果たそうとする。
自立心 親が何も言わなくても、机に向かい、自分で勉強を始める。
自律心 やるべきことがあるときは、遊びやテレビをひかえたりする。
学力 だいたい毎回、学力のレベル(テスト結果など)は、一定している。
意思疎通 子どもが何を望んで、どんな勉強をしているか親は把握している。
目標 子どもに一定の目標がある。何になりたいかはっきりしている。
責任度 宿題など、学校のことは子どもに任せている。親は感知しない。


(リズムをもっていない子ども)
勉強時間帯 気分的で、勉強をはじめる時間も、時間帯も決まっていなし。
勉強内容 そのつど、内容が違う。毎日、いろんな勉強に振り回されている。
様子 時間つぶし、時間殺し、フリ勉が多く、ダラダラと過ぎていく。
緊張感 緊張感がなく、何をどの程度すればよいか、わかっていないようだ。
自立心 親がうるさく言わないと、勉強しない。自分では何もしない。
自律心 いつも遊びやテレビ、ゲームを勉強に優先させている。
学力 不安定で、そのつど成績が大きく変化する。
意思疎通 子どもが何をしたいか、親もよくわかっていない。心配ごとが多い。
目標 将来の目標がなく、何のために勉強しているかわかっていない。
責任度 宿題などをしないで学校へ行くことが多い。万事、適当。


リズムをつくるために

家庭学習の「要(かなめ)」は、いかにして子どものリズムをつくるかです。しかしこのリズムを
作るのは、簡単なことではありません。時間がかかります。叱ったり、おどしたりすれば、一時
的な効果はありますが、しかし長続きしません。長続きしないばかりか、かえってできかかった
リズムを破壊してしまいます。

私も多くのお子さんを預かっていますが、このリズムづくりのたいへんさをよく知っています。よ
くある例は、せっかく子どもにそのリズムらしものができたとき、親の勝手で、そのリズムを破
壊してしまうケースです。たとえば少し成績があがったりすると、親は「やっぱりうちの子はやれ
ばできる」と喜んで、勉強の量をいきなりふやしたりするなど。子どもを振り回すようになると、
子どものリズムは確実に破壊されます。

リズムをつくるために、次のことに注意してみてください。

勉強時間帯 子どもの能力の半分程度の時間帯を決めるのがコツです。
たとえば、30分勉強しそうだったら、15分に設定します。
この状態を、最低でも数ヶ月(小学低学年児)は続けます。
「たったの15分」と思う人がいるかもしれませんが、15分です!
勉強内容 一定のワークに限定します。あれこれワークをふやしたり、
変えたりしてはいけません。すぐれた月刊教材がありますか、
そういうのを利用します。なお内容は、簡単なものを選ぶのが
コツです。量が多いのや、難解なのは、避けます。
(お薦め) リコーの月刊教材★★★
       ポピーの月刊教材★★ やや量が少ない
       トレニーグペーパーは、量が多すぎるので注意。
       チャレンジは、遊びが多すぎるので注意。
様子 子どもは、いろいろなことをしながら、勉強します。たとえば1時間座って
いても、その間、15分だけ勉強らしいことをすればよいと考えます。
このことは子どもに任せます。無理、強制はしないこと。
緊張感 子どもが勉強する時間帯は、親も何か、自分で学習する習慣があると
いいですね。親が寝そべって、テレビを見ながら、子どもに「勉強しろ」
はないですね。それがここでいう緊張感です。
自立心 ワークでも、子どもに選ばせます。本屋でも図書館でも、子どもに
任せ、子どもに選ばせる。
自律心 日ごろから子どもの意思を確認しながら、行動する。そういう生活習慣
が、子どもの自律心を養う。親意識、権威主義、頭ごなしの命令や
禁止命令は避ける。「どう思う」「どうしたらいいの」を聞きながら、子ども
の意思を確かめて行動する。
学力 学力については、不問にする。成績は話題にしない。もちろん叱ったり
説教するのはタブー。まちがったところを、一緒に調べたげるなどする
ことは重要。順位、平均点は聞いても、コメントはくださない。
意思疎通 子どもが親の姿を見て、逃げるようであれば、要注意。
目標 子どもの方向性を大切にする。親の希望や意向を押しつけない。
責任度 宿題などは、子どもに任せる。宿題をやらなくて学校へ行きそうなときで
も、学校の先生に対処を任せる。子どもには、「わからないことがあれば
先生に質問するのですよ」と、言う。


たいていの親は、「うちの子は、やればできるはず」と思っています。子どもの可能性を信ずる
ことは大切なことですが、それが過負担、過剰期待となったとき、子どもは逆方向に進み始め
ます。そうなれば、あとは(成績がさがる)→(ますます勉強から逃げる)の悪循環の中で、子ど
もは勉強から遠ざかっていきます。

もしこの悪循環を感じたら、その循環を断ち切るしかないです。が、これが難しい。たいていこ
の段階で、親は、「まだ何とかなる」と考えて無理をします。そして塾を変えたり(俗にいう塾め
ぐりを始めたり)、無理や強制、説教を加えたりします。一時的には効果がありますが、子ども
に依存心が生まれ、長い目で見ると、結局は逆効果になってしまいます。今高校生でも、高校
に入学したとたん、何をどう勉強したらいいのかわからず、無気力になってしまう子どもが、進
学高校でも、10〜15%はいます。そうなります。
 
なお悪循環のこわいところは、(より悪くなって、以前の状態がまだよかった)と気づきながら、
やがて悪循環の泥沼に落ち込んでいくことです。もうこうなると、家庭学習のもならず、家庭教
育は本当に崩壊します。賢い親ははやくそれに気づき、そうでない親は、にっちもさっちもいか
なくなってから、それに気づきます。あなたはいかがですか?


子どもの方向性を知るために

子どもの方向性を知るには、図書館へ連れていきます。そして数時間ほど、図書館の中で遊
ばせます。そのあと、子どもが主にどんな本をどんなふうに読んでいるかで、子どもの方向性
を知ります。このとき大切なのは、子どもの方向性を、親がいじってはいけないということ。それ
がどんな方向性であれ、尊重します。たとえばサッカーの本ばかり読んでいれば、それが子ど
もの方向性です。あるいは空想物語ばかり読んでいれば、それが子どもの方向性です。

子どもの心を大切にするということは、子どもの方向性を大切にするということです。この方向
性をうまく利用すると、子どもの学力も伸びます。たとえば本嫌いの子どもでも、サッカーの本
は読むなど。そこでその種の本を用意してあげます。

日本人は、「図書」について、神話に近い信仰をもっています。よく夏休みの課題図書として、
夏が近づくと、書店の店頭には、多くの推薦図書が並びます。その「推薦図書」という言葉にだ
まされてはいけません。その大半は(あるいはほとんどは)、たいへんつまらなく、うすっぺらい
本ばかりです。中には「どうしてこれが推薦図書?」と疑いたくなるような本もあります。一度あ
なた自身も、自分で読んで確かめてみてはどうでしょうか?

つまりそういう本を読むことが、「本を読むということ」と多くの親は、誤解しています。これは神
話です。サッカーや、野球のような専門書(?)でも、本は本です。文字は文字です。そういう視
点で、子どもの方向性や読書指導を考えます。


読解力をつけるために

 小学3〜4年生になると、それまで何とかごまかしてきた(?)読解力が、いよいよごまかしが
きかなくなります。全体の約30%の子どもは、たとえばその学年の算数の応用問題を理解が
できないとみます。たとえば次のような問題です。

72円もっていました。一こ8円のアメを買って、3こ食べました。残っているアメは、なんこですか。(小3夏休みレベルの問題)

  
 この問題で、できる子どもは、あっという間にできてしまいます。しかしできない子どもは、親
が30分前後、絵を描いたりして説明しても、理解できません。そういうときは、次のようにしま
す。
(1)まず、問題を別の紙に書き写させます。
(2)次に具体的に絵を描いて説明します。
(3)この段階で、子どもに質問しながら、問題の内容を説明します。
  例……「いくらもっていましたか」
      「何を買いましたか」
      「アメは一個いくらでしたか」
      「72円でアメはいくつ買えますか」
      「どういう式を使いましたか」
      「何個食べましたか」
      「残りはいくつですか」と。
  そのつど、質問を何度も繰り返すのがコツです。
 
 こう書くと、「たいへんだ」と思われるかもしれませんが、実際には、1〜2問解けるようになる
と、あとは類似問題ができるようになります。もしあなたが「うちの子どもは算数の応用問題が
できない」と悩んでおられるなら、この方法を試してみてください。
 

漢字学習

 漢字の学習と、計算練習は、毎日少しずつ、しかし毎日するのがコチです。で、その漢字学
習は、漢字だけを書かせるのではなく、教科書そのものを、ノートに転写させるという方法をお
勧めします。
 この方法だと、漢字の使い方も理解できるようになるのみならず、文章の書き方もわかるよう
になります。ただし量は少なめに。「うちの子どもは20分くらいなら勉強する」と思われたら、半
分の10分にするのが、コツです。無理をすれば一時的な効果はありますが、かえって子どもを
勉強嫌いにしてしまいます。


勉強好きの子どもにするために

 「勉強しなさい」と言っても、子どもは心を開きません。しかし「勉強って、イヤなものね。お母
さんも、あまり好きではなかった……」と言えば、子どもは、心を開きます。要するに子どもの立
場になってものを考えるということです。こうした姿勢が、子どもの中に「やる気」を生み出し、そ
れが原動力となって、子どもを勉強に向かわせます。

よく親は、「うちの子はやればできるはず」と言いますが、「やる・やらない」も、力のうちなので
す。一方でそういう言葉が子どもを追いつめていることを忘れてはいけません。言うとしたら、
「あなたはよくがんばっているよ」という言葉です。子どもは、あなたが考えている以上に、毎
日、学校で、塾で、そして友だちの間で、疲れているのです。

英語では、「がんばれ」と言いそうなとき、「TAKE IT EASY!」と言います。「気楽にしなさい」
という意味ですが、「あまりがんばらなくてもいいのよ」と。あなたも一度、そう言ってみてはいか
がでしょうか。

また英語の格言には「楽しく学ぶ子どもは、よく学ぶ」というのがあります。親として大切なこと
は、「楽しい勉強」に心がけることです。

で、それでもダメなら……。子どもを受け入れます。「まあ、うちの子はこんなもんだ」というあき
らめが、子どもの心に穴をあけます。親がカリカリ、ピリピリしている間は、子どもは伸びませ
ん。それだけならまだしも、親子関係を破壊し、家族を破壊します。そうなれば、かえって、大
被害というものですね。勉強は、家族のきずなを犠牲にするほどの価値はありません。


子どもを伸ばす会話術

 ちょっとした会話が、子どもを伸ばしたり、反対に子どもからやる気を奪ったりします。たとえ
ば……。

まずい会話 じょうずな会話
勉強の調子が悪そうなとき、「がんばれ」「やればできる」式の励ましはあまり意味がありません。いわんや「こんなことでは、A中学に入れない」式の脅しは禁物。 子どもの調子が悪そうなときは、「たいへんだけど、よくがんばっているわね」とねぎらってあげます。
テストを子どもがあなたに見せたとき、その結果があまりよくなかった。そういうときあなたが、「平均点は?」「A君は何点だったの?」と聞いても、かえって子どもを苦しめる結果となります。できれば点数は不問に。 テストの点数を聞いても、さらっと受け流し、「どこをまちがえたの」「どうしてまちがえたの」と、その内容を話題にします。そして子どもがまちがえた問題を一緒に解いてあげたりします。最後は「まあ、よくやったわね」とねぎらって終わるようにします。
子どもが何かを失敗したようなとき、原因や理由を責めても意味がありません。特に学習面ではそうです。いわんや、「あなたはやっぱりダメな子ね」式の人格攻撃はタブー中のタブーです。いつまでもネチネチと責めてはいけません。 前提として、「あなたはこういう失敗をするはずはないのだけど……」という姿勢で、子どもの失敗を、子どもと一緒に考えるようにします。適当なところで、責任追及を切りあげるのがコツです。
子どもを学校へ送り出すとき、「先生の話をよく聞くのですよ」と言っても、意味がありません。具体性がないからです。そういうときは、「学校から帰ってきたら、先生がどんな話をしたか、私にも話してね」と言います。 学校へ送り出すときは、具体的に、「分数の足し算がよくわからなかったら、先生に質問するのですよ」と言う。子どもは学校で先生に、「お母さんが聞いてこいと言った」と言うと、先生も真剣に教えてくれるはずです。
「あなたはどんどん悪くなる」式のマイナスのイメージをもたせてはいけません。たとえば書いた文字がへたなとき。「お兄ちゃんはじょうずに書ける」とか、「まだ書けないの」は禁句です。 子どもを伸ばすコツは、いつも「あなたはどんどんよくなる」式のプラスのイメージを与えつづけます。たとえ文字がへたでも、(へたならなおさら)、「この前よりじょうずだわ」と言います。



国語力のある子どもにするために

幼児期に、言葉教育(会話教育)をしっかりとしておきましょう。
子どもに話しかける言葉は、@正しい言葉、A豊かな言葉で。そしてここが重要ですが、B実
際子どもに使わせる、です。

たとえば……
「ほら、バス! ハンカチ!」ではなく、「ほら、バスがきます。あなたはハンカチをもっています
か」と話しかける。

夕日を見ても、「きれい!」だけではなく、「美しいですね。感動的ですね。すばらしいですね」と
いろいろな言い方をしてみせる。

言葉は使ってみてはじめて、身につきます。毎日ドイツ語の放送を聞いたからといって、ドイツ
語を話せるようにはなりません。子どもには、正しい言葉を話させるようにします。最初、照れ
てしまって、なかなか使ってくれないこともありますが、それを乗り越えると、正しい言い方をす
るようになります。

こうした会話力(基礎的な国語力)があってはじめて、子どもは、その上で国語力を花咲かせる
ことができます。



計算力のある子どもにするために

計算力は、早数えの力で決まります。手をパンパンとすばやく叩いてみせ、それを数えさせる
練習をしっかりとしておきましょう。

(ヒトツ、フタツ、ミッツ……)

(イチ、ニー、サン……)

(イ、ニ、サ……)

(ピッ、ピッ、ピッ……)と。

これを数の信号化といいますが、これができるようになると、足し算も引き算も、スラスラできる
ようになります。年長児で、5秒前後で、10〜20個のものを数えられるようにしておくといいで
すよ。
ただし、計算力と、算数の力は別のものです。



算数の力を伸ばすために

子どもは実生活での経験を通して、「算数の力」を身につけます。「取った・取られた」「ふえた、
減った」「得をした、損をした」の経験の中で、です。そういう意味で、@ややハングリーな状態
にする。A同年齢の子どもとやりとりのある世界を大切にする、B親が子どもをあらゆるところ
に連れていき、いろいろな生活体験をさせることが大切です。郵便局で切手をはらせたり、ス
ーパーで、おつりを数えさせたりする、など。こうした経験を通して、子どもは「算数の力」を養
います。なお、あなたの子ども(年長児)に、「おつりって、何?」と聞いてみてください。算数の
力に鋭い子どもは、「おつりが何であるか」を知っています(全体の30〜40%)。「お金を多く
出したとき、お店の人が返してくれるのがおつり」と答えられれば正解です。そうでない子ども
は、おつりを知りません。



敏捷(びんしょう)性のある子どもにするために

 敏捷性のある子どもにするには、はだしで育てます。ぶ厚い靴底の靴に、靴下をはかせてば
かりいると、子どもからその敏捷性が消えます。子どもが歩き始めたら、はだしで育てます。

 E君(年長児)は、ドッジボールをしても、いつも最後の最後まで残りました。お母さんに秘訣
を聞くと、お母さんはこう話してくれました。「雨の日もはだしなため、近所の人に白い目で見ら
れたこともあります」と。



頭のよい子どもにするために

 世界でもっとも権威のある科学雑誌に、「サイエンス」という雑誌があります。理科系の学者
の場合、その雑誌にいくつ論文が紹介されるか、あるいはその雑誌の中で、何回引用される
かによって評価が決まるという雑誌です。その雑誌の中に、「ガムをかむと、頭がよくなる」とい
う論文が発表されたことがあります。で、さっそくそのことを、懇談会の席で母親たちに話すと、
「では……」と言って、何人かの人が子どもにガムをかませるようになりました。その結果です
が、N君という男の子は、数年間のうちに、本当に頭がよくなってしまいました。この方法は、幼
児期に、どこかぼんやりしていて、はっきりしない子どもに有効だと思います。

 それはともかくも、ガムをかむことには、脳を刺激する作用があることは事実です。五歳にな
っても、「昼寝グセ」のある子どもや、集中力に欠ける子どもには、たいへん有効です。もちろ
ん眠気ざましにも効果があります。ガムをじょうずに利用してみてください。

 なおガムにもいろいろな種類がありますが、いわゆる「菓子ガム」は避けます。



ワークブックの選び方

 ワークブックは、簡単なものを選びます。子どもの力より、一ランク落としたものを買い与える
のがコツです。親は、本屋さんへ行くと、どうしても一ランク上の、しかも文字がぎっしりとつまっ
たものを買う傾向があります。しかしそういうワークブックをかかえたため、かえって勉強嫌い
になってしまうというケースは、いくらでもあります。

 ワークブックを買うときのもう一つのコツは、ワークブックを開いてみて、左上の一番の問題
と、右下の最後の問題の、難易の「落差」の大きすぎるワークブックは避けるということ。(一番
は、簡単すぎて、最後の問題は入試問題級のむずかしい問題になっているワークブックです。
この種のワークブックは、子どもを苦しめるだけ。大手の出版社が、どこかのプロダクションに
発注して作らせたようなワークブックは、たいてい皆、そうです。ワークブックというのは、ある
程度簡単な問題を、数多くしたのち、少しずつレベルをあげていくという使い方をします。しかし
落差が大きいと、かえって子どもは混乱します。)一つの例をあげます。

(1)掛け算の九九問題。
2X4=
5x8=
……
(5)はこが6こあって、その中に白い石が、3こずつと、黒い石が4こずつ入っています。石は
ぜんぶでいくつですか。

 (1)番の問題は簡単すぎて、(5)番の問題は難しいですね。これがここでいう落差です。「落
差」の意味をわかっていただけましたか?

 なおワークブックを選ぶというのは、とても大切な作業です。子どもを本屋さんへ連れていき、
自分で選ばせるようにします。今、高校生でも、自分で自分にあった参考書やワークブックを
選べない子どもはいくらでもいます。とんでもないむずかしい参考書を買いこんだり、方向の違
うワークブックを選ぶというケースはいくらでもあります。あなたが親として、子どもを指導できる
のは、せいぜい中学二年生ごろまでです。それ以後は子ども自身が自立して学習できるように
します。そういう目標をたてて子どもを指導します。

 また子どもにそのワークブックが合っていないと判断されたら、思い切って捨てます。合って
いないワークブックをかかえたことが原因で勉強がストップしてしまうことを考えるなら、捨てる
ことは何でもないことですね。

 さらにもう一言。
 余裕があれば、同じワークブックを2冊(あるいは3冊)やるという方法もあります。特に中学
レベルの暗記科目(地理や歴史、生物、英語)には効果的です。一度試してみてください。



運筆能力をつけるために

文字がきたないと、すぐ「書道」と親は考えますが、その前にやるべきことがあります。

子どもに丸をかかせてみてください。運筆能力のある子どもは、きれいなスムーズな丸を描き
ます。そうでない子どもは、多角形に近い丸を描きます。

あるいは、小さな四角や丸を、クレヨンなどでぬらせてみてください。運筆能力のある子ども
は、直線や曲線をうまく使って、すみずみまでていねいにぬることができます。そうでない子ど
もは、縦線なら縦線だけで、ぐいぐいとワクからはみ出てぬります。

もしあなたの子どもにその運筆能力がないと思われたら、ぬり絵をお勧めします。



合理的判断力を育てるために

紙と鉛筆を用意します。その状態で、子どもに「山」を描かせます。子どもが山を書き終わった
ら、次に「川」を描かせます。こうして次々と、「道」「家」「木を二本」「子ども」「鳥」「太陽」「雲」な
どを描かせていきます。このテストでは、次に何を描くかは、言ってはいけません。山を書き終
わったら、そこで「川を描いてごらん」と指示します。

合理的な判断力が育っている子ども(年長児)は、自然な絵を描きます。無意識のうちにも、も
のごとを合理的に判断しようとする力が働くからです。しかしそうでない子どもは、平気で山の
上に川を描いたりします。家の大小のバランスなども判断基準になります。

合理的な判断力の弱い(?)お子さんは、家庭の中で、「なぜ、どうして?」の会話をもっとふや
してみてください。



勉強机の選び方

学習机は、勉強するためにあるのではありませせん。「休む」ためにあります。どんな勉強で
も、ある一定時間勉強すると、疲れてきます。その疲れたとき、そのままの姿勢で休むことがで
きれば、それでよし。そうでなければ、勉強机としては、好ましくありません。一度、中断する
と、勉強というのは、なかなかもとには戻らないからです。

勉強机は、前に棚のない平机。日本人は机を壁に向けて置く習性がありますが、この置き方
だと、圧迫感がああり、長い間使っていると、それが原因で勉強嫌いに……ということにもなり
かねませんので、ご注意ください。

間取りなどについては、

(1)できるだけ座った位置から、部屋の中央が見えるように配置する。
(2)できるだけ座った位置から、ドアが見えるように配置する。
(3)棚などの圧迫感のあるものは、背側に置く。
(4)採光は左側(右利き児)にする。

ちなみに、前に棚のある棚式の学習机は、購入後3か月で、約80%の子どもが、「物置台」に
してしまっています。ご注意!

なおこんな観察もしてみてください。子どもが学校から帰ってきたら、どこで体や心を休めてい
るかを、です。その場所に学習机があれば、子どもは、否応なしに勉強することになります。
「勉強は、勉強部屋で、机に向かってするもの」という、固定観念は捨てましょう。ちなみに、子
どもたちが最初に体や心を休める場所は、台所のテーブルの周囲です。だったら、そこを勉強
机にしてみたらいかがですか?



姿勢のなおし方

参観日に行って、自分の子どもの姿勢が悪かったりすると、親は子どもを叱ったりしますが、そ
の前に反省! 筋肉の緊張感を保つのは、カルシウムイオンです。このイオンが放出されて、
筋肉は緊張することができます。子どもの姿勢が悪い(ダラダラする、クニャクニャする、机に
覆いかぶさってしまう)は、このカルシウムイオンの不足を疑ってみます。もしそうなら一週間、
次のことを守ってみてください。一週間で、劇的にあなたの子どもの姿勢はなおるはずです。

(1)有機カルシウム分の多い食生活に心がける。(牛乳、煮干など)
(2)甘い食品を避ける。(砂糖断ちを実行する。)
(3)リン酸食品を徹底的に避ける。(日持ちよくするために、生麺、カマボコなどに大量に含ま
れてている。リン酸は、せっかく摂取したカルシウムを、リン酸カルシウムとして、尿中に排出し
てしまう。) 




(以下制作中)

ここに書いたことは、はやし浩司のオリジナルの指導法です。無断で転載、転用することを、かたく禁じます。
Hiroshi Hayashi, Hamamatsu, Japan