はやし浩司
とっておきの子育て法 はやし浩司 こんなすみずみまで、私のホームページをお読みくださり、 感謝しています。ありがとうございます。 そんなあなたのために、とっておきの子育て法をお教えします。 これらは私が三〇年以上の経験の中からつかんだ、 まさにとっておきの方法です。 どうかご家庭で応用なさってみてください。 (自尊心の育て方) 自分を愛することを知っている子どもは、ゆがんだ道には入りません。子どもには、自分を愛 することを教えます。つまり子どもに「生きていることの喜び」や、「生きていることのすばらし さ」、さらには、「自分を大切にすることの喜び」を教えます。しかし問題は、どう教えるか、で す。 子どもが幼いうちは、こうします。常に「あなたはすばらしい子だ」「あなたは毎日、どんどんよ くなるね」と、前向きの暗示をかけます。そしてもう少し大きくなって、「名前」が理解できるよう になったら、「あなたの名前はすばらしい」「あなたの名前はいい名前だ」と、名前をほめるよう にします。そして新聞でも雑誌でも、子どもの名前の出ているものは大切にします。切り抜いて アルバムに張りつけたり、高いところに張りつけたりします。子どもは自分の名前を大切にする ことにより、「誇り」を学びます。そしてその誇りが、やがて自尊心となり、子どもは自分の名前 を守るために、自分自身を大切にします。 (心のやさしい子どもにする法) 何でも子どもに与えたり、買い与えたりするときは、誰かを喜ばすようにしむけます。たとえば 「これがあると、パパが喜ぶわね」「これを半分、分けてあげると、妹の○○が喜ぶわね」と。 やさしい人というのは、自然な形で、ごく日常的に、他人を喜ばすことができる人のことをいい ます。ちょっとした会話術が、あなたのお子さんを、心やさしい子どもにします。 (忍耐力のある子どもにするために) よく誤解されますが、「一日中サッカーをしているから、忍耐力のある子ども」ということにはな りません。その子どもは好きなことをしているだけです。 子どもにとって忍耐力というのは、「いやなことをする力」のことです。たとえばあなたの子ども に、台所のシンクにたまった生ゴミを始末させてみてください。そのときそれをいやがらずに平 気でできれば、あなたの子どもは「かなりの忍耐力のある子ども」ということになります。風呂の 排水口にたまった毛玉でもよいでしょう。あるいは寒い夜、隣の家に回覧版を届けさせてみてく ださい。そういうことが平気でできる子どもが、忍耐力のある子どもということになります。こうい う忍耐力のある子どもは、後々、学習面でも飛躍的に伸びます。もともと「勉強」には、ある程 度の苦痛がともないます。その苦痛を乗り越える力が、忍耐力だから、です。 そのために日ごろから、あなたはあなたの子ども使います。子どもというのは、使えば使うほ ど、すばらしい子どもになると心得てください。楽をさせ、何も家事を手伝わせないというのは、 本来あるべき家庭の姿ではありません。 (自立心のある子どもにする法) ちょっとした会話術が、あなたのお子さんを自立心のある子どもにします。たとえば何かをし てほしいとき、何かをしてあげるときは、こう言います。「あなたはママに何をしてほしいの?」と か、「あなたは今、何をすべきなの」と。これはアメリカの家庭では日常的になされている会話 です。学校でも、先生は生徒に向かって、「あなたはどう思う?」ということをよく聞きます。そし て子どもや生徒が何か意見を言うと、「それはいい考えだ」と、聞いている私のほうが恥ずかし くなるくらい、よくほめます。こうした雰囲気が、子どもの自立心を育てます。 自立する子どもというのは、@自分で考え、A自分で行動し、B自分で責任をとる子どものこ とをいいます。子育ての目標は、子どもを自立させることですね。 (善悪のわかる子どもにする法) 私が書いた詩をここに添付します。これは地元のタウン紙で数年前に発表したものです。 子どもたちへ 魚は陸にあがらないよね。 鳥は水の中に入らないよね。 そんなことをすれば死んでしまうこと、 みんな、知っているからね。 そういうのを常識って言うんだよね。 みんなもね、自分の心に 静かに耳を傾けてみてごらん。 きっとその常識の声が聞こえてくるよ。 してはいけないこと、 しなければならないこと、 それを教えてくれるよ。 ほかの人へのやさしさや思いやりは、 ここちよい響きがするだろ。 ほかの人を裏切ったり、 いじめたりすることは、 いやな響きがするだろ。 みんなの心は、もうそれを知っているんだよ。 あとはその常識に従えばいい。 だってね、人間はね、 その常識のおかげで、 何十万年もの間、生きてきたんだもの。 これからもその常識に従えばね、 みんな仲よく、生きられるよ。 わかったかな。 そういう自分自身の常識を、 もっともっとみがいて、 そしてそれを、大切にしようね。 この詩の中で私は、善悪の感覚は、乳幼児期につくられることを言いたかった、です。つまり 善悪の判断の基本となる、「ここちよい響き」「いやな響き」というのは、すでに乳幼児期に作ら れるということです。よく「善悪の判断は、学校で、しかも道徳の時間に学ぶもの」と考えている 人がいますが、それは頭の中で考える「善悪の判断」です。もちろんそれがムダだとは思いま せんが、その前提として、こうした「響き」があるかないかが、その子どもの心の基本になりま す。子どもは心豊かで、愛情にあふれた、静かで、思いやりのある環境で心をはぐくみます。 乳幼児期の「心の環境」を大切にしてください。(この詩は、「子どものページ」にも掲載してあります。) (子どもを伸ばすコツ@) 子どもというのは、自分を信じてくれる人の前では、よい面を見せようとします。そういう子ど もの性質をうまく使うと、子どもを伸ばすことができます。こんなことがありました。私が勤めて いた幼稚園に、どうしようもないワルの子ども(年中児)がいました。友だちを泣かす、けがをさ せるは日常茶飯事。先生たちも皆、手を焼いていました。が、ある日のことです。私がふと見る と、その子どもが床に紙を広げて絵を書きながら、そばにいた別の子どもに、クレヨンを貸して いるではありませんか。私はすかさずその子どもをほめ、頭をなでてやりました。それから数日 後にも、また会いましたからその子どもに、「あなたはやさしい子だね」とほめてあげました。そ の子どもは、それからも相変わらずワルのままでしたが、どういうわけか、私の姿を見たときだ けは、そのワルをやめるようになりました。 子どもを伸ばす最高のコツは、あなたの子どもを信ずることです。「うちの子どもはすばらし い」という思いが、子どもを伸ばします。……と言っても、簡単なことではありません。そういうと きは、「あなたはすばらしい子」を口グセにします。あなたがそうでないと思っているならなおさ ら、口グセにします。いつかあなたがそれを自然な状態で言えるようになったとき、あなたの子 どもは、あなたの口グセ通りの子どもになっているのを、あなたは知るでしょう。 (きれいな文字の書ける子どもにする法) 子どもの運筆能力は、ぬり絵で伸ばします。小さな丸を、クーピーペンのようなものでぬらせ てみるとわかります。運筆能力のある子どもは、縦線、横線、曲線を複雑に組み合わせなが ら、きれいにぬることができます。そうでない子どもは、横線だけで、丸から線をはみだしてぬ ります。(横線を描くときは、手首だけの運動になりますが、縦線を描くときは、手首に合わせ て、指の関節が複雑に動きます。さらに曲線ともなると、手首と指が複雑に運動することがわ かります。一度、あなたも鉛筆をもって確かめてみてください。)あるいは大きな円を描かせて みてください。運筆能力のすぐれている子どもは、きれいな、つまりスムーズな円を描くことがで きますが、そうでない子どもは、多角形に近い円を描きます。もし運筆能力が劣っていると思わ れたら、紙と鉛筆を与えて、日常的に、お絵かきをするとよいでしょう。なお、クレヨンの持ち方 と、鉛筆の持ち方は、基本的に違います。鉛筆を使うようになったら、一度、正しい持ち方を指 導してみてください。ちなみに年長児で、正しく鉛筆を持てる子どもは、全体の五〇%。クレヨン をもつようにして鉛筆を持つ子どもは、三〇%。残りの二〇%の子どもは、鉛筆をきわめて変 則的な持ち方をするのがわかっています。 (計算力のある子どもにする法) 将来計算に強い子どもにするには、早数えの練習をします。手をパンパンとたたき、それを 数えさせる。紙に十個ぐらいまでの丸を描いた紙を見せ、それを早く数えさせる、など。最初 は、「ヒトツ、フタツ、ミッツ……」と数えていた子どもでも、少し練習をすると、「イチ、ニー、サン ……」、さらに、「イ、ニ、サ……」と数えることができるようになり、さらには数そのものを信号 化して、「ピッ、ピッ、ピッ……」と数えることができるようになります。こうなると、「2+3」も、「ピ ッ、ピッとピッ、ピッ、ピッで、5」と答えられるようになります。 ただし一言。計算力と算数の力は別物です。計算力があるから、算数の力があるということ にはなりません。誤解のないように。 (国語力のある子どもにする法) 話せば長くなりますが、小学校の高学年児で国語力が、決定的に劣っていると思われる子ど もを調べたことがあります。その結果、次のことがわかりました。@使う言葉が、だらしない。A 使う言葉(語い)の数が、少ない。B正しい言い方をさせると、照れてしまってできない。 原因はすぐわかりました。その中の一人の子どもの母親が迎えにきていたのですが、私がそ の話をすると、「いやねえー、ダメねえー」と。原因は、母親でした。母親の日ごろの貧弱な会 話能力が、子どもの国語力に影響していたのでした。ではどうするか。子どもに話しかけるとき は、@正しい言葉で、A豊かな言葉で話しかけ、B実際に子どもに正しい言い方をさせます。 たとえば、「ほら、カバン、カバン、バスよ。バス、バス、帽子は?」ではなく、「あなたはカバンを もって、バスを待ちます。帽子を忘れてはいけません」と話しかけます。夕日を見ても、ただ「き れい」ではなく、「すてきですね。すばらしいですね。感動的ですね」といろいろな言い方をして みせます。こうした言葉環境が、子どもの国語力の基礎となります。 |