はやし浩司

冬物語・はやし浩司
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冬物語




この浜松では、冬の感じがあまりない。秋からいつの間にか、春になってしまう。雪も降らな
い。「寒いかなあ」と思う日が、断続的に続いたかと思うと、今度は厚いコートを着ている自分
がどこかおかしくなって、それでそのコートを脱いでしまう。そして春だ……。

学生時代は、あの金沢で過ごした。本多町のあの下宿がなつかしい。毎晩コタツの中で、勉強
するだけの毎日。静かな夜だなあと思っていると、外は真っ白な雪景色。

Yさん……お元気ですか? お嬢さんは今ごろどこかでご活躍ですか?
Tさん……お元気ですか? まだ沼津におられますか?
Iさん……お元気ですか? 君の結婚式に出なかったことだけが、心残りです。あのころ我が家
はめちゃめちゃで、私もほとんど日本にいなかった。こんなこと言い訳にもなりませんが……。
 

このところ、何をしても、うまくいかない。他人は、私のことを「活躍してますね」と言う。しかし当
の私には、その実感がない。まったく、ない。心のどこかだザワザワとあせりばかりを感ずる。
何に対して、あせっているのか。心の安らぎはあるのか? 私は何を求めているのか? 寒く
なると、気力まで衰えてくる。戦うべき相手はすぐそこにいるのに、その相手に向う前に、気後
れしてしまう(01・10・24)。

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冬だから、人生も冬と考えるのはよくない。しかしつい先日まで、「私の人生は、季節にたとえ
ると秋だ」と思っていたので、こうして冬物語を書いていると、何だか、自分の人生まで冬になっ
た感じがする。だから努めて明るい話をしなければならない。そうでないと、気ばかりが滅入っ
てしまう。

だいたいにおいて、この冬物語の画面の色が気に食わない。(自分で冬らしくしたつもりだが、
それはそのままゆうつな雰囲気になってしまっている。)どういうことだ。冬というと、受験の季
節。こういう仕事をしていると、その受験にいやおうなしに巻き込まれていく。これがまたいけな
い。

ところで「冬」と聞いて、明るい気分になる人はいるのだろうか。そこで今、こう考えた。春になっ
たら、「春物語」を書く。思う存分、明るい気分で書く。そうすれば、また私は若返ったことにな
る。そのためにも、今は、うんと暗い気分で、暗い物語を書いておこう、と。私は、意外と単純な
男なのだ。女房にはいつもそう言われる。「あんたは結構、哲学者みたいなことを言うけど、わ
かりやすい人ね」と。それが私の特徴でもある。ははは。

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冬……といっても、冬らしくない、山荘周辺の12月ごろの様子です。

この浜松では、秋になったと思ったら、そのまま秋がつづき、春になってしまいます。つまり雪
が降るわけではなし、いつの間にか、春になってしまいます。私は、浜松のこの温暖な気候
が、大好きです。