はやし浩司

秘密の部屋(2)
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当たって、ぶつかろう!
はやし浩司

今村君のこと

ぼくが小学生のころ、今村君という、どうしようもないほどの乱暴者がいたよ。
すごく乱暴で、ね。みんないつも今村君に泣かされていた。
ぼくもその今村君がこわくて、いつも今村君の言いなりになっていたよ。
だって、今村君にさからうと、何をされるかわからなかったからね。
でもね、今村君には、そんな他人の気持ちなどわからなかったと思う。
みんながペコペコするものだから、自分では人気者と思っていたんだろうね。
が、そのうちぼくは今村君とつきあうのが、おっくうになってきた。
少しずつ、距離をおいて、離れることにしたのさ。
しかし今村君は、それがおもしろくなかったのかもしれない。
だんだんと、ぼくを目のかたきにするようになった。

ぼくが小学6年生になったときのことだった。
ぼくも結構わんぱくで、けんかには負けたことがなかった。
しかし今村君は、ぼくよりずっと背が高くて、それに腕力もあった。
不幸な家の子どもでね。今村君にはお父さんがいなかった。
そういうこともあったのかな。今村君は、ますます乱暴者になっていったよ。
いつの間にか、ぼくと今村君の間は、険悪なものになっていった。

そのぼくがなぜ今村君と決闘することになったかは、
本当のところあまりよく覚えていない。多分ぼくが、「ぼくが一番強い」と
今村君に言ったのだと思う。ぼくは気が小さいくせに、
負けず嫌いのところがあったからね。
それで今村君が、「ならば、おれと勝負しよう」ということに
なったのかもしれない。

ぼくはその日のことをよく覚えているよ。
放課後の夕方でね。場所は学校の裏の空き地。
確か時間と場所は、今村君が指定してきたと思う。
ぼくはその日が来るのが、こわくてこわくてしかたなかった。
で、その日が来てしまったというわけ。
ぼくが裏の空き地へ行くと、そこには、今村君をはさんで、
4〜5人の子分がいたよ。ぼくのほうは、ぼく一人だけ。
今から思うと、今村君も、きっとこわかったのだね。
子分を連れてきたのだから……。

ぼくは今村君を見ると、間をおかないで、
すぐ頭から今村君の体にぶつかっていったよ。
そしてらドスンという音がして、そのまま今村君はうしろへ倒れた。
ぼくもそのまま今村君の体の上に倒れた。
腕力ではかなわないから、ぼくはぼくの石頭を使ったわけ。
ぼくの頭はみんなより少し大きく、小さいころから
石頭って、呼ばれていた。それもあったのかな。
で、決闘はそれで終わり。どっちが勝ったかよくわからないような
決闘だったけど、まあ、多分、今村君はぼくの
迫力に負けたんだと思う。
それからというもの、今村君は、ぼくには乱暴をしなくなったよ。
いろいろなものをくれたしね。

そうそうその今村君ね。今でも、「林君」「林君」って、
言い寄ってくるよ。多分、仲のよい友だちっていうふうかな。
そんなものだね、友だちって……。
君の友だちは、どうかな?