万博構想 |
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(基本構想) |
ここはとある、宇宙基地。日本が管轄する宇宙基地だ。周囲は、荒涼たる砂漠。夜も昼もない。空は漆黒の暗闇。その暗黒の空を飾る無数の星々。まばたきもしない星々。
その宇宙基地の一角。「いやしのドーム」と呼ばれているドームがある。こうした宇宙基地で働く研究者や職員のために用意された、特別のドームである。
ドームの形状は、半球型。半透明の強化ガラスにおおわれている。入り口へは、下方から、動く歩道によって、つながっている。ビジター(以下、ビジターというのは、この会場へやってきた観客をさす)は、その歩道に乗って、ドームの中に入る。 |
(いやしのドーム) |
いやしのドームでは、地球環境がそのまま再現されている。自然の森、田舎の田畑など。研究者が子どものころの農家、蔵、お宮、その宮の祭りをいろどる露天商の店など。近くの丘の上には、小学校がある。
このドームへ入るときは、研究者や職員は、子どもにかえった気分になる。それもそのはず。このドームの中のものは、すべて2倍サイズになっている。つまり研究者や職員は、相対的に自分が二分の一のサイズになる。子どもになった気分を味わうことができる。またこのドーム全体の気候、気温は自動調整されていて、雨は定期的に降るようになっている。
ドームの外周は、地球の景色になっていて、そのときどきの季節(人工的に変化)によって、照明効果によって、変化する。 |
(二分の一の世界) |
農家の縁側には、一人の老婦人がすわって、うたた寝をしている。庭にはニワトリが数羽いる。農家の右側は馬屋になっていて、馬がときおりいななく……。すべて二倍サイズで、この世界へ入ったおとなたちは、縁側の廊下に手をかけるだけで精一杯。農家の中にある、飾り物、玄関に無造作に並べられた野菜など、すべて二倍。農家のあちこちを回るうちに、研究者や職員は、自分が子どもになったかのように錯覚する……。(「子どもは人の父」のコンセプトにより、このドームに入った人は、自分の少年、少女時代にもどることができ、そこで自分の「原点」を再確認する。)
老婦人(老婆)、馬などは、最新のロボットテクノロジーを使って、本物とそっくりの動きをする。
ほかに、この家の主人なのだろうか、その男を中心に、数人の男たちと、数人の子どもたちが、いろりの周りに座って何やら楽しそうに話し込んでいる。壁にかかったカレンダーは、1955年。昔はこのタイプのカレンダーを、「日めくり」と呼んでいた。その1955年といえば、今からちょうど50年前だ。奥の台所には、一人の婦人が立って、何やら料理をしている。
農家を出ると、右側に古い蔵がある。そしてその蔵の横には、なだらかな坂があって、お宮へと続く細い坂道がある。その坂道にそって、露天商の男が大声で何やら売っている。これらの人間や動物は、すべてコンピュータしかけで、本物と同じように動く。 |
(蔵の中) |
蔵の中は、一転、ハイテク機器が並び、1955年の日本の映像が、360度、全景に渡って映し出されている。流れる音楽も、そのころのものだ。
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(出しもの) |
小学校の中へ入ると、一方が、小学1年生のクラスになっている。教室には先生以外、だれもいない。先生は、机に座って何やら資料の整理をしている。机の上には、教科書などが積んである。黒板には、「昭和29年10月28日、晴れ」と書いてある。
もう一つの部屋は、小学6年生の教室。何人かの子どもたちが、何やら座ってゲームのようなものをしている。(おとなが演ずる子どもたちが、いろいろなゲームをしてみせている。服装は、当時のツギハギだらけのスカートやズボンなど。)
学校の庭には、二倍サイズのブランコやすべり台が置いてある。砂場には、ついさきほどまで誰かが遊んでいたのだろう。スコップやバケツが無造作に置いてある。庭の横には大きなベンチ(二倍サイズ)が置いてあり、このベンチに座って、身体を休めることもできる。 |
(露天と露天商の男)
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お宮の前にはいくつかの露天が並んでいる。値段は当時の値段。小銭もお札も、二倍サイズ。寅さん風の男(ロボット)が、大声で、客寄せをしている。陳列台の上には、ブリキのおもちゃなどが、ところ狭しと並んでいる。露天商についてきたと思われる女の子(コンパニオン)が、露天商の父親を手伝って、露天でものを売っている。
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(お宮) |
どこの村にもある、鎮守の神様。お宮。大きな垂れ幕があり、それには「祭」と書いてある。笛や太鼓の音が聞こえている。「♪ドンヒャララ、ドンヒャララ……」と。(注、無宗教的であること。お宮も、神社を連想させるものではなく、ただのお宮風にする。)
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(花畑と野菜畑)
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小道を中へ入っていくと、花畑と野菜畑になっている。宇宙基地の研究者や職員は、この花畑や野菜畑で、自分の好きな花や野菜を栽培したりすることができる。ところどころに休憩用のテーブルとイスが置いてある。(このテーブルとイスは、一倍サイズ。)花畑のスミでは、二人の研究員(ロボット人形)が、花を楽しんでいる。(季節感は、照明によって演出。気温(ドーム内の温度)も、プラスマイナス10度くらいの範囲で変化。ドームの中央入り口には、そのときどきの季節、時刻が電光掲示板で表示される。) |
(人工季節と人工天候、
人工昼夜、人工風) |
ここでは、一日の間に、(春)→(夏)→(秋)の三つの季節が再現される。そのつど周囲の照明がかわり、それぞれの季節の雰囲気をかもしだす。また天候は自動的に調整され、ほぼ一時間サイクルで、昼(50分)→夜(夜は10分くらい)が、再現される。また一時間ごとに警報とともに、にわか雨が降る。雨の時間は5分くらい。ドーム内を回転しながら吹く風も、(風力ゼロ)から(風力10)まで、そのつど変化する。
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(電光掲示板) |
電光掲示板には、そのときの(1)季節、(2)時刻、(3)気温、(4)湿度、(5)酸素濃度、(6)窒素濃度、(7)二酸化炭素濃度、(8)風力が、表示されている。人工雨が降る5分前には、「○分後に、雨が降ります」(日本語と英語など)とアナウンスが始まる。そして5分間、雨が降る。 |
(人工雨) |
人工雨のほとんどは、リサイクルされる。(雨)→(回収)→(小川)→(浄化)→(雨)→……と。こうした宇宙基地では、水は貴重なのだ。一滴もムダにできない……!
小川には魚が泳いでいる。ビジターは、簡単な水遊びができる。(深くないこと。安全には注意すること。) |
(出口) |
出口は、学校の中の階段が、下へつながっていて、そこから地下のホールにつながっている。 |
(地下ホール) |
地下ホールは、宇宙基地の内部をイメージしたもので、夢のある未来の宇宙生活を表現したものにする。
ここでは地上の様子とは一変して、未来の学校、未来の教育をイメージしたものを陳列する。 |
(宇宙基地の内部) |
宇宙基地は、大きく分けて、(1)居住区、(2)研究室になっている。居住区は、(3)寝室、食堂、居間、通信室、教育室に分かれている。教育室では、宇宙基地で生まれた子どもが三人、教育を受けている。
また研究室では、数名の科学者が、天文観測をしたり、コンピュータをにらんで、何やら相談している。窓がいくつかあり、その窓の向こう(映像)には、無数のドームや宇宙基地が並んでいる。 |
(未来型の教育システム) |
ここでのメインテーマは、未来型教育のシステムを紹介すること。ハイテク機器を駆使し、ロボット教官が、子どもの授業を担当する。「教える教育」から「考える教育」をテーマにする。
電子機器……電子黒板、無数に並ぶ、コンピュータ画面など。ここを訪れた子ども(ビジター)は、未来の教育を体験できる。
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(教育体験) |
ロボット教官が、子どもたちにむかって、こう発言する。
「正三角形形を、四つの同じ大きさ、同じ形のものに分けてください」
「9個の点が図のように並んでいる。四本の連続した直線で、これら9つの点をつないでください」
(この種の問題を10問用意して、子どもたちに知恵比べをさせる。)
そのときロボットが、子どもたちと問答しながら授業を進める。 |