はやし浩司

子育て四次元論
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はやし浩司

子育て四次元論

子育てがもつ、四つの方向性について

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 子育ての方向性 
 過去を見る
心の中を見る


あなたがどこかを旅をするとき、
あなたは前を見て、
うしろを見て、
そして左右を見ながら
自分の位置を知りますね。
それと同じように、
子育てをするときも、
前を見て。
うしろを見て、
そして左右を見ながら
子育てをします。
それがここでいう
「子育て四次元論」です。

ふと油断すると、
子育てはすぐ
袋小路に入ってしまいます。
そんなとき、
あなたの位置を知り、
そしてその方向性を知るのが、
この四次元論です。

あなたの道しるべとして、
この四次元論を
どうかご利用ください。

はやし浩司


●子育て四次元論

  子育ての方向性を考えるとき
        子育てには四つの方向性がある。

@未来に向かう……子どもに子ども(あなたからみれば孫)の育て方を教えるのが、子育
て。「あなたが親になったら、こういうふうに子どもを育てるのですよ」「こういうふうに子どもを
叱るのですよ」と。もっと言えば、子育ての見本を見せるのが子育て。「親子というのはこうい
うものですよ」「夫婦というのは、こういうものですよ」「幸せな家庭というのはこういうものです
よ」と。あなたの子どもは親になったとき、あなたがした子育てを繰り返す。それを想像しなが
ら、子育てをする。

A過去に向かう……あなたは今、自分が受けた子育てを繰り返しているにすぎない。そこで
あなたの過去をさぐってみる。あなたは心豊かで、愛情深い家庭環境で育っただろうか。もし
そうならそれでよし。が、そうでなければ、あなたの子育ては、どこかがゆがんでいるとみる。
その「ゆがみ」に気づくこと。あなたはひょっとしたら、そのゆがみに気づかないまま、今の子
育てをしているかもしれない。そしてさらにそのゆがみを、あなたから、今度はあなたの子ども
へ伝えているかもしれない。……と、言っても難しいことではない。この問題だけは、気づくだ
けでよい。しばらく時間はかかるが、それでなおる。

B外に向かう……自分の子育てを「外」から見る。自分の子育てを、他人の子育てと比較す
る。兄弟や友人、さらには近所の人たちの子育てと比較する。もしできれば、世界の子育てと
比較してみるのもよい。子育てでこわいのは、独善と独断。「子どものことは私が一番よく知っ
ている」「私が子どもにすることには、まちがいはない」と豪語する親ほど、子育てで失敗しや
すい。要は風通しをよくするということ。そのために視野を高くもつ。

C内に向かう……子育てはただの子育てではない。よく「育自」という言葉を使って、「子育て
とは自分を育てることだ」と言う人がいる。まちがってはいないが、しかし子育ては、そんな甘
いものではない。親は子どもを育てながら、幾多の山を越え、谷を越え、いやおうなしに育て
られる。親が子どもを育てるのではない。子どもが親を育てる。子どもが親に、人間がどうい
うものかを教える。

 ある母親は長男を交通事故でなくした。それから数年後、道で会うと、その母親は神々しい
ほどまでの人になっていた。こうした不幸は決してあってはならないものだが、しかしその母親
は、長男をなくしたという苦しみや悲しみを乗り越えることによって、自分を育てることができ
た。「お元気ですか?」と声をかけると、うれしそうにニッコリと笑ったが、私はそれ以上、話し
かけることができなかった。近寄りがたくすら感じた。
 以上、子育てに、未来、過去、外、内の四つの方向性があることを、私は「子育て四次元
論」と呼んでいる。

(付記)
●八一〇年後には、すべてあなたの子孫 
 今あなたは子育てをしながら、ひょっとしたら、「うちの子さえよければ」と考えているかもし
れない。「他人の子どもはともかくも、とりあえずうちの子だけでも、うまくいけばそれでいい」
と。しかしあなたが自分の子どもを育てながら、その子どもの中に孫、さらにその孫の中にそ
のまた子どもを見ることができるようになると、この考えはまちがっていることを知る。こんな
計算をしてみた。

 仮に一組の夫婦(二人)が、二人の子どもを産み、それぞれの子どもが結婚して、また二人
ずつの子どもを産んだとする。それを二七代繰り返すと、その数は一億三〇〇〇万人を超え
る。ほぼ今の日本の人口と同じになる。一世代を三〇年とすると、三〇年掛ける二七で、八
一〇年。つまり八一〇年後には、日本中のすべての人があなたの子孫ということになる。

●視野を未来に
 あなたは今、自分の子どものことを心配する。しかし孫が生まれれば、あなたはその孫のこ
とを心配するだろう。もしあなたに永遠の命があるなら、あなたはそのまた子どものことを心
配するだろう。……そういうふうに考え始めると、今、あなたが「自分の子さえよければ」という
考えが、実に小さなものだと知るはずだ。そしてその時点で、あなたは、自分の子どものこと
は当然としても、同時にこの社会全体、日本全体、世界全体の問題を考えることも重要だと
気づくはずだ。

●私のジレンマ
 実のところ、私もこの問題では悩んでいた。教育論を論じながら、いつも心のどこかで(自分
の子ども)と、(他人の子ども)を区別していた。自分の子どもに言う言葉と、他人の子どもに
言う言葉が、どこか違っていた。それは実に心苦しいジレンマでもあった。人間誰しも、内ヅラ
と表ヅラ、あるいは本音と立て前を使い分けて生きるのは、たいへんなことだ。だからある日
から、私はそれをやめた。やめて、自分の子どもにも、他人の子どもにもあるがままに接する
ようにした。しかしそれが本当にできるようになったのは、自分の子どもの中に孫、さらにはそ
のまた孫を見ることができるようになってからである。子どもに子ども(あなたから見れば孫)
の育て方を教えるということには、そういう意味も含まれる。