法律の世界では、「疑わしきは、罰せず」という。しかし教育の世界では、「疑わしきは、罰する」。疑わしいものは、まず遠ざける。子どもに渡すものは、しっかりと安全が確認されてからでよい。そういう姿勢が、子どもの世界を守る。
●ゲーム脳
このところ、「ゲーム脳」という言葉が、よく話題になる。ゲームづけになった脳ミソを「ゲーム脳」という。このタイプの脳ミソには、特異的な特徴がみられるという。しかし、「ゲーム脳」とは、何か。
『脳の中に、前頭前野という、さまざまな命令を身体全体に出す司令塔がある。記憶、感情、集団でのコミュニケーション、創造性、学習、そして感情の制御や、犯罪の抑制をも司る部分である。
この司令塔が、ゲームや携帯メール、過激な映画やビデオ、テレビなどに熱中しすぎると働かなくなり、いわゆる「ゲーム脳」と呼ばれる状態になる』(日大大学院・森教授)と。
つまりゲームばかりしていると、管理能力全般にわたって、影響が出てくるというわけである。このゲーム脳については、賛否両論があり、「ゲームをやっても脳が壊れてしまうことはない」と主張する学者(東北大学・川島教授)もいる。
が、私がここで書きたいのは、そのことではない。
●なぜ、抗議の嵐が?
この日本では、ゲームを批判したり、批評したりすると、ものすごい抗議が殺到する。実は、私自身も経験している。6年前に、『ポケモンカルト』という本を出版したときである。上記の森教授らのもとにも、「多くのいやがらせが、殺到している」(報道)という。
考えてみれば、これは、おかしなことではないか。ゲームにもいろいろあるが、どうしてそのゲームのもつ問題性を指摘しただけで、抗議の嵐が、わき起こるのか?
森教授らは、「ゲームばかりしていると、脳に悪い影響を与える危険性がありますよ」と、むしろ親切心から、そう警告している。それに対して、いやがらせとは!
●動き出した文科省
そこで文部科学省は、ゲームやテレビなどを含む生活環境要因が子どもの脳にどう影響を与えるかを研究するために、2005年度から1万人の乳幼児について、10年間長期追跡調査することを決めた。この中で、ゲームの影響も調べられるという(「脳科学と教育」研究に関する検討会の答申)。
近く中間報告が、公表されるだろう。が、しかしここで誤解してはいけないのは、「ゲームは危険でないから、子どもにやらせろ」ということではない。「ゲームは、危険かもしれないから、やらせないほうがよい」と、考えるのが正しい。とくに動きのはげしい、反射運動型のゲームは、避けたほうがよい。
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