キレる子ども
部屋の中はまるでクモの巣みたい!
砂糖は白い麻薬
●独特の動き
キレるタイプの子どもは、独特の動作をすることが知られている。動作が鋭敏にな
り、突発的にカミソリでものを切るようにスパスパとした動きになるのがその一つ。
原因についてはいろいろ言われているが、脳の抑制命令が変調したためにそうなると
考えるとわかりやすい。そしてその変調を起こす原因の一つが、白砂糖(精製された
砂糖)だそうだ(アメリカ小児栄養学・ヒューパワーズ博士)。つまり一時的にせよ
白砂糖を多く含んだ甘い食品を大量に摂取すると、インスリンが大量に分泌され、そ
のインスリンが脳間伝達物質であるセロトニンの大量分泌をうながし、それが脳の抑
制命令を阻害する、と。
●U君(年長児)のケース
U君の母親から相談があったのは、四月のはじめ。U君がちょうど年長児になったと
きのことだった。母親はこう言った。「部屋の中がクモの巣みたいです。どうしてで
しょう?」と。U君は突発的に金きり声をあげて興奮状態になるなどの、いわゆる過
剰行動性が強くみられた。このタイプの子どもは、まず砂糖づけの生活を疑ってみ
る。聞くと母親はこう言った。
「おばあちゃんの趣味がジャムづくりで、毎週そのジャムを届けてくれます。それ
で残したらもったいないと思い、パンにつけたり、紅茶に入れたりしています」と。
そこで計算してみるとU君は一日、一〇〇〜一二〇グラムの砂糖を摂取していること
がわかった。かなりの量である。そこで私はまず砂糖断ちをしてみることをすすめ
た。が、それからがたいへんだった。
●禁断症状と愚鈍性
U君は幼稚園から帰ってくると、冷蔵庫を足で蹴飛ばしながら、「ビスケットをく
れ、ビスケットをくれ!」と叫ぶようになったという。急激に砂糖断ちをすると、麻
薬を断ったときに出る禁断症状のようなものがあらわれることがある。U君のもそれ
だった。夜中に母親から電話があったので、「砂糖断ちをつづけるように」と私は指
示した。が、その一週間後、私はU君の姿を見て驚いた。U君がまるで別人のよう
に、ヌボーッとしたまま、まったく反応がなくなってしまったのだ。何かを問いかけ
ても、口を半開きにしたまま、うつろな目つきで私をぼんやりと私を見つめるだけ。
母親もそれに気づいてこう言った。「やはり砂糖を与えたほうがいいのでしょうか」
と。
●砂糖は白い麻薬
これから先は長い話になるので省略するが、要するに子どもに与える食品は、砂糖の
ないものを選ぶ。今ではあらゆる食品に砂糖は含まれているので、砂糖を意識しなく
ても、子どもの必要量は確保できる。ちなみに幼児の一日の必要摂取量は、約一〇〜
一五グラム。この量はイチゴジャム大さじ一杯分程度。もしあなたの子どもが、興奮
性が強く、突発的に暴れたり、凶暴になったり、あるいはキーキーと声をはりあげて
手がつけられないという状態を繰り返すようなら、一度、カルシウム、マグネシウム
の多い食生活に心がけながら、砂糖断ちをしてみるとよい。効果がなくてもダメも
と。砂糖は白い麻薬と考える学者もいる。子どもによっては一週間程度でみちがえる
ほど静かに落ち着く。
●リン酸食品
なお、この砂糖断ちと合わせて注意しなければならないのが、リン酸である。リン酸
食品を与えると、せっかく摂取したカルシウム分を、リン酸カルシウムとして体外へ
排出してしまう。と言っても、今ではリン酸(塩)はあらゆる食品に含まれている。
たとえば、ハム、ソーセージ(弾力性を出し、歯ごたえをよくするため)、アイスク
リーム(ねっとりとした粘り気を出し、溶けても流れず、味にまる味をつけるた
め)、インスタントラーメン(やわらかくした上、グニャグニャせず、歯ごたえをよ
くするため)、プリン(味にまる味をつけ、色を保つため)、コーラ飲料(風味をお
だやかにし、特有の味を出すため)、粉末飲料(お湯や水で溶いたりこねたりすると
き、水によく溶けるようにするため)など(以上、川島四郎氏)。かなり本腰を入れ
て対処しないと、リン酸食品を遠ざけることはできない。
●こわいジャンクフード
ついでながら、W・ダフティという学者はこう言っている。「自然が必要にして十分
な食物を生み出しているのだから、われわれの食物をすべて人工的に調合しようなど
ということは、不必要なことである」と。つまりフード・ビジネスが、精製された砂
糖や炭水化物にさまざまな添加物を加えた食品(ジャンク・フード)をつくりあげ、
それが人間を台なしにしているというのだ。「(ジャンクフードは)疲労、神経のイ
ライラ、抑うつ、不安、甘いものへの依存性、アルコール処理不能、アレルギーなど
の原因になっている」とも。
●U君の後日談
砂糖漬けの生活から抜けでたとき、そのままふつう児にもどる子どもと、U君のよ
うに愚鈍性が残る子どもがいる。それまでの生活にもよるが、当然のことながら砂糖
の量が多く、その期間が長ければ長いほど、後遺症が残る。
U君のケースでは、それから小学校へ入学するまで、愚鈍性は残ったままだった。白
砂糖はカルシウム不足を引き起こし、その結果、「脳の発育が不良になる。先天性の
脳水腫をおこす。脳神経細胞の興奮性を亢進する。痴呆、低脳をおこしやすい。精神
疲労しやすく、回復がおそい。神経衰弱、精神病にかかりやすい。一般に内分泌腺の
発育は不良、機能が低下する」(片瀬淡氏「カルシウムの医学」)という説もある。
子どもの食生活を安易に考えてはいけない。
(はやし浩司のサイト:http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/)
(実際あった、ケースより)
「私に包丁を投げつけます!」・発作的に暴れる子ども
ある日の午後。一人の母親がやってきて、青ざめた顔で、こう言った。「娘(年中
児)が、包丁を投げつけます! どうしたらよいでしょうか」と。話を聞くと、どう
やら「ピアノのレッスン」というのが、キーワードになっているようだった。母親が
その言葉を口にしただけで、子どもは激変した。「その直前までは、ふだんと変わり
ないのですが、私が『ピアノのレッスンをしようね』と言ったとたん、別人のように
なって暴れるのです」と。
典型的なかんしゃく発作による家庭内暴力である。このタイプの子どもは、幼稚園
や保育園などの「外」の世界では、信じられないほど「よい子」を演ずることが多
い。柔和でおとなしく、静かで、その上、従順だ。しかもたいてい繊細な感覚をもっ
ていて、頭も悪くない。ほとんどの先生は、「ものわかりがよく、すなおなよい子」
という評価をくだす。しかしこの「よい子」というのが、クセ者である。子どもはそ
の「よい子」を演じながら、その分、大きなストレスを自分の中にため込む。そして
そのストレスが心をゆがめる。つまり表情とは裏腹に、心はいつも緊張状態にあっ
て、それが何らかの形で刺激されたとき、暴発する。ふつうの激怒と違うのは、子ど
も自身の人格が変わってしまったかのようになること。瞬間的にそうなる。表情も、
冷たく、すごみのある顔つきになる。
ついでながら子どもの、そしておとなの人格というのは、さまざまな経験や体験、
それに苦労を通して完成される。つまり生まれながらにして、人格者というのはいな
いし、いわんや幼児では、さらにいない。もしあなたが、どこかの幼児を見て、「よ
くできた子」という印象を受けたら、それは仮面と思って、まずまちがいない。つま
り表面的な様子には、だまされないこと。
ふつう情緒の安定している子どもは、外の世界でも、また家の中の世界でも、同じ
ような様子を見せる。言いかえると、もし外の世界と家の中の世界と、子どもが別人
のようであると感じたら、その子どもの情緒には、どこか問題があると思ってよい。
あるいは子どもの情緒は、子どもが肉体的に疲れていると思われるときを見て、判断
する。運動会のあとでも、いつもと変わりないというのであれば、情緒の安定した子
どもとみる。不安定な子どもはそういうとき、ぐずったり、神経質になったりする。
なお私はその母親には、こうアドバイスした。「カルシウムやマグネシウム分の多
い食生活にこころがけながら、スキンシップを大切にすること。次に、これ以上、症
状をこじらせないように、家ではおさえつけないこと。暴れたら、『ああ、この子は
外の世界では、がんばっているのだ』と思いなおして、温かく包んであげること。
叱ったり、怒ったりしないで、言うべきことは冷静に言いながらも、その範囲にとど
めること。このタイプの子どもは、スレスレのところまではしますが、しかし一線を
こえて、あなたに危害を加えるようなことはしません。暴れたからといって、あわて
ないこと。ピアノのレッスンについては、もちろん、もう何も言ってはいけません」
と。
【補足】……
|