1学期の授業録


使用教科書/『高等学校 新現代社会 改訂版』清水書院(清水・現社517)

授業の方法
3単位の授業。授業を2本立てで行なう。
理論編=基本的に教科書の内容を学習する。テーマとしては「人間らしく(自分らしく)豊かに生きることを考える」。内容的には「労働と経済」→「憲法と人権」→「青年期」で1年間授業を行なう。
実態分析編=週の最後の授業は、「新聞を読み、分析し、発信する」というテーマで行なう。1学期は、主に「新聞を読み、分析する」。2学期は「新聞を分析し、発信する」ことを主眼に置き、「新聞切り貼り作品コンクール」(中日新聞社主催)に応募する作品を作成する。

第1回 自分らしい未来に向けて〜オリエンテーション〜
現代社会の授業でこの1年、何を学習するのかを解説した。≪理論編≫では、年間を通して「人間らしく豊かに生きることを考える」ことをテーマとしたい。≪実態分析編≫では、「新聞を読み、分析し、発信する」というテーマで行なう。また、評価方法についても述べる。
第2回 高校生はもう大人?まだ子ども?〜青年期とは〜
キミたちは、もう大人なのだろうか?まだ子どもなのだろうか?からだの面から見れば、ほとんどの人が大人と言えるだろう。じゃあ、こころの面から見たら?この時期は心が不安定になりがちで、大人とはいえない。だから,心理学者は、「境界人」とよんだり、「モラトリアム」と言ったりした。大人になるっていうのは、実はたいへんなのだ。大人になるための準備をしっかりしよう。

八重島建二他『現代心理学』(培風館)、NHK放送文化研究所編『NHK中学生・高校生の生活と意識調査』(NHK出版)、朝日新聞学芸部編『ティーンズメール』(教育資料出版会)

第3回 実態分析編≫「新聞を読む」@
今回は最初なので、新聞に書かれた文章の構成を分析した。
第4回 フリーターの理想と現実〜フリーターしますか〜
今回と次回はフリーターについて考える。今、フリーターは417万人いる(2001年)。若者の5人に1人の割合。なぜフリーターになるのか?VTRをみて、フリーターのメリット・デメリットを考えた。そして、しかし、しばらくの間だけと思っていたフリーター生活もなかなか抜け出せず、年月が過ぎていく。そして今、30代のフリーターも80万人。彼らは口をそろえて「働きたい」という。その姿もVTRでみた。キミたちはどう思った?

『世の中現代社会 シュウショク〜変わりゆく労働事情〜』、『NHKスペシャル フリーター 417万人の衝撃』、玄田有史・曲沼美恵『ニート フリーターでもなく失業者でもなく』(幻冬舎)

第5回 漂流するフリーター〜フリーターへの誤解〜
前回の最後に、30代フリーターの姿をVTRでみた。フリーターというと、やる気がないとか、考えが甘いとか、就業意識が低いとか、大人たちは散々に言う。しかし果たしてそうなのだろうか?VTRでフリーターの働き方をみた。するとこんな事実が浮かび上がってくる。フリーターは、やる気を失っているのではなく、やる気を失わさせられているのである(こんな日本語あるのかどうか分からないが)。つまり、フリーターは決して就業意識の低い人たちではない。働きたいのである。それは、前回見たVTRでも、30代フリーターが証言していた。

『NHKスペシャル フリーター 417万人の衝撃』、『NHKスペシャル フリーター漂流〜モノ作りの現場で〜』、内閣府『平成15年版 国民生活白書』WEB

第6回 実態分析編≫「新聞を読む」A
自分の関心のある記事を選んで、それについてコメントを書いた。
第7回 矛盾する企業〜フリーター問題の核心〜
政府や企業はフリーター増加は問題だという。それは、正社員とフリーターを比較するれば分かる。しかしながら、企業は新規採用を減らし、パートや派遣社員などフリーターを増やそうとしており、2050年には正社員とフリーターが半々になるというデータもある。なぜ企業はフリーターを増やそうとしているのか?その点を考えた。なお、日経連が1995年に発表した『新時代の「日本的経営」』は注目すべきであろう。これが10年たった今、実現しようとしているのである。

『NHKスペシャル フリーター 417万人の衝撃』、『がっちりマンデー』2006年4月9日放送、斎藤貴男『機会不平等』(文藝春秋)、内閣府『平成15年版 国民生活白書』WEB

第8回 ゆとり教育が生むもの〜格差の教育〜
清工は、平成19年度末に静岡工業高校と統合される。つまり、静岡県から静岡市内に2つも工業高校はいらないと認定された(一方で静岡市内には3つも商業高校がある)。一方で、道路を隔てたところにある県内でも有数の進学校である清水東高校(昨年入試盗作で全国で話題に)は、文科省からSSHに指定され、相当な額が配られた。単純化すれば「できる者」にはお金をかけ、「できん者」にはお金はかけない教育が始まっている。これが「ゆとり教育」の実態である。「ゆとり教育」を推進した三浦朱門は露骨に言う。「できん者はできんままでけっこう。……せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいいんです」「エリート教育とはいいにくい時代だから、回りくどく言っただけの話だ」と。そして、経済的社会的弱者の多くが「できん者」と認定され、さらに「雇用柔軟型グループ」になっていくのである。この延長上に教育基本法の「改正」がある。

文部科学省WEB、清水東高校WEB、苅谷剛彦『大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史』(中公新書)、苅谷剛彦『NHK人間講座 「学歴社会」という神話 戦後教育を読み解く』(日本放送出版教会)、苅谷剛彦『教育改革の幻想』(ちくま新書)、斎藤貴男『教育改革と新自由主義』(寺子屋新書)、佐藤学『「学び」から逃走する子どもたち』(岩波ブックレット)

第9回 実態分析編≫「新聞を読む」B
先週に引き続き、自分の関心のある記事を選んで、それについてコメントを書いた。
第10回 ≪特論≫憲法って、なあに?〜憲法記念日を前に〜
憲法は何のためにあるのか?憲法はみんなが守るルールかというと、それは違う。逆に、憲法はみんなが「権力」に守らせるきまりである。それは、人びとの人権を保障するためである。これを立憲主義という。これは市民革命の成果であり、憲法は人類の歴史の英知であるといってよい。権力は暴走しがちであることは、歴史が教えてくれる。その権力に枠をあてはめたり、縛りをかけたりするのが憲法である。だから、権力にある人びとにとっては、憲法は常に「邪魔な存在」なのである。日本における改憲の大合唱は権力の側からしかきこえてこない。

浦部法穂『全訂 憲法学教室』日本評論社、平和憲法のメッセージ(水島朝穂さん(早大)のweb)

第11回 働きすぎの時代〜さまざまな労働問題〜
これまでフリーターの問題を扱ってきたが、清工生を卒業して就職する者のの多くは正社員となる。しかしながら、正社員もこれまたたいへんである。つまり、長時間労働が待っている。労働基準オンブズマンWEBをのぞいてみると、働きすぎの悲鳴が聞こえる。今回は、どのような人たちが長時間労働をしているのか、そして長時間労働の末に待っているのは何かを考えた。家庭生活への影響も大きいね。

森岡孝二『働きすぎの時代』(岩波新書)、大阪過労死問題連絡会WEB、労動基準オンブズマンWEB、『平成15年版 国民生活白書』WEB

第12回 世界に広がる長時間労働〜世界の一体化〜
働きすぎは、日本だけの問題ではない。いま、世界中に働きすぎが広がっている。先進国でも、1980年代後半あたりから労働時間が長くなっている。なぜか?1980年代後半に何があったのかを考えた。冷戦の終結にともない、資本主義国の大企業は東欧などの社会主義国に乗り込んでいき市場がグローバル化した。例えば、日本の大企業は1990年代から怒涛のごとく中国や東南アジアに出て行った。中国や東南アジアの人びとは安価で長時間労働をいとわない。そのかれらと日本人労働者は競争しなければならなくなった。だから、働きすぎが問題になっているのである。しかし、日本の大企業のやり方は、中国や東南アジアの人びとからも反発を買いはじめつつある。

森岡孝二『働きすぎの時代』(岩波新書)、渡辺治『自民党・新憲法草案を読む−改憲派のねらいと困難』(九条の会)、『平成15年版 国民生活白書』WEB

第13回 実態分析編≫「新聞を読む」C
今週は、投書欄を読んで、それに対する自分の意見を400字程度で書いた。これを新聞社に送る予定です。新聞に載るかな?
第14回 家庭も出先も職場になった〜高度情報化社会〜
ボクはもっていないけれど、みんなが持っているケータイ。ケータイを手放せない人も増えている。日本政府は、2001年より「e-Japan戦略」を展開し、今では2010年までにユビキタスネット社会を目指す「u-Japan政策」を進めている。ユビキタスネット社会とは、『情報通信白書』によれば、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」簡単にネットワークにつながる社会のことである。しかし、こうした情報通信機器の発達が私たちの労働時間を増やしているのではないだろうか?ホッと家でくつろいでいるときに、突然ケータイが…。しかも相手は会社の上司からなんてことも少なくない。

森岡孝二『働きすぎの時代』(岩波新書)、『平成17年情報通信白書』WEB、斎藤貴男『不屈のために 階層・監視社会をめぐるキーワード』(ちくま文庫)、斎藤貴男『「非国民」のすすめ』(筑摩書房)

第15回 自習
テストも近いので、自習にする、といいましたが、しかし実態は、テスト作成に忙しく、授業の予習が間に合いませんでした。今年度は、HR活動も入れて18時間持っているので、学校で予習をする時間がないのです。ボク自身が「過労」状態。シャレにならん。
中間テスト
第16回 テスト返却・答え合わせ
テストを返却しました。前日まで修学旅行の下見に行き、帰ってきてから採点。疲れた。平均点35.8点(50点満点)。よく勉強しました!
第17回 「便利」なコンビニ生活〜「豊かさ」とは?〜
私たちの消費行動が長時間労働を促しているということもある。私たちは、より良いもの(高品質・新鮮)を、より安く、より便利にものを手に入れようとする。例えば、ネットショッピングなどで商品を予約・注文したりする。すると全国どこでもすぐに商品が手元に届く。しかも送料なしで。しかし、よく考えてみよう。だれが、どのようにしてその商品を私たちの手元に届けるのか?送料は? このこのところ、ドラック運送業における長時間労働が問題になっている。結果として、飲酒運転・交通事故などの問題を引きおこしている。例のJR西日本の福知山線の脱線事故も、時刻表どおり運行しろという私たちの強い要求があのような大惨事を招いたのかもしれない。

森岡孝二『働きすぎの時代』(岩波新書)、セブン-イレブン・ジャパンWEB、斎藤貴男『不屈のために 階層・監視社会をめぐるキーワード』(ちくま文庫)、斎藤貴男『「非国民」のすすめ』(筑摩書房)

第18回 労働基準法を味方につけよう!〜労働の権利〜
これまで働きすぎる原因を考えてきた。今回からは、働きすぎにストップをかけ、「人間らしく」生きていくことを考えていく。まずは、労働基準オンブズマンWEBに寄せられた労働時間や給料に関するいくつかのお悩みをもとに、とりあえずの対処法を紹介した。労働基準法ではいったいどうなっているのか? 労働基準法に違反する会社に対しては、どうしたらよいのかなどを考えた。とはいうものの実際のところ、「解決」には程遠い。だから「とりあえずの対処法」なのである。これが「苦悩」だねぇ。

森岡孝二『働きすぎの時代』(岩波新書)、萬井隆令監修『バイト・フリーター110番』(かもがわブックレット)、新しい生き方基準をつくる会著、中西新太郎監修『フツーを生きぬく進路術 17歳編』(青木書店)、労働基準オンブズマンWEB、日本労働弁護団WEB

第19回 実態分析編≫「新聞を読む」C
今週は、自分の関心のある記事を選んで、それについて400字程度でコメントを書いた。良いのがあれば、新聞社に送る予定。
第20回 突然、クビだといわれました〜労働の権利〜

萬井隆令監修『バイト・フリーター110番』(かもがわブックレット)、新しい生き方基準をつくる会著、中西新太郎監修『フツーを生きぬく進路術 17歳編』(青木書店)、労働基準オンブズマンWEB、日本労働弁護団WEB、労働どっとネットWEB

第21回 求人票、ココをチェック!〜保険をめぐって〜

橘木俊詔+橘木研究室編著『安心して好きな仕事ができますか』(東洋経済新報)、新しい生き方基準をつくる会著、中西新太郎監修『フツーを生きぬく進路術 17歳編』(青木書店)、萬井隆令監修『バイト・フリーター110番』(かもがわブックレット)、厚生労働省WEB、社会保険庁WEB

第22回 実態分析編≫「新聞を読む」D
今週は、自分の関心のある記事を選んで、それについて400字程度でコメントを書いた。良いのがあれば、新聞社に送る予定。
第23回 男性も育児に挑戦!〜少子高齢社会〜

森岡孝二『働きすぎの時代』(岩波新書)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)

第24回 ワーク・ライフ・バランスに向けて〜企業の社会的責任〜
男女共同参画社会を進め、少子化に歯止めをかける鍵は、企業にある。次世代育成支援対策推進法の制定や育児・介護休業法の改正など、法は整備されつつある。しかし、いまだに男性の育休がマイナス査定に結びつくなど、企業の重い腰は動きそうにない。どうしたら企業を動かすことができるのだろうか?その一つの例として、CSR(企業の社会的責任)が最近注目されていることを紹介した。企業活動の基本は利益追求であるが、それはさまざまな問題をおこしてきた。そこで企業が責任ある行動をするために、CSRに取り組むことが求められている。CSRに取り組んでいる企業こそ、優秀な人材が集まり成長する。男女共同参画に取り組んでいるかどうかも、CSRの一つの観点となりつつある。いまや、金もうけだけでは企業はダメなのである。

伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、『少子化社会白書』WEB、『男女共同参画白書』WEB、『国民生活白書』WEB

第25回 実態分析編≫「新聞を読む」E
今週は、自分の関心のある記事を選んで、それについて400字程度でコメントを書いた。良いのがあれば、新聞社に送る予定。

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