「新聞切り抜き作品コンクール」の指導


はじめに
11月下旬、職員会議を終えて、職員室に戻ると、生徒が来た。何人かの生徒が残って、作業をやっているという。私は教室に向かった。教室には10数人の生徒がおり、それぞれ課題をやっていた。午後6時半を超えていた。
今年度、私は教員になって初めて、現代社会を担当することになった。清工では、現代社会は3年生で履修し、週3時間ある。週3時間の、新規の授業は、私にとって重い。いろいろ考えた結果、週3時間のうち、2時間は通常の授業、1時間は新聞を使った授業を行なうことにした。ここでは、2学期の実践について、途中経過ではあるが、簡単に報告したい。
新聞切り抜き作品コンクールに応募しよう

現在、各新聞社において、NIE(エヌ・アイ・イー)が進められている。いうまでもないが、NIEとは、「Newspaper In Education(教育に新聞を)」の略称で、学校などで新聞を教材として学習を進める活動のことである。

主要新聞社のウェブを見ても、必ずNIEのサイトがあり、それぞれに力を入れていることが分かる。その中でも『中日新聞』のNIEのサイト(URL http://www.chunichi.co.jp/nie/)が充実していて、参考になる点が多い。
ところで、中日新聞社では、毎年「新聞切り抜き作品コンクール」を行なっている。今回で、第10回目(10年目)の開催で、それなりに伝統のあるコンクールになりつつある。概要は以下のとおりである(省略)。
6月ごろ、私は、中日新聞社NIE事務局からコンクールの案内や『小・中・高校の先生が作った新聞活用の事例集・第2集』、コンクールの『優秀作品集』が、学校に送付されてきたのをたまたま見つけた。私は面白そうだなと思い、生徒に取り組ませようと考えた。
展開
ある程度、完成までの流れが見えていないと、案外、負担となる授業である。実際、応募者全員に参加賞があるからやってみようと単純に決めたものの、どのように1クラス(約40人)の生徒を動かしてよいのか、いろいろ悩んだ。結果として、浜松市立江南中学校教諭の渡邊正巳さんの実践(『小・中・高校の先生が作った新聞活用の事例集・第2集』)を参考にして、授業を展開した。順を追って説明したい。
@ 説明・グループ編成
2学期の新聞の授業について、その流れを説明する。そして、1グループ1〜5名までのグループを編成させた。当初、1クラスで10グループ前後できると考えていたが、1人でやる生徒も多く、1クラス(電子機械科と情報技術科の2クラス)でそれぞれ20グループ近くもできた。
A テーマ設定
それぞれのグループに「企画書」を提出させた。「企画書」の内容は、「テーマ(問題提起;何を調べるのか)」、「テーマ設定の理由(問題意識;なぜこのテーマを選んだのか)」、「今後の方針・役割分担」である。多かったテーマは、「イラク戦争」・北朝鮮関連、経済問題(阪神タイガースとの関連で分析したものもあった)、環境問題(冷夏との関連も多かった)、情報化社会(携帯電話や住基ネットを扱ったものもある)について、などである。ユニークなものとしては、「補助犬育成の実情と課題」、「静岡の人びとの特徴」についてテーマとして取り上げたものがあった。
B 新聞記事の収集・分析
この部分が中心であるが、具体的にテーマに沿った新聞記事を収集し、分析をさせた。
C レイアウト案の作成
いきなり模造紙を渡し、下書きをさせては、戸惑いも大きいし、構想もなくただ新聞記事を貼り付けても意味がない(そのグループの主張なり、考えが見た人に伝わらない)ので、レイアウト用紙を渡し、構想をまとめさせた。かなり詳細に構想をまとめてきたグループもあるし、いい加減なところもあった。ここの出来具合が、以降の作業に大きな影響を与えると感じた。
D 下書き・清書
レイアウト案が完成し、OKをもらったグループから、模造紙を渡し、下書きをさせた。模造紙をもらって、ようやく本格的にやらなきゃという気持ちもでてきたように感じられた。また、1クラス20グループ近くもあるために、1つの教室では物理的に足りなく、近くの空き教室も借りて、下書き・清書をさせた。2つの教室を行ったり来たりして指導するのは、かなりたいへんであった。
E 発表会
当初は、発表会をやる予定であった。しかし、模造紙を渡すのが遅くなってしまったため、まだ完成していないグループがかなりあったこと、予想外に多くのグループができてしまい1コマや2コマではすべてのグループが発表しきれないこと、の2点の理由から、発表会は中止した。次回は発表会をできるようにしたい。
おわりに〜途中経過〜
かなり大雑把に、2学期の新聞を使った授業について報告した。始める前には気がつかなかった問題点も明らかになった。次回に生かしていきたいと思うが、かれらにとって、このような「調べて書く(発信する)」(立花隆さん)というのは、初めてではない。1年、2年生のときに、夏期課題として、「文化財探訪」(1年生)、「戦争遺跡探訪」(2年生)を課し、A3サイズの用紙に報告させている。今回は模造紙ということで、大きさがまったく違うが、これが下敷きになっていると思う。
NIEの目的は、「新聞を教材とすることで、児童生徒の社会への関心を高め、文字や文章を勉強しながら、『考える』力や物事を『判断する』力、新しい『知識』を身につけてもらうことを目的としています。また、それによって学校教育活性化の手助けをし、新聞に対する理解を深めてもらう」(中日新聞NIEウェブより)ところにある。この新聞切り抜き作品を仲間たちと協力してつくりあげる過程で、これらの点については大きな変化があったのではないかと思う。この点については、後日、アンケートをとって生徒の意識の変化を探ってみたいと考えている。
それにしても、模造紙を渡し、締め切りが近づいてからの、かれらのパワーに圧倒された。個人でやっている人は、模造紙を家に持ち帰って、課題に取り組んでいるし、グループでやっている人は、放課後、夜遅くまで学校に残って、メンバーとあぁでもない、こうでもないと課題に取り組んでいる。ふだんの授業では見たことのない顔つきをしながら。こうした姿を見たら、教員も「狂って」しまう。期末テストも近く、試験問題をつくらなければならないのであるが、それはそっちのけで、生徒につきあっている。それこそが、私にこの拙い原稿を書かせる原動力となっているのである。
最後になるが、この原稿を書いている今日も、午後8時半ごろまで、生徒たちは、ワイワイと課題作成に取り組んでいた。明日が締め切り。どんな作品が完成するのか楽しみである。
2003年12月2日 清工・普通科職員室にて記す