「新聞切り抜き作品コンクール」に参加して
「調べて書く、発信する」の実践


はじめに
「調べて書く、発信する」は、立花隆さんが1997年度に東京大学で行なっていたゼミのタイトルである。この「調べて書く、発信する」という能力は、立花さんが『二十歳のころ』(新潮社)で指摘するとおり「一生の生活の中で、最も重要とされる知的能力」である。この能力の基礎をいかに培うか?それが課題である。
本校では、現代社会を3年次に3単位で行なっている。新指導要領では標準単位は2単位なので、2単位分を≪理論編≫として教科書に準じた内容をやり、1単位分を≪実態分析編≫として、≪理論編≫で学んだことをさらに深め、「調べて書く、発信する」ことを目的として授業を行なった。≪実態分析編≫では、「新聞切り抜き作品コンクール」(中日新聞社主催)に向けた作品をつくることを具体的取り組みとした。
「新聞切り抜き作品コンクール」に向けた作品づくり
@説明・班編成 夏休み前最後の授業で概要を説明。班編成については、1〜3人。
A企画書の作成(7月) 「企画書」にはテーマ設定、その理由、今後の計画等を記入する。

 2004年度のテーマ例
  ●イラク戦争は正当だったのか?
  ●三菱自動車リコール隠し
  ●暴走する若者たち(少年犯罪)
  ●宇宙の中心で地球が叫ぶ(環境問題)
  ●食の安全性はどこへ?!
  ●どうなる?これからの情報社会
  ●拉致問題解決のゆくえ

B新聞記事の収集(夏休み〜9月) テーマに関する記事を収集し、読み調べる。
Cレイアウト

見出しやレイアウトを考え、グループの主張・意見、内容が一目でわかるようにするために「構想用紙」を渡し、記入する。

D下書き・清書(10〜11月) 台紙に裏打ちをし、ていねいに下書き・清書する。
*作品の水準を維持・向上させるために、教室には前年度の優れた作品を掲示し、中日新聞社の『コンクール優秀作品集』を数冊用意し、閲覧できるようにした。
E作品完成・提出(12月)
F発表会  発表会をし、生徒同士で作品を評価してもらう予定であったが、時間がなくて実施できず。残念!

評価の観点(冬休みに評価し、郵送)
テーマ設定、レイアウト・見出しの工夫、グループの意見・主張、取り組み状況など

第11回新聞切り抜き作品コンクール、≪静岡大賞≫受賞
(略)
まとめ〜今後に向けて〜
2学期期末テストが始まる直前の12月2日を校内の締め切りとした。11月中旬の文化祭が終わると、放課後も遅くまで学校に残り、ワイワイと作品づくりに取り組んでいる生徒たちの姿を見かけた。
静岡市・清水工高三年のT君、H君(静岡大賞)も「過去の切り抜きを参考にするうちに楽しみが広がった」と話していた。
『中日新聞』2005年2月27日付け
最後に、課題を2点述べて結びとする。
@新聞をとっていない家庭の増加
この実践は2学期に行なった。1学期は「新聞に慣れる」ことを目的に、毎週一つ、生徒が記事を選び、その記事に対する感想や意見を書いてもらった。というのも、新聞をとっていない家庭も少なくなく、そもそも新聞を読むという習慣が身についていないからである。だから「助走」が必要だったのである。
A新聞(マスメディア)の報道のあり方
生徒たちはさまざまな不安定な情報に接している。新聞もその中の一つである。その「不安定な情報」の中から「正確な情報」を読み取り、批判する力が情報社会のなかで求められている。だからこそ≪理論編≫の授業も大切なのである。
『季刊 教師の広場』(通巻144号、2005年6月号)

補注;原稿は写真を中心に依頼されていた。しかし、ここでは写真を省略し、文章のみを掲載した。