2001年度日本史授業の反省


転勤して、授業のスタイルを大きく変えた。
@ プリントに記入しながらすすめる方法から、ノートに記入する方法に変えた。
A 変更した点ではないが、近現代史なので、VTRを数多く見ることをこころがけた。
B これも変更点ではないが、地元静岡県(清水市)と戦争との関係を見ることに重点をおいた。
@について
 まず、学習活動の基本となる「書く」ということを重視したかった。そのために、ノートに記入する方法に変えた。
 プリントで進める学習方法は、短い時間でたくさんの情報を提供できるという点で優れている。しかし、工業高校ということで、受験をほとんど意識しなくてよいので、たくさんの情報を提供する必要はないし、またプリントもしっかり保存できるかどうかということにも不安があった。
 心がけた点は、1時間で黒板1枚(14〜16行程度)におさめ、書き過ぎないようにした。これでも、「書き過ぎ」という意見もあった。

 課題としては、来年度はルーズリーフは使用不可にしようと思う。キチンと整理できる生徒ならばよいが、ルーズリーフを使用する生徒に限って、性格も「ルーズ」であり、ノートしたことがバラバラになっているからである(もちろんそうでない生徒もいるが…)。
Aについて
 前任校は1コマ=90分であったため、どの授業においてもできるだけ必ずVTRを見るよう努めてきた。ただし長時間ではなく、長くて10分程度である。授業の進度との関係と、生徒の集中力との関係からである。VTRを見ると生徒は喜ぶが、実際はあまり長すぎると、集中力が途切れ、「視聴率」が悪くなる。なので、事前にポイントを絞り、短時間の視聴にとどめてきたのである。
 清工に転勤し、日本史を担当することになった。清工での日本史は近現代だけである。近現代はVTRが充実しているので、前任校同様、数多くのVTRを見ることに努めてきた。短時間でVTRを切ってしまうことに不満の声がもれることもあったが、感想メモをみると(VTRをみるときは必ず感想などを書かせた)、概して生徒たちは真剣にVTRを見ていた。とくに3回に分けて視聴した映画『きけ わだつみの声』は好評であった。
 問題点としては、(1)VTRの確保の問題、(2)VTRの準備の問題である。
 (1)VTRの利用の問題について。前任校では移動式のVTRがそれぞれの階にあったので、利用しやすかった。また競合しても、別の階のものを利用すればとくに問題なかった。しかし清工の場合、いろいろな面で問題点があった。
 まず、VTRが限られた教室にしかないということである。赴任当初は視聴覚室を利用していたが、黒板が(ホワイトボードも)ないので授業をする上では非常に不便であった。また視聴覚室は、なぜだか芸術の授業で予約されていることが多く、思うように利用できないことが多かった(授業とは関係のない映画を見ていたという生徒の話もある)。いずれにせよ黒板がないということで、視聴覚室の利用はしばらくするとやめた。その後、理科の実験室にVTRがあることを知り、理科の先生に(無理に)お願いして、物理実験室を中心として利用させてもらった。理科の実験室にはもちろん黒板があるので、VTRを視聴しつつ、板書もできたいへん重宝した。理科の授業とバッティングすることもあったが、理科の先生方は私のわがままを受け入れてくれ、利用させてくれた。この点、理科の先生方とその生徒たちに感謝したい。しかし、今年度は日本史は2クラスだけであったのでよかったものの、これ以上増えると理科にも大きな迷惑がかかるのではないかと恐れる。
 次に、VTRが限られた教室にしかない、つまりVTRが移動できないということである。VTRが移動できないので、生徒に視聴覚室なり、物理実験室なりに来てもらうしかない。そこでよくあったのが、授業開始のチャイムが鳴っても、まだ全員の生徒がそろっていないということである。移動式のVTRならばその点が解消されるであろう。しかし、来年度そのようなものが導入されるとは思われないので、とりあえず、遅れて開始した分、遅く授業を終わるという形で対処するしかないのではないかと思う。
 (2)VTRの準備について。先に述べたようにVTRはポイントを絞って見せるほうが効果的である。前任校は1コマ=90分であったので、多少ゆとりを持ってみることができたが、清工は1コマ=50分であるためさらにポイントを絞らなければならなかった。そのために、事前にVTRの選択・チェックに多くの時間をかけた。VTRの準備もなかなか面倒なところがある。まず、該当の場面を探しだすのにやたら苦労する。また、見終わったあと、そのままにせず次の授業のために巻き戻しておかなくてはならない。巻き戻しておかずに次の授業に臨んだため、思うように進められなかったこともあった。
Bについて
 前任校でも、日本史は静岡県とのかかわりに重点を置いて授業をしてきた。引き続きその点に注目してきた。
 今年は、勉強不足で清水市の事例についてあまり扱えなかった。昨年まで静岡市内の学校に勤めており、空襲や学徒出陣・学徒動員など静岡市の事例についてはそれなりにストックがあった。転勤し、なかなか時間がとれないこともあって(これは言い訳にすぎないが)、清水市の事例について調査できず、前年までの資料で授業をおこなった。来年度は、清水市の事例について研究を進めていかなければならない。
 また、前任校では学校外の施設などを利用してきたが、今年は利用できなかった。来年度は、例えば、静岡平和資料センターの方に学校に来てもらい、お話をうかがうようなことを取り入れていきたい。
反省点
 資料プリントを数多く配布した。が、その保存の方法に問題があった。1年生の世界史のようにそれぞれ切り貼りをさせればよかったが、タイミングを失って(途中で方針を変えるのは難しい)、さらに授業の内容として時間いっぱいであり、切り貼りの時間がなかったので、そのままにしてしまった。中には、まめに切り貼りをしていた生徒や配布されたプリントを資料集としてまとめていた生徒もいたが、圧倒的大部分の生徒はそのままノートにはさんだままで、紛失したり、バラバラに保存したりしていた。資料プリントは授業時間の中で切り貼りできるように厳選していきたい。
 定期考査について。定期考査は平均点が、55〜60%となるように作成した。結果としては、ほぼねらいどおりであった。しかしながら、クラスによる格差が一部でてしまった。試験の内容としては、教科書に太字で紹介されることば(単語)を問う基礎・基本な問題から意見を書かせたり、資料を読んで読み取れることを書かせたりする応用的な問題を出題した。全体的には、単にことばを問う問題よりも静岡県の公立高校入試のように説明させる問題を数多く出題した。説明させる問題に対して、多くの生徒は苦手意識をもっており、事実全く手をつけなかった生徒もいたが、多くの生徒は書こうとする姿勢が見られ、その点は非常に良い印象をもった。(採点はたいへんだったが)
 日本史については、自分として少し甘く考えていたところがある。それは、教員になってから前年まで毎年日本史Aを担当しており、日本史Aについてはほぼ「完成」しつつあるという「慣れ」「おごり」からくるものであったと思う。そのために世界史ほどの「充実感」「おもしろさ」(生徒にとっての)がなかったように思う。生徒は毎年変わる。とくに今年度は転勤したのでさらにそういえる。なのに、当初私は今までどおり、例年と一緒という立場にたっていた(後半少しずつ軌道修正はしたが)。そこが大きな間違いであった。不断の研究・改革・努力が必要であることを、今年の日本史で痛感した。
 最後に、全体に関わる主たる参考文献をかかげておく。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)
静岡県近代史研究会『史跡が語る静岡の十五年戦争』(青木書店)
安井俊夫『歴史の授業100時間(上)』(地歴社)
この本は中学生を対象とした授業ノートであるが、清工の生徒には適切であった。これをヒントとして構成した授業も多かった。
安井俊夫『発言をひきだす社会科の授業』(日本書籍)
授業づくりのヒントとして活用した本である。