2001年度世界史授業の反省


転勤して、授業のスタイルを大きく変えた。
@ プリントに記入しながらすすめる方法から、ノートに記入する方法に変えた。
A 資料集がないので、資料(写真や史料など)を編集したプリントを、授業の際に切り貼りをするようにした。
B 細かな事実の羅列ではなく、テーマを設けるよう心がけた。そのため時代・地域をこえて、説明することもあった。
C 授業は、1回または2回で1つのテーマが終わるようにし、ダラダラ授業をしないことを心がけた。
@について
 まず、学習活動の基本となる「書く」ということを重視したかった。そのために、ノートに記入する方法に変えた。
 プリントで進める学習方法は、短い時間でたくさんの情報を提供できるという点で優れている。しかし、工業高校ということで、受験をほとんど意識しなくてよいので、たくさんの情報を提供する必要はないし、またプリントもしっかり保存できるかどうかということにも不安があった。
 心がけた点は、1時間で黒板1枚(14〜16行程度)におさめ、書き過ぎないようにした。これでも、「書き過ぎ」という意見もあった。

 課題としては、来年度はルーズリーフは使用不可にしようと思う。キチンと整理できる生徒ならばよいが、ルーズリーフを使用する生徒に限って、性格も「ルーズ」であり、ノートしたことがバラバラになっているからである(もちろんそうでない生徒もいるが…)。 
Aについて
 単にしゃべって、黒板を書いて、時々生徒に発言させて…というのでは、生徒の集中力が持続しないかも、と思い、プリントの切り貼りを行なわせた。これは、同僚の先生が行なっていたものを参考にした。
 これは、個人的によかったように思う。授業が単調になるのを避けることができた。(気分転換にもなったかな?)また、切り貼りをしているとき、机間巡視をして生徒のようすを観ることができたし、同時に、生徒からの質問・疑問をうけ、こたえたり、生徒ともコミュニケーションをとったりすることができた。

 史料については、引用文献のまま利用したかったが、生徒にとっては難解な語句や文章が多かったので、短くしたり、改変したりして利用することが多かった。プリントを配布すると、すぐに史料を読む生徒も少なくなかった。
Bについて
 大多数の生徒にとっては、歴史の授業を受けるのは高校が最後となると考えられる。その中で、細かな事実を伝えたところで、ほとんど意味がない。それよりも、一つテーマをかかげて、歴史・現代の社会の見方を教えたり、何らかのメッセージを伝えたりした方が、記憶に残るのではないだろうかと考えた。しかし、世界史については私自身も、あまり詳しくないので、テーマを設定するのにやたら苦労した授業もある。
 授業のタイトルには、気を使った。これは安井俊夫の『発言をひきだす社会科の授業』(日本書籍)による。「テーマ(タイトル)は、ふつう『きをつけー!礼!』の号令のあと、教師がまっ先に黒板に書くものだ。子どもは今日は何をやるのかと、黒板に関心を向けている。なのに、タイトルが……興味を向けにくいものでは、もう1時間の授業そのものがつまらなく見えてしまう」。傾聴すべき意見である。あるクラスでは、タイトルを書くと、意図したような反応があり、授業にスムーズに入っていけた。
Cについて
 大学の授業のように、それぞれの回でテーマがあって、完結する授業をするのが私の理想の授業の一つであった。世界史Aは2単位なので、週に2回しか授業がない。学校行事があれば、週1回しかないということも時々あった。前任校でも経験してきたことだが(前任校は2単位は週1回。行事があれば、2週間ぶりなんてことも)、そうなると前の時間にどんなことをやったなんてほとんど覚えていない。なので、その回の内で話は完結させたほうがよいと考えた。また授業としても、まとまりがあると思う。それで、教材研究も50分で終わるように組み立てを考えた。
 問題点としては、時間内でテーマを終了させるために、結論部が早口になったり、大幅にカットしたりしたことがあった。また、生徒に意見や感想などを書かせようと思い、B6サイズのレポート用紙を教室に持っていったものの、結局、時間がなくて職員室に持ち帰ったこともよくあった。時間配分が課題である。
反省点
 世界史は専門でないので、教材研究にたいへん苦労した。工業高校の生徒にも興味をもっておもしろくきいてもらえる、さらに欲をいえば現代の社会について何らか考えてもらうきっかけとなるテーマは一体なんだろうか?ということが、この1年の最大のテーマであった。
 主として参考にした文献は、次のようなものである。
NHK教育『教育セミナー・歴史でみる世界』2001年度放送
手っ取り早く有名な教授の話をきけるということで、重宝した。視点も参考になった。ただ、高校生には難しいかなぁと思う回も少しあった。
『世界の歴史』(中央公論社)
世界史に関する文献を私はほとんどもっていない。その中で、基本的な情報源としたが本書である。興味深く読める部分もあったが、基本的が知識がない私にとっては難解なところもあった。
『世界史B・新訂版』(一橋出版)
これは清工では使っていないが、教科書である。全国的にはあまり採用されていない教科書だと思う。しかし、他社の教科書とは違い、エピソードなどが数多く掲載されており、読み物としてたいへんおもしろい構成となっている教科書である。プリント教材をつくる際、この本を活用した。今年度は後半のみの利用であったが、来年度は1年間活用していきたい。
安井俊夫『歴史の授業100時間(上)』(地歴社)
この本は中学生を対象とした授業ノートであるが、清工の生徒には適切であった。これをヒントとして構成した授業も多かった。
安井俊夫『発言をひきだす社会科の授業』(日本書籍)
授業づくりのヒントとして活用した本である。
 これらの他に、主に岩波新書や中公新書などの新書を参考文献とした。基礎知識のない私にとって、とりあえず手っ取り早く読むことができたからである。
 授業づくりについて。プリント教材を読んだり、切り貼りをしたりし、少しは体を使うようにさせた。多くの生徒がていねいにノートづくりをしていたように思う。あとは、発言の機会があまり設けられなかった(勝手に発言しているものはいたが)。何らか議論できる方向性を探っていきたいと思っているのだが。この点を安井俊夫の『発言をひきだす社会科の授業』(日本書籍)を参考としながら、来年度以降、授業改善を図りたいと思う。
 最後に、定期考査について。定期考査は平均点が、55〜60%となるように作成した。結果としては、ほぼねらいどおりであった。しかしながら、クラスによる格差が一部でてしまった。試験の内容としては、教科書に太字で紹介されることば(単語)を問う基礎・基本な問題から意見を書かせたり、資料を読んで読み取れることを書かせたりする応用的な問題を出題した。全体的には、単にことばを問う問題よりも静岡県の公立高校入試のように説明させる問題を数多く出題した。説明させる問題に対して、多くの生徒は苦手意識をもっており、事実全く手をつけなかった生徒もいたが、多くの生徒は書こうとする姿勢が見られ、その点は非常に良い印象をもった。(採点はたいへんだったが)