AnotherVision 1. 概要 通常とは異なる色覚(色の見え方)を画面上でシミュレートして表示するツールです。 このツールは以下の2つの使い方を想定して作成しています。 1つは通常の色覚の人がデザインやWebコンテンツを作成するとき、通常とは異なる色 覚特性を持つ人(いわゆる色覚異常の人)の見え方をシミュレートすることでできるだ け多くの人に見やすい、カラーバリアフリーなデザインを行うことを補助する目的で 使用します。 もう1つは通常と異なる色覚特性を持つ人が、画面上で識別が困難な配色の組み合わ せに遭遇したとき、特殊なフィルタを用いて情報の読み取りを補助する目的で使用し ます。 その他の特徴としては、動作が比較的高速なこと、利用者が自由にフィルタを作成し て追加できることが挙げられます。 2. 機能 主に2つの機能があります。 - デスクトップモード - ウィンドウモード デスクトップモードでは画面全体をシミュレートします。 ウィンドウモードではマウスカーソル周辺のイメージをウィンドウに表示します。 複数のウィンドウを表示しておくことで、複数のシミュレート結果を同時に確認する ことができます。 このツールの使用によって、異なる色覚特性において問題のある配色を容易に検出し たり、また識別困難な情報の読取りを可能にします。 3. 動作環境 以下を対象としているつもりです。 - Windows 98/Me - Windows 2000/XP - Windows Vista (予定) ※ Windows 98/Me/2000 では IE 6.0 が必要です。 ただし、確認を Win2K Pro、WinXP Pro のみで行っているため、他の環境ではまだ何 らかの不具合が残っている可能性があります。 何か問題があれば報告してください。 4. インストール - 新規インストール 配付ファイルを任意のフォルダに展開します。 - アップデート ver0.04(β)〜ver0.08(β)をお使いの場合、ver1.0以降とはアプリケーションの ファイル構成が異なり、互換性がないことに注意してください。 まず、アプリケーション実行中であれば終了させます。 以前のファイルは完全に削除してから新しいバージョンの配付ファイルを展開し ます。 ファイル構成同様、ver0.0?(β)とver1.0以降ではフィルタのファイル形式が異な ります。 自作のフィルタがある場合、別途配布されているフィルタ変換ツールを使用して 新形式への変換を行ってください。 5. アンインストール インストールで展開したファイルをすべて削除します。 また、実行すると以下のレジストリに情報を保存するため、完全にアンインストール するには以下のレジストリキーも削除する必要があります。 HKEY_CURRENT_USER\Software\kanegon\AnotherVision 6. 使い方 - 起動 展開フォルダ中に含まれる AnotherVision.exe を実行します。 起動メッセージを 2〜3 秒表示した後、タスクトレイの中に常駐します。 起動時に以下のメッセージが表示されることがあります。 "HOTKEY の登録に失敗しました。" この場合、プレビューモードに移行するためのキーボード設定に失敗したことを表し ています。このメッセージが表示された場合にはオプション設定で HOTKEY の設定を 別のキーに変更するか、HOTKEY を無効にしてください。標準では HOTKEY には [Ctrl+F11] キーが設定されています。 - デスクトップモード タスクトレイ中のアイコンをマウスで右クリックします。 表示されるメニューから [デスクトップ] を選択してください。 デスクトップ全体が色覚シミュレーション画面に切り替わります。 デスクトップモードのとき、左上にダイアログボックスが表示されるので、シミュレー トするフィルタを選択します。 デスクトップモードのとき、他の作業を行うことはできません。 デスクトップモードを終了させるためにはダイアログボックスの [閉じる] ボタンを クリックするか、[ESC] キーを押します。 画面の任意の個所をダブルクリックしてもデスクトップモードを終了させることがで きます。 ※ 起動用 HOTKEY が割り当てられている場合、該当する HOTKEY でも起動できます。 デスクトップモードの起動用 HOTKEY は初期状態で [Ctrl+F11] キーに割り当てていま す。使用するキーはオプションの指定で変更可能です。 - ウィンドウモード タスクトレイ中のアイコンをマウスで右クリックします。 表示されるメニューから [新しいウィンドウを開く] を選択してください。 新しいウィンドウが開きます。 ウィンドウは複数表示させることができます。 フィルタの選択など、ウィンドウ毎の設定を行う場合には、ウィンドウ画面を右クリッ クしてください。表示されるコンテキストメニューから機能を選択してください。 - フィルタ設定 タスクトレイ中のアイコンをマウスで右クリックします。 表示されるメニューから [フィルタ設定] を選択します。 フィルタ設定ダイアログが表示されます。 - 一般設定 タスクトレイ中のアイコンをマウスで右クリックします。 表示されるメニューから [オプション] を選択します。 オプション設定ダイアログが表示されます。 - 終了 タスクトレイ中のアイコンをマウスで右クリックします。 表示されるメニューから [終了] を選択してください。 常駐が解除され、アプリケーションか終了します。 7. 色覚特性について 異なる色覚特性と一口にいってもさまざまなパターンがあります。 視覚細胞には明るさのみを感じる杆体と赤、緑、青のそれぞれの色を感じる錐体と があります。このうちのいずれか、または複数の視覚細胞に異常がある場合に他の人 と異なる色覚特性を持つことになります。 視覚細胞の異常には色を感じる錐体が3種類ともない場合、1種類または2種類の錐体 しかない場合、あるいは3種類あってもいずれかの錐体が正常でない場合もあります。 このうち、1種類の錐体がないか正常でない場合に、その錐体の種類によって第一色 盲(色弱)〜第三色盲(色弱)と分類されるようです。 第一色盲/第一色弱 ---- (赤の感度なし) 第二色盲/第二色弱 ---- (緑の感度なし) 第三色盲/第三色弱 ---- (青の感度なし) 非常にまれ このツールでは上記のうち、第一色盲、第二色盲、第三色盲の3通りの見え方をそれ ぞれ色覚特性(赤弱)、色覚特性(緑弱)、色覚特性(青弱)として、シミュレートする フィルタを用意しています。(※1) ただし、色覚には個人差が大きく、実際に他人の見え方がどのようになっているかを 知ることは困難です。 さらに、このツールでは216色の変換テーブルをベースに変換していること、RGBの色 表現はもともと不完全な上、ディスプレイの種類や設定による差異が激しいことから ある環境での確認結果をそのまま他の人や異なる環境における見え方に適用できるも のでもありません。 このツールの表示結果は、あくまで参考としてとらえてください。 これらのフィルタ(色の変換テーブル(※2))は216色で構成されています。 そのまま使うにはかなり荒い情報であるため、アプリケーション内でこれを補間して 使用しています。216色をそのまま用いた場合よりも、見栄えはかなり向上しますが、 見栄えの向上はあくまで擬似的なものであることに注意してください。 なお、元々の変換テーブルの精度についても私自身では評価できません。 より有効な変換式、変換テーブルの情報がありましたらぜひ教えて頂きたいと思いま す。 ※1 実際には赤または緑の色弱の場合、垂体の感度が低いというわけでなく、赤と緑 の垂体で感じる波長が似てしまうことにより、結果的に両者の区別ができなくな るという問題のようです。そのため、色盲と色弱では特性に大きな隔たりがある 可能性があり、"赤弱" などの用語は適切でないかもしれません。ただ、他に適 当な呼び方も思いつかないので、現状ではこのような表記としています。 ※2 色の変換テーブルは Safe Web Colours for colour-deficient vision http://www.btplc.com/age_disability/technology/RandD/colours/index.htm 内の http://www.btplc.com/age_disability/technology/RandD/colours/colours2.htm のページから取得したものを使用しています。 8. フィルタについて 標準で以下のフィルタを提供しています。 簡単に説明します。 - フィルタなし 色の変更を行いません。 他のフィルタとの対比のために使用します。 - 色覚特性(赤弱) 色覚特性(緑弱) 色覚特性(青弱) 「7. 色覚特性について」で説明したとおり、錐体に異常がある場合の見え方を シミュレートします。 Web コンテンツ作成時の確認などに利用します。 - 色相変化(RGB=>GBR) 色相変化(RGB=>BRG) RGBで表現される赤、緑、青の色を単純に入れ替えます。 Web ページに読みづらい配色のテキストが含まれていて、色の表現よりも情報を 読み取ることを目的とする場合に適用するフィルタです。 - 赤 黄色 緑 水色 青 マゼンタ RGB を一旦 HSV(色相、彩度、明度)に変換し、色相がそれぞれ赤、黄色、緑、 水色、青、マゼンタの近辺となる色を抽出して明度情報に変換して表示します。 結果は対象の色以外をすべて黒としたグレー表示となります。 - 赤強調 黄色強調 緑強調 水色強調 青強調 マゼンタ強調 RGB を一旦 HSV(色相、彩度、明度)に変換し、色相がそれぞれ赤、黄色、緑、 水色、青、マゼンタとなるものを抽出して明度情報に変換し、元色に対し、 強調表示します。 対象の色のみが白っぽく強調され、それ以外はすべて元色のままで表示されます。 - @赤 @黄色 @緑 @水色 @青 @マゼンタ @のつかないフィルタとほぼ同じですが、段階的に変換するアニメ的な効果を持ち ます。 - @赤強調 @黄色強調 @緑強調 @水色強調 @青強調 @マゼンタ強調 @のつかないフィルタとほぼ同じですが、段階的に変換するアニメ的な効果を持ち ます。 - @赤緑強調 @緑赤強調 赤緑強調は、赤を明るく緑を暗くするアニメ的な効果を持つフィルタです。 緑赤強調は、逆に緑を明るく赤を暗くします。 - 彩度強調 各色の彩度を高めて表示します。 - コントラスト強調 各色のコントラストを高めて表示します。 - 色相変化(+90度) 色相変化(-90度) 目的は上記、RGB入れ替えのフィルタと同じです。 こちらは単純な入れ替えではなく、RGBをHSI(色相、彩度、明度)に変換した後、 色相だけをπ/2ずらした後に再度RGBに戻すように計算します。 色の混同線に対して直角になる分、より効果が高いことを意図していますが、見た 感じでは効果ははっきりしません。 - グレースケール 明度情報のみを抽出して、グレースケールとして表示します。 - 赤プレーン 緑プレーン 青プレーン RGB の各プレーンの情報をばらばらに抽出し、グレースケールに変換して表示します。 なお上記のうち、標準では一部のフィルタのみ有効になっています。 他のフィルタを使用する場合にはフィルタ設定でフィルタの有効化を行う必要があり ます。 9. 背景 異なる色覚特性を持つ人(いわゆる色盲/色弱といわれる人)の割合は日本人の場合で 男性の約5%、女性の約0.2%といわれています。これは20人に1人が該当することを示 し、かなりの数といえます。 最近ではこのことを受けて、Webコンテンツ作成を含めた画面デザインでは、そのよ うな人への配慮(カラーバリアフリー)がより意識されるようになってきています。 しかし、カラーバリアフリーを意識したデザインとは赤と緑を並べないという単純な ものではなく、青が苦手な人も存在する上、並べる場合であっても色調や濃淡に注意 する、輪郭を強調するなどの対処で回避できる場合も多く簡単ではありません。 このことを踏まえた実用的なデザインを行うためにはスキルと経験との両方を必要と しますが、そのためのスキルアップは容易なものではありません。 デザインの過程で実際に異なる色覚特性の人の見え方を確認するためにはキャプチャ した画面を画像に変換して PhotoShop 等のグラフィックツールで専用のフィルタを 適用するなど、かなり面倒な処理が必要であり、容易に確認する手段が求められてい ました。 ただし、現在ではさまざなツールが公開され、この点については改善されつつあるよ うです。 もうひとつの問題としては上記対処では既存のコンテンツに対応できないことがあげ られます。すでに存在する識別不能な Web ページの情報を読む必要性は十分に考え られますが、既存の色覚シミュレーションではこの考慮を含んだものが見当たりませ んでした。 10. 注意事項 - イメージ品質について イメージ品質の設定を変更する場合、以下に注意してください。 - イメージ品質の設定はアプリケーションを再起動しないと反映されません。 - 画質を上げるほど多くのメモリを消費します。 高画質の場合で、1枚のフィルタで約1Mバイトのメモリを使用します。。 参照フィルタ(@つきのフィルタ)の場合、1フィルタが実際には複数のフィルタから 構成されるため、その合計枚数のフィルタのメモリが必要です。 標準添付の参照フィルタで1フィルタ約5〜7Mバイトほど消費します。 - 画質を上げるとCPU負荷が若干高くなります。 - 内部実装の都合上、高画質にしてもさほどきれいにはなりません。 ムラのない変換結果を必要とする場合、他のソフトを探すことを検討してくださ い。 - 動画の再生画面が黒くなる現象について DVD の再生画面などを対象に色覚のシミュレーションを行おうとしても、対象画面 だけ真っ黒になってしまい正しく表示されない場合があります。これは該当のアプ リケーションがオーバレイ機能を利用して画面表示を行っている場合に発生します。 動画に限らず、オーバレイ機能を使用している場合に、当アプリケーションが適切 に処理できないのは仕様です。 このような場合、該当アプリケーション側の設定でオーバレイ機能を無効にするこ とで、適切に表示できる可能性があります。 例えば、対象のアプリケーションが Windows Media Player の場合、以下の手順を 試してみてください。 1) [ツール]-[オプション] でオプションダイアログを開く。 2) [パフォーマンス]タブを選択し、ビデオアクセラレータ内の[詳細]ボタンを押 す。 3) [ビデオアクセラレータの設定]ダイアログで[オーバレイを使う]のチェックを オフにする(2箇所)。 4) [OK]ボタンを押して、設定を反映する。 オーバレイをオフにすると、CPU に余分な負荷がかかります。また、必ず動作する とは限らないので、注意してください。 Media Player であっても、バージョンによっては、オプションが異なっていたり、 特に古いバージョンでは機能自体が提供されていない場合もあります。 Windows Mesia Player 含め、該当のアプリケーションがオーバレイ無効化の機能 を提供しているかどうかはそれぞれのアプリケーションのマニュアルを参照してく ださい。オーバレイ無効化の機能が提供されていないアプリケーションも多く、そ の場合、シミュレーションは困難です。 11. 今後の予定 - フィルタ仕様の説明 - フィルタ生成ツール - マルチモニタ対応 - 操作をタスクトレイからだけではなく、普通の操作ウィンドウから行なえるように - ヘルプ作成 - フィルタの有効性の検証 - 色名の標準対応 JIS 規格(一般色名、慣用色名)など、標準のものに対応 ...いつになるかは分かりません。 12. 既知の問題点 - エラー処理が不十分 - ビデオオーバレイによる表示を処理できない(仕様) - 画像品質がいまいち(仕様) - ウィンドウの拡大率を縮小(1/2以下)にすると、CPU負荷が異常に高くなる(仕様) 13. 修正履歴 2002.03.31 ver0.01(β) β版公開(内輪向け) 2002.03.31 ver0.02(β) Win2000 お試し実装 2002.04.07 ver0.03(β) 4096色対応 (216色パレットの補完拡張) "変換テーブルの色補完を有効にする" オプションを追加 ラベル変更("第n色盲" => "タイプn") [説明]ダイアログを削除 2004.01.17 ver0.04(β) UI の改善 ユーザ定義フィルタを追加可能にした WinXP 対応 その他いろいろ変更 一般公開 2004.01.18 ver0.05(β) オプションダイアログのフォーカス不具合を修正 ドキュメントの記述の誤りを修正 2004.01.23 ver0.06(β) OS シャットダウンしたとき、オプションが保存されない不具合を修正 2004.02.08 ver0.07(β) レイヤードウィンドウに対応 Explorer死亡のとき、タスクトレイアイコン再登録を行うように修正 フィルタ選択パネルの表示位置補正(画面内保証)を行うように修正 2005.02.20 ver0.08(β) 読込み可能なフィルタの数を 20 => 128 に変更 2006.12.30 ver1.00 ウィンドウモード追加。 クイックモード追加。 フィルタ定義ファイルを XML 形式に変更。 参照フィルタの概念を導入。 その他いろいろ 14. 使用条件、再配布について 本プログラムはフリーソフトウエアです。 本プログラムおよびソースコードは自由に使用することができます。 本プログラムおよびソースコードの配布や改変に制限はなく、商用利用も可能としま す。改変した生産物に著作権表示も不要です。 本プログラムおよびソースコードは無保証です。 本プログラムおよびソースコードの使用において生じた如何なる損害についても作者 は一切の責任を負いません。 15. 連絡先 金子尚史(kanegon) e-mail : wbs01621@mail.wbs.ne.jp WebPage : http://www2.wbs.ne.jp/~kanegon/