●リヨン駅のタクシー乗り場で最優遇。
ミラノを出発した列車はパリまで9時間の長旅です。出発してまもなくスイスに入ったようです。かわいい家がならんだ小さな山間の町、澄んだ水が流れる川 、どこかの雑誌で見たような山々。風景を楽しみました。しかし、フランスに入ってからは、畑・はたけ・畠。なるほどフランスは農業国だと納得しました。延々と変わらない景色ですっかり眠たくなり、目が覚めるとパリでした。リヨン駅を出てタクシー乗り場に行くと、たくさんの人々(20人ぐらい)が列を作って並んでいます。最後尾につこうとすると、乗客を整理している係りの人が、私たちに向かって何か叫んでいます。
もちろんフランス語です。よくわからないけれど、こっちへこいといっているようです。ロープで仕切っている列では車椅子が通りにくいのかなあと思い、指示されるまま列から離れて係員のほうへ行くと、どこへ行くのかといわれたようなので、ホテルの住所を差し出した。すると1台のタクシーを呼び、その運転手にホテルを指示してくれました。長い行列の人たちの申し訳なかったのですが、車いす優遇に感謝。
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●ルーブルもオルセーもストライキ。
ホテルについたのは夕方の6時前。ホテルの周りはレストランやサンドイッチ屋さんやブティック、靴屋さんととってもにぎやかです。
フロント情報では美術館は今ストライキ中。明日開くかどうかは、明日にならなければわからないとのこと。まあ明日はだめでもあさってには開くだろうと簡単に思っていました。ホテルの部屋には小さなキッチンがついていて、長期滞在用です。部屋についてほっとしていると、部屋の前の広場がにぎやかになっています。覗くとデモなんです。プラカードを持ちシュプレヒコールをあげながら歩いていきます。もちろんまわりは警官で固められていました。うん、やってるやってる。数日前かららしいので、明日かあさってには解決するだろう。
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●ユーロスターには障害者割引があった。
翌朝は雨でした。まず、タクシーでパリ北駅に行き、ロンドン行きのユーロスターのチケットを買わなければなりません。くれぐれも予約を忘れないようにと旅行社の方に言われていましたから。北駅はにぎやかで、構内のお店にはハロインのかわいいお菓子が並んでいました。棒の先に魔女がついているあめを買いたいなあと思いましたが、まあ次に乗りにきたときに買えばいいかなと思いました。ユーロスターのチケット売り場と乗車口は2階です。ガラス張りのエレベーターで上がり、旅行会社の人が渡してくれた時間表を指し示しました。今まで列車の席は2等でした。今回は奮発して1等にしました。一人2万円ほどするといわれていたので、ちょっと痛いなあと思ったんですが、ホテルも安いところを選んでいるので、ここでちょっと贅沢をと考えました。この窓口の人が車椅子の夫を見て、なにやら言っているようでした。適
当に返事をしていると請求されたチケット代が予定より安いのです。私たちが不思議な顔をしているとメモを渡してくれました。standard 2094Fhandicaped 374F sccompany 374F 合計 2842F このとき 1Fが20円だったのでふつう乗車券が41、880円(ひゃー高)、車いすの人と介助者が7、480円(これは非常に安い)。なんだか得した気分でした。ホテルに帰ってじっくりチケットを見てみると、食事つきのようです。これはこれは楽しみになってきました。
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●やっぱりストライキだ。
北駅からをチケットを買ってそのままオルセー美術館へ向かった。このときもタクシーに乗ろうと並びかけると、係員が呼んでくれて優先して乗せてもらえました。ストライキが解除されていますようにと祈りながら・・。タクシーを降りたところから入り口のほうを見ると、人がはいっているように見えた。小雨が降る中を入り口まで行くとやっぱり閉まっている。それでもルーブルは開いているかもと、はかない望みを抱いてセーヌ川を車椅子を押してわたりました。もちろん夫は合羽を着、私は傘をさして車椅子を押して歩きました。ちょっと厳しかった。悔しいので写真だけとってホテルに帰りました。
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●ベルサイユ宮殿前の広場はすべて石畳。フーッツ!
次の日もやはりストライキ。仕方がないのでベルサイユ宮殿に行くことにした。地下鉄に乗らなくてはならないが、「エレベーターはあるでしょう」と軽い気持ちで行きました。ところが、なかったのです。それでも若者たちに助けてもらって、何とか電車に乗り込めました。ベルサイユの駅は地上駅でした。しかし、通常の出口は階段になっているので、横のほうから出るようにと指示されました。そこは長いスロープになっていました。私たちはそのスロープをそろりそろり降りていると、後ろから小学生ぐらいの男の子が車いすでビユーンと飛ばしてきました。私たちの後ろで急ブレーキをかけてとまります。華麗な運転テクニック。感心してしまいました。
駅から歩いていくと広場に着きました。その向こうに宮殿がそびえています。フランス革命を思い出すより、マンガや宝塚の「ベルサイユのバラ」の場面を重ね合わせてしまう自分をちょっとはずかしくなりました。パリでは小雨が降っていましたが、ここでは真っ青な空が広がっていました。しかし、この広場の石畳は車いすには過酷でした。前向きで押してはいけません。後ろ向きで引き上げるようにしていきました。
それにこの広場が本当に広いのです。入り口までがとっても遠かった。
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●車椅子と介助者は無料です。
ここでもチケットを買おうと並んでいると向こうのほうに車いすマークがついた入り口がありました。そちらのほうに行くとやはりエレベーターで上がれるようになっていました。夫と私は無料でした。長い列を並ばなくってもよく助かりました。内部はきらびやかで、厳かな天井画や豪華なシャンデリア、誰もがあこがれる王妃のベッド、窓から見える美しい庭園。「ここでマリーアントワネットが贅沢三昧をしたのか」とため息が出ました。 |
●ひろーい、ひろーい庭園は無料開放。犬も人間もジョギング。
お城から出て美しい庭園を巡るための乗り物 petit train に乗りました。お城から見える庭をぐるりと回るのかと思っていたら、どんどん奥へ入っていきました。そこは広い道が舗装されていて両サイドには大きな樹木が植えられ緑のトンネルになっています。犬を連れて散歩をしている人が何人もいました。ジョギングしている人も、サイクリングの人も大勢いました。この乗り物は何箇所かで止まります。そこで降りて周辺を散歩して、次にきたものに乗ってもいいようです。時間があればゆっくりと森林浴もできます。
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●エスカレータで大事故寸前。
帰りが大変だったんです。地下鉄を降りると、地上への出口はエスカレーターしかないところに来てしまいました。階段があればよかったんですが、どうやら改札口を間違えたようです。しばらく躊躇していたんですが、思い切って車いすごとエスカレーターに乗せようと言うことになりました。私が後ろ向きで乗り、娘が車いすの前を担ぎ上げて乗り込みました。順調に上がったのですが、最後のところで私が転んでしまいました。夫も車いすごと横になってしまいました。娘は次から次へ送られてくるエスカレーターの段を踏みしめながら、「おかあさん早く起きて」と叫んでいます。私の足は車いすの下敷きになっていて起きあげれません。日本ならエスカレーターを止めるボタンがあるので娘に向かって「ボタン、ボタン」とさけんでいます。
すると道を歩いていた人が2-3人駆け寄って来て、助け起こしてくれました。足はがくがく、とっても怖かった。でも大怪我をしなくってよかった。
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●ユーロスターでロンドンへ。
さんざんなパリでした。いよいよユーロスターでドーバー海峡の下をくぐります。時間はたっぷりあるから、その前に凱旋門を通ってから北駅に向かってもらいました。ところが道が込んでいたんです。時間は刻々と迫ってきます。はらはらしながら駅に着くと、2階へ上がるエレベーターが休止になっています。あせりました。とにかく娘を先に行かせて、私は駅員を探し、向こうのエレベーターがストップしている、2階へ上がりたいと訴えました。すると構内のレストランの中を通って案内してくれました。ユーロスターへの入り口には大勢の人が並んでいたのでほっとしました。こんなに大勢がいる間は列車は出発しないだろうと。ところがその列はなかなか進んでいきません。前を覗くとパスポートチェックをしているのです。そうかここは国境なんだ。そこを通過すると今度は荷物チェック。やっと通り抜け,大急ぎで車椅子を押して通路に出る。次は列車が止まっているホームへ降りなければなりません。
もしエレベーターがなければ間に合わないとあせりながらも写真を撮りました。ちゃんとエレベーターはありました。1等の車両の入り口には白い服を着た男性や美しい制服を着た女性が迎えてくれました。しかし、どういうわけか列車に乗り込むのは手伝ってくれません。やっと乗り込み、席に着くや否や列車は出発しました。すぐにお絞りが出、飲み物が出ました。そして、食事のメニューが配られました。それを見ているとフォアグラという文字が見えます。しかし,フランス語なので,読みまちがいかもしれないと思っていると、お皿の真ん中に丸いものが。ペーストになっているフォアグラでした。ちょっと生くさいホワイトチョコレートのような味でした。通常料金の5分の1で乗っている私たちも同じ食事でした。なんだかとっても得した気分でした。ドーバー海峡のトンネルは思ったほど感激もしませんでした。ふつうのトンネルなので居眠りをしている間にロンドン、ウォータールー駅につきました。
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