第9日目

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 日 時  平成11年6月20日(日) 天候 曇り後晴れ



普門寺の大杉

 JR東海道新所原駅の北方2km、静岡・愛知県境にのびる湖西連峰の南端の西側の谷の最奥に普門寺がある。普門寺は参道の両側にアジサイを植えていて、今に『あじさい寺』として有名になるだろう。ここのアジサイは和洋合わせて変わり種を多く集めていて、華麗さはまだ無いが発見の楽しさがあると思った。
 『普門寺の大スギ』は左手の坂を登り、狭くて急な石段の上にある。そこは現在修復工事中の古い本堂前である。(ここの記述をしていて、修復工事が本堂だったかどうか、記憶が不確かで、お寺に電話で聞いたところ、しつこく当方の名前を聞かれた。真言宗のお寺に猜疑心は似合わないが、昨今は猜疑心を呼ぶような経験が何度かあったのかもしれない)
 縦に裂け洞の空いた部分がきれいに補修されているのはよく見る姿であるが、この杉の幹は磨き立てたような照りがあった。不思議な杉、一種異様な物を見た思いであった。







八柱神社の大楠

 岡崎市の国道1号線を西進し、矢作川の手前で八帖交差点を右折、国道248号線を北進する。5kmほど行った天神橋東交差点を左折し矢作川に架かった天神橋を渡ったすぐ右手に見える樹叢が八柱神社の森である。矢作川を渡ったところで豊田市になる。
 八柱神社社殿右側に異形の楠が眼に飛び込んでくる。周囲10mを超す根周りの台状の基部から主幹は急に細くなって立ち上がり、片側に2本の支幹が横へ延びている。見る角度によって、その幹が伏せる秋田犬のようにも、吠えるトドのようにもみえる。いずれにしてもこの木は獣のようだ。主幹が急に細くなった部分に、獣の首輪のように注連縄が巻かれている。








八柱神社の樟

 県指定の『八柱神社の大楠』から数メートル離れて、市指定の『八柱神社の樟』が立つ。県指定の大楠のように基部の台状の盛り上がりは無いが、県指定の大楠と同時、あるいは県指定の大楠の実の自生したものと思われる。
 石碑に刻まれた『八柱神社由緒記』によると、『八柱』は天照大神の御子五男三女神の八柱を祀るところからの命名という。また矢作川のほとりのこの神社は何度も大水害に遭い、社殿は何度も修復・改築を重ねて来たが、クスノキはそれらを潜り抜けて樹齢を重ねて来たようだ。最近では昭和34年の伊勢湾台風でも本殿が倒壊、昭和63年になってようやく本殿の復旧がかなったという。








才栗のイチイガシ

 岡崎市の国道1号線を東進し、東名高速道路岡崎インターへの取付道路を過ぎて700mの大平交差点を左折。県道35号岡崎設楽線を東へ4km、さらに乙川に沿って北へ3km進んだ岡崎市才栗町で左折、200mほど行った右側に白髭神社がある。
 『才栗のイチイガシ』は狭い境内の社殿の反対側にある。今まで見てきたイチイガシの中では珍しくまっすぐに立ち、目通りの上辺りから根元にかけて急に太くなっている。根元が洗われて根部が少し露出した結果のようにも見える。幹はぎっしりと地衣・苔・寄生植物に覆われ樹勢に今一つ勢いが無い。外からはうかがえないが幹内部の腐朽が進んでいるのかもしれない。自分の見た中では一級のイチイガシに思えた。








寺野の大楠

 額田町役場近くの額田町月秋交差点から国道473号線を北上し、3km程行った寺野の集落で国道が大きく時計回りにカーブするが、『寺野の大楠』はそのカーブの左の一段高い壇上にあって、すぐにそれと分かる。
 石段を登った薬師堂右手裏の崖上にそびえている。その崖面には太く絡み合う巨大な根部が露出している。普通は見えない巨木の根の構造をあまねく見せてくれている。実は巨木は地上部より見えていない根部の方がすごいのかもしれない。
 町の文化財保護委員会の説明板によると、「大風のために折れた一枝の代価で祭りの芝居が興行できたといわれるほどで、県下屈指の大樹として県指定天然記念物とされました。」今も見ると手前の大枝が折れたのか、生々しい切口を一つ見せていた。








諏訪社根上がりの杉

 額田町月秋交差点から国道473号線を北上し、1kmほど進んだ三叉路を右へ取り、県道333号切山夏山線を1.5kmほど進んだ道路右側に背の高い木が見えてくる。それが『諏訪社根上がりの杉』である。
 川と道路の間に杉の巨木が一本高く梢を上げていて、諏訪神社の社は杉の向こうに隠れるように建っていた。狭い境内は太い露出した根がのたうつように覆っていて、参拝にも杉の根を跨ぎ越えなければ社まで行けないように見える。
 境内で3人の子供を遊ばせているおじさんとお話をした。「かっては沢山いたのに、今では七軒でこのお宮を護らなくてはならないから大変だ。だからこんな小さな社にしてしまった。根上がり杉は昔から何も変っていないね。一番下の枯れた大枝も、昔からあの通りだった。杉の前の杉葉と竹で作られた祠は毎年新しく作って祀る。これでも夏祭には灯篭が立ち並んでにぎやかになるよ。」 話している間にも3人の子供たちは太い杉の根を乗り越え乗り越え遊んでいる。天然記念物になると巨木の保護の目的で柵を作り、人が近づけなくしてしまう例が多い中で子供が巨木を遊び場にして遊ぶ姿を見るのは大変うれしいことだ。






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