第3日目

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 日 時  平成11年8月13日(金) 天候 くもり時々晴れ



三方の大カツラ

 舞鶴自動車道春日インターチェンジの西に氷上郡氷上町がある。氷上町役場のある中心部から加古川の支流の葛野川を逆上って5kmほど西進すると三方の集落に至る。さらに2kmほど入ったアスファルト道路の尽きる最奥の右岸、道路左手に『三方の大カツラ』がある。
 カツラの巨木を見るのは初めてである。カツラはこういう生え方をするのか、根元から13本の幹を出し、複数の木が束になって生えているように見える。しかし根は一本の木なのだろう。幹の間を人一人やっと潜り抜けられる空洞があり、くぐると人命安全、家運長久の神護があると看板にあった。さっそく潜ってみるとクモの網に掛かった。
 かたわらに短歌を刻んだ石柱が立っていた。「われたとえいずこの旅にありとてもこの桂樹を忘れざらまじ 昭和五十一年 三方達三郎建立」と読めた。この地を故郷にする歌人なのだろう。
 後日、この石柱に刻まれた名前は 「三方清三郎」 が正しいと地元の方からメールをいただきました。調査不足で恥ずかしいかぎりです。









木の根橋(大ケヤキ)

 舞鶴自動車道春日インターチェンジの南西に氷上郡柏原(かいばら)町がある。柏原町役場のすぐそばに『木の根橋』という一風変わった名前を付けられた大ケヤキがある。
 役場の脇を流れる幅6mの奥村川の川岸に根を下ろしたケヤキが太い根を横に伸ばして橋のように対岸までわたっている。橋がなくてもこの根を伝えば対岸に渡ることが出来る、まさに『木の根橋』である。木の根が川を渡ったのか、川が木の根元を穿って橋を現出したのか、大ケヤキだけが知っていることなのかも知れない。
 この日は柏原町の「ふるさと柏原夏まつり」にあたって、周囲は祭提灯が張り巡らされ、華やいだ雰囲気があった。盆おどりなどで夜には賑わうのであろう。
 『木の根橋』の資料を貰うため隣りの柏原町役場に立ち寄る。町の案内パンフレットをもらい出て来ると、青年が追いかけてきて「役場の大ケヤキの担当です」と言い、大ケヤキについて説明をしてくれた。大ケヤキは昔から町のシンボルとして町民に親しまれて来ていたが、10数年前、このケヤキに衰えが見えはじめた。町民から『木の根橋』を守れの声が上った。それに応えて町では予算に2500万円を計上して、保護に乗り出した。樹木医に頼み、大ケヤキの若返りの治療をはかるとともに、隣接して大ケヤキの生育を阻害していると言われた役場の一部を取り壊したりして保護策を講じて来た。おかげで樹勢はよみがえった。この『木の根橋』の保護運動がきっかけとなり、昭和63年秋、柏原町で「第一回巨木を語ろう全国フォーラム」が開催され、以後処を変えて毎年このフォーラムは続いている。青年は大ケヤキを背景に我々夫婦の写真を撮ってくれたりして、見ず知らずのけったいな夫婦に大変親切にしていただき、良い旅の思い出になった。感謝。









鴨神社のイチョウ

 舞鶴自動車道春日インターチェンジから国道175号線を北上して市島町に入る。1.5kmほど進んだ東勅使の交差点を右折し、竹田川を渡ってすぐの左手に田圃の中に鴨神社の社叢が見える。鴨神社にはクスノキの大木が何本か見られるが、イチョウの木は無い。『鴨神社のイチョウ』は鴨神社より農道を300mほど真西に進んだ交差点の角の小さな樹叢を残していた。
 玉垣に囲まれたイチョウは主幹が左右に二つに裂けそうに見える。イチョウにはかなり大規模な治療の痕があった。大枝も小さく整えられたようだ。
 そばに治療に至った経緯が保存対策事業の大要として立派な石に刻まれ立っていた。浄財を募り事業に至ったとあったが、この立派すぎる石碑には少し違和感があった。色々事情があったのかもしれないが、皆が出し合った浄財をこんな石碑の建立に費やして良かったのだろうか。建立費が残ったなら継続的なイチョウの保護費として残して置けなかったものだろうか。いつか樹木が枯れてしまった後に、こんな石碑だけが残ることを想像すると大変虚しい気がする。その点、同様に保護された『木の根橋』には仰々しいものは何も無かった。保存にかけた皆の一念は子から孫へ語り継がれて行くもので、功績として石碑に刻み置くものではないと思う。









兵主神社のオガタマノキ

 舞鶴自動車道春日インターチェンジから国道175号線を1.5kmほど西進した右手にJR福知山線黒井駅がある。駅前から北へ1kmほど行った氷上高校のすぐ西側に接するように兵主神社がある。
 兵主神社境内には大木が何本かあるが、かっては樹齢650年、根回り8.4mの杉の巨木があった。ところが平成5年の13号台風で倒れてしまった。現在社殿左手に根株が磨かれ格子の中に保存されている。今、兵主神社を代表する巨木は社殿後ろの白壁の塀前に立つオガタマノキである。根が横にしっかり張っているように見えるが、砂っぽい土でかなり危うく感じる。大杉もこんな土地柄ゆえあっけなく倒壊してしまったのであろう。






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