第1日目前半

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 日 時  平成6年10月9日(日) 天候 くもり




事任八幡宮の大クス

 掛川市日坂の国道1号線沿いで、筆者は通勤で毎日のように前を通りながら、この森に巨木があることは気にも留めていなかった。事任八幡宮は延喜式に記載があるほど昔から街道筋にあった古いお宮で、『枕草子』にも名前が見られる。
 大クスは境内中央本殿前にあり、根の張り具合が良く、まだまだ勢いがある。太い枝が1本南へ伸びてバランスが悪く感じた。









事任八幡宮の大スギ
 地図は前述「事任八幡宮の大クス」参照

 事任(コトノママ)八幡宮は『枕草子』の第二百二十六段に「社は、---- 言のままの明神、いと頼もし。----」と書かれている。石段を上がった本殿右の御神域に素性の良い大杉があった。御神木で切られることはないだろうが、良い柱が取れそうである。柵が開いていたので、中に失礼して幹に触って精気を頂いて来た。









西大淵大松

 途中の町ではあちこちに派手に飾られた山車が出て、秋祭り真っ盛りであった。西大谷川を渡ると、集落の真ん中に一際高い木立が見えてきた。枝振りからして松らしい。それを目標に行くと、公会堂前にネットフェンスに囲まれて大松があった。秋葉山常夜灯と春埜山祠が根元にあり、昔から信仰の拠り所となって来たと説明板にあった。
 形の良い松で上部まで消毒用の配管がされていた。筆者の故郷の小学校の『二本松』に似て、二本の松が根元より先の方が開いた形で並んでいる。樹勢の衰えた我が母校の『二本松』とは違って、まだまだ樹勢があるのが嬉しい。









一色のイヌマキ

 川を渡って一色の集落に入り、木立を見つけてたどりついた貴布禰神社は祭礼中だった。提灯や幟などの飾りはしてあったが、境内に人影はなかった。太い槇の木が何本か見られたけれども巨木とは言えなかった。近所で聞くと、そのマキは神社から少し離れた公会堂前の駐車場にあるという。駐車場には祭礼の小さな山車が留まり、カラオケやバーベキュウが準備されて賑やかであった。
 一色のイヌマキは太いけれども枝が無残に刈り込まれ、車が回りの土を固めてしまうせいか、樹勢に衰えがみられるのが残念であった。お祭りに寄り合う人々に遠慮しながら、見学を早々に切り上げた。









治五平屋敷の大槇

 国道150号線から海側に外れ、天竜川に掛かる有料の遠州大橋を渡り、さらに舞坂から宇布見橋を渡って雄踏町に入る。雄踏町も秋祭り真っ盛りで、迷って一方通行に入ってしまい、うろうろしていたら親切な奥さんが自転車を降りて来て「何処か探しているのか」と聞く。大槇のことをたずねると、近くで立ち話をしている老人に聞いてくれた。
 治五平屋敷はコンクリ塀に囲まれた中村邸で、門から綺麗に剪定された生け垣が見えていた。邸内にはそれらしい樹叢が見えている。通りかかった老婆に確認すると「いい奥さんだから頼めば見せてくれるよ」という。玄関で問うと品の良い奥さんが快く入れてくれた。
 一色の槇と比べると、同じ槇でもこれだけ違うのかと思われるほど勢いのある槇であった。根元がふわふわして、樹木には大変良い環境だと思った。同じように500年生きながら、環境の違いでこんなにも違うのである。植物は正直なものだ。奥さんがお茶を出してくれて、大槇の話になる。
 昔、浜名湖の水際がすぐそこまで来ていて、家の風避けに先祖が浜名湖の土手に並べて植えたものの一本だという。町の天然記念物になってからは、2年に1回肥料を貰い、10年に1回消毒をしてくれる。先日の台風でも倒れないか、枝が折れないかと心配した。母屋も10年前までは茅葺きだったが、今風に新築したのだという。このお宅では大槇も家族の一員なのだと思った。



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