日本の巨木−第8回−(山梨県)

ホームページへ



 日 時  平成10年10月25日(日) 天候 晴れ


湯島の大スギ 

 国道52号線を北上、身延をバイパスで過ぎ、上沢寺のすぐ先の上沢交差点を左折、早川沿いに南アルプス公園線を奈良田温泉・西山温泉方面に20数キロ入る。西山温泉の3kmほど手前、早川の対岸に西山発電所のある、すぐ山側の道路沿いの斜面に山王神社がある。『湯島の大スギ』は神社の参道脇に生育している。
 大スギは昼でも薄暗いかなりの斜面にあり、幹周囲を測る高さを決めるのに苦労したとうかがえる。結果、「地上0.4mの幹周」で測ることになったのだろうが、斜面下から見上げると計測した位置は地上3mほどだったのかもしれない。苔むしそそり立つ姿は表示の幹周以上に壮大にみえた。そばに大岩がありその岩上にも幹周2mほどの大木が生え、何所から養分を取っているのか、樹木の生命力の強さを改めて感じた。
 道路端に立つ案内板によると「このスギは今より1200年前、天平勝宝年間、里人の一人が紀州熊野よりスギ苗二本を持参して山王神社境内に植え、男スギ、女スギと呼んできた。このうち女スギの方は数年前ここに野宿した乞食の失火により焼失し、この一本だけが残ったものである。」





本国寺のオハツキイチョウ 

 国道52号線を北上、身延をバイパスで過ぎるとすぐ、道路端で目立つ上沢寺からは700mほど手前に、道路左手の山側に本国寺がある。『本国寺のオハツキイチョウ』は境内の真ん中に枝を広げていた。
 太さではこのくらいのイチョウはたくさんあると思うが、ここのイチョウは隣りの上沢寺のイチョウと共に『オハツキイチョウ』ということで国の天然記念物に指定されている。ギンナンがまだ生り残っていたので枝のギンナンを遠目に調べてみるが、生った状態では見つけられなかった。すべてがお葉付きという訳ではなく、大半は普通のギンナンなのである。幸い樹下に写真を撮った跡か、傷みかけたお葉付きのギンナンが幾つかあり、写真に撮れた。確かに葉の先から直接ギンナンか生っている。しかし葉も実も栄養を分け合うためか、矮小で見栄えがしなかった。
 このイチョウは弘安五年九月に日蓮上人がお手植えされたもの伝えられる。





八木沢のオハツキイチョウ 

 国道52号線を北上、身延をバイパスで過ぎ、上沢寺のすぐ先の上沢交差点を右折、富士川を渡ってすぐさらに右折し、川沿いに南下する。JR身延線波高島駅を左手に見てから、左の山側の樹様に注意して1kmほど進むと、小集落の中に目立つイチョウの木に気付くはずである。
 『八木沢のオハツキイチョウ』はJR身延線のガードを潜り、細い道を少したどった『宮ノ前神社』(手持ちの地図では「山神社」とあった)の境内にあった。樹勢は盛んでイチョウとしてはまだまだ若い木に見える。幹周囲もおまけしてようやく3mと、巨木としては最低幹周である。
 この木が国の天然記念物に指定されているには理由がある。対岸の『本国寺のオハツキイチョウ』や『上沢寺のオハツキイチョウ』は雌株でギンナンが生っていたが、どうしても雄株が近くに見つからなかった。明治二十九年四月十七日に藤井健次郎博士によってこの木が発見され、オハツキイチョウの雄株として欧米の植物学会にも紹介された。雄株で国指定になっているのはこの一本だけである。この雄株の花粉が風に乗って富士川を越えて、1.5km西の雌株に受粉してギンナンが生ることがようやく判明した。ロマンを感じさせる話である。





このページに関するご意見・ご感想は:
kinoshita@mail.wbs.ne.jp