日本の巨木−第15回−(福岡県)

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 日 時  平成11年9月17日(金) 天候 はれ


衣掛(きぬかけ)の森 

 宇美町は福岡市の東方に位置している。JR博多駅の博多口を出て右手に進むと福岡交通センタービルにバスセンターがあり、それより宇美方面に向かうバスが出ている。バスで約30分余、宇美八幡前バス停で降りると宇美八幡宮の鳥居前である。
 鳥居右手に『應神天皇御降誕地』の大きな石碑がある。『記紀』の記述によると、神功皇后が新羅より凱旋の帰路、筑紫の蚊田の地で第十五代応神天皇を生んだ。この「うみ」にちなんでこの地は宇美と名付けられた。宇美八幡宮には20本余りのクスノキの巨木が境内を取り囲むように林立している。
 本殿の左手奥に『衣掛の森』がある。次の『湯蓋の森』も同様だが、『森』といっても一本のクスノキである。一本の木ながら離れてみると森のように見えるほど大きな樹様を見せているので、そんなクスノキの巨木を九州北部地方では『森』というようだ。左右に幹が裂けているように見える。しかし良く見ると、主幹に大きな洞が出来て幹の上部や枝が折れて弱ってきた一方、根元から新しい幹が出て巨大化していて、角度によって幹が裂けていくように見えたようだ。『衣掛の森』は石の玉垣で10角形に囲われている。神功皇后が応神天皇出産の時、産衣を掛けたという伝説のあるクスノキである。
 『衣掛の森』のすぐそばに湯方神社という小さなやしろがあり、やしろ前に卵を偏平にしたような白い石が沢山積まれている。一つ一つの石には細かい字が書かれている。これは『子安石』と言って安産と子供の無事な成長を祈る女性がこの石を持ち帰り、無事出産がかなったら元の石に加えて新しい石を一つここに返す習わしとなっているのだという。その時も一組の若い夫婦がお参りに来ていた。





湯蓋(ゆぶた)の森 

 『湯蓋の森』は本殿右手にある。庭石のような自然石で根元が大きく囲われている。太い幹の部分は数メートル上方で枝が八方に広がり傘状になっている。1000年に及ぶ樹齢を思わせない若々しい枝振りと樹勢であった。
 応神天皇がこのクスノキの下で産湯をつかい、その上に覆い被さったクスノキの枝がゆぶねに蓋をするように見えたところから、『湯蓋の森』と命名されたと伝わっている。
 宇美八幡宮にはもう一つ県指定天然記念物『蚊田の森』があるが、説明板には「クスの群生林」とあり、この『森』は一本のクスノキではなく、この社域のクスノキ全体が県の指定になっているようだ。ある本に「幹周り10mの『蚊田の森』と名付けられたクスノキがある」とあったので探してみたが、それらしい標識の付いたクスノキは見つけられなかった。





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