海洋環境を考える


・・・清水港の水を調べる・・・東海大学海洋学部澤本彰三教授



       日本は梅雨や台風のために、世界的に見ても雨のよく降る地域に入ります。雨の多いことが、  

      日本特有の風土や文化に関わってきました。微生物を利用した食文化(発酵食品)もその一つです。

      山紫水明という言葉は、竜爪山、興津川、三保や日本平からの富士山など清水の美しい風景もよく表

      しています。

       山に降った雨は、小さな流れからやがては大きな流れとなり、さまざまなものを下流へと運びます。

      日本の河川は、短くて流れが速いという特徴を持ち、各地で水害をもたらしてきました。川を治める

      ということは、政策の大きな課題の一つです。その例を巴川の治水工事や最近完成したばかりの大谷

      川放水路の工事にみることができます。雨が降り続くと川の水は濁りますが、しばらくすると元の澄

      んだ状態に戻ります。水が澄んでいればきれいになったと考えて良いでしょうか?川の汚れは本当は、

      ほんとうは目に見えていないかもしれません。水は、さまざまなものを溶かしていても、色が変わっ

      たようには見えないことがあるからです。

       水は飲み水や産業に使われており、それぞれの目的にかなうように水質基準が設けてあります。 

      飲み水については、濁り、におい、細菌数、重金属など40を越える項目について水道法で基準が定

      めてあります。下水道にも基準があり、環境基準を守るように処理を行い放流しています。基準通り

      であるならば、きれいであると考えても良いでしょう。しかし、川の水がきれいになったからといっ

      ても、海がすぐにきれいになるとは限りません。目の前のことだけを見ているとその先のことまでは

      気がつかないものです。東海大学海洋学部の目と鼻の先の海岸には、遠くからの椰子の実ではなく、

      すぐ近くで使われていたようなさまざまなものが、海の生物よりも多く打ち上がるからです。

       水を調べるということは、ちょうど人の健康診断を行うことに似ています。水を調べる(水質検査)

      には技術と装置が必要でした。今では河川の水を調べる薬品などが市販され、手軽に検査ができる 

      ようになっています。しかし、これには費用がかかるので、何年も継続して調べるということはなか

      なか難しいのではないかと思います。

       駿河湾海を守る会では、1997年9月中旬からおよそ1週間ごとに清水港内4ヶ所で表面の水温

      を調べ海水を調べてきました。まもなく3年目に入るところで、調査回数はすでに100回を越えま

      した。今年の6月中旬からは透明度を、7月からは深さごとの水温を測ることも始めました。透明度

      は直径30cmの白色円盤を水中に下ろして見えなくなったときの深さを調べるもので、水が澄んで

      いるかどうかを判断するのに役立ちます。透明度が低いときは、水が濁っていたりプランクトンの量

      が多いことを示します。プランクトンが多くなると、種類とその量によって茶褐色や赤褐色に見える

      ことがあります。寒くなる頃には、雨が降らなくなるので濁りが減りプランクトンも少なくなるので

      水は澄んできて、青っぽい色になります。このようなときには、透明度は高くなります。

       海では、小さな生き物から大きな生き物へと言う栄養の流れがあります。川の運んできたものを使っ

      て植物プランクトンが増え、それを動物プランクトンが食べるという流れはその一部です。それでは

      清水港にはどのようなプランクトンがいるのでしょうか? 今年は、清水港開港100周年にあたる

      のでいくつもの記念事業が行われました。その一つとして、小学生を対象にした「夏休み みなと探検隊」

      という事業が8月26日から3日間マリンターミナルで開かれました。このときに、みなとの岸壁か

      ら採集したプランクトンを200倍くらいまで拡大して泳ぎ回る様子などを観察しました。ちょうど

      大潮の時期と重なっていたので、子供の時期にプランクトンとして現れる動物も採集できました(図1)。

       カイアシ類、ミジンコ類とウミタル類を除くと、成長すると岸壁に付着したり、海底に潜ったりし

      て過ごすものです。

       プランクトンは、季節によって種類や量が変わります。その様子をこれまでの植物プランクトン調査

      から見ると、港内であっても場所ごとに違うようです。これが毎年どのように繰り返されるのか調べ

      てゆくことが大切なのです。このような目で清水港を見ていれば、やがては巴川や清水港で一日を過

      ごすのが当たり前のようになることでしょう。


図1:清水港の動・植物プランクトンの例

清水港開港100周年記念事業「夏休み みなと探検隊」(開催期間1999年8月26日〜28日)に

マリンターミナル前でプランクトンネットにより採集。

図は日本海洋プランクトン図鑑(山路勇著、保育社)より引用作成。

図1


(1999年9月2日清水公民館で行った環境講座の講演より抜粋)


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