第101回・日本小児科学会静岡地方会での発表内容

 

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 アトピー性皮膚炎や湿疹の管理、特にステロイド剤の使用方法については、一定の方法がなく、管理に難渋することもしばしばです。今回私は、ステロイド外用剤を間欠的に使用することで、良好なコントロールを得ることができたのでここに報告し、皆様のご意見、ご批判をいただきたいと思います。

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 対象は、当院を受診したアトピー性皮膚炎および湿疹の患者35名です。年齢は生後2ヶ月から15歳。皮疹の重症度は、皮疹の範囲、状態、罹患期間などを総合し、重症11名、中等症17名、軽症7名に分類しました。ただし、非ステロイド剤のみでコントロールできるようなごく軽症の患者は含まれていません。

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 方法は、ステロイド剤塗布1日3回3日間に続いて、非ステロイド剤塗布1日3回3日間をおこなうことを1クールとし、これを繰り返すことを原則としました。
 ステロイド剤のランクは、weak, mild, strongの中から皮疹の状態により選択しました。具体的には、3日連用でかなりの改善がみられる程度の強さのものを使用しました。
 コントロール良好の症例については、非ステロイド剤の外用日数を3日から徐々に延長してゆきました。

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 治療開始1カ月後、2カ月後、3カ月後、5カ月後の4ポイントで観察し、そのうち3ポイント以上で観察できた25例について評価を行ないましたた。それ以外のものはドロップアウトとして除外しました。
 ドロップアウト症例は10例で、その内訳は、皮疹が改善したために来院しなくなったと思われるもの5例。初診のあと、来院しなかった症例2例。ステロイド拒否など当院での治療を拒否したもの2例。転勤のため1例、です。

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 評価対象になった25例のうち3例を提示します。
 症例1は、5歳の女児。初診時重症度は中等症。全身に皮疹が見られましたが、順調に改善し、治療2ヶ月後には右の写真のようにかなりきれいになりました。

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 症例18は、15歳、女性。初診時重症度は重症。約半年前からアトピー性皮膚炎出現。複数の医療機関を受診するも改善せず当院を受診。全身に皮疹、発赤が著明。左が治療前。右が治療3ヶ月後です。10カ月後には少量の外用薬できれいな状態を保てるようになりました。

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 症例27は、生後11ヶ月の男児です。生後2週から湿疹が出現し、近医通院するも改善せず、当院を受診しました。初診時重症度は中等症。近医の検査で、IgE 6500。牛乳、卵白、大豆、小麦が陽性とのことでした。牛乳をやめていたというので、それは継続しました。順調に改善し、治療3ヶ月後が右の写真です。11カ月後にはごく少量のステロイドでコントロールできる状態になりました。

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 結果です。スライドに改善度を示します。AAAは、外用が不要のもの。AAは、ステロイドを使わずにコントロールできるもの。Aは、ステロイドを使ってコントロールできるもの。Bは不変。Cは悪化、です。
 治療1カ月後から8割以上の例で良好なコントロールが得られました。注目していただきたいのは、3カ月後、5カ月後と経過するに従って、ステロイド不要例、外用不要例が増えていることです。

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 今回の観察中に気づいた点です。
 まず、時々改善しない例があるのですが、そういう例は指示通りに外用をおこなっていないことがしばしばでした。
 つぎに、皮疹が改善すると勝手に外用回数を減らしたり、塗る量を減らしたりして、また悪化させることが多いことです。取りあえずよくなればいいのではなく、よい状態を持続させることが重要であるということを十分に理解してもらうことが大切です。
 もう一つは、非ステロイド剤によって悪化する例が時々あるということです。私の印象では、2、30例に1例くらいは非ステロイド剤で悪化が見られる感じです。

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 まとめです。
 有効性としては、8割以上の例が良好にコントロールできました。
 この方法の利点は、使用すべきステロイド剤の強さの選択基準が明確であることと、ステロイド剤の漸減方法が明確であることです。
 安全性の点では、ステロイドの副作用と思われるものは認められませんでした。
 以上です。