アレルギー検査で食物アレルギーはわからない!? 

 

 最近、保育園などから「食物アレルギーの検査をしてもらって下さい」という依頼があるのですが、実をいうと食物アレルギーの診断は非常に難しいものなのです。
 医療機関によっては、「RAST」あるいは「MAST」などのいわゆる「アレルギー検査」をおこなって、その数字の高いものを「食物アレルギーの原因」と診断しているところがありますが、これは正しい診断方法とはいえません。

 「RAST」「MAST」などの血液によるアレルギー検査は、「血液中の IgE(アレルギー抗体)」を測定する検査です。しかし、この IgEが高くてもアレルギー症状が出ない子もいますし、逆にこの数字が低くてもアレルギー症状が出る子もいます。なぜかというと、食物アレルギーは IgEだけが原因ではないからです。胃腸の消化能力、胃腸粘膜の透過性、ロイコトリエンやインターロイキンなどの「ケミカルメディエーター」と呼ばれるアレルギーに関与する物質など、複雑な要素がいくつも絡み合って食物アレルギーの症状は出てくるのです。

 では、食物アレルギーの診断はどうするのでしょうか? 食物アレルギーの「確定診断」は、疑われる食物の除去試験(やめてみる)と負荷試験(食べさせてみる)によっておこなわれます。血液検査や皮膚テストは、除去試験や負荷試験をどの食物でおこなうかを絞り込むための手続きのひとつにすぎません。血液検査や皮膚テストでは食物アレルギーの「確定診断」はできないのです。これは、アレルギーの専門家なら誰でも知っている常識です。血液検査のみで食物アレルギーは診断できないのです。

 1990年前後、「RAST」検査のみで厳しい除去食療法を指導され、栄養失調や身長が伸びなくなるなどの成長障害を起こした例が続出し、小児科学会やアレルギー学会で問題になりました。成長期にある小児に対して、安易な食物除去は厳に慎むべきです。
 幼児期は、子供の成長期の中でももっともめざましい発育を遂げる時期です。この時期にバランスのよい食生活が望まれるのは当然のことです。本来は必要でない食物除去による「強制的な偏食」は、百害あって一利なしです。

 どうか、血液検査のみによる安易な食物制限は慎んでください。特に、今までこれといった問題なく、現在も健康状態のよい児に対して血液検査(アレルギー検査)をおこなうことは、上記の理由からほとんど意味のないことですのでお勧めしません。