「抗菌薬使用ガイドライン」 

 

 

「小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン」

 

本日は「小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン」のご紹介です。

 

 我が国は、世界でも有数の抗菌薬(抗生物質)の使用量が多い国です。このため耐性菌の検出率が非常に高く、細菌性髄膜炎などの重症感染症の治療が困難になるなど深刻な事態が生じています。

 また、抗菌薬を頻繁に使用することによって体内に住んでいる腸内細菌(善玉菌)までも死滅させてしまいます。腸内細菌は病気の原因となる細菌の侵入を防ぐ効果やアレルギーを防ぐ効果があるので、腸内細菌が死滅すると病気にかかりやすくなったり喘息などのアレルギー疾患にかかりやすくなったりします。例えば、0歳の子供に2〜3回抗菌薬を飲ませると1.5倍、4〜5回飲ませると2倍も将来喘息になりやすくなります。

 

 不必要な抗菌薬の使用をやめ、抗菌薬を適切に使うことが子供たちのために必要です。そのためにこのガイドラインができました。しかし残念なことに、このガイドラインの存在を知らないまま診療をしている医者もたくさんいます。

 皆さんには、最新の医療情報を学んでいただき、ご自身のお子様の健康を考える一助にしていただきたいと思い、今回ご紹介します。興味のある方は、ぜひ本文もご参照ください。


 

「小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン」

http://www004.upp.so-net.ne.jp/ped-GL/GL1.htm

 

■序文抜粋

 わが国は抗菌薬全体の使用量が多いだけでなく,広域スペクトルの抗菌薬の使用が多い。このため,耐性菌の検出率が非常に高い国となっている。21世紀にはいり,細菌性髄膜炎などの重症細菌感染症の治療が困難になるなど深刻な事態が生じている。人類の貴重な財産である現存の抗菌薬を延命させるために,我々は抗菌薬の使用にあたって基本方針を共有し,適切な抗菌薬処方に早急に取り組む必要がある。

 世界的にみてもヨーロッパ諸国は耐性菌が非常に少ない。これらの国々では,オランダの呼びかけで28ヵ国が参加する耐性菌サーベイランス・システムが展開され,耐性菌を増やさないための情報公開や教育プログラムが徹底している。米国でも適正使用のためのガイドラインが作成され,国家的事業として耐性菌問題に取り組み,その成果も得られつつある。

■各論抜粋

・感冒に対して抗菌薬の適応はない。

・膿性鼻汁(色がついた鼻水)が続いても1014日間は抗菌薬を投与しない。

・咽頭炎・扁桃炎の多くはウイルスが原因であり,溶連菌の場合を除いて抗菌薬は必要ない。

・急性中耳炎に対する抗菌薬の治療効果はわずかであることが示されている。

(これまで,わが国における急性中耳炎治療の基本は抗菌薬投与とされてきた。しかし,海外での数多くのランダム化比較試験の結果から,本疾患は自然治癒傾向が強いことが実証され,抗菌薬の使用を制限した治療が世界の流れとなっている。)

・咳/気管支炎の原因はほとんどがウイルスであり,基礎疾患のない患者では抗菌薬を使用しない。