風邪に抗生物質は効きません 



■抗生物質は「風邪」には効かない

抗生物質は、「細菌」を殺す薬です。「ウイルス」に効果はありません。「風邪」は「ウイルス」が原因の病気です。ですから風邪には抗生物質は効きません。
 では、抗生物質が効く病気とは、どんな病気でしょうか。それは、溶連菌感染症、腎盂腎炎、とびひ、細菌性肺炎、化膿性髄膜炎など、細菌が感染しておこる病気です。
 一方、抗生物質が効かない病気は、風邪以外にどんなものがあるのでしょう。嘔吐下痢症(ウイルス性胃腸炎)、みずぼうそう、はしか(麻疹)、風疹、リンゴ病、手足口病、プール熱、ヘルペス、ヘルパンギーナなどはウイルスが原因の病気で、抗生物質は効きません。


■抗生物質の害

 抗生物質の害としては、まず「腸内細菌」(腸の中で働いている善玉菌)を殺してしまうことです。
 腸の中には、食物の消化、吸収を助けている腸内細菌という大切な菌が住んでいます。この菌がなくなると、消化、吸収がうまくいかなくなって下痢をしたり、大切な栄養素が吸収されなくなったりします。
 抗生物質はこれらの腸内細菌を殺してしまうので、育ち盛りの子供たちにはできるだけ抗生物質は使いたくありません。

もうひとつ、さらに深刻な抗生物質の害があります。「耐性菌」の問題です。
 抗生物質を長く使い続けると、抗生物質が効かない菌が現れてきます。これが「耐性菌」です。早い時は、7日間使っただけで耐性菌が出てくる場合もあります。したがって、1か月、2か月と長期で抗生物質を使い続けると、かなりの高率で耐性菌が生まれてきます。
 いったん耐性菌が出てくると、治療は困難を極めます。細菌に対する唯一の武器である抗生物質が効かないのですからお手上げです。
 先日も「とびひ」の患者さんで、耐性菌のため抗生物質が効かず、入院した子供さんがいました。また、中耳炎になったときに抗生物質を使ってもなかなか治らないお子さんを見ることもしばしばです。
 「耐性菌」を作らない適切な抗生物質の使い方が重要です。不要な抗生物質は極力使わないことです。「予防的に」とか「念のため」とかいう使い方は、できるだけやめるべきだと思います。