こどもに使いたくない薬 

 

 当院に来る患者さんが、他の医院でもお薬をもらっていることがしばしばあります。当院でも薬を出すために、今飲んでいるお薬を教えてもらうのですが、時々、小児科医としてびっくりするような薬が出されていることがあります。小児は大人と違い、薬の副作用のでかたも大人とは違います。小児科では、その点に十分注意しながら薬を出していますが、小児科以外の医院では(多分そういう知識がないからだと思うのですが)小児に危険な薬を、何気なく出しているところがあります。

 小児科医として、こどもにはできる限り使ってほしくない薬が2つあります。
 ひとつは、ミノマイシン。もう一つは、セレスタミンです。

 ミノマイシンは、テトラサイクリン系の抗生物質です。テトラサイクリン系の抗生物質は、8歳未満のこどもに使用すると、「着色歯」といって、歯が黒っぽく変色することがあります。乳歯のときに使っても、永久歯に色が付いて、一生とれません。大人の人で歯が黒っぽい人が、時々いますね。これは、多分、小さい頃に「ミノマイシン」などのテトラサイクリン系の抗生物質を投与された人です。ミノマイシンを飲んだあと数年しないと症状が出ないので、知識がないと因果関係に気づきません。(注)
 これらの薬はよく効くのですが、以上のような理由から8歳未満の小児には使わないのが原則です。他の薬が効かず、どうしてもこの薬を使わなければならない場合は、親に「着色歯」などの副作用についての説明をして、了解を得てから使うべきだと思います。しかし、実際は、耳鼻科や内科などで案外気軽に使われており注意が必要です。

 セレスタミンは、ステロイド剤と抗ヒスタミン剤という2種類の薬が混じったお薬です。アレルギー性鼻炎がひどい大人には使うことがあります。それも、どうしてもひどいときに、ワンポイントに使うのが原則です。2週間とか、1ヶ月といった長期間続けるべき薬ではありません。
 「セレスタミン」に含まれているステロイドという成分には強い抗炎症作用がありますが、同時に強い副作用もあります。長期に使用した場合の主な副作用は次の通りです。
 1 免疫力を落とす:病気にかかりやすくなります
 2 ムーンフェイス(満月様顔貌):満月のようにまん丸い顔になります
 3 肥満:食欲が異常に亢進し太ります
 3 骨粗鬆症:骨がもろくなり、折れやすくなります
 4 低身長:身長が伸びなくなります
 5 糖尿病:糖尿病になりやすくなります

 (なお、アレルギー性鼻炎や喘息のときにステロイドの吸入剤を使用することがありますが、これはステロイドの量が少なく、ほとんど副作用はありません。)

 以上を読んでいただければ、「どうしてこんな薬をこどもに使うのか?」と感じられることと思います。これには理由があるのです。小児科医以外は、こどもに使用する薬についてのトレーニングをほとんど受けていないのが現状なのです。内科医も耳鼻科医もこどもをみますが、大人と同じ薬を、量を減らして出しているだけという所が多いのです。もちろん、内科医や耳鼻科医の中にも、小児の治療について勉強されている先生もたくさんいらっしゃいます。こどもを連れていくときには、そういう先生をさがして受診する方がよいでしょう。

(注)
 ミノマイシンの使用上の注意として、次の項目が書かれています。
「小児(特に歯牙形成期にある8歳未満の小児)に投与した場合、歯牙の着色・エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こすことがあるので、他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮すること」
 また、製薬会社によると、着色歯が生じるミノマイシンの量についてはデータがないので不明とのことでした。