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−遊星歯車動力分割機構以外のハイブリッドシステムで同等の走行性能・燃費性能を得ることは可能か?-


シリーズ・パラレルハイブリッド車はエンジンとモータの運転条件設定に関する自由度が大きく走行燃費が優れていることは知られておりその代表例が遊星歯車動力分割機構を用いるシステムです。

ここでは遊星歯車動力分割機構を用いない比較的シンプルシリーズ・パラレルハイブリッドシステムでも動力制御により同等な走行性能、燃費性能が得られる*ことをシミュレーションで検証します。

*但し0-400m, 0-100km/hの加速性能、120km/h巡航燃費、および10.15モード燃費の各項目で比較評価した結果でありどのような走行パターンでも同等の燃費性能を得るという意味ではありません。


 [車両・駆動系諸元]

ワンウェイクラッチを用いた駆動系をもつシリーズ・パラレル車Aと遊星歯車動力分割機構をもつBの共にシリーズ・パラレルハイブリッド車2台。

  

                A車駆動系                                                                        B車駆動系

<駆動系形態>

A車の駆動系は遊星歯車動力分割機構よりシンプルなものとするため以下とする。

1)モータは減速機なしで駆動輪を駆動する。

2)エンジンはワンウェイクラッチが動力伝達状態となっている場合のみ駆動輪を駆動できる。 エンジンとデフ間の減速比は固定で減速比を変える機構(TM)はない。 

・クラッチOFF(動力非伝達状態)

クラッチ入力軸(エンジン側)の回転速度がクラッチ出力軸(駆動輪側)の回転速度より小さい場合は入力軸は空転し動力は伝達できない。

クラッチ入力軸(エンジン側)の回転速度がクラッチ出力軸(駆動輪側)の回転速度に等しくても出力軸側が入力軸側を駆動することはできない。

・クラッチON(動力伝達状態)

クラッチ入力軸(エンジン側)の回転速度がクラッチ出力軸(駆動輪側)の回転速度に等しくしかも入力軸側が出力軸側を駆動する場合動力を100%伝達する。

3)エンジンは発電機を駆動して発電しバッテリを充電することができる。

<主要諸元>

モデル

諸元

A

(ワンウェイクラッチ方式)

B

(遊星歯車動力分割機構)

車両

慣性質量

820kg

同左

最終減速比

3.267

同左

変速比または遊星歯車歯数比

エンジン/プロペラ軸=30/46

モータ/プロペラ軸=1/1

遊星歯車 サンギア歯数/リングギア歯数=16/30

転がり抵抗係数

0.01

同左

空気抵抗係数

0.26

同左

前面投影面積

1.83m2

同左

タイヤ有効半径

0.25m

同左

エンジン

排気量

1300cc

同左

最大出力/発生回転数

57kW/7000rpm

同左

最大トルク/発生回転数

115Nm/4200rpm

同左

駆動用モータ

形式

ブラシレスDC

同左

最大出力

50kW

同左

最大トルク

400Nm

同左

発電機

形式

ブラシレスDC

同左

最大出力

25kW

同左

最大トルク

200Nm

同左

駆動用バッテリ

標準電圧

170V

同左

容量

5Ah

同左

内部抵抗

0.12Ω

同左

<制御>

■評価する走行性能と制御条件

性能

項目

バッテリ消費に関する制限・条件

発進加速

SS 0-400m

加速性能計測のための走行時間は短時間であるためモータ使用によるバッテリ消費に関する制限はなし。

SS 0-100km/h

燃費

10.15モード

走行中のバッテリSOC変化は許容するが走行前後のバッテリSOCが等しくなるようモータ、発電機の動力を制御する。

120km/h巡航

長距離巡航可能とするためモータを全く使用しないかモータの消費電力と発電機の発電電力をバランスさせバッテリ消費をゼロとする。

■各車の制御ストラテジー

 

A車における制御ストラテジー

B車における制御ストラテジー

発進加速

(出力)エンジン全開、モータは回転数における最大トルク

(エンジン回転数)エンジン:モータの回転数比は30/46で一定

(運転モード)PHV運転 SG停止指令

(出力)エンジン全開 モータは回転数における最大トルク

(エンジン回転数) エンジン:モータ回転数比は30/(16+30)=30/46で一定

120km/h巡航

ワンウェイクラッチON モータ出力はゼロとしエンジンのみで車両を駆動

モータを使用しないのでバッテリ消費はゼロ

(a)      PHV運転 SG停止指令 

モータ出力はゼロとしエンジンのみで車両駆動 バッテリ消費はゼロ

(b)      PHV運転 SG電力(発電電力)還流指令 

エンジンとモータの両方を使用 モータ電力消費=発電電力なのでバッテリ消費はゼロ

10.15モードを含む

加減速走行

(動力指令) 

車速50km/h未満はSHV運転としモータのみ使用 

車速50km/h以上はエンジンのみ 但し

エンジン全開でも目標加速に達しない場合は不足動力をモータがアシスト

ブレーキ時はエンジン停止、モータは回生

(発電・バッテリ充電指令)

エンジンONではエンジン全開 発電量の制御により車速を制御

上記動力指令・発電指令下での走行例)

 

(動力指令)

車速20km/h以下はSHV運転でモータのみ使用

車速20km/h超はPHV運転でSG電力(発電電力)還流指令

 [走行性能計算結果]

車両

発進加速性能

120km/h 巡航燃費

10.15モード燃費

SS 0-400m

SS 0-100km/h

A

15.11s

7.10s

20.29km/L

43.12km/L

B車(遊星歯車動力分割機構)

 

15.11s

7.10s

制御(a)時   20.29km/L

43.52km/L

制御(b)    19,88km/L

○発進加速性能

・発進加速時における駆動系の動力伝達経路およびエンジン、モータの回転数はA,B車とも同じなので発進加速性能は同一となります。

 

120km/h巡航燃費

120km/h巡航においてA車とB車の制御(a)は駆動系の動力伝達経路およびエンジン、モータの回転数ともに同じなので走行燃費は同一となります。

120km/h巡航においてB車の制御(b)は発電時およびモータへの電力供給時における電力損失のため走行燃費はA車に比べて悪くなります。

 

10.15モード燃費

走行の時系列解析

50km/h以下ではモータのみで走行するためバッテリSOCは低下するものの50km/hを超えてしかも定速走行もしくは加速走行する場合は

エンジンがかかり発電も行うのでバッテリは充電されSOCが走行前と同じ値80%にまで回復している。

 

エンジン運転領域解析

 

             A車エンジン運転域                                             B車エンジン運転域

エンジンは概略1600rpm以下の全開で運転されている。車両に搭載のエンジンの燃費率マップではこの領域は燃費率ベスト領域ではないものの比較的燃費良好な領域である。

もし発電を行わずに走行に必要な出力のみを発生する場合は同じ回転数の低トルク域で運転されることになり燃費率は悪くなる。したがってここでの制御戦略は一旦エンジンを

かけたらなるべく燃費の悪い低負荷域を使用しないということになる。

 

エネルギ解析

  

                A車エネルギ収支                                             B車エネルギ収支

A車はB車に比べMG(モータ), SG(発電機)ロスおよびバッテリ内部抵抗ロスが多い。