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−遊星歯車機構(プラネタリギア方式CVT)HEV車両の駆動力-


遊星歯車機構方式のCVTの走行性能線図(車速―駆動力)を描いてみます。

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<理論的考察>

通常パラレルハイブリッド車では現回転数でのエンジンとモータの各々の最大出力を合計した動力を駆動用に出力できますが

プラネタリギア方式のCVTはこれと異なる出力特性を持ちます。

上図でエンジンとモータの最大出力をPeg, Pmtとします。エンジンを目標回転数に制御するためにはエンジンに負荷をかける必要があり

そのためエンジンに発電機を駆動させ発電させます。 これは電機動力計でエンジン動力を計測する際エンジン回転数を制御するのに

動力計の発電電力を制御するのと基本的には同じです。発電機による負荷をPgnとするとエンジンが直接車両駆動に供給できる動力は

Peg_drive=Peg-Pgn となります。

発電機で発電した電力はそのままモータに供給されるものとし、モータに還流される動力をPgn_recirculationとします。

還流される動力Pgn_recirculationがモータの最大出力未満ならバッテリからモータに電力を供給し、逆にモータの最大出力を

超えていたら超過分の電力をバッテリに蓄えれば、結果として還流される電力に関係なく常にモータはその最大出力を車両駆動用に

供給できることになります。 以上をまとめるとプラネタリギア方式のCVTが車両駆動用に出力できる合計動力の最大値は

Peg+Pmt-Pgn

ということになります。

<遊星歯車バランス計算式>

遊星歯車における3軸の回転速度、トルク、および動力のバランス式を用いて最大駆動動力と駆動力を求めます。

Suffixは以下

P:動力            s:サンギア軸(発電機)     m:モータ

T:トルク            c:キャリア軸(エンジン)      l:駆動動力

ω:回転速度         r:リングギア軸(モータ)

N:歯数            

α:Nr/Ns

V:車速

F:駆動力

●回転速度バランス

ωs-(1+α)ωc+αωr=0---------------------------------------------(1)

●トルクバランス

Ts+2/(1+α)Tc+1/αTr=0

ここでトルクTT=P/(2πω)なので

Ps/ωs+2/(1+α)P/ωc+1/αPr/ωr=0-------------------------------(2)

●エネルギバランス

Ps+Pc+Pr=0

ここでリングギア側の動力はモータ動力Pmと駆動動力Plの反力()の合計であるので

Pr=Pm-Pl

よってPs+Pc+Pm-Pl=0-----------------------------------------------(3)

ωrは車速から求まり、Pcとωcは車速vsエンジン出力のマップから求まりPmはモータの最大出力から求まる。

したがって未知変数はPs, ωs, Pl3変数である。

(3)式より

Ps=Pl-Pc-Pm---------------------------------------------------(4)

(1)式より

ωs=(1+α)ωc-αωr----------------------------------------------(5)

(4), (5)式を(2)式に代入し整理すると

Pl={(Pc+Pm)/ωs-2//(1+α)Pc/ωc-1/αPm/ωr}/(1/ωs-1/α/ωr)--------(6)

よって駆動力F

F=Pl/V

但しこれはPsが発電機最大吸収動力(発電機として駆動するための動力)を超えない条件での計算式。

<サンプル計算>

●車両システム

 ・車重  820kg   ・エンジン 55KW  ・モータ 50KW ・発電機 25KW

 ・トランスミッション プラネタリギア方式CVT   

・遊星歯車

<走行性能線図>