XCOMBEGSIMによる燃焼変動解析  [EGSIM画面へ]   [XCOMB画面へ]

1Dシミュレーションと燃焼解析ソフトによる燃焼変動解析事例−

最新のエンジン燃焼分野での主なテーマはリーン燃焼や高EGR、ノッキングなどですがこれらはいずれも燃焼変動と深く関わっています.

1Dシミュレーションでも燃焼パラメータに変動を与えエンジン性能への影響を調べることができます.

この時計算で得られた燃焼圧データを実験用燃焼圧解析ソフトで処理すると様々な解析が可能となります.

今回は1DシミュレーションソフトEGSIMと燃焼圧解析ソフトXCOMBを用いてエンジン燃焼変動時のエンジン性能解析を行います.

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(1)  燃焼サイクル変動の実験計測

(1-1)     サイクル変動の実際

図−1、図−2に連続100サイクルの燃焼圧とIMEP(図示平均有効圧)とPmax(最大燃焼圧)を、また表−1にはそれらの変動率を示します.

IMEPの変動率の許容限度は一般的に3%程度とされているのに対し本計測結果では表−1に示すとおり1.12%であり燃焼変動は比較的少ない条件であるといえます. 

一方、Pmaxは変動率7.5%以上となっており全サイクルの燃焼圧グラフでも大きくサイクル変動していることがわかります.

また図−3に示すとおり各IMEP値を全サイクル平均値で除した正規化IMEP(以降N-IMEP)のヒストグラムでは1.0を中心とするビンが最大頻度発生を示しています.

解析パラメータ

変動率 (%)

IMEP

1.12

Pmax

7.57

表−1 変動率

 
 

<図−1 連続100サイクルの燃焼圧(筒内圧)とサイクル平均圧>   解析ツール:XCOMB

 

<図−2 PmaxIMEPのサイクル変動> 解析ツール: XCOMBXLCHART(多軸グラフ)                         <図−3 N-IMEPのヒストグラム>      解析ツール:XCOMB        

(1-2)     サイクル平均燃焼圧

次にIMEPが平均値に最も近い3サイクル(♯19,53,77)を抽出し、その燃焼圧をサイクル平均燃焼圧*と比較した結果を図−4に示します.

*サイクル平均燃焼圧とは全サイクルの計測値をアンサンブル平均したものであり、これを用いて計算したIMEPは全サイクルのIMEPの平均値に一致ししたがってN-IMEP=1.0になります. 

3サイクルともN-IMEP1.0との誤差は0.1%未満であり実質的に1.0と見做せるものです. これに平均サイクルを加えた4サイクルの燃焼圧を比較するとPmaxとその発生タイミング共に若干差があることがわかります.

<図−4 N-IMEP=1.0となるサイクル同士の燃焼圧比較>      解析ツール:XCOMB 

サイクル平均燃焼圧は全てのサイクルの燃焼圧をアンサンブル平均したものですがそれは図−5の各サイクルの熱発生率をアンサンブル平均して得られる図−6のサイクル平均熱発生率が発生したサイクルの燃焼圧にほぼ一致します.

本事例では図−3のようにN-IMEPのヒストグラムによると1.0を中心とするビンの発生頻度が最も高くしたがってサイクル平均燃焼圧は変動する燃焼圧の代表サイクルとに相応しいものといえるでしょう.

  

<図−5連続100サイクルの熱発生率の重ね書き>  解析ツール:XCOMB             <図−6 サイクル平均熱発生率(熱発生率のアンサンブル平均)>   解析ツール:XCOMB

(2)  EGSIMによる燃焼変動サイクルのシミュレーション

1DシミュレーションツールであるEGSIMでは燃焼パラメータに擬似的な変動を発生させサイクル変動がある場合のエンジン性能を予測することができます.

以降、エンジン諸元および運転条件は上記実測に用いたものとは異なります.

(2-1) 燃焼パラメータに変動を与える方法

EGSIMでは燃焼計算において熱発生率パターンを(1)式に示すWiebeの燃焼関数を用いて与えています.

dQ/dθ=Qfa(m+1)・θm/θbm+1e-a(θ/θb)^(m+1)  ---------------------(1)

dQ/dθ:単位クランク角当りの熱発生量(熱発生率)

Qf:燃料の全発生熱量

θ:燃焼開始点からの経過クランク角 θ=α-(θig+θd)    α:クランク角

θd:着火遅れ

θig:点火時期

θb:燃焼期間

a、   mWiebe関数における係数   但しEGSIMではa=6.9一定

 

定常性能計算では着火遅れ、燃焼期間、Wiebe_mの計3つのパラメータを入力データとして与えますが、さらに『燃焼変動計算』では、これら3つのパラメータの母集団に各々確率密度関数を与えます.

一般に燃焼パラメータの母集団の確率密度分布はγ(ガンマ)分布にしたがうことが知られており、パラメータの平均値と確率密度が最大となる値を決めると密度関数形状が決まります.

下図は平均着火遅れ=8°、平均燃焼期間=65°、平均Wiebe_m=2.3 の条件の下で母集団の確率密度関数を決めた例を示します.

 

                            <図−7  各燃焼パラメータの確率密度設定>   解析ツール:EGSIM

また図−8100回の乱数発生によりえられた各パラメータ標本値のヒストグラムを示しています.  乱数を元にしているので発生順序は不規則ですが標本値のヒストグラムは母集団の確率密度関数形状に近く、

標本の平均値は上図で与えた各パラメータ母集団のそれにほぼ一致しています. また乱数系列を変えれば異なる分布形状が得られますが標本平均値はほぼ同じとなります.

                                              <図−8 各パラメータのヒストグラム>    解析ツール:EGSIM

2-2) サイクル変動計算結果

1)     燃焼変動の時系列データ

以下にEGSIM100サイクル連続計算した結果を示します. 図−9は燃焼パラメータ、図−10はエンジン性能(体積効率VOL.EFFEGR率、IMEPPmax)の時系列変化を示しており図−11は各サイクルおよび全サイクル平均の燃焼圧を

重ね書きしたものを示しています. また表−2は各パラメータの平均値と変動率を示しています. IMEPの変動率は3.75%であり前記の実測データに比較して大きくなっています. これはシミュレーションにおいて燃焼期間や着火遅れ等の

パラメータ変動を大きく設定したことによります. ただリーンバーンや高EGR条件ではこれ以上の変動が発生することがあり、シミュレーションは実際に発生する変動の範囲内の現象を模擬しているといえます.

 

<図−9 燃焼パラメータの時系列変化> 解析ツール:EGSIMXLCHART                          <図−10 各性能パラメータの時系列変化>    解析ツール:EGSIMXLCHART

解析パラメータ

平均値

変動率(%)

IMEP

1.01542MPa

3.75

Pmax

4.075MPa

14.72

体積効率

0.848

0.627

EGR

0.044

2.35

表−2 各パラメータの変動率

 

<図−11 連続100サイクルの燃焼圧重ね書き>   解析ツール:EGSIMXCOMB

2)     IMEPのヒストグラムと代表サイクル

図−12N-IMEPのヒストグラムを示します. 中心値が1.0より大きい側に発生頻度が高いビンが多く存在しています. したがってN-IMEP1.0となるサイクルサイクル平均燃焼圧に近いサイクルは

代表サイクルとは言えないことがわかります. 燃焼期間や着火遅れのパラメータの値とIMEPとはリニアな関係になくそれらが大きいサイクルではIMEPが大きく低下することが原因ですがこの傾向は

リーンバーンや高EGrなど燃焼変動が大きい場合によく見られます.

               <図−12 正規化IMEPのヒストグラム>    解析ツール:EGSIMXCOMB

図−13に最大頻度となるビン(N-IMEP=1.0251.035)にあるサイクルのみの平均燃焼圧と全サイクル平均燃焼圧を比較します. 前者の方がIMEPが大きいので当然Pmaxが大きくなっています.

変動が大きい場合どのサイクルを代表サイクルとして抽出するかは議論すべき問題ですがあえて両者のどちらかを代表サイクルとするなら前者の方が相応しいと思われます.

<図−13 代表サイクル燃焼圧とサイクル平均燃焼圧>   解析ツール:EGSIMXCOMB

3)     燃焼変動と体積効率

EGSIMにはガス交換に関するサイクル変動を発生させるロジックは組み込まれておらず、燃焼変動シミュレーションにおいて体積効率がサイクル変動しているのは燃焼圧がサイクル

毎に変動することにより吸排気流がサイクル変動することによるのは明らかです.

図−14に同一サイクルの体積効率とIMEPの相関を示します. 両者の相関係数は0.141であり余り強い相関はありません. また表−2のとおりIMEPの変動率に対し体積効率の変動率は1/6程度と小さく

したがってIMEPの変動要因の殆どが燃焼パラメータの変動による熱発生率パターンの変動であることがわかります. ちなみにもしIMEP変動率を体積効率の変動に起因する分と燃焼変動に起因する分に

分けるとするなら各サイクルのIMEPと体積効率の比率(IMEP/体積効率)の変動率を求めこの値を燃焼変動に起因するものと見做すことができます. 表−3に示すとおりIMEPの変動率は3.75%であるのに対し

燃焼変動による変動率(IMEP/体積効率の変動率)は3.71%となります.

解析パラメータ

変動率(%)

IMEP

3.75

体積効率

0.627

IMEP/体積効率

3.71

表−3 IMEPと体積効率の変動率

 

<図−14 同一サイクルの体積効率とIMEPの相関>   解析ツール:EGSIMXCOMB

最後に燃焼変動と体積効率の相関を別の見方で調べます. 体積効率の変動が燃焼変動の影響を受けるとすれば、前サイクルのIMEPと続くサイクルの体積効率との間に相関があるはずです.

図−15は体積効率の時系列データを1サイクル分後ろへシフトしIMEPと体積効率の相関を見たものです. 両者の相関係数r=0.718となりかなり強い正の相関があることがわかります.

これはIMEPが大きいサイクルほど燃焼が終了した後排気開における筒内圧が下がっておりブローダウン波の高さが小さくなることが次のガス交換プロセスに影響しているものと考えられます.

変動時のIMEPと体積効率の関係は勿論エンジンの吸排気系諸元によっても異なりますがいくつかのエンジンでの計算結果によると今回得られた相関は一般的傾向であるように見受けられます.

<図−15前サイクルのIMEPと続くサイクルの体積効率の相関>   解析ツール:EGSIMとXCOM

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