ランディングハイ・ジャパン

2000年:タイトー:フライトシミュレーション

タイトーが作り出した「職業シミュレーション」と言うジャンル。その元祖である「ランディングシリーズ」の最新作の登場である。今作品では「全日空」の協力を得て、実在の旅客機のスペックを完全データ化。さらに日本各地の空港を完全再現することによって、よりリアルな「フライト体験」が出来るように作られているのだ。重厚感のある操作部や、メイン画面とは別に作られている計器類を表示する専用モニタなど「飛行機好き」にはたまらない作りになっている。


老舗の定番

今でこそ「職ゲー」と言うジャンルが確定しているが、これは同社の「電車でGO!」が作り上げた物である。それよりも古く同社はシミュレート物を手がけており、それがこの「ランディング」シリーズと言うわけだ(ちなみに「職ゲー」はと考えると、1979年に発表している「与作」(木こりアクション)が自分の記憶では一番古い、ってだめか)。

そのランディングシリーズ第一作の「ミッドナイト・ランディング(1987年)」は、当時よく科学物のテレビ番組で紹介された「パイロット養成用のシミュレーター」をゲーセンに導入させた物であり、密閉された箱状のコックピットに乗り込み、画面に浮き上がる「深夜の滑走路」に無事着陸させると言うゲームだった。もちろんコックピットは操作にあわせムービングし、ゲームとの一体感を出させてくれた。
翌年、ムービング筐体はそのままにゲーム内容がパワーアップ。3Dグラフィック技術(当時はまだ「ポリゴン」という言葉は無かった)の向上により「昼間の空港」への着陸が出来るようになった。それが第2作の「トップ・ランディング(1988年)」である。
その後「ランディングシリーズ」は長い間発表されなかったのだが、1995年に「ランディング・ギア」発売。そして今回、最新作である「ランディングハイ・ジャパン(2000年)」の登場となる。
以上、ランディングシリーズの歴史でした。

無理しなくとも・・・

このように作を重ねる毎に新しいファクターをつけていったこのシリーズ。今回から「ラダーペダル(両足の踏み込みで垂直尾翼を操作する)」と「分割スロットル(両翼のエンジンを個別に操作することで機体の方向を操作する)」と新しい操作を追加している。おそらくこれはすでに発表されている「エアラインパイロット(セガ)」を意識しての追加だろう。しかしこのような「高度すぎる操作」は初心者層には敬遠されがちだ。そのままでは難しく、簡略化すると子供だましになってしまう。事実「エアライン」も不発に終わっているので「ランディングハイ」がどこまで粘れるか疑問である。

そしてもう一つの追加要素である「ボイススイッチ」。操縦中の「応答」を的確に出すことでボーナスを稼がせるシステムであるがこれも練り込みが甘い。そもそも筐体の設計が原因かと思うが、肝心の「応答音声」が聞き取りづらいのである。ゲームセンターはある意味「雑音」に囲まれている為、音響を表現したければそれ相当の工夫が必要だ。せめて耳元にスピーカーの一つも欲しかった。

計器類の専用ディスプレイが目線を落とさないと見えない、ヘルプスイッチを使って修正をかけるとよけい収拾がつかない、ボイススイッチが操縦桿の中心に有るためレバーを起こしてるときに押しづらいなど「今ひとつ」の部分を上げるときりがない。これだけ新しいファクターがことごとく不発に終わっているのが不憫でならない。

アーケードの役割

そもそも「フライトシミュレーター」というのはかなり「マニアック」なジャンルである。そのコアなファンに向けて作られているのならこれで良いのかもしれない(実際タイトーはそう考えているのだろう)。しかしアーケードに来るプレイヤーの嗜好は多種多様だ、その中にはたして「フライトマニア」が何人いるのだろうか?
そう考えるとこの「ランディングハイ」、ちょっとオーバースペックでは無かろうか。もう少し「なじみやすい操作系」に、もう少し「キャッチーな演出」でフライトゲームの底辺を広げるような作りにしても良かったんじゃないかと思う。(ANAなら「ピカチュウジャンボ」を出して欲しかったね)

確かに前作の「トップランディング」が底辺を広げる役割をしていたと認めることは出来るが、もうすでに発表から11年が経っている今「トップ」を知らないプレイヤーもかなりいるはずだ。「入門」的にアーケードでプレイし、PCゲームなどで本格的にのめり込み「航空機好き」になる、このスタイルにすれば良いんじゃないかと思うのだがいかに?

アーケードにおける「ヴァーチャルゲーム」。でもそれがきっかけで自分に「新しい興味」が湧くと言うのもなかなかな物じゃないか。「ゲットバス」でバス釣りを始めた、「電GO!」でNゲージ始めた、「DDR」でストリートダンスチーム作った(無理か)そんなプレイヤーが増えていけばいいと思う。
そうなれば「ゲームばっかやってても何にもならない」と親に言われることもなくなるぞ。

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