サッカー民族

    We all are ethnologically

      those human beings

    encompassed by “Soccer”

 

 

  目 次

  ☆ はしがき

     サッカー民族

     私の視点〈サッカーと言語〉   

  ☆(1)清水エスパルスについて (同一ページ内リンク)

   ☆(2)新世界サッカー体系   (別ページへリンク)  

 

             は し が き

  サッカー民族

   民族の実体は学問的にまだ明らかになっていないと言われる。それでも、

  「歴史上において、ある地域に存在し、生活に根強く定着したある文化・

  慣習に支えられている人間集団」を「その文化・慣習における民族」の当面

  の定義とすることができれば、サッカーという活動を生活の全面に押し出し

  ている、ある地域のある人間集団を単純に「サッカー民族」呼ぶこともでき

  よう。筆者がここにいう「サッカー民族」とは、静岡県清水市を中心とした、

  サッカーに深く広く支えられた地域でそれを極めようとしている人間集団に

  発想の源があり、その概念をサッカーに対し好意的な関心を向けるより多く

  の地球上の人々にまで拡大したものである。サッカーというすばらしい恵み

  をたくさんの人が心に思うことへの願いを込めた次第である。

  私の視点〈サッカーと言語〉

   サッカーは言語とよく似ている。言語においては、人の思いや事柄が、語、

  句、節などといった文構成上の単位を一定の法則にしたがって配列するとい

  う形で表現される。ただし、その一定の法則、つまり文法構造などといった

  しくみについては各言語がそれぞれ独特なものを有しており、その独特なし

  くみにしたがって、言葉のまとまりが順々に出現してくるのである。サッカ

  ーにおいては、相手チームのゴールマウスに向かおうとする、自チームの統

  一された意思が、一定の約束事にしたがって個々の選手がボールをつなぎ、

  ボールをつなぐことによってできた一連の流れをさらにつないでいくという

  形で表現されるが、ここでも言語の場合と同様に、その一定の約束事、つま

  りパスワークの組み立てなどといったしくみについては各チームがそれぞれ

  独特なものを有しており、その独特なしくみ、すなわちチーム戦術にしたが

  ってボールの連係が行なわれていくのである。以上に見るがごとく、サッカ

  ーにおいてパス展開が生みだされていく姿が、言語において言葉が表現され

  る姿によく似ているといえるのである。

   言語は一般に、書き言葉になれば分かるように、前後の方向性しか持たぬ

  線条として示され、その線の上にさまざまな表現単位が並べられて情報が示

  されていく。しかしその背景には、さまざまな思想や事柄を線条としての言

  語におさめるための、文法・語法に関する規則体系が存在する。サッカーの

  場合、パス交換の様が言葉のように線条におさめられることはないが、それ

  でも、ボールがひとつの軌道に沿ってしかも相手チームのゴールマウスとい

  う特定の行き先へ向かう形でつながれていき、選手から選手へのボールの伝

  達が表現されていくのである。そしてこの場合にも言語の場合と同様に、得

  点しようとする選手全員の意思をパス展開というフォルムにおさめるための

  戦術体系が存在し、そこには当然、ボールに直接触っていないときの動きに

  ついての決まり事までが含まれている。サッカーと言語は、人間によってさ

  まざまにいや無限に思い描かれうる内容を表現するための有限の法則を有し

  ている点で、よく似ているのである。

   言語は本来、自然界に最初から存在していたのではなく、単語の含む意味、

  句や文の構造と意味など、すべてが長い時間をかけ慣習として成立した約束

  事であり、このような約束事は単なる集合体ではなく、有機的に結びついて

  全体をつくっているのである。サッカーも同様に、個々の動きからひとつひ

  とつのパス交換、それらを積み重ねたコンビネーション、さらには広い視野

  でとらえた合い運びなどにいたるまで、すべてが長い年月の間試行錯誤の過

  程を経てようやく成立する約束事であり、サッカーにおけるこのような約束

  事も有機的に関連しあって戦術の全体ができあがっていくのである。言語も

  サッカーも、それぞれ自然の世界にもともと存在しているのではなく、社会

  的組織的な活動過程の中で完成される表現様式であるという点で、よく似て

  いるのである。

   ここまでサッカーが言語によく似ているとする主な点を三つ示してきたが、

  これから先はサッカーと言語とのつながりを直接示すような記述は出てこな

  いとしても、サッカーというスポーツを筆者がとらえるにあたっては常に、

  言語という鏡をかたわらに置いていることを頭のかたすみにとどめておいて

  ほしい。  

 

  (1)清水エスパルスについて

  Definite progress has been made toward “S−PULSE”,

               and will be made forever.

      There are innumerable groups of galaxies felt.  

 

   清水エスパルスの場合、チーム戦術を構成するいろいろなきまりごとはす

  べて各選手の意識の底で厳正に処理され、あとは連係の論理や試合展開の流

  れにのみ選手たちが意識を向けていればよいという段階にまで到達している

  と考えてよい。つまり、戦術体系が清水エスパルスの中に根強くしかも有機

  的な形で浸透しているということであるが、しかし、長年生きてきた人間の

  骨格や筋肉に前後左右の「ずれ」や「ゆがみ」が生じるように、長くて厳し

  いプロセスをたどってできあがった戦術の習慣的システムに、その主な習性

  または特徴などを場合によっては負の側面として機能させてしまう「ゆがみ」

  や「ずれ」が気づかないまま同時に生まれているのも当然であって、戦術の

  システムが複雑であり高度であればあるほど、その「ゆがみ」や「ずれ」が

  表面化したときに起こるプレーの狂いや停滞はそれだけ深刻なのである。た

  とえば相手チームがゴール前の守備を徹底的に固めたりすると、そのような

  傾向が強く現われ、グラウンドの平面全体を使ってパス展開を行なうという

  清水の特徴が逆に中盤の最前方付近での行き詰まりを呼んでしまい、勝つた

  めの1点がどうしても取れない事態になってしまうのである。断固としてパ

  スをつなぐという清水のサッカーの性質上、また、厳しい守備を遂行しなが

  らなおかつフェアプレーを貫いているという事実のため、勝てば勝つほど、

  サッカーの質が向上すればするほど、乗り越えなければならない壁も厚くそ

  して高くなってゆく。このことを考えれば上記にあるような行き詰まりが長

  期にわたって続くことになるのは仕方のないことであろうが、そういう中で

  清水エスパルスのプレーヤーたちは、状況を極めて心静かに受け止めている

  ように思える。均整をとりながらも変化をつける自分たち独自のパスサッカ

  ーを再確認するように、グラウンド全体に潜在するあらゆるパスコースに血

  を通わせるような形でボールを回し、同時に紳士的な姿勢を重んじながら戦

  闘力の治癒改善を達成しようとしている。攻守の切り返しを境にして攻撃と

  表裏の関係にある守備の面でも、自分たちのスタイルを頑なに維持しながら、

  研鑚に努めている。11人のプレーヤーが有機的に関連しあい、未来に何か

  巨大な可能性を感じさせながらそれに向かって進化しているように見えるの

  である。ある人物の書物を読んで知ったことであるが、星に生命体が誕生す

  ることができるかどうかは、その星が生成される過程の中で、生命の創造を

  約束してくれる一瞬の機会をとらえることができるかどうかによるそうであ

  る。清水エスパルスは現在、まるで、遠くない未来にぼんやりと見えている

  究極の理想へと向かって変化を遂げているかのように、確かな歩みを進めて

  いる、というのは少々おおげさな言い方ではあるかもしれないが、清水エス

  パルスにしか越えるこができない壁を越え、清水エスパルスにしかたどり着

  くことができない領域にたどり着き、清水エスパルスにしか表現することが

  できない技を手に入れるための唯一の機会があるとすれば、清水エスパルス

  が経験してきている全体のプロセスの中のまさにこの段階が、その一瞬の機

  会であるということは言えるような気がする。誰もが思い描いていた形態へ

  と清水エスパルスが変身しようとしている今、彼らのことを、じっくりと、

  そして楽しみながらも穏やかに見ているのも、ひとつの喜びではなかろうか。

  また、人間は睡眠中に成長ホルモンを分泌すると言われる。実際、人間がホ

  ルモンを分泌し身体的に成長するためには人間は眠らなければならない。組

  織の変化にしても、不調になり低迷するという周期的段階が進歩向上のため

  には必要なはずであり、低迷しているときにその底辺の能力をどれだけ拡大

  しておくかが、それから以後その上に蓄積されていく実力の大きさを決定す

  るのだということを信じつつ、未来の清水エスパルスの姿に出会うのを楽し

  みにしていたい。

 

 

 

                           素  浪  人

 

  Eメール  wbs54254@mail.wbs.ne.jp