レースチューニングについて

 市販されている完成車は基本的にはそのままでもよく走りますが、多少手を加えることでフリクションロスを減らしたり、車の特性を変えることができます。ここではストッククラスで可能と思われる方法を、具体的な例を交えて御紹介したいと思います。まだ手探り状態のため、不勉強なところは御容赦ください。

フリクションロスに関するチューニング
1:ブレークイン
 入門用のパンフには既に書きましたが、まず重要なのはきちんとブレークインをすることです。ブラシの当たり、モーター内部の導通、ギアなどの駆動部分のかみ合わせ、タイアの接地面やエッジの当たりなど、ブレークインをすることでかなり改善されます。
 特にスロットカーで使われているモーターは初期抵抗が大きいので充分に慣らしておくと最高回転も上がります。海外のレースでは無負荷の状態で6ボルトの電圧(走行時の半分の電圧)で8〜12時間かけてならしをしているようです。しかしこの方法は現実的ではないので、実際にはコース上でリアタイヤを浮かした状態にしてハーフスロットルで2〜3分空回しするだけでも効果はあるようです。その後はじめはゆっくり走らせて少しずつペースを上げていきます。最初の10分はシェイクダウンのために使うくらいの気持ちで走らせるとちょうどいいのではないでしょうか。完全に各部の当たりがとれるのには実走行時間で2〜3時間かかるようです。

2:グリスアップ
 スロットカーで注油またはグリスアップが必要な部分は、ギアやアクスルシャフトなどの駆動系、モーター、ブラシの3箇所です。
 ギアやシャフトにはシリコン系のグリスを塗っておきます。タミヤのセラミックグリスがプラスティックを侵さないので定番ですが、同じくタミヤのチタングリスやRC用のテフロンコートスプレーも使用できるようです。同じシリコン系のグリスでもデフグリスやフリクショングリスは摩擦抵抗を増やすために使われるものなので使用しないほうがいいでしょう。グリスは少量で充分効果があるので、塗ったあとでティッシュで拭き取るぐらいでちょうどいいと思います。走らせてみるとノイズが減り、ピックアップもよくなっていることがすぐにわかります。
 モーターはシャフトの両端にベアリングオイルをほんの少しだけ注油します。容器からそのまま注油するのではなく(必ず塗り過ぎてしまいます)針やつまようじにつけて塗るようにします。内部までオイルが入ってしまうとショートしたりほこり等が付着しやすくなるため逆効果になってしまいます。ベアリングオイルとして実車用のMobil-1を使っている人も多いようです。
 ブラシはWD40をティッシュ等に吹き付けたもので拭いておけばOKです。よごれが目立ってきたら使い古しの歯ブラシや綿棒で磨いてから同じ作業をしておきます。しかし磨耗が激しいものは交換したほうが無難です。
 グリスやオイルはほんの少し使うのがポイントです。多すぎると必ず逆効果になるので注意して下さい。またCRC556は研摩剤が入っているのと、溶剤が強くプラスティックを侵してしまうので使用しないほうがいいでしょう。WD40にもそれほど強くはないのですが溶剤が入っているため使い過ぎには注意して下さい。ボディやシャーシがもろくなって割れやすくなることがあります。

3:クリアランスの調整
 調整がもっとも必要なのがリアタイヤのトレッドです。タイヤがシャーシ、ボディ、ギアと干渉していると大きなロスになってしまいます。FLYの完成車で一番多いのはピニオンギアとタイヤの干渉です。これはリアタイヤの位置の個体差が大きいために起こるようです。1/24用のトレッド調整用スぺーサーやRC用のスぺーサーをギア側のタイヤの内側に入れて調整しますが、厚さは0,5〜1mmでおさまるようです。できればトレッドのセンターがシャーシの中心にくるようにノギスを使って左右の調整をします。ボディとも接触していないか確認しながらじっくり調整してください。多少のガタがあるくらいでちょうどいいと思います。
 フロントタイヤのガタを気にする人も多いのですが、1/32の完成車ではこのガタによってセルフセンタリング構造にしているようです。スペーサーを使ってガタを減らすこともできますが、車の特性が変わるので興味がある人は試してみてください。またリード線と干渉しているとブレーキがかかってしまうのでチェックしておきましょう。

ウェイトによる特性変化
 ストッククラスではマグネットの変更は基本的に認められていませんが、ウェイトの追加は認められています。ウェイトを効果的に使うことで車の特性を変えることが可能です。ただし当然使い過ぎると悪影響も出てくるのでバランスを考えて使用します。車の種類によっても違いますが、上限を20グラム程度にしたほうがいいようです。
 ウェイトとして一般に使われているのは実車のタイヤバランス用のウェイトや、ミニ四駆やRC用のウエイトです。またつり用の板おもりも自由に変型できるので便利です。5グラムと10グラムが一番使いやすいようです。
 ウェイトは両面テープで取り付けますが、基本的には前後アクスル内におさまるようにし、オーバーハングには取り付けないようにします。
1:アンダーステアの場合
 車がフロントからコースアウトすることが多いときには、アンダーステアになっていることが考えられます。この場合にはフロント側に10グラムほどウェイトを積んでみます。これでフロントへの荷重が増し、ガイドもトレースしやすくなります。
2:オーバーステアの場合
 アンダーの場合と反対と考えてもらえればいいのですが、オーバーの場合は2つの症状があります。一つはコーナリング中にリアタイアがブレイクしてコースアウトする場合、もう一つは立ち上がりでリアが暴れる場合です。(これは魚が泳ぐのに似ているのでフィッシュテールと呼ばれています)どちらの場合もリアのトラクションをかせぐ方向で考えます。前者の場合にはリアに10グラム、後者ではリアの両サイドに5グラムずつに振り分けて載せてみると良いようです。
3:ハイサイドまたはオーバーロール対策
 コーナーリング中に車が転倒してしまったり、パワーをかけるとコースアウトしてしまう場合は車の重心が高すぎるのが原因だと思われます。このような場合にはまず車の縦方向の重心を調べ、中心部分にウェイトを載せます。重心を見つけるには車を軽くつまむようにして持ち上げて、前後のタイヤが同時に浮き上がる場所を探せばいいわけです。この場所にウェイトを載せてもその車本来の特性はあまりかわらないので、初めてウェイトをのせるのに適していると思います。
 以上のようにウェイトを積むことで車の特性が変化することが実感できると思います。しかしウェイトが多すぎると車の動きが ギクシャクしたり、ブレーキが効きにくくなることもあります。ちょっと変かな?と感じるときにはウェイトをはずしてみる勇気も必要です。また車の特性によっては上記したような対策があてはまらない場合もあります。あくまで参考として考えて下さい。

モーターについて
 ストッククラスではモーターに関しては聖域で、ブレークインをていねいにすることや、注油をマメに行うことぐらいしかできません。寿命に関しては1/32では車が軽いためかなり長持ちするようで、それほど気にする必要はないようです。ただなんとなくパワーが落ちてきたなと感じたら新品に交換してみると違いが分かると思います。数値的にチェックするには、テスターで新品の状態での消費電流と抵抗値を計っておいて比較すれば目安となると思いますが、そこまでシビアに考えるなら新品に交換したほうが早いと思います。FLYとスケーレクスのモーターはまったく同じものらしいので入手しやすい方を使えばいいでしょう。
 ただ気をつけてほしいのは、メンテナンスのためなどでエンドベルをはずしてしまったモーターはレースでは使用できないということです。これは1/32、1/24を問わず、ほとんどすべてのレースでかなり厳しく規制されているので注意して下さい。理由はいろいろあるのですが、どのレースでも、はずした形跡があるだけでも100%失格となってしまうので注意して下さい。もちろん練習用としてなら問題ありません。

コントローラーについて
 コースに付属しているコントローラーはスケーレクス製で抵抗値が70オームとなっています。またパーマ製のコントローラーには標準として15オームの抵抗が使われています。一般に抵抗値が少なくなるほどピーキーに、多くなるほどマイルドな特性になっていきます。1/32のスロットカーでは30〜40オームくらいが適しているようです。パーマ製は抵抗を変えることができ、オプションパーツとして25〜45オームの抵抗があるのですが、現在国内では流通していないようです。
 多少両極端ではありますが、車の動きがシビアに感じられるようでしたらスケーレクス製を使い、充分トラクションが得られる場合にはパーマ製を使うというのが現状です。
 また最近NINCOというメーカーからデジタル式に抵抗値を変えることのできる(!)コントローラーも発売されたようです。まだ輸入されていませんが、個人輸入も検討していますので興味のある方は声をかけて下さい。

 また実際に走らせていて感じたことですが、やはり1/32には1/24と違った世界があるということです。特に完成車の場合はプラシャーシのため、あまりシビアに考えても効果は少ないようです。コンマ1ミリのセッティングで速さを追求する世界は1/24にまかせて、ただ速く走らせるよりも、その車の持っている性格に合わせてコントロールを楽しむ、というのが1/32のスロットカーを長く楽しむコツのような気がします。

文責:テクニカル・アドバイザー?望月 
Special Thanks: Mr.Bandini            
& SLOT GAREGE Mr. Ken Marx