大リーグシーズン50本塁打打者列伝
 史上初めて年間50本の大台を超えたのは、野球を超えアメリカを象徴する人物、ベーブ・ルース。彼は1919年、ネッド・ウイリアムスンの持つシーズン最多本塁打記録(27本)を35年にぶりに更新する29本塁打をマークし一躍メジャーネーム入り。翌20年には自身の記録を大幅に塗り替える54本塁打を記録しました。更に21年、59本塁打、27年には前人未踏の60本塁打を記録するなど、50本塁打以上を4シーズン記録し、本塁打を一躍「野球の華」の座に押し上げました。
 ワールド・シリーズにおける八百長試合で国民の大リーグに対する興味が急速に冷めていた1920年、豪快なホームランによって、ファンの心を呼び戻したルースは、まさに大リーグ中興の祖であります。
 
 この英雄ルースのシーズン記録を破るべく、多くの打者が挑戦し続けました。ルースに次ぎ50本塁打を達成したのは、カブスのハック・ウィルソン。26年から3年連続本塁打王に輝き、30年には56本塁打を記録。この56本塁打は、98年にマグワイアが70本塁打を放つまでナ・リーグ記録でした。さらにこの年、彼が上げた190打点は、未だに大リーグ記録として燦然と輝いています。
 
 32年のジミー・フォックスは、快調なペースで本塁打を量産。8月末で51本を放ち、ルースの60本を破るのは時間の問題とされていましたが、左手首を痛め、58本でシーズンを終えました。ルースを除き、戦前まで複数回の50本塁打以上を記録した唯一の打者でもあります。
 
 38年に同じく58本塁打を放ったタイガースのハンク・グリーンバーグは、23歳の時にルースらと来日した経験をもち本塁打王、打点王、それぞれ4回記録したスラッガー。全盛期の41年から4年間、兵役に就いていたことが惜しまれます。
 
 戦後の本塁打キングといえば、パイレーツのラルフ・カイナー。メジャーデビューの46年、23本塁打を放ちいきなり本塁打王。以降51本→40本→54本→47本→42本→37本と7年連続キングに輝きました。7年連続キングは未だに大リーグ記録として残っています。
 
 34年間、「不滅の記録」として輝いてきたルースの年間60本塁打は、同じくヤンキースのロジャー・マリスにより61年、遂に破られました。当時のヤンキースはマリスとミッキー・マントルという大リーグ最高の「MM砲」を抱える強豪チーム。マントルは56年に三冠王とMVP、更に57年、62年にもMVPに輝く史上最高のスイッチヒッターとしてルース〜ゲーリッグ〜ディマジオに続くヤンキースの正統的四番打者として君臨。一方、マリスはインディアンス、アスレチックスを経て、60年にヤンキース入り。この二人が61年開幕当初から、同じヤンキースの大先輩であるルースの記録に挑みました。5月終了時点ではマントル14本、マリス12本。この二人のデッドヒートは9月まで続き、最終的にマリスはルースの記録を僅か1本ながら上回る61本、マントルも自己最高にあたる54本塁打と、同一チームから二人の50本塁打以上打者を輩出するという偉業を達成しました。
 しかしながら、マリスの記録達成の裏には「英雄ルース」の記録が破られることに対する誹謗や中傷が渦巻き、マリスの記録を「新記録」とするかでコミッショナー裁定まで持ち込まれるという騒ぎに発展しました。結局当時のレコードブックには「マリスの61本塁打は161試合での記録、ルースの60本塁打は151試合での記録」という注釈付きで両記録が併立されていました。
 この渦中にあったマリスは、翌年から本塁打数は激減し、二度と本塁打王争いに加わることはありませんでした。

 その後、90年までの約30年間、50本の大台を超えたのは、65年の「黒い弾丸」ウイリー・メイズ、77年、レッズのジョージ・フォスター(ともに52本)の二人にとどまりました。この間、メジャー通算最多本塁打記録(755本)をもつハンク・アーロンすら71年の47本が最高という状態でした。
 
 90年、50本塁打打者不在期間を13年でストップさせたのが、我らがフィルダーです。彼は、89年の1年間だけ阪神タイガースに在籍。シーズン途中まで快調に本数を重ねましたが、右手小指骨折で38本塁打に終わった「未完の大砲」。翌年メジャーに復帰。いきなり51本塁打を放ち、本塁打と打点の二冠王。翌92年も打点王に輝くなど「逆輸入」の大成功例でした。
 
 90年代、マリスの61本塁打を更新する期待を浴び登場したのが、ケン・グリフィーJr.、マーク・マグワイア、バリー・ボンズ。グリフィーとボンズはともに父親が一流のメジャーリーガーとして知られています。ボンズの父、ボビーは通算本塁打332本、30本塁打30盗塁を5回記録した70年代を代表する屈指の名選手。一方のグリフィーSr.も3割5回マークした好選手。グリフィー親子は90年にマリナーズでともにスターティングメンバー(2番・3番)に名を連ねた大リーグ史上初の親子でもあります。
 グリフィーJr.はメジャー5年目で45本塁打を放ち、初の本塁打王に輝くと、96年から99年にかけ49本→56本→56本→48本と2年連続56本塁打を含み、快調なペースで本塁打を積み上げました。昨年は40本、今年(2001年)は22本と失速していますが、依然としてアーロンの通算本塁打を上回るペースで量産しています。年齢的(69年生まれ)にもアーロンの記録を上回る期待が十分もてます。
 
 大学時代から常に脚光を浴び続けてきたマグワイアは、入団2年目の87年、早くも49本塁打という新人最高本塁打をマークし、将来を大いに嘱望されましたが、以降95年までは目立った記録を収めることは出来ませんでした。しかし96年、52本塁打を放ち2度目の本塁打王を獲得してからの活躍は目を見張るものがあります。翌97年は58本塁打というマリス以降の最高本塁打を記録。シーズン途中でアスレチックスからカージナルスへとリーグをまたいで移籍したため、本塁打王は獲得できませんでしたが、ルースに次いで史上2人目の2年連続50本塁打以上という快記録を達成しました。そして、98年開幕からルース、マリスを遙かに超えるハイペースで本塁打を量産。伏兵、サミー・ソーサもこれに負けじとマクガイアに追いすがり、マグワイア70本、ソーサ66本という驚異的な記録が生まれたのはご存じの通りです。
 
 そして2001年、少なくとも10年は破られることはないだろう、というマグワイアの年間70本塁打を偉大なるボビーの息子、バリー・ボンズがクリアしました。終盤の四球攻めを耐え、積み上げた本塁打は73本、本塁打率は実に6.5という常識はずれの記録でした。
 

 

年間50本塁打以上を記録した大リーガー
本塁打数 選手名 打席 年齢 チーム リーグ 試合 打数 安打 2塁打 3塁打 打点 四球 三振 打率 本塁打率
73 Barry Bonds 2001 36 SF N 153 476 156 32 2 137 177 93 .3277 6.52
70 Mark McGwire 1998 34 STL N 155 509 152 21 0 147 162 155 .2986 7.27
66 Sammy Sosa 1998 29 CHI N 159 643 198 20 0 158 73 171 .3079 9.74
65 Mark McGwire 1999 35 STL N 153 521 145 21 1 147 133 141 .2783 8.02
64 Sammy Sosa 2001 32 CHI N 160 577 189 34 5 160 116 153 .3276 9.02
63 Sammy Sosa 1999 30 CHI N 162 625 180 24 2 141 78 171 .2880 9.92
61 Roger Maris 1961 26 NY A 161 590 159 16 4 142 94 67 .2695 9.67
60 Babe Ruth 1927 32 NY A 151 540 192 29 8 164 137 89 .3556 9.00
59 Babe Ruth 1921 26 NY A 152 540 204 44 16 171 145 81 .3778 9.15
58 Jimmie Foxx 1932 24 PHI A 154 585 213 33 9 169 116 96 .3641 10.09
Hank Greenberg 1938 27 DET A 155 556 175 23 4 146 119 92 .3147 9.59
Mark McGwire 1997 33 OAK-STL A-N 156 540 148 27 0 123 101 159 .2741 9.31
Ryan Howard 2006 26 PHI N 159 581 182 25 1 149 108 181 .3133 10.02
57 Luis Gonzalez 2001 33 ARI N 162 609 198 36 7 142 100 83 .3251 10.68
Alex Rodriguez 2002 26 TEX A 162 624 187 27 2 142 87 122 .2997 10.95
56 Hack Wilson 1930 30 CHI N 155 585 208 35 6 191 105 84 .3556 10.45
Ken Griffey 1997 27 SEA A 157 608 185 34 3 147 76 121 .3043 10.86
Ken Griffey 1998 28 SEA A 161 633 180 33 3 146 76 121 .2844 11.30
54 Babe Ruth 1920 25 NY A 142 458 172 36 9 137 150 80 .3755 8.48
Babe Ruth 1928 33 NY A 154 536 173 29 8 142 137 87 .3228 9.93
Ralph Kiner 1949 26 PIT N 152 549 170 19 5 127 117 61 .3097 10.17
Mickey Mantle 1961 29 NY A 153 514 163 16 6 128 126 112 .3171 9.52
David Ortiz 2006 30 BOS A 151 558 160 29 2 137 119 117 .2867 10.33
Alex Rodriguez 2007 31 NY A 158 583 183 31 0 156 95 120 .3139 10.80
52 Mickey Mantle 1956 24 NYA A 150 533 188 22 5 130 112 99 .3527 10.25
Willie Mays 1965 34 SFN N 157 558 177 21 3 112 76 71 .3172 10.73
George Foster 1977 28 CIN N 158 615 197 31 2 149 61 107 .3203 11.83
Mark McGwire 1996 32 OAK A 130 423 132 21 0 113 116 112 .3121 8.13
Alex Rodriguez 2001 25 TEX A 162 632 201 34 1 135 75 131 .3180 12.15
Jim Thome 2002 31 CLE A 147 480 146 19 2 118 122 139 .3042 9.23
51 Ralph Kiner 1947 24 PIT N 152 565 177 23 4 127 98 81 .3133 11.08
Johnny Mize 1947 34 NY1 N 154 586 177 26 2 138 74 42 .3020 11.49
Willie Mays 1955 24 NY1 N 152 580 185 18 13 127 79 60 .3190 11.37
Cecil Fielder 1990 26 DET A 159 573 159 25 1 132 90 182 .2775 11.24
Andruw Jones 2005 28 ATL N 160 586 154 24 3 128 64 112 .2628 11.49
50 Jimmie Foxx 1938 30 BOS A 149 565 197 33 9 175 119 76 .3487 11.30
Albert Belle 1995 28 CLE A 143 546 173 52 1 126 73 80 .3168 10.92
Brady Anderson 1996 32 BAL A 149 579 172 37 5 110 76 106 .2971 11.58
Greg Vaughn 1998 32 SDN N 158 573 156 28 4 119 79 121 .2723 11.46
Sammy Sosa 2000 31 CHN N 156 604 193 38 1 138 91 168 .3195 12.08
Prince Fielder 2007 23 MIL N 158 573 165 35 2 119 90 121 .2880 11.46

※2008年シーズン終了時


 

年間49本塁打に終わった大リーガー
選手名 打席 年齢 チーム リーグ 試合 打数 安打 2塁打 3塁打 打点 四球 三振 打率 本塁打率
Babe Ruth 1930 35 NYA A 145 518 186 28 9 153 136 61 .3591 10.57
Lou Gehrig 1934 31 NYA A 154 579 210 40 6 165 109 31 .3627 11.82
Lou Gehrig 1936 33 NYA A 155 579 205 37 7 152 130 46 .3541 11.82
Ted Kluszewski 1954 29 CIN N 149 573 187 28 3 141 78 35 .3264 11.69
Willie Mays 1962 31 SFN N 162 621 189 36 5 141 78 85 .3043 12.67
Harmon Killebrew 1964 28 MIN A 158 577 156 11 1 111 93 135 .2704 11.78
Frank Robinson 1966 30 BAL A 155 576 182 34 2 122 87 90 .3160 11.76
Harmon Killebrew 1969 33 MIN A 162 555 153 20 2 140 145 84 .2757 11.33
Andre Dawson 1987 32 CHN N 153 621 178 24 2 137 32 103 .2866 12.67
Mark McGwire 1987 23 OAK A 151 557 161 28 4 118 71 131 .2890 11.37
Ken Griffey Jr. 1996 26 SEA A 140 545 165 26 2 140 78 104 .3028 11.12
Larry Walker 1997 30 COL N 153 568 208 46 4 130 78 90 .3662 11.59
Albert Belle 1998 31 CHA A 163 609 200 48 2 152 81 84 .3284 12.43
Barry Bonds 2000 35 SFN N 143 480 147 28 4 106 117 77 .3063 9.80
Shawn Green 2001 28 LAN N 161 619 184 31 4 125 72 107 .2973 12.63
Todd Helton 2001 27 COL N 159 587 197 54 2 146 98 104 .3356 11.98
Jim Thome 2001 30 CLE A 156 526 153 26 1 124 111 185 .2909 10.73
Sammy Sosa 2002 33 CHN N 150 556 160 19 2 108 103 144 .2878 11.35
Albert Pujols 2006 26 SLN N 143 535 177 33 1 137 92 50 .3308 10.92

※2008年シーズン終了時

 


年間60本塁打以上打者の月別本塁打数
  B・ルース(27) R・マリス(61) M・マグワイア(98) S・ソーサ(98) M・マグワイア(99) S・ソーサ(99) B・ボンズ(01) S・ソーサ(01)
本数 通算 本数 通算 本数 通算 本数 通算 本数 通算 本数 通算 本数 通算 本数 通算
3 - - - - 1 1 0 0 - - - - - - - -
4 4 4 1 1 10 11 6 6 5 5 4 4 11 11 7 7
5 12 16 11 12 16 27 7 13 10 15 13 17 17 28 8 15
6 9 25 15 27 10 37 20 33 8 23 13 30 11 39 11 26
7 9 34 13 40 8 45 9 42 16 39 10 40 6 45 9 35
8 9 43 11 51 10 55 13 55 12 51 15 55 12 57 17 52
9 17 60 9 60 15 70 11 66 12 63 7 62 12 69 7 59
10 0 60 1 61 - 70 - 66 2 65 1 63 4 73 5 64
60 61 70 66 65 63 73 64

 


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