大草山の傘狐 昔のこと、夕方大草山の近くを家路を急ぐ若い男がいた。朝から曇っていた空からは、ぽつりぽつりと雨が降り出した。若い男は傘を持っていなかったので困ってしまった。そのときふと見ると、前のほうに傘をさして歩いていく人がいるので、入れてくれないかと頼んでみたが、なんと美しい若い女であった。もう一度近づいて傘に入れてくれるよう頼んだが、また無言ですうっと前の方へ行ってしまった。そしてふり返ったのは若い女性だった 。こうしたことを繰り返すうちに、いつしか女の姿は消えてしまった。若い男が家にたどり着いて、このことを話すと、大草山の麓に住む古狐に化かされたのだと家の人に言われたそうな、大草山にはそのころ狐がたくさんいたという。 浜名湖と天竜川の観光と伝説より |