質問 7 集成材で作った扉がきつくなりました 

一年くらい前にカントリー家具製作にトライしました。テレビ台ですが、材料をDIYで市販されているパイン集成材を使用しました。ところが湿度が高い時期に木が膨張し、全面扉が閉まらなくなってしまいました。膨張を考慮して左右の扉に約5ミリの隙間を空けたにもかかわらず、このような事態になってしまいました。扉は完の開きで幅寸法はそれぞれ約250mm、更に丁番をつけるアンカー側には50mmの幅木をつけてあります。そこでいくつか教えて下さい。
@膨張量はどのくらい見積もればよいのですか。
Aパイン材は膨張が多いのですか。
B集成材と1枚板戸では膨張率は違うのですか。
C雑誌に良く出ているカントリー家具の図面だと膨張を考慮した寸法になっていないのですが(隙間なし寸法)、何が違うのでしょうか。
Dその他何かアドバイスがあったらお願いします。
sep.2000 水沢さんからの質問


回答

木工で最も重要で工夫が必要な要素は、木が湿度によって伸び縮みするのをどのように克服するかです。どんなにしっかり乾燥させても日本のような年間を通して乾燥湿りを繰り返す季候では収縮に関してかなりの逃げが必要です。収縮を繰り返しても狂いのない家具を作る要素とその方法は次の通りです。

1 塗装によって木材の含水率を一定にする
  日本の気候では、木材の含む水分(含水率)は1年を通して平均すると、およそ15%(平衡含水率と呼びます)位になると考えられています。(これはその木材が置かれる環境によってかなり差が出ます。おおむねマンションなどでは乾燥しがちですし、2階3階と上になるに従って乾燥します。又、山裾や川の近くなどでは湿りがちとなります。)ですから、木材を家具に使用する時この水分にほぼ近いと最も狂いが少ない家具が作れると言うことが出来ます。
  しかし、買ってきた材料を使用する場所の平衡含水率に合わせることは現実には不可能です。その為、木材に進入する湿気を塞ぐため塗装を行います。
塗装するときの要点は、見える部分だけではなく見えない部分(裏の部分)や、木口にも塗装を施すことです。特に木口は湿気の進入路となりますので塗装を行います。
アマチュア向けの扱いやすい塗装方法をご紹介します。
a ウレタン塗装
速乾性1液油性ウレタン(半艶、艶消し)を用います。フロア用としても、ホームセンターなどで売っています。
特徴、夏場晴れて乾燥した日では2時間ほどで使用できるようになります。刷毛塗りで十分きれいに仕上がります。(艶ありは難しい)塗膜が強靱です。(着色したいときには木工用ステインで先に着色しておいて十分乾燥させます)
b 濡れ色に仕上げたい時
オイルフィニッシュがよく使われますが熱に弱いのが欠点です。そこでポワーオイル(ワシン)をお勧めします。
特徴 浸透性が強いので木の内部まで浸透して木を丈夫にします。刷毛でたっぷり塗り込んで下さい。その後、きれいなウエス(洗濯した物で毛羽立たない物)で余分な塗料をふき取ります。1日1回3回ほど同じ行程を行います。塗膜が無く自然な仕上がりです。
この塗装方法がアマチュアには最もお勧めです。
塗膜をつけたいときは、この上にウレタン塗装を行ってもかまいません。
c 天然樹脂塗装
商品名はオスモカラー(ドイツ産、他にも同様の商品があります。アマニ油系)
これもbと同じように仕上げます。有毒ガスがほとんどないので安心して、食器や赤ちゃんの使用するおもちゃなどにも良い塗料です。最近では、同じ様な塗料が別のメーカーからも輸入されています。


2 構造によって収縮を逃がす
a これは帆立て(扉やパネルになる部分)を框(カマチ)組にする方法です。框組は窓の様な構造で4方を細い木で囲み中に鏡板という幅広の板を入れるやり方です。幅広の板の狂いを鏡板を入れる溝に十分な深さの溝を掘ることによって吸収します。
この方法は古来から狂いを生じさせず、なおかつ重厚な造りで指物の細工の中心となっています。
これはなかなか道具が必要でアマチュアには苦しい工作です。

b 召し合わせ部分に目隠しを入れる。扉の中央の隙間を少し余裕を持って作ります。そして召しあわせの目隠しを少し大きめに作って取り付けると良いと思います。

質問の内容について
膨張率についての質問ですが、手元に資料がありませんし、樹種に寄ってもかなりの差があります。経験では松はかなり収縮が大きいようです。集成材は、その加工工程上かなり乾燥させて接着します。含水率をおよそ5〜7%位まで落とします。それを考慮していないと、木材は15%めがけて膨張することになります。ですから、水沢さんの作ったものは余裕を持って作ったとしてもきつくなったのではないでしょうか。
雑誌などで出ている寸法は、木材の膨張を考えてかかれている寸法ではないと思います。ですから作る人はそこを考えて余裕を持たせなければならない所は少し短めに作る必要があります。とにかく作るときには、幅方向に伸び縮みすることを考慮に入れて作って下さい。

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