15 温泉
エチオピアで一番良かったもの、それは温泉だ!!!
国の真ん中をアフリカ大地溝帯が走るこの国は火山も豊富。当然温泉もある。
首都アジスに温泉があると聞き、出発前から楽しみにしていたのだ。
私は2週間のエチオピア滞在で、体が汚れきっていた。
決して洗わなかったわけではない。苦労してお湯を沸かしてもらい、バケツ一杯の湯を使い、シャンプーもしたし体もしっかり石鹸とナイロンタオルで洗っていたのだ。
だが、悲しいことに私の体全体、洋服に包まれている胸やお腹までもが日焼けしたように黒くなり、特に手や顔はすっかり黒ずみ、ガサガサで、手は指先が硬くなり細かくひび割れていたほどだった。ウエットティッシュで手指の関節を拭くと、こすってもこすっていつまでも黒く汚れがついてくる。
自分が「エチオピア人の手」になっている。その衝撃。それだけでもストレスだった。
私の仕事は化粧品売り。毎日この手でエステをしている身だ。
(これじゃ、私、お店に立てない・・・・。 )
そして、至福の時は旅の最終日に訪れた。
アジス中心街からてくてく歩いて15分、噂の温泉があった。
一体どういうところなのだろう・・・・。個室らしいが。
1等室 10ブル(広い浴槽の部屋と脱衣所別)
2等室 6ブル (広い浴槽の部屋)
3等室 5ブル (浴槽と半畳程度の間)
4等室 4ブル (シャワーのみ)
一等から5等まで、ランクがあり、2等のチケットを買って石鹸と番号札をもらい、中に入る。
レストランなどがあるロビーを抜けるときれいな花や緑の庭に囲まれてて建つ、低い建物。
天井の換気口から湯気たつ、六角形の部屋がいっぱいくっついてひとつの大きな建物になっている。
建物の外側には、シャンプーや髭剃り、下着、簡単な衣類などお風呂グッズの売店がある。
2等の建物に入ってみると、中は万華鏡の中に入ったような、不思議空間・・・・。
もわ〜っとしていて、外側には小部屋のドアがたくさんある。内側にはベンチがたくさんあり、客が順番を待っている。
ときおり、万華鏡空間にエコーがいっぱいかかったアナウンスがぽわ〜んと響く。
「○○番さん、○○番の浴室へどうぞ・・・・・」
しかし現地語で言ってるので、さっぱりわからない。これじゃ、私が呼ばれてもわからないじゃんか。
そこらへんにいたおじさんに助けを請うと、スタッフに話をつけてくれて、なんと先に空いてる浴室を使わせてくれた。
ドアをあけてみると、広い!
なんと、ひとつの浴室が六畳間くらいはある。(六角形だけど) タオルもある。
バスタブは窓際に2mx80cmくらいの大きなものが。そしてシャワーがついて。
入浴時間は45分間。
お湯を出してみると、
「うっわ〜〜〜っっ!!!!」
出る出る!太い蛇口から熱いお湯が、ドドドド〜ッっとスゴイ勢いで!!!
超感動!
バスタブにお湯をためる。
でっかいバスタブなのに、お湯はすぐにたまった。
たっぷりのお湯に浸かった時、
言葉では言い表せないくらい、気持ちよかった。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜、し・あ・わ・せ!!!」
本当に、本当に幸せだった。
たっぷりのお湯で髪を洗い、体を洗い、また、お湯に浸かり・・・・。
ストレスに泣いた、エチオピアのすべてが、洗い流されたような気がした。
そして、湯上り、自分の体を見ると、色が変わっていた。
( 白くなってる・・・・・。 )
これにはびっくりしたね。 肌って洗えば白くなるんだね。 すごいよ。皮膚の色が変わるなんて。
身も心もふわふわと軽くなったところで、
私はもうひとつの目的へ向かって歩き始めた・・・・・・
そう!生ビール。
温泉の後は生ビールと決まっている!
私はこの為にエチオピアに来たのだ。
温泉の隣にある割とおしゃれなレストラン兼バーに入る。
生ビールとインジェラを注文。
目の前に出された冷え冷えの生ビール。
ぐっと飲んだ。
至福とは、こういう時のことを言うのだろう。
く〜〜〜〜っ!
美味い。 本当に、美味い。
ふわっと軽く、清流に流れ出た湧き水のようにさらさらとのどを通り抜けていく。
もう一口。
ジョッキの中のビールは4分の1ほどになった。
一息ついて、インジェラ&ワットを食べ始める。
この旅は一体なんだったのだろう・・・・。
ハードだった。つらかった。汚かった。人にも疲れた。
ストレスで旅の最後のほうにはあまり笑えなくなってしまった。
現地の人に八つ当たりして目を丸くされたこともあった。
あこがれていたエチオピア。私はこの国に、何をしに来たのだろう。
しかし、旅を終え、アジスの温泉に入り、生ビールを飲んだこの時、私は思った。
「あぁ、私はこの瞬間の為にこの国に来たんだ・・・・・・。」
そして、この旅のすべてを、はじめてYESと言える、そんなすがすがしい気持ちだった。
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☆エチオピア編は製作途中です。写真や細かい情報など、後日アップしますのでしばらくお待ちください。