旅ネタ雑記帳 イエメン

がんばれイラク人! チャーミングなムハンマド君の話

「あなたの予約は自動的にキャンセルされました。」

「え?キャンセルって? 何で? だって、そちらの電話が全然通じなかったからなんですよ。」

「あなたのお席はありません。」

そんなぁ・・・。

時は97年8月。
私たちの帰国便がガルフエアーによってキャンセルされてしまった。リコンファームができなかったからだ。何度電話しても通じなかった。通じてもコンピューターがダウンしてるからまたにしてくれ、と言われたり。

結果的に4日も帰国が遅れることになってしまった。
その間、私たちは、空港職員のおじさんの甥っ子の友達の家に転がり込むことになったのだ。

サナアのアメリカ大使館近くの高級住宅街。 
豪華なマンションの一室にイラク人、ムハンマドの家はあった。

これまで3000m級の山の家などに転がり込んでいた私たちにとっては夢のような快適空間だった。

彼は27歳。イラク人の歌手。今、国の状態が悪いから、とイラクの家族と離れてサナアで仕事をしている。歌手といっても結婚式などで歌う人。

かわいそうに、ついこの間独身になってしまった。奥様に逃げられてしまったらしい。私たちが使うことになった寝室には豪華なダブルベッドに女性物の高級なコート、化粧品。そして美人の写真が。

「これが僕の奥さん。なんだけど出て行っちゃったんだよね。僕はこんなに愛してるのに〜」

メソメソする仕草をするムハンマド。

「で、この奥さんの服とかそのままにしておいて、どうするわけ?」

いじめる私たち。

「片付けられないんだよね〜。いつ帰って来るかと思うと。」

彼は、細身でウルウルの瞳をもち、茶目っ気たっぷりの愛嬌者で、ものすごくマメで、オンナに尽くす、キレイ好きな男。

逃げた奥さんはイエメニア航空のスチュワーデス。派手目の美人、迫力バディ。奴はどう見たって尻に敷かれるはずなのである。なにせ、世界の田舎、イエメンでスッチーやってるんだから、相当なオンナに違いない。

そんなムハンマドと一緒の3日間。

彼の家ではバックギャモンをやったり料理をしたり、衛星放送のアラブミュージック専門のMTVを見たり、歌ったり。テレビゲームもやったぞ。スーパーマリオ!

「のりこ、今だ!キノコをつかめ!」
「オー マリオ、パワーアップ!」

楽しかったなぁ。笑った笑った。

もう彼はイラクに帰ったのだろうか。 彼に幸あれ!





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