プロッターのメンテナンス

ヒューレットパッカード社のデザインジェットのメンテナンスをやってみましょう。
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これはDesignjet230ですが、430シリーズ等でも基本は同じです。


印刷時にガタゴトと音がするようになった、所々線が繋がらないプリントが出来る、そんな症状があったらいますぐお手入れが必要です。
運悪くベルトが切れてしまった方、ベルトの値段は\7,000位ですが工賃はかなり高価です、交換は自分でも出来ます。ただし、自分で分解した場合は保証の対象外になると思いますので保証期間が切れた物以外はお奨めしません。また、全て御自身の責任で行って下さい。やはり基本はお金がかかっても保守契約でしょう。

デザインジェットではプリントヘッドを動かすベルトが切断したり、プーリから外れたりという故障が起こります。これはプリントヘッド(キャリッジ)が摺動する部分の潤滑が切れて動きが堅くなる事が原因と考えられます。ヘッドが動かないところにモータが無理矢理回ることにより、プーリがスリップしてベルトが摩耗してしまいます。ベルトの芯には強力な繊維が入っていますので簡単には切断しませんが、ゴムが摩耗する事によりベルトはささくれ状態になり、プーリから外れてしまいます。  蓋を開けて覗いてみましょう、

ベルトの下に黒いゴミが落ちていたら赤信号、すぐにメンテナンスが必要です。


1、軽微なメンテナンス
  印刷時に異音(ガタゴト)や線が繋がらない部分が出来る

準備   必要な道具
   ティッシュペーパーまたはウエス、潤滑油(ミシン油等)、軍手、(掃除機と細いノズル)
作業
   ・ユーザーズガイドにもありますがレールの上のステンレスベルトで手を切らないように
   この作業は手袋を付けることをお奨めします。
   ・電源スイッチを切ってから上蓋を開けて摺動レール(丸棒)を潤滑油を染み込ませた
   ティッシュで清掃、ティッシュが黒くならなくなるまで念入りに拭いて下さい。レールの
   左側部分もプリントヘッド(キャリッジ)を右に寄せて拭きましょう。
   ・次いでベルトの下のゴミを掃除機で清掃しておきましょう。
   ・「たっぷりと油を」などと考えて
レールに油を垂らしてはいけません。プラテン(ゴムロー
    ラー)の上に油を落とすと印刷用紙が汚れてしまい、インクが乗らなくなります。
   ・テスト印刷をしてみましょう、音はしなくなりましたか。
   ・月に一度はこの作業を行うことをお奨めします。



2、ベルトが外れてしまった、切断した。
準備   必要な工具
   上記1の道具
   マイナスドライバーの少し大きめな物が1〜2本
   このプロッターはネジが特殊なので写真の右側のような(トルクス?)という星形
   ドライバーが必要になります。このうちT10とT20を使用します。プラスドライバー
   では代用できません。
   さらにできれば5mmのボックスがあれば最高ですが、ペンチ等でも代用出来ます。

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1、カバーを外す    まず最初に上蓋を外しましょう。

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   電源、信号ケーブルを抜いてから上蓋を開けると5個の蝶番状の部分があります。
   右端の部分だけ心棒の形状がキノコ型になっているのがお解りでしょうか。
   矢印の所にマイナスドライバーを差し込み蓋を向こう側に外して左側にスライド
   させると蓋が外れます。


2、電源スイッチと操作パネルを外す

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   電源スイッチボタンは指でつまんで引っ張れば抜けます。

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   右側カバーの裏に手を差し込み、操作パネルの上の爪を外します。
   写真ではカバーを外した状態になっていますがこのように指で絞り込むようにすると外れます。
    
ケーブルに注意

3、用紙詰まりレバーを外す
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   用紙詰まりレバー(緑色)の芯のネジをT10のドライバーで外す

4、左右のカバーを外す
脚付きでない場合、左右のカバー部分は作業台よりはみ出した状態にすると楽に作業ができます。
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   この位置に−ドライバーを差し込み引っかかっている爪を外す。
   右の写真のように爪は3ヶ所あります、前後の2ヶ所を外しカバー全体を
   右に傾けるようにして上に外します。

   左側も同じ要領で外して下さい。


5、裏カバーを外す
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   T20ネジ2本を外します。
   裏カバー(金属製)の下部を手前に引いて外します。


6、メカ部分の分解   右ブラケットを外す   

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   ・ヘッドに繋がっているフラットケーブルを爪から外して後ろに避けておきます。
       ケーブルはコネクタから外しません、繋がったまま

   ・ステンレスベルトの端部を止めている5mmナットを外す。
   ・ステンレスベルトはスプリングでテンションが掛けてあります、プレート部を押し

    ながら外して下さい。
   ・下のT20ネジ(長いタッピングネジ)を外すとブラケットが外れます。
   ・絡んでいるベルトを左右プーリから外し、モータを右側に引き出す。
   ・これでケーブルラック(黒い樋状)が右側に引き抜けます。
   ・プリントヘッド(キャリッジ)を右側にスライドして外す。ステンレスベルト
    もヘッドの中を通っています、傷めないよう注意して抜きます。


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全て外した所、ベルトの屑が散乱しています、きれいに拭き取りましょう。
                          モーターが右側に引き出されています。


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  外したプリントヘッドとささくれたベルト         ベルトの取り付け部

ヘッド摺動部分のメタル(左右の銅製のC型)を清掃しておきましょう。

7、ベルトの取り替え
   ・上右の写真の取り付け部を外して新しいベルトと取り替える。

        (ベルトの向き(裏表)に注意、写真参照)
   ・ベルトの状態がそれほどひどくない場合はバラけた部分を切り取り、位置をずらして
   付け替えることで当分は使えます。しかし、新しいベルトは納期3週間とされていますの
   で至急発注しておきましょう。

 --------------- 部品発注はユーザーズガイドを見て下さい。------------------
   ・モーターおよび左側プーリーにこびり付いているゴムを清掃します。
     (これがガタゴト音の原因です) (プーリを傷つけないよう爪楊枝などを使うとよい)

8、レール部分を清掃し、潤滑油を塗ってから以上の逆順でメカを組み立てます。
  メカ組立が終わったらカバー取り付ける前に一度テストしてみましょう。
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   ・矢印のカバースイッチに紙を折った物を挟んでカバーが閉まっている状態を作る
   ・電源スイッチボタンを差し込みます。
   ・電源コードをつなぎ、用紙をセットする。(信号ケーブルは不要)
   ・操作パネルの
セットアップ 再出力 ボタンを同時に押してデモプロットを
   出力して見ましょう。正常に動きますか、異音はありませんか。

   ・デモプロットが正常でしたらスイッチボタンを外してから後カバーと左右カバーを付けます。
   ・左右のカバーは位置を決めたら上から拳でドンとたたけば嵌まります。(肘打ちも可(^o^)
   ・操作パネルを裏からはめ込みます。
   ・紙詰まりレバーを付け、上蓋を付ければ出来上がり。


 HP社のこのシリーズのプロッタは安くて高性能なのでベストセラーとなっていますが故障の時の出張修理に驚くほどの費用が請求されます。余裕があれば私ももちろん保守契約をしたいと思いますが、「それすら勿体ない」という情けない状態です。しかし商売道具ですから完全な状態で働いて貰わなければなりません。しからば壊れないように普段からのメンテナンスが必要、という訳で自己メンテナンスをやってみました。

 ここで取り上げたプリンタヘッド(キャリッジ)の潤滑切れは何故起こるのでしょうか。
よく解りませんが、潤滑に対して設計上の配慮が足りないような気がします。またガイドレールも国産の物に比べるとの精度が劣るような気がします、低コスト故でしょうか。最新の機種では対策がされているのでしょうか。

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