韓国船沈没

 

操舵室 側近の右舷に 28個、同左舷に 14個と 更に後方の煙突付近に 4個の 合計 46個


カプセルに入っている膨張式救命筏(救命ボートではない)の件はちゃんと報道されていないような…

2014年4月16日、韓国南西部珍島付近で 韓国籍カーフェリー「SEWOL」(セウォル/世越)が沈没した事故での報道内容が あまりに酷いので 少し コメントする事にしました。

最初に呆れたのは 自動船舶識別装置(Automatic Identification System, AIS)の図で 「二度も急旋回した」との報道だけど…、「それって、時刻座標点を直線で繋ぐ折れ線グラフだろ?」って思ってましたら 案の定、その後に の字状カーブだと 訂正されました。

韓国での報道については兎に角として…、日本での報道で 特に復原力とかの原理解説が 滅茶苦茶だったのに 驚かせられた。造船関係の専門用語である「メタセンター」とかの単語を出すまでもなくとも、せめて 重心と浮心の関係だけは ちゃんと解説する番組が あってもよさそうに…。
(広大な経済水域を有する海洋先進国「日本」のマスコミが 船の知識において斯様に勉強不足だったとは嘆かわしい )

想像による 創作横断面図では 復原力が発生する船の断面形の特徴を描けない

新聞も テレビも 押し並べて、船体横断面が  ヨットか 帆船みたいな 形状の解説図ばかりで…、絵師の想像による 創作横断面図じゃあ 重心と浮心の位置関係を 巧く説明できないよなぁ〜。

「フェリーなみのうえ/SEWOL」の諸元
総トン数(実は容積であり質量じゃない)
日本:6,586 総トン (1994年 〜 2012年)
韓国:6,825 総トン (2013年 〜 2014年)

全長 146.61 m (メートル)
全幅 22.2 m
全高 14.0 m
吃水 6.26 m
速力 21.5 kt (ノット)
主機 ディーゼル 2基
出力 15,974 hp (馬力) 2軸

1,000 総トン = 10万立方フィート = 2,831 立方メートル
6,825 総トン ⇒ 19,321.575 立方メートル

(幅:22.2m/高さ:10m/長さ:87m の 空間 = 課税対象 ≒ 上部構造物の容積かな?、貨物室?)
(これって… 純トン数/登簿トン数?…、総トン数を算出した容積から、機関室・船員室・航海用具室などの船舶の操縦・安全・衛生などに必要な場所を差し引いた容積をトン数に換算したもので、貨客の搭載可能な容積を表すって奴かも?)

この↓作図では 実際の重心高 11.78 m よりも少し低く重心の位置が描かれています

尚、煙突の正確な正面形状は 雛壇のようになった頂部から複数の排気管が出ていますが、台形に アレンジしています

水面下の船体(船底)で押し分けた海水の重さが 浮力となり、この空間の中心点が 浮心となる。船の重心は 浮心の直上だが ヨットなどの低重心船とは異なり、カーフェリーは 元々高重心船
(積荷は 車両も コンテナも 総て 水面より上の デッキへ積むのが カーフェリーの特徴だから…)

専門用語としては「防水区画」ではなく「水密区画」が正しいと思うけれど、ここでは日常用語で説明しています

このように図解すれば 「たった 51cm の 重心上昇」 なんて セリフは出てこないはず

何処の番組か忘れたけれど(4月28日放送の『池上彰解説塾』)…、船体横断面図を切り抜いた型紙を回転させて説明すると…、紙に描いた重心と浮心も 同じ方向へ傾いて解説困難になるんだよ。
(水没した部分の形状が船体の傾斜によって変化し、浮心の位置も移動する事で 復原力になる)

この↓状態で安定しているのを説明するのに「メタセンター」を用いると混乱するので ここでは使っていません

長時間続いた この状態で 乗客の避難誘導が行われなかったのは致命的
日本では 船員が 乗客の避難誘導を怠るとは考えられない事だが、
船体の大傾斜にも対応した避難誘導システムの開発は 造船/海運の双方にとっても有益と思う

船体が大傾斜すると 積荷の荷崩れで 復原力も失われるし、復原力消失角を越しても駄目!。
(ヨットなんか 真横からの強風に煽られ 90°横倒しになっても 元に戻る 復原力が与えられてる)
「SEWOL」では この状態で 漂流する間に 非水密の上部構造へ浸水も 続き、横転が 進んだ。

尚、この段階では 車両積み込み口が 未だ水没してないように見えたので

解説図で 車両甲板への浸水を 描いていません
(やはり、前方の
車両積み込み口を廃止した設計は 正解なんだろうな)

上部構造への浸水は上の階ほど大部屋などの大空間になっている一般的な船の傾向に沿い 進行を早めて描きました

こうなってしまうと客室へは どんどん浸水するし、この状態で客室からの脱出は 極めて困難だと解る

報道を見聞きし、残念に感じるのは 救助活動のピークが横転後であり、時間的余裕があまり無かったと思われるところである。返す返すも初動で、避難誘導の重要性を再認識させられる。
(駆け付けた 海洋警察の手際の悪さも感じるけれど… 他所の御国事情もあるので コメントは差し控えるたいと思う…)

大傾斜で浸水を続けて横転した結果、映像のように 劇的に船底を見せる転覆の後に沈没

復原力消失角を越し、瞬時に メタセンターと重心が上下逆転した 180°の転覆ではなかった

ここまでの作画考察(simulation)での注意事項、非水密の上部構造は開放区画として扱った。これを閉鎖区画として扱い、浸水をバラスト注水と同列に考えて 重心の上昇として描くとなると モデルが複雑化するからである。宜しく ご了承願いたい。

船尾両舷に 車両ランプ(ramp way)が 折り畳まれているが 其処には当然として 車両積み込み用の 大きな開口部がある。主船体部は 乾舷の高さまで 水密区画なのが 一般的なので 何らかの対策が 車両積み込み口にも成されていると思うけれど手持ち資料は無い。ただ この開口部から浸水すると 広大な車両甲板に 水密隔壁は無いので安全対策の課題とされているのが現状だ。
(明確な資料も無しに 車両甲板への浸水を強調すると フェリー業界への風評被害になりかねないと考え 控えています)

カーフェリーの資料ではありませんが…、日本国内で生産した自動車を海外へ輸出するのに使用する 自動車専用船(自動車運搬船)の資料によると、件(くだん)の箇所を ヒンジ式風雨密ドア兼ランプと称しており、大傾斜で水没すると完全には海水の進入を防げないようです。ですから「SEWOL」でも車両甲板への浸水が少しずつ進行したと思う。

以上、私なりに 復原力の原理説明と 「SEWOL」で起きていた関連事象の推測ですが、この位の解説を新聞やテレビの特集番組に期待するのは 叶わぬ贅沢なのかなぁ〜?。

4月28日放送の『池上彰解説塾』でも
重心/浮心/メタセンターの関係を語らずに 『復原力』を説明しようとしていた。
あれでは 『復原力』の意味は 伝わらないし、解説者自身も 原理を理解していない感じだった。
(船体横断面図を切り抜いた型紙を回転させて説明すると、紙に描いた重心と浮心も同じ方向へ傾いて解説困難になる)

浮力を説明するのに アルキメデス(Arkhimedes)の原理すら正しく解説できずに、似て非なる説明をしていたから、池上彰氏は 理系ネタが あまり得意ではないと思わさせられた番組内容だった。
あの場合の正しい解説は…、満杯の水槽へ船の模型を浮かべて、水槽から溢れ出た水と 船の模型を 天秤で釣り合わせて見せ 同じ重量だと示す船の模型と 分銅を 天秤に掛けて 釣り合ってるところから、分銅を 水槽へ入れて沈むのを見せて 何の意味が あるんだ?… 頭痛がした。

満杯の水槽へ船の模型を浮かべて、水槽から溢れ出た水と 船の模型を 天秤で釣り合わせて 同じ重量だと示す

そもそも、天秤とは 両端へ2つの物を 置き、それが 釣り合う事で 同じ重量だと示す道具である

船の模型と 分銅を 天秤に掛けて 釣り合ってるところから、分銅を 水槽へ入れて沈むのを見せて 何の意味が ある?

このように 天秤の片側へ分銅を置くのは 計量器具として使用する場合なのだが… 何を したかったのか?謎だ

更に番組中で 「重心が高いと不安定」を説明するのに使った例、座ってボートに乗れば安定しているが 立つと不安定になるは 些か問題がある。復原力の原理からすれば メタセンターの高さ未満の重心高なら転覆しないが動揺周期は長くなる。だが、立って揺れる場面を想像して欲しい、ボートは左右へ激しく小刻みに ローリングしていたはずだ。これは ボートに不慣れな人が 地上で立つ時みたいに バランスを取ろうと左右の足へ重心を移動させるから起きる現象なのだ。ボートに慣れた人ならば、仁王立ちする事により長い動揺周期で安定して立つ事ができる。つまり、例題の現象が復原力と重心高の関係に起きる特徴と異なるので困るのだ。
(ボートで立つと揺れるのはパニックを起こした人間が余計な動作で揺らしている、座ると動けないから安定するだけ!)
(ボートへ船外機を付けて、航走中に旋回するならば 立っているよりも座った方が遠心力による傾斜が少なく安定する)


後述する「3倍の過積載」という理屈の矛盾に気付けないし、総トン数を質量と認識しているし…。あれ程博識な池上彰氏であっても理科オンチだという事が日本の報道関係者の実情なのか?。
(船舶のバラスト水放出で海洋生物の生態系へ及ぼす影響の話は 明らかに蛇足で番組構成×)

昼間のワイドショーでは 『高い重心⇒急旋回⇒大傾斜⇒荷崩れ⇒転覆⇒沈没』での原理説明ばかりだ。(話題の焦点が船長の責任放棄や逃亡だったりと人間の行為中心なのは納得する)
(ワイドショーなのだから、基本は主婦向けの番組内容になるだろうし、そこへ事故の発生原理解説を求めるのは無理)


私が思うに、改造や過積載やバラスト不足などで 高い重心になるのは 誰でも理解できる

そして、重心と 浮心の関係で言えば 復原バネが弱くて 僅かな針路変更で  船体は大揺れする。だから、出港から 事故現場まで 無事に航海できた事を 燃料の消費が少しずつ進んだ結果云々だけでは いつ事故が起きても不思議ではなかったとしか説明ができないはずなのだ。
(文系的には それで良いのかもしれないが、理系的には それでは 納得できないのだけれど…)

当初の報道では 「暗礁に衝突説」が出て、「操舵手の操船ミス説」も出た。その後、「改造が怪しい」と言われ出して、「過積載やバラスト不足」が 確定的となると 「いつ事故が起きても不思議ではない運行が続いていた」と結論づけて 報道関係者は納得してしまい?真相究明が止まったように感じるのだ。「起きるべくして起きた事故」 、 文系的には それでも良いのかもしれないが、理系的には 納得できない。改造後に就航して1年以上も過積載を続けていても、即座に転覆事故へ至らなかったのを 単なる偶然や悪運が続いたとは 考えられないからである。
いつ事故が起きても不思議ではないのに事故が起きない運行を続けられる手品的要素が 何かあったはずだ。

この出港から 事故現場まで 船体を安定させていたのは フィン・スタビライザーではないの?。
スタビライザーが 自動的に補正するから 復原力の弱さが 表面化しなかったんじゃないの?。
でも、事故現場海域で スタビライザーの制御限界を超えて支えきれず、突如  大きく傾いた

いつ事故が起きても不思議ではなかったのに事故が起きない運行を続けられる手品 として悪用された?

赤い色で示した突起物フィン・スタビライザー(fin-stabilizer)

高い重心⇒僅かな針路変更⇒スタビライザーの制御限界⇒大傾斜⇒荷崩れ⇒急旋回
漂流⇒浸水⇒横転⇒転覆⇒沈没』という 経緯で 私は 考えています。

外洋型カーフェリー独特の船底形状が解る写真↓

青い船底の中央に フィン・スタビライザーが写っている↑↓

フィン・スタビライザーの前後にある鰭は ビルジキール↑↓

フィン・スタビライザーの資料写真↓

港で接岸する時には 内部へ格納する↑

『世界の艦船』(海人社) NO.719 の 152頁〜153頁、カーフェリー"ありあけ"検証記事で
私が抱いていた疑問へ明快な回答を享受してくれた尊敬する筆者が
『世界の艦船』(海人社) NO.800 の 212頁〜213頁、韓国フェリー「セウォル」検証記事では
「フィン・スタビライザーが突出しているのが確認できるから、波はある程度高かったことを物語っている」
と推理しているようなのだけれど、
「過積載でも転覆事故が起きない運行を続けられる手品 として、フィン・スタビライザーが悪用された」
とは 想像しなかったようですね、
報道の映像を見る限り、我家から見に行ける太平洋と比べたら 凪いだ内海にしか見えない、
それなのに フィン・スタビライザーを 使用していたから 私は 怪しく感じたんだけどなぁ…

尚、フィン・スタビライザーでは 復原力を増加させるような制御は行われていないそうです。
運動速度に比例する制御を行っており、角度自体に対してそれを減らすようには制御されていないとの事でした。やはり想像通りで、むしろ 低下した復原力を回復する根本的な解決策にはならない事が重要です。もしも真っ当な解決策に成り得たなら事故は永遠に起きなかった事になってしまうからです。そして、復原力が減った状態で、船体運動が大きくなると、それを減らすようには働いていますので、フィンスタビライザーが若干なりとも復原力の減少による横揺れを抑えていたとはいえる という事でした。この事から考えられる操船方法は 進路変更のために舵を取る場合、ラダー・キックで内側へ傾斜した後に 外側へ遠心力で傾き始めたら即座に舵を戻す必要がありそうです。何故なら 旋回を続けてしまうと 遠心力による傾きを止められそうにないからです。この事は 現実の事故の様相とも合致します。このように 悪用のコツは フィン・スタビライザーへ 傾斜ではなく揺れと感知させる範囲に留める事なのでしょう。少なくとも フィン・スタビライザーを 悪用できる条件は 限られていて凪いだ海でしか使えない。
映像記録から フィン・スタビライザーが使用されていたのは間違いありません。これを 事故の直前まで波が高かったとするには 救助ヘリが到着するまでの短時間に凪いでしまう、都合良い気象の急変を想定しなければならなくなる。他の可能性としては フィン・スタビライザーを使用後、格納し忘れて航海を続けていた?…抵抗増で燃費落ちるけど。
ところで、低下した復原力を回復する根本的な解決策にはならないのに フィンスタビライザーを利用する意味について少し説明を補足すると…、操船時の操舵手へ及ぼす精神的負担の軽減が期待できそうだからです。何ら対策せずに低下した復原力で航走すると操船に伴う船体の挙動も激しくなり、操舵手は長時間の集中力に耐えきれず、ミスを犯しやすくなります。しかし、この船体の挙動(揺れ)が多少なりとも緩和すれば過積載の常習化も可能になる。

因みに、2009年 カーフェリー「ありあけ」の事故報告書↓
http://www.mlit.go.jp/jtsb/ship/rep-acci/2011/MA2011-2-2_2009tk0012.pdf
これを読むと 追い波を受けても揺れず 安定していたので 事故を予見できなかったとあります。
(追い波を受けても揺れず 安定していた理由は フィン・スタビライザーによるものと 読み取れる)

一般の認識では どうやら 「ありあけ」の事故は高波を受けて船体が傾いた天災と思われているようだけど実は違う。 IMO(国際海事機関)の「追波中操船ガイダンス」で警告している「追波の波速と波長が船の船速と全長に同調する状態では復原力が低下する」という知識が船長と一等航海士に無かったために自らが置かれている危険な状況を認識できなかったようです。その際に フィン・スタビライザーの効果で 追波による復原力低下の前兆現象である異常な揺れを感じる事ができず、直進中に突然 大傾斜したので 急旋回したようです。これは追波による復原力低下の状況下で遂に  フィン・スタビライザーの制御限界に達したためと私は考えています。(逆に言うならば、フィン・スタビライザーには 復原力低下の状況下でも 船体の異常な揺れを抑え、問題を表面化させない機能が備わっていると指摘できる)

だから、「SEWOL」も フィン・スタビライザーの存在を考慮しなければ、人間による操船技術だけでは ふらふら揺れて危ない状態であり 出港してすぐに転覆しても不思議じゃない
(しかも、改造後に就航して 1年間以上も?…その航海の半数は 過積載だったというのに?…)
確かに 燃料消費で徐徐に重心の上昇もあっだだろうけれど、事故の様相を伝える話では 通常通りに操船していたのに 突如として破局が訪れた感じで 報道されています。

人間による操船技術だけでは、この突然の破局を 巧く説明できないけれど…
(ふらふら揺れて危ない状況で 操船に神経をすり減らして、遂に事故へ至ったというなら解る)
自動である フィン・スタビライザーの制御限界ならば 突然の破局を 巧く説明できると考えます。
(逆に言えば、フィン・スタビライザーさえ働かせれば 過積載でも 大丈夫と過信して 常習化した)

一般の認識では 「SEWOL」の場合も、操舵手の操船ミスと思われているようですが、私は これも 僅かな針路変更が引き金となった フィン・スタビライザーの制御限界であると考えてます。この場合、前提条件として 重心を高めてしまった改造と過積載にバラスト不足という複合要素の危険行為があった事は間違いないのですけれど…。たぶん最初は 恐る恐る 少しだけ過積載しても大丈夫と解り、その後に調子に乗って 過積載の量を増していったのだろう。そして運命の日、霧で出港が遅れている間も次々と自動車の積み込みを受け入れて、最大量の過積載になってたのかもしれない。あるいは 出港の遅れで当直のローテーションが替わり、不慣れな三等航海士の順番で航海の途中に補充するバラスト水の注入(過積載でないなら必要無い)を 怠っていた(もしくは裏技を知らされてなかった)のかもしれない。
(大洋を横断する 長距離航路では 燃料消費に伴う 重心上昇を避けるため、航海の途中で バラスト水の注入を 行う)
勿論、黄色で囲んだ前出の 「フィン・スタビライザーは 復原力を増加させるような制御は行われていない」から想像される操船方法 『外側へ遠心力で傾き始めたら即座に舵を戻す』に失敗した操舵手の操船ミスの可能性もあります。しかし、報道された証言の日本語訳を信じ、「通常通りに操船していた」のならば、事態は過去の経験よりも悪化していたために 操舵手の『通常通り』の感覚では フィン・スタビライザーの制御限界を越えていたと考えるのが無難かと。
(その方が 操舵手の釈明 「通常通りに操船していたつもりだが、通常より余計に回った」 と 整合性も 生じると思う)
(報道では 操舵手が 操船ミスを 認めたような伝え方も しているけれど、警察から 誘導尋問を 受けたように感じるぞ)

 

他にも 気になった事あれこれ…、あれは 何処の放送局だったか忘れたけれど…、
ラジコン模型の水槽実験で 転覆するようすを放送していた。
それは違うんじゃないか?と思いました。

だって、「SEWOL」は 45°以上 50°近くまで傾いて漂流していたわけで、
メタセンターと重心が上下逆転してはいません。

大傾斜で浸水を続けて横転した結果、映像のように 劇的に船底を見せる転覆の後に沈没。
つまり、漂流中は 横移動した重心が 浮心の直上に位置して安定してたわけです。
瞬時に メタセンターと重心が上下逆転した 180°の転覆じゃないんです。

あの実験、瞬時に転覆させてしまうと 復原力原理の意味合いが 少し違ってしまうんだけど…

協力した実験施設側も 違いを認識してるはずだが 派手な演出効果として 取材記者から強要されたのかな?

ところで、私は 『旋回したから傾いた』のではなく、傾いたから旋回したと 考えています。この説明についても 「報道での解説は下手だなぁ〜」と感じました。何故 「水面下の船体両舷は湾曲しているのに対して船底は平らなので、大きく傾くと 左右非対称な水中形状となり 直進できない」と 説明しないんだろう。(丸底船型の図解や簡易模型相手では そんな発想できないかな…)

もっとも、ヨットなどの帆船は 横風受けて傾斜しても 直進性の求められる船底の形なので、下手に ヨットの知識とかある人なんかも 船体が大傾斜すると 直進できない船の想像は困難となる。

それから この 3倍以上過積載の解説 滅茶苦茶だと思う。

3倍の過積載」という理屈の矛盾

上の図の 『旅客・貨物 総重量』ってのは 『総トン数』の事、だから質量じゃなくて 容積ね。
6,825 総トン − 6,586 総トン = 239 総トン = 676.609 立方メートルの 構造容積増加

だから 『旅客・貨物 総重量』の項目を 以下の 重量計算では 完全に無視しますので宜しく。
たぶん、総トン数 (gross tonnage) の韓国語を 素人が 語彙の感じだけで直訳したのだろう。
(船に詳しいと、「総トン数を重量と思い込むのは 初心者が掛かる罠」として よく知られている事柄なんだよな)
(4月28日放送の『池上彰解説塾』でも 池上氏は 総トン数を重量と認識した解説だったから 恥ずかしかったです)

貨物の最大積載重量(DWT)』ってのは 『載貨重量トン数』(deadweight tonnage)。

DWT (deadweight tonnage) 載貨重量トン数
3,794t - 3,981t = -187t

船舶重量? ≒ たぶん自重 (empty mass)
6,113t - 5,926t = +187t

つまり、改造で 自重が増えた 187t だけ 搭載量も減った
このDWT搭載量(載貨トン数)には バラストや燃料も含まれるのが 味噌 でしょ

この更承認条件の肝 安全に積める 貨物と乗客の重量(重心を高める効果)が減らされ、
バラスト(重心を低める効果)を 倍増させる必要を 指示
している事です。

然るに、報道で清海鎮海運は 3,900t 積める船へ 3,600t しか積んでいない」と 弁明している。
それなら 承認条件なんて無視し、過積載でもバラスト減らして 辻褄合わせしていたんでしょうね。
(つまり、過積載していても 吃水は変わらないので、外観から その危険性を 検査できないはず)
(因みに 「3,900t 積める船」って 改造前の DWT 3,981t の事か?… 承認条件の認識 無いね)

このように考えると報道の言う「3倍以上の超過の 3,608t の貨物を搭載は 出鱈目な指摘だね。
(報道は 『3,608t = 全て貨物』 と 認識してるようだけれど、 それだと 正常な吃水が維持できない)
重要なのは バラストや燃料も含まれる DWT 3,794t の正確な内訳が どうなっていたかだと思う。

それでは 3,608t = 全て貨物、なんて事が 何故、有り得ないかと もう少し説明を加えると…、
DWT 3,794t + 自重 6,113t = 排水量 9,907t が 船体の吃水線へ目盛られていて、それを出港前に チェックされています。自重の 6,113t は 減らせないので DWT 3,794tバラストや燃料も含まれるから 3,608t = 全て貨物なんて事は 燃料不足で 比率的に有り得ないわけです。

排水量とは アルキメデスの原理で 水中体積の水の重さだけ浮力になるという 水量を指す

排水量 9,907t 船体の吃水線へ目盛られていて、それを出港前に チェックされている

写真は 「SEWOL」船首の「吃水標」の目盛↓、船体中央部と船尾にも 「吃水標」がある

「吃水標」は 船舶法により表示が義務付けられていて、これにより港湾当局は 船のチェックを している

出港時に 吃水線の異常な沈み込みを していなかったのなら、上限数値 9,907t
造船所で 軽量化改装でもしない限り
自重
(empty mass) の 6,113t
減らせない
DWT 3,794t
バラストや燃料も含まれる
だから 『3,608t = 全て貨物』 なんて事は 燃料不足で 比率的に 有り得ない
(DWT 3,794t - 3,608t = 186t 、排水量の 2%弱が燃料?しかも バラスト皆無として…)

船体の水没部分を 全長 146.61 m 全幅 22.2 m の 菱形で 厚み(深さ) 6.26 m と設定した試算、
全長 146.61 m × 全幅 22.2 m ÷ 2 × 吃水 6.26 m = 約1万立方メートル ⇒ 重量 約1万t
DWT 3,794t + 自重 6,113t = 排水量 9,907t とも ほぼ一致するから 間違い無いと検証できる。

DWT 3,794t + 自重 6,113t = 排水量 9,907t と 比較検証するため

船底部分を 全長 146.61 m 全幅 22.2 m の 菱形で 厚み(深さ) 6.26 m と設定して試算すると 重量 約1万t

その後の報道で出て来た過積載の 記録改竄 -180t の話で 3,608t の謎解き、
『DWT 3,794t - 減量改竄 180t ≒ 3,600t』 が 清海鎮海運の言う 「3,600t の真相」じゃないかな。
(清海鎮海運の担当者も実は馬鹿なので DWTの内訳を変えずに DWTの総量を減じるミスをした)

以上から推理できる予想最大過積載量は 『構造変更承認条件 987t 』の2倍強、2,400t !
つまり… 改造前の積載能力。(元々積み込み用の船内床面積は あるのだから 積みたくなる)
吃水の辻褄合わせは バラスト減量で 2,030t を 守らずに 1,023t 未満だった可能性もあるね。
(2014年5月6日の新聞記事で バラスト量 580t、規定量の4分の1」と 報道された)
(2014年5月16日の新聞記事 「基準積載重量?1.077t の 約2倍 2,142t の積荷」と 報道された)

ついでに 過積載記録改竄 -180t の 数値の意図は 増築改造で増した 187t なんだろうな〜。
(やはり、清海鎮海運も 事故原因に増築改造が関係していると 感じていた 何かがあった?)

DWT (deadweight tonnage) 載貨重量トン数
3,794t - 3,981t = -187t

船舶重量? ≒ たぶん自重 (empty mass)
6,113t - 5,926t = +187t

DWT 3,794t - 3,608t = 186t
過積載記録改竄 -180t の 報道数値も 正確には -186t だったのかも?しれない…。

報道関係者は初歩的なミスで、総トン数の増加分 239 総トンを改造による重量増加と思い込んでいるから 180t187t の意味ありげな数値を見ても 関連性の想像すらできなかったのだろう。

改造前の乗客定員 804名、重量にして 88t だから 一人当たり 約 100kg.、それが 改造後は 乗客定員 921名 (+117名) なのに 重量にして 83t だから 一人当たり 80kg. (70kg.) へ 減っている。
たぶん、旅客の方が 貨物よりも 利益率が 良いのだろう…、それで貨物積載能力を犠牲にする改造までしたのに マーケット・リサーチ不足で 現実には 貨物収入が 主力に なったんだろうな。

この事故、結果的に 過積載なのは 間違いないけれど…、報道関係者が考えているような無理積みは していない、私には 改造前の積載能力と 同等以下の積載量だと 推測される。そもそも、構造変更承認条件を課したとしても、車両甲板や貨物室の床面積や容積がそのままならば、過積載を防止できない構造なのだ。私は規則で禁止するだけではなく、車両甲板や貨物室の床面積や容積も減ずる措置を施さなければ承認すべきではないと感じる。
韓国の監督官庁は このように危険性の高い改造を許可すべきではなかったfail-safe の観念から意見したい。
日本の報道関係者には誰一人として、このように工学的見地から指摘する言動が無い事が 残念で居た堪れない。

報道関係者は 船の知識について 全く素人だと 解っちゃいるけれど… もう少し 基本原理くらい、一夜漬けでも良いから 勉強しようと思わないのかな〜。(愚痴)

  

考証 research (C)SA-ss 2014    

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