Decisive Battle



ブレストはアリューシャの部屋に戻り用事を済ますと外に出てきた。
「さてと……武器どうすっかなー…久しぶりに本気でやれそうだし槍でいい?駄目なら剣に変えるけど」
「かまいません、俺は刀でいきます」
向き合うと、お互いに武器を構えた。
「勝負!」
ダグリスが先に攻撃を仕掛けた、走りこんで居合い斬りををするが柄の部分で止められる。
(あのスピードを見切られた…強い…)
内心あせるダグリスをよそに、組み合った刀を押し返してブレストが槍を薙ぐ、避けて薙いだ瞬間を狙い懐に飛びこんで仕掛けようにも、もそこから器用に柄を回転させ受け流す。
「んー筋は悪くねーが、まだまだだな…」
何度か斬りかかるのを巧みにかわしつつブレストの反撃に正直舌を巻く。
(クッ……隙が無い…)
「まだ本気だしてないんだろ?これじゃ運動にもならねーよ」
正直、ブレストもダグリスの俊敏さに舌を巻いていた、一瞬の隙を突かれれば勝負が決まってしまう。
「…気のせいじゃなければ息があがってるようにお見受けしますが?ご老体なのに無茶しない方がよろしいのでは」
「ぬかせ、小童がっ!」
数度打ち合いし軽口を軽口で応酬し、互いに構えを直す。
「さてと、そろそろ看病に戻らないといけねーから…本気で行くぞ、怪我してもしらねーぞ」
先程とは格段のスピードで薙いだ槍の切っ先が掠めダグリスの服を破る。
返し手で振り下ろされる斧を寸前で避けた。
そこから次の攻撃に移る一瞬の間を狙って、踏み出した。
「良くぞ狙ったと言いたい所だが、まだ甘めぇな」
柄から手を離して向かってきたダグリスの手首を掴み返し捻って足を引っ掛け地面へと倒した。
地面に刺さってる斧槍を引き抜き喉元に当てる。
「………まいりました」
負けを認めらざるを得ない、少し悔しい顔をしつつも刀を鞘に収めた。
ブレストは立ち上がると、手を貸しダグリスを立ち上がらせた。頭をくしゃくしゃっと撫でまわすと
「次会うときは、もうちっと強くなってろよ、あとコレ預けとくから用事すんだら理事長室にいっからヨロシク頼むな、枕元に薬あるから飲ませてやってくれ」
そう言って、部屋の鍵をダグリスに投げた。



理事長室にノックも無しに入るとしゃがれた声のカエルが一瞥すると書類に目を戻し口を開く。
「何しにきた、そこの老いぼれ、看病しろとゆーたじゃろが」
生徒に病人の面倒をかけないよう、アリューシャのためにブレストを召喚したのにここにきたら意味が無い。
「老いぼれはお互い様だろーが、居場所ねーんだ暫く付き合え。ほら土産土産」
「わしはお前さんを飲み会するのに召喚したわけじゃないんだがなー…」
どこから貰ってきたのか、その手には酒とツマミが用意されている。
「仕事中なんじゃが…」
「んなの、後にすればいい」
「はぁ…昔から聞かない奴だったな…」
ため息をつくと、諦めてブレストに向きあった。
「しかしなんだ、ちと若作りしすぎじゃないか?」
「うるせー病人看護するには体力が必要なんだよ。」
グラスに酒を注いでダグダに渡す。
「そんなもんかのー…あ、これ美味いな」
ツマミを齧りながらちびちびと舐めるように飲む。
「秘蔵の酒だからなー…やーしっかしアレだなー口の悪い所マジお前にそっくりだったなー…」
手酌で自分のグラスに注いだ。
「ん、ダグリスに会ったのか?」
「おー、さっきまで楽しく私闘してた、今頃はボロボロになりながら孫の看病中」
注いだ酒を一気に飲み干した。
「アリューシャは大丈夫なのかね」
「大丈夫だろ、一番よく効く薬を向かわせたし、俺よか熱心に看病するだろーよ」
「あんまりうちの曾孫を虐めないでほしいんじゃがな…」
「アレが泣くような奴か…ま、いい運動にはなった」
(はぁ…つくづく俺も甘いな……)
ため息混じりに次いだ2杯目を一気飲みした。
夜が明けるまで酒宴は続いた。
その後、目覚めたアリューシャが見たものはブレストの代わりにベッドの脇のソファーで眠るダグリス。
その数時間後には二日酔いの状態で孫に怒られるブレストの姿があった。

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