落選の理由を考えてみた。
その1.小説の才能が
元々ないから、小説となっていない。
その2.一応小説になっているが、内容的に面白くもない。
その3.アダルト的内容で、テーマに反していた。
テーマとした「あした」は、明るい希望の光さす未来を映す<あし
た>でなければならなかったであろう。いわば人間の未来を肯
定的に把えた内容が求められたのではないか。例え現在は悲惨
でも、あしたは明るいといった――。
この『日本のあした』は、逆に日本の未来を否定的・逆説的に、
悪く言えば、悪意を持って把えた内容――どちらかと言うと、ヒワ
イな内容となっていて、お呼びではなかった。
その4.その2、その3の2つの理由が併わさって。
では、始まり、始まり――
『日本のあした』
(1)
第89回全国高校野球選手権決勝戦は大阪代表性交学園と東京代表21性器大学附属高校との間で決戦の火蓋が今まさに切って落とされようとしている。テレビカメラが既に超満員とな
っているスタンドを撮し出した。応援席では早くも激しい応援合戦を繰り広げている。日の丸の鉢巻に黒の学生服の応援団員に混じって赤に統一したコスチューム姿は三塁側性交学園のチアガール。巨乳生徒ばかりを選りすぐったのか、パンパンに膨らんだ胸が揺れっ放しな上に、ブラウスの裾が持ち上がればヘソ丸見え、脚を上げれば、パンティーと見まがう真っ赤なアンダースコートのむっちりとした股の膨らみが目に飛び込んでくる。
「たまらんですな」
解説者の思わずのように洩らした声が聞こえた。アナウンサーが「たまらんですね」と応じたのも頷ける、テレビ画面からでも健康でむんむんした匂いが嗅ぎ取れた。
それは一塁側21性器大附属高のチアガールも同じであった。単にコスチュームが目に眩しい白地に統一されているだけの違いしかなかった。
「既にグラウンドでは性交学園の練習が始まっていますが、もう暫くはチアガールにお付き合い頂かなければならないようです」とアナウンサーが圧倒される顔で、しかし嬉しそうに言うと、「いいんじゃないんですか。テレビの前のフアンも、その方が目的でしょうから」と解説者がもっともらしげに解説する。
突然場面が切り替わって観客席下段からチアガールを撮影している仰向けたテレビカメラ自体を撮し出した。共通の熱心さに感染しているらしくて、1局だけではなく、3台も並んでいる。新聞社のカメラマンも多数混じり、公認された盗撮と言ったところだ。
「少々残念ですが、お届けの素晴しい場面は後ほどまたお楽しみ頂くとして、改めて決勝戦を戦う両校の紹介をします。まずは先攻三塁側の大阪代表性交学園高校からです」
超高級マンションかと見まがう8階建て豪華かつ瀟洒な建物が撮し出された。創立昭和28年、現在の生徒総数2577名。内部の様子。授業風景。各クラブの練習風景。それぞれが勝ち取った優勝カップの数々。野球部は創部47年目。グランドはナイター設備は勿論、立派な観客席を備えている。練習に打ち込むユニフォーム姿の野球部員。総勢160名。女子マネージャー26名。甲子園春の大会出場22回、夏は29回。春夏共準優勝と優勝が4回ずつ。
「何事も」と解説者が感じ入ったように言った。「カネの力ですかねえ」
「部員160名のうち、すべてが各地方からの野球留学生です。ここ5年、地元出身の野球部員はゼロを記録しています。野球留学生の特典は、授業料及び寮費・食費とも全額免除。野球を通して技術だけではなく、人間形成に力を注いでいると言うことです」
野球グランド地下の室内練習場の紹介。各種トレーニング室は勿論、サウナとジャグジー風呂も備えている。ハーフパンツ一枚のみで上半身裸でウエイトトレーニングに励む部員の姿。いずれも1人前の男性器を備えている証拠として股の部分がもっこりと盛り上がっている。バーベルを持上げ終わった部員がその場に仁王立ちになると、壁際に各自バスタオルを持って
並んで待機していた女子マネージャーの一人が駆け寄って、汗が噴き出た上半身を背中から拭き始めた。終わると前に回って、腕から始めて腋の下、胸、腹と拭いていく。意識的にそうしているのか、腰と腰がすれすれの危険な位置にまで近づき合っていた。
「どうです、あの2人」と解説者。「お互いに挑み合うみたいに意味深に見つめ合っている。身体を拭き拭かれる行為と目の挑みを通して、興奮を高め合おうとしているようだ」「恋人同士なのでしょうか?まさにそれとなくお互いを挑発しあう前戯そのものといったところですね」
「自由恋愛の時代であっても、健康が過ぎて抑えきれずに女性問題で面倒を起こしてしまう時代でもあるから、出場停止に発展しないとも限らない爆弾を常に抱えているようなものです。それを前以て避ける意味から、問題を起こす前に自由恋愛制度を利用して、強制からではなく、女子マネージャーたちが自らの使命感として、定期的に性欲処理の役目を買って出ているってこともあるかもしれません。嬉しい役目でもあるでしょうし」
「そうだとしたら、羨ましい限りですね。私たちの時代はそんなことはなかった」
「練習が終わった後、あの二人が一糸纏わぬ汗まみれの姿で、どのような満ち足りた歓喜の時間を過ごすか、想像するだけで感じてきます」
「我々が若い女性で欲望を発散させようとしたら、バカにならないカネを要求されますからね。下手に女子高生を望んだら、淫行罪ですから」
21性器大学付属高校の事情も似たり寄ったりだった。バカでかい校舎と部活の施設にカネをかけている点では、どちらが決勝戦を制するか、判断に迷う。地元選手はベンチ入りできない補欠の1人のみで、残り148名の部員は性交学園と同じ野球留学生。こちらは授業料及び寮費・食費は一般学生と同じく全額を支払っているというが、実質的には預託金で、卒業の時点で預かった日数に合わせた利子込みで返済されると噂されているらしい。
「裏には裏があるんですなあ 」と解説者が感心した。女子マネージャは23人。
「同じく野球部専属の暴発抑止者なのでしょうか?」とアナウンサー。
「とにかく連中は健康ですからねえ」と解説者。「性欲が満たされずに苛々すると、喫煙や喧嘩・暴力へと向かう。最悪の場合は覗き・強姦。出場停止回避は至上命令です」
(2)
首相官邸執務室。甲子園夏の大会決勝戦のチアガールを大写しに撮し出した100インチの大型画面が膨らんだバストの揺れと股間のチラリズムに実物以上の迫力を与えていた。顔を間近に近づけて見ていた大泉首相は「オーオー」と感極まった声を上げた。ドアのノックの音で慌てて総理の椅子に戻ると、今までしていたことを誤魔化すために踏ん反り返った。「どうぞ」と声をかけると、美食太りとしか見えない早野幹事長が入ってきた。BS牛が発生して以来、牛肉が安全であることをアピールするために牛肉を食べ続けたせいだ。
「やあ、次期総裁候補1番手の早野センセイ。やっとこさ回ってきたチャンスを逃さないための権謀術数の限りをつくした裏工作は
、順調に運んでいるかね?」
「裏工作だなんて。私は総理と違って、自分で進んでなりたいと思ってなれる程にセンス豊かな政治家ではありません。任せてみたらどうかとチャンスが巡ってくるのをじっと待つしか能のない、棚からぼた餅型の政治家ですから」
大泉首相は椅子になおさら踏ん反り返って、遠慮会釈なくアハハハと笑った。
「君のそばにいるだけで、なりたくてなりたくて、その思いが脂ぎった汗となって吹き出てくるのを感じるよ」
早野幹事長の脂性の大きな顔がネクタイで首を絞められたみたいに赤くなった。
「確かに気持はそれに近いものがあります。気持通りに事が運ばないのが、この世です」
「だから、裏であれこれと画策している?確実にモノにするために」
「あんまりです、総理」
早野幹事長は慌てて首を振って、情けない声を出した。「次期総裁候補は3人だ。2番手が歴史認識に難点のある前文科相の山根君。退潮著しい我が党の人気回復策としてここで日本初の女性首相を仕立てるのも妙案ではないかと、開けてびっくり玉手箱を狙った3番手の小池百恵クン。まあ、オレみたいなごくまれな例外を除いて、殆どの場合政治を動かすのは党ということなら、1番手、2番手の順序に関係なしに誰が首相になろうと構わないわけだ。事実3人を比較してドングリの背比べだと酷評するマスコミもある。ここで日本初の女性首相という記念碑を打ち立てる目的だけのために我が党のマドンナ百恵ちゃんを後継候補として指名して見るのも面白い
。このオレが日本初の女性首相の生みの親として名を残せるし」
早野は無理矢理な作り笑いを見せたが、情けない顔になっただけだった。
「私としては非常に残念なことですが、総理がそういうご意向でしたなら ――」
「最大派閥の事実上のボスであるオレの後継指名が総裁選の動向を左右する。新首相として信を問う選挙でも票の行方に影響が出る。君としたら、諦めるしか手はないわけか」
「誰にとっても、総理の後継指名が錦の御旗となるのは重々承知しています。御旗を手に入れることができないのは、私に任せてみたらという機運がまだ熟していないと言うことでしょうから
――」
お茶坊主の早野としたら、とにかく下手に出るしかなかった。
「オレが君を幹事長に指名したのは、イエスマンが必要だっただけなんだという辛辣な批評もあるがね。そのような悪評に屈せずに、あわよくば次期首相に後継指名して貰いたいという計算もあっただろうが、君のバックアップはそれ相応に役立った」
「たいしてお役に立ったとは思ってもいません。足を引っ張ってしまったことの方が多かったかもしれません」
心にもないことを言うのは、早野としても辛いことだった。歓心を買うためや恩を売るだけのために、したくもない無理を何度してきたことか。そのお返しはきっちりとつけて貰いたいが、ここはあくまでも下手に出て、何らかの形で後継指名を受けないことには、次の機会が機会でなくなることだってある。最初にして最後のチャンスと決めてかかって、要求されることは何でもしなければ、すべてを失うかもしれない。もしこの場で今すぐ尻の穴を貸してくれと言われたとしても――。
覚悟の程を証明する譬えに思いついた試練だが、実際に言われたら、ズボンとブリーフを下げて、どちらかというと肉がたるみ始めてぶよぶよしかかった尻を突き出すことが本当にできるのだろうかと不安になった。
「総裁選までに最後のご奉公として、どのような貢献を期待できるんだね?」
「お望みの貢献を果たすつもりでいます」
「後継指名のためには、手段は選んではいられないぐらいの覚悟は持ってるのかね?」
「勿論、持っています。持っていなくて、首相の座など狙いません」
つい本音を言ってしまったことに気づかずに、十分に脈があるなと俄然元気づいた。
「あれだよ」
と大泉首相は大型テレビに顎をしゃくった。チアガールが大写しになっている。
「えっ?
――」意味不明。何のことか分からなかった。
「一度でいいから、あのようなピチピチした女子高生と気持のいいことをしたい。満足がいくまで、熟す前の瑞々しさと堅さを微妙に兼ね備えた果実を味わい尽くしたい」
「それはちょいとヤバイじゃないんですか?」
早野幹事長は心底からヤバイと感じて、額に脂汗をうっすらと滲ませた。
「ヤバイことぐらいは承知している。淫行罪で罰せられることも知っている。しかし女子高生との気持のいいことを男子高校生や男子大学生だけの専売特許にさせておくのは、考えただけでも悔しいじゃないか。なぜ彼らは淫行罪で罰せられないんだ?罰せられないどころか、人生の勲章にしている。全国民の暮らしの基礎づくりをしているのは我々大人なんだよ。そのような努力の担い手たる大人を除け者にするのは、不公平だし、失礼じゃないか。逆に気持のいいことも、大人を優先させるべきじゃないかね?」
大泉首相は久しぶりに歴史に残るような大いなる演説をぶった気持がした。
「確かにそう言われれば、その通りだと思います」
これは今までのような阿諛追従から出た言葉ではなく、覚悟を決めていた。
「よろしい。どのような素晴しい女子高生を紹介するか、期待しているよ。援助交際しているようなすれっからしをカネで雇って連れてくるようなことはしないでくれ。純粋無垢、初々しい上に初々しくなければ、君の後継指名はないと思ってくれ」
「純粋無垢、初々しい上に初々しいで最善の努力を尽くします。どのような方法で、どこに連れて行けばよいのでしょうか?」
「場所はここ、首相執務室。うまいことをやったクリントンのマネを一度はしてみたかったんだ。モニカ・ルインスキーだったかね?いい身体してたじゃないか。いい身体だと言うことは、いい気持が約束されるということだよ。外国の賓客を迎えるように、送迎用車で目隠しして、ここに連れてくる。下手に隠しカメラなど設置されて、スキャンダルにされないためにも、ホテルなんかではなくて、首相執務室なんだ。目隠しは最後まで取らないことを厳しく約束させておいてくれたまえ」
(3)
他の2人も呼びつけられているのは知っていた。彼らが手の内を正直に明かすか疑心暗鬼もんだったが、赤坂の料亭伏魔殿で後日情報交換の場を持つことを約束させておいた。「抜け駆けなしで正々堂々とレースを展開しよう。国のため、国民のためだ」
と。
当日の夜の7時。先ずは乾杯。当り障りのない世間話で腹の探り合いの前哨戦。探り合いが普段よりグラスを口に運ぶペースを早くした。平均年齢が高い政界ではまだまだマドンナの42歳のほんのりと顔がピンクに染まった百恵ちゃんが色っぽく見えてきた。早野が前々から一度は味わってみたいと思っていた豊満も豊満、ダントツ熟女の
独身である。
「総裁選レースを公明正大なものとするために、持っている情報を公開しよう。オレはあのヘンタイ総理に最後の貢献に清純無垢な女子高生を紹介しろと言われた」
「俺もだ。オレが最初に手を触れたときの恥じらいが演技かそうでないか、清純無垢さ加減は一発で分かるなんて言いやがった。そんなことで次期総理が決まるなんて」
「俺たちを天秤にかけたんだ。紹介した女子高生の味加減で競わせるとは、最悪のプレッシャーだ。何のための1番手だったんだ。君の方が有利に展開することだってある」
「いやいや、紹介次第で、やはり1番手は違うなということだってある」
そうは言ったが、前文科相は既に新たな決意を固めていた。同じ日本の女子高生で勝負したなら、負ける可能性がある。元々2番手に位置していると言われている俺だ。ダメ元で、日本に留学したいが資金が足りないといった白人女子高生の、モニカ・ルインスキーに匹敵する持って生まれた大人顔負けの色の白い豊満肉体で勝負してやろう。日本の大学の4年間を高級マンションに高校野球の野球留学生に近い条件で家賃と生活費はタダで住まわせ、月々の小遣いも与える。見返りはただ一度、日本の首相に相手が誰と分からずにその見事な初々しい肉体を提供する。いやいや、たった一度だけでは条件がおいし過ぎる。あのヘンタイ首相に一度提供して後は用なしになったなら、月に一度ずつ、卒業するまでの4年間の残り47回、俺の相手をさせよう。
「百恵センセイ。あなたも女子高生の斡旋を依頼されたのかね?」
「私はクレオパトラがオールヌードとなった自分を絨毯でぐるぐる巻きにしてシーザーへの贈物にしてエジプトとエジプト国民をローマから救ったという故事を教えられました」
「何てことだ、あの好色オヤジ。ギャルから一転して熟女狙いだ」早野が唸った。「下手をすると、俺たちは負けるかもしれない。経験の浅い女子高生の恥じらいは初々しく新鮮ではあろうが、熟女の濃厚なサービスみたいには、いつまでも残るようなこってりとした味は期待できまい。あの男を気を狂わせんばかりに病みつきにさせない保証はない」
二人して百恵ちゃんの全身を衣服の上から、相手が顔を赤くするのも構わずにその濃厚さ加減を想像するようにぶしつけにジロジロと舐めに舐め回した。
「例え私の成熟した肉体が総理をトリコにしたとしても――」と先ずはしおらしさを演出。「それだけで首相の座が務まるわけではないですから・・・」
内心は小躍り。胸を張って、バストを強調したくらいだ。3番手の私が先行している2人を抜いて次を指名され、日本初の女性首相になれるかもしれない。
「日本の美風、年功序列は守るべきだ。平和な社会秩序形成の基本だ」早野が苛立ちまくし立てた。「紳士協定と行こう。今までうまくやってきた。平和を乱すわけにはいかない。足の引っ張り合いや抜け駆けが前例となると、それが当たり前のルールとなってしまう」
自分たちが不利と見た早野と前文科相の2人の賛成多数で、紳士協定が結ばれた。他の者が指名されたとしても、辞退して、早野を推薦する。早野が2期6年勤め(る保証はどこにもなかったが)、次は前文科相。その2期6年の後、日本初の女性首相百恵ちゃん
。
「12年なんか、過ぎてしまえば、アッと言う間だよ」
他人事だから、早野は機嫌よく豪快に笑い飛ばした。
「そうですね。アッと言う間です」
内心、この欲張りクソ爺がと罵っていた。紳士協定だと?体のいい談合でしょ。殆どの場合、誰が首相になったとしても何も変らないのが日本の政治なら、私が次の首相になったとしても不都合はない。自分にうま味のない談合は無視する。うま味あってこその談合だと言ったのは中国の孔子だ。
次の日、マドンナは首相に電話を入れた。
「今夜銀座へと5万円は下らない超高級ブランド下着を買いに行きます。フランス製のハイレグかイタリア製のTバックか、どちらかを期待していて下さい。それを勝負下着に最後の貢献とさせて頂きます。下着姿で総理の前に立つのを想像するだけで、デリケートゾーンの奥深く子宮の辺りまでが熱く疼いて、10日も先の生理が始まってしまいそう。アー――」
ここでわざと喘ぐ。
「明日以降の総理の都合のよい日と時間を指定してください」
12年を待たずにこの熟女の濃厚な味で日本初の女性首相の座を見事釣り上げてやる。青臭いだけの女子高生なんかに負けるか。経験してきた男の格が違う。カリスマNO.1ホスト、IT長者、有名外国人俳優、少し落ちるが、頭の悪い甥っ子の中学のときの担任。成績表の点を甘くして貰うために。その他その他。日本の素晴しいあしたのために、いざ勝負。
※高校野球夏の甲子園大会にまつわるシーンからも、総理後継にまつ
わるシーンからも、ある種の「日本のあした」を暗示する内容となって
いると思うのだが、反応や如何に。