和尚著

『ボーディダルマ』

めるくまーる

2800円

 

  ボーディダルマとは、もちろん日本でもおなじみのあの「達磨さん」です。中国に禅宗を伝えた人として有名ですが、日常的に庶民に親しまれているわりには、意外なほど詳しい記録は残っていなくて、「達磨作」と伝えられる幾つかの経典があるだけです。この講話録で使われた題材としての経文は、「少室六門集」という経典からのものです。はたしてこの経文がどこまで達磨の息吹きを伝えているかということに関してはさまざまな意見がありますが、有名な敦煌で発見された古代の経典中にこの「少室六門集」の断片が見つかり、しかもこれまでに知られていなかったバージョンがあることから、達磨の直筆ではないにしても、かなり近い筋の人たちが編纂したものである可能性はあります。
  さて、以上が歴史的な背景ですが、現代の禅師である和尚は、これをどのように料理するのでしょうか? 結末をばらしてしまうと面白くないのでここでは伏せておきます、ということは、そういったドラマチックなストーリー展開があるということなんですね、これが。このときの講話は毎日朝と晩にそれぞれ1から2時間ずつ語られたものらしいのですが、日を追うごとの講話の展開はさぞやスリリングなことであったでしょう。それは読んでからのお楽しみということにしておきますが、確かにこのもともとの経文にはのちの禅宗のドラスチックさとは裏腹な、かなり妥協の産物的な、言ってみれば禅らしからぬ記述もあることは確かです。でも、やはり達磨さんといえば僕たち日本人にきわめて親しいキャラクターですから、いちいち「ふんふん」とうなずきながら読んでいる自分を発見するかもしれません。


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