SRTM-DEM の利用法

 

毛利衛さんが搭乗したスペースシャトル・エンデヴァー号は、2000年2月、その11日間のミッションにおいてレーダーによる測量を行い、地球のほとんどすべての地域を網羅するSRTM(The Shuttle Radar Topography Mission )と呼ばれるDEMを作成しました。 精度は90メートル・メッシュで(※注1、注3)、国土地理院の数値地図(50メートル・メッシュ)には及ばないものの、世界のほとんどすべての地域のデジタル標高地図を無料で利用できるというメリットがあります。

ここではこのSRTM−DEMのデータを入手し、Terragen で利用する方法を簡単に解説します。細かなソフトウェアの操作方法などは各自の研究や工夫にお任せします。

まず最初に、SRTMのホームページは以下の通りです。

http://www.jpl.nasa.gov/srtm/

具体的にSRTMファイルを入手するには、現在のところFTPサイトにアクセスする必要があります。以下のサイトは一般のブラウザでもアクセスできます。

ftp://edcsgs9.cr.usgs.gov/pub/data/srtm

FTPソフトがあれば以下も利用できます。

http://www.terrasource.net/edcsgs9.cr.usgs.gov/pub/data/srtm

クリッカブルマップにより任意の場所を選択できるサイトもありますが、残念ながら現時点ではユーラシアは含まれていません。

http://seamless.usgs.gov/

では、最初のサイトから日本のデータを入手する方法を説明します。日本はユーラシア(Eurasia)というフォルダのなかにあります。開けてみるとわかりますが、すべてのZIPファイルには緯度と経度が記されています。例えば、富士山を含むグリッドは N35E138. hgt.zip となっています。目的の場所の経度と緯度を知るには、検索エンジンで「地名 北緯 東経」などと打ち込んでやると探し出せるでしょう。もちろん紙の地図を利用してもいいでしょう。

さて、このファイルを解凍すると、この場合だと N35E138. hgt というファイルが出てくるわけですが、これを読み込むにはおなじみの3DEMを利用します。最新版の3DEMは以下から入手できます。

http://www.visualizationsoftware.com/3dem.html

3DEMを起動し、File-->Load Terrain Model と進みます。SRTM Data を選択しますと、先程解凍したファイルを読み込むことができます。複数のファイルを読み込むとシームレスにつないでくれます。以下に本州中部のデータを読み込んだ画像を貼っておきます。

ご覧のように、海面にかなりのノイズがありますが、これはシャトルのレーダーが海面の波で反射されたためだそうです。そのほかにも陸地に陥没があったりと、必ずしも精度が高いとは言えませんが、わずか11日のミッションでつくられたものですから、これもやむを得ないのかもしれません。(※注2参照)(補足――3DEM v.18.1 には、この雲や山の陰によるデータの欠落部分、陥没を修正するツールがつきました。 Operation > F7 Patch Missing Data を選択し、穴のある部分を選び、Enter を押します。ただし、これはあくまでも陥没部分をソフトウェア的に埋めるもので、本来の地形を再現するものではありません。)

ちなみに、目的の場所の緯度経度が「何度何分」というように60進法で表記されている場合には、3DEMの Geo Coordinates を Minutes of Degree に変更します。

さて、このSRTMを Terragen にエクスポートする方法はすでに皆さんもご存じと思いますので、簡単に説明します。File-->Save Terragen Terrain で、全体を保存する場合は Entire Terrain、選択枠内だけを保存する場合は Selected Area です。

注――3DEM v.18.2 から、出力される Terragen ファイルのスケーリングが正確になりました。つまり、Terragen に読み込んだ地形ファイル上で、富士山はちゃんと3776mになっています。最新の3DEMを入手してください。

簡単に説明しましたが、以下に作例を示しておきます。私の住んでいる町をデジカメで写した写真と、Terragen による作例です。90メートル・メッシュでも工夫すればけっこう使えそうですね。

上の画像のように、90メートルの精度だといまいち精細さに欠けますが、上空からの俯瞰図などの用途には向いているかもしれません。例えば観光マップやハイキングマップです。以下にその例を示します。上の画像とおおむね同じ位置関係で、中川根町下泉より上長尾方面を見たところです。ただしカメラの標高は3000メートルぐらいに設定してあります。上の画像の右の中央の三角の山が三星山です。下の俯瞰図ではもっと右側の山々も見えています。

大井川中流域を真上から見ると下のようになります。

※注1――一般に公開されているものは90メートル・メッシュですが、オリジナル・データは30メートルの精度があるそうです。NASAはこの高精度のSRTMを一部の科学者にしか公開していないとのことです。なんとももったいない話ですね。
※注2――世界の百名山といわれるものを、緯度経度等を調べて落としてみましたが、はっきり言ってほとんど全滅でした。高い山ほど欠損している部分が多いといえます。これはNASAのSRTMの解説にも触れてあることです。なにが原因なのか、素人の推測ですが、雲や霧や雪等の気象条件によってはレーダーがミスをするのかもしれません。今後、これが改善されるのかどうかわかりませんが、現状では世界の高峰、名のある高峰のまともなデータを入手するのは難しいです。しかし、周辺部のやや低めの山では欠損のないものもありますので、有名な山のCGをつくるのが目的ではなく、あくまでも自然の造形を楽しむためのデータと割り切るなら、それなりに楽しめるのかもしれません。あるいは、比較的広い地域のレリーフ・マップ(俯瞰図)、旅行の解説の挿絵として使うといった用途なら、多少の欠損があっても使えそうな気がします。
注3――SRTMの本来のデータは30メートルの解像度があるそうです。現在、NASAが公開しているものは、これにほとんど手を加えていない(ただし90メートルの解像度の)生データですが、同じ元データがNIMA(National Imagery and Mapping Agency )という機関に行き、そこで編集作業が行われているそうです。この修正が加えられたものがNASAに戻るのが2005年とのことで、しかし、それが一般に公開されるかどうかは不明です。というのも、まるで謀略説のようにも聞こえますが、 NIMAはNASAが90メートルのSRTMを公開することさえ反対したというのです。2001年9月11日の同時多発テロがその発端とのことです。つまりテロリストに詳細な地形データが渡ることを恐れてということなのでしょう。いずれにせよ、NASA自身は30メートルの高解像度のDEMの公開にも前向きとのことなので、われわれとしては状況が好転することを祈るばかりです。


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