ガソリンスタンドにて


バッテリー交換した時の話。

ガソリンスタンドで充電してもらおうと思ったら、交換した方がいいと言われ、たまたま金を持っていたのでその場で交換してもらうことにした。

作業中、車に乗ったままぼーっとしていると、わらわらと店員が寄って来た。
な、なんでたかがバッテリー交換にこんなに店員が・・・? と、あたりを見回すと、客はあたしだけであった。

ヒマなので、集まってきたのだろう。
作業するにーちゃんの他、7人の店員が、きれいな半円を描き、車を取り囲んでいた。
ヒマだからといって、ぼんやり立っているわけにもいかないという思いからか、洗濯したタオルを手にしている。
作業を眺めている7人の店員は皆、風呂上がりのオヤジのように、パンッ パンッ と音を立てて、タオルの水気を切っていた。

・・・いつまでもパンパンしとらんと、たたむなら、はよたためや〜〜〜
・・・ヒマだからって、あたしを囲むな〜〜〜

同じ服(スタンドの制服)を着た青年達が、無言で一様に パンパン と音を立ててタオルを振り、あたしを取り囲んでいる。

なんとも妙な光景で、おもしろいような、気味悪いような・・・なんだか、
怪しげな儀式のイケニエにされている気分に陥った。

「終わったんで、エンジンかけてみてください」 と言われたので、キーを回すと、軽やかにエンジンがかかった。
その時、にーちゃんが何かを言った。
あたしは、儀式
(?)に気をとられていたのと、エンジンの音で何と言われたのか聞き取れなかったので「え? 何?」 と聞きかえしたのだが
にーちゃんは 「あ、いや、なんでも。。。じゃ、お支払いいいですか?」 と、伝票を取りに行ってしまった。

耳に入った瞬間には聞き取れなかった言葉でも、なぜか一拍の間をおいて理解できる時がある。
あたしは、支払いをする時になって、にーちゃんが何を言ったかわかったのだ。

「バッチグーですね!」

間違いない。彼はそう言った。
そういえば、手をグーにして、親指を立てていたではないか。

パフォーマンス付きのバッチグー。

あたしは、それを
 「え? 何?」 と、真顔で聞き返してしまったのだ。
これはイタイ。

間をあけて 「ああ、はいはいバッチグーね! サンキューベイベー」 などと言うわけにもいかず
せかせかと支払いをすませ、もごもごと礼を言い、なにやら申し訳ない心持でガソリンスタンドを後にしたのだった。

ごめんよ、にーちゃん。
それと、無言で客を囲むのはよせ。

 

 

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